正立フォークの分解組み立て作業。特に注意したい「ポイント」はここ

オイル交換することで、その作動性は圧倒的に良くなるとわかってはいても、フロントフォークのオイル交換を積極的に実践しようとするユーザーは意外と少ない。オイル滲みやオイル漏れが発生して初めて、部品交換と同時に「オイル交換しよう」、といった例が多いフロントフォークのメンテナンス。シンプルな正立式だからオイル交換は簡単。だからこそ、末永く愛車を楽しむために、定期的なオイル交換を実践しよう。

80年代以前の正立式は実にシンプル構造

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70年代に構築された市販車用正立式フロントフォークの構造。その流れは80年代後半まで受け継がれ、減衰調整機能が付く正立式フロントフォークを除けば、多くのモデルが似たり寄ったりな内部構造を採用していた。ここでは、シンプルな正立式フロントフォークの分解組み立て時に「特に」知っておきたいポイントを解説しよう。

ダンパーパイプを固定する工具は便利

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正立式フロントフォークを分解するときには、ロングサイズのTレンチ(3/8SQサイズが良い)を準備し、その先にメーカー純正や工具メーカーから発売されているダンパーロッドの回り止めツールを利用すると作業性が良い。ボトムケースを口幅の広い万力に固定して、インナーチューブ越しに、その奥にあるダンパーシートをホールドツールで固定しつつ、ボトムケースの底から締め付けてあるキャップボルトを緩めて抜き取る。この作業を行わない限り、ボトムケースからインナーチューブを抜き取ることができない。この作業でつまづくサンデーメカニックビギナーは数多い。

ダンパーパイプの形状も実に様々

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ボトムケースの底から締め付けてあるキャップボルトを抜き取り、インナーチューブをスライドさせてオイルシールごとインナーチューブを抜き取ると、インナーチューブ内からダンパーパイプを抜き取ることができる。先端には樹脂製のピストンリングが組み込まれているので、外周に減りや偏摩耗などを確認できたら、分解ついでにピストンリングを交換しよう。一般的にオーバーホール時には、ダンパーパイプのピストンリング、ボトムケースのアウターメタル、各種ガスケット、そしてオイルシールは新品部品に交換する。ダンパーパイプの先端にソケットレンチのような加工があるが、この部分に合致した寸法のホールドツールを差込みTレンチで固定することで、ダンパーパイプの供回りを防ぎ、締め付けボルトを緩めることができる。このボトムケースの底から締め付けているボルトの供回りが分解不能原因になることが多い。

組み立て時はオイルロックピースをセンターリング

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分解したら各パーツをしっかり洗浄してからパーツクリーナーで洗い流し脱脂乾燥させる。組み立て時には各パーツにフォークオイルを塗布し、潤滑性を高めながら組み立てる。インナーチューブ内にダンパーパイプ関連パーツをセットしたら下側にパイプを突きだし、オイルロックピースと呼ばれるテーパー外径のパーツを差込む。ボトムケース底のキャップボルトは、オイルロックピース越しにダンパーパイプを締め付けるのだ。キャップボルトを締め付ける際は、仮締め段階でインナーチューブをフルボトムにし、さらにインナーチューブを回転させながらキャップボルトを規定トルクで締め付ける。また、このキャップボルトにはネジロック剤を塗布しよう。締め付け固定後、インナーチューブの上下作動がスムーズかつフルボトム状態で回転するのが正解。動きに渋さがあるときにはボルトの締め付けをやり直そう。

フロントフォークシールにはラバーグリスを塗布

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脱脂乾燥した金属部品とゴム部品の摺動性は、驚くほど悪い!!そんなインナーチューブとオイルシールの摺動抵抗を減らすことで、組み立て時のスムーズさと作動時のスムーズさを手に入れることができる。特に、組み立て時のスムーズさは重要で、オイルシールリップへのダメージを回避するには、このスムーズな摺動性がカギを握るのだ。また、インナーチューブエンドにオイルシールを差込む際に、チューブエッジでシールリップを切ってしまうことがあるので、インナーチューブにビニール袋をかぶせて、ラバーグリスを塗ったオイルシールを慎重に通すのが良い。

旧いオイルシールを重ねて叩くのではなく……

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昔は旧いオイルシールを重ねて……といった組み立て方をしていたベテランも少なくないと思うが、現代はリーズナブルかつ扱いやすいオイルシールドライバーが販売されているので使いたい。DRCのそれには、原付クラスの細いインナーチューブに対応した商品もある。
※編集部注釈:画像はDRC製ではなくハスコー製の旧型

オイル注入量は「容量」か「油面高さ」かで決定?

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フォークオイルの固さは一般的に10番。同じ減衰フィーリングで硬くしたいときはオイル粘度を15番や20番、30番などに交換する。また、油量をやや多く(油面の高さをやや高く)注入することで、作動量が抑制されてノーズダイブを減らすことができる。作動セッティングを変更したい際は、粘度変更の前に、まずは油面の高さを「10mm高く」とか「15mm高く」などとセッティング変更を実体感してみるのも楽しい。

作業時にはフロント周りを浮かずスタンドを準備

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フロント周りをフリーに分解したいときには、リアをメンテナンススタンドで直立させ、さらにフロントスタンドで前周りをリフトアップさせると便利だ。メインスタンドがあるモデルなら、エンジン下を持ち上げることができるバイクジャッキがあると便利だ。ダブルクレードルのフレーム構造なら、カワサキ純正タイプの2連パンタグラフジャッキも使いやすい。

POINT
  • ポイント1・ボトムケースに締め付けられるダンパーパイプの緩め、締付け時にはホールドツールを利用。締付け時にはセンターリングを確認する
  • ポイント2・オイルシールを組み付けるときにはシールリップを切らないように細心の注意を払い、ラバーグリスを併用しよう
  • ポイント3・フロントフォークのオイル粘度や注入油量(油面の高さ)変更でセッティングを変えることができる

現代のモデルにも数多く採用されている正立式フロントフォーク。「減衰ダンパー調整の無い」シンプルな正立式フロントフォークは、分解組み立ても決して難しくない。普段からエンジンオイル交換やオイルフィルター交換を頻繁に実践しているのに、ことフロントフォークに限っては、ほぼノーメンテナンスで磨き込み専門といったユーザーが、実は多いようだ。磨き込みは確かに重要でである。乗りっ放し、汚れっ放しのバイクと比べれば、オイルシールがダメージを負うケースも少なく、オイルシールを交換しなくてはいけない場面に遭遇することも少ない。

一方、車体が汚れたままで乗り続けているバイクは、様々な車体部品の「摺動部」にダメージを受けてしまうことが多い。例えばフロントフォークの場合は、インナーチューブ表面に付着した汚れがストロークによってダストシールを攻撃。それが繰り返されるとダストシールを越えて内部へ侵入する。次に迎え撃つのがオイルシールだが、オイルシールに付くダストシールは、キャップ型の分厚いボトムケースにセットするダストシールと比べてダメージを受けやすい。また、オイルシールの上に付くダストシールを越えると、そのゴミやスラッジはオイルシールの上に堆積しやすく、その汚れが水分を吸収し、オイルシールの抜け止めをしているサークリップをサビさせてしまう原因となっている。

旧式の正立フォークは、ボトムケースにオイルドレンを持つ仕様もあるので、ドレボルトを抜き取りフロントフォークをストロークさせることで、内部のフォークオイルを抜き取ることができる(オイルが飛び散らないような養生をしよう)。注入時にはトップキャップボルトを外して、規定量を注入すれば良いが、抜き取ったフォークオイルが真っ黒く灰色のようになり異臭を放つようなケースだったら、次のオイル交換時には、フロントフォークを分解し、全部品をバラして分解清掃。必要に応じて部品交換するのがベストである。1万キロも走行すれば、フォークオイルは真っ黒に汚れて異臭を発し、オイルにクリア感は一切無くなってしまう。そうなるとインナーパーツの摩耗促進になってしまうため、フロントフォークオイルも定期的に交換することで、インナーパーツの保護延命になることを忘れずにいよう。

決して難しいことではないので、
1:ダンパーパイプのホールドツールは各種持ち合わせていると便利。中で供回りしてしまい、分解できないケースが多い。

2:ダンパーパイプの締付け時は、仮締めでインナーチューブをフルボトムにしてから、ホールドツールで固定しつつインナーチューブを回転させながらダンパーパイプを締め付ける。オイルロックピースをセンターリングしながら締め付け固定する。

3:フォークシール(オイルシール)を組み込む時は、オイルシールリップにダメージを与えないように、ラバーグリスを塗り、インナーチューブエッジにビニール袋を被せて作業進行しよう。

上記のポイントに特に注意しながら、トラディショナルな正立式フロントフォークのオーバーホールやオイル交換にチャレンジしてみよう。

 
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