偏摩耗が激しいインナーチューブは修理再生あるいは部品交換がお約束

バラバラに分解した足周り部品は、キレイに洗浄してから点検作業を進めてみた。そんな作業途中に気がついたのが、インナーチューブ外周の偏摩耗だった。この手の偏摩耗痕の原因は、おおかたインナーチューブの曲がりに起因する例が多い。しかし、分解したインナーチューブに点サビは発生していたもの、曲がりは100分台(編集部注釈:1/10mm以下の事)に収まっていた。曲がりとしては問題無かったが、過去にインナーチューブを修正した可能性もある……。ここでは、フルレストア作業の一貫で行った、ステアリング周りの組み立て実践をリポートしよう。

部品一点一点を確実に点検してから組み立てる

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愛知県のカーベックに依頼して、3次元バレル研磨を施し、さらにアクリルパウダークリアで仕上げたボトムケースに組み込むパーツ群。ボトムケースの仕上がりがとにかく美しい!!インナーチューブは、DachiブランドのXR75用を流用!!

Dachiインナーチューブで寸法一致

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目立ったサビは無いものの、摺動部分の摩耗が激しかったインナーチューブ。過去に曲がっていた時期があったと思われる。今回は、後継オフロードモデルで知られる北米輸出モデルのXR75用を流用した。インナーチューブの長さを調べたら同一で、オイル通路=オリフィスがSL70の1孔仕様から小さな2孔仕様に変更され、減衰特性が改められていたが、流用可能と判断した。

高精度な複製パーツでスムーズに組み立て完了

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フロントフォークシールはその他数多くのモデル(インナーチューブΦ27ミリモデル)と共通なので安心。組み立て時には裏表を注意し、ラバーグリスをしっかり塗布してからオイルシールを組み込もう。インナーチューブをフルボトム状態(底突き状態)にしたままでインナーチューブが回転するか確認してみよう。フルボトム状態で噛み込み、回転しないときは、ボトムケース底に固定されているオイルロックピースのセンターがズレていると考えられる。

メーカー在庫で購入できたホンダ純正部品

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ステアリングステムシャフト側のボールレースを組み込む際には、その下に組み込むダストシールを新品部品に交換しよう。ゴム製の二重輪になったような部品だが、この部品が偏摩耗していたり、切れていたり、組み込み忘れると、ボールレース内にゴミが入り込み、グリスの潤滑性が一気に低下してしまう。ステアリング作動時のゴリゴリ感は、このダストシール不良によるものも多い。

ベアリングドライバーで確実に打ち込もう

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フレーム側ステアリングヘッドパイプ周辺のパーツもホンダ純正新品部品を購入した。ベアリングドライバーを利用し、確実かつ正確に叩き込んだ。特に、下側はフレームを逆さまにしないと打ち込みにくいので、フレーム単品のうちに作業進行しておこう。旧ベアリングレースを抜き取った際バリが出ていることがあるため、新品ベアリングレースを打ち込む際は、事前にバリを除去してからベアリング外周にグリスを薄く塗布してたたき込もう。

ステムシャフト側の打ち込みにはパイプ利用

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この時代のホンダ原付系モデルは、ベアリングレースもダストシールもスチールボールも共通部品が多い。部番的に違っていても、実は、他のモデル用を流用できることも多いので、知っておくと良い。砂利汚れがベアリング内に混入するとダメージを受けやすいので、特に、ゴム部品のダストシールは確実に組み込もう。シールがズレたままでインナーレースを圧入すると、ダストシールが噛み込み切れてしまいやすいので、組み立て作業時は要注意。ステムシャフトが邪魔になるので、ステムシャフト外径よりも、若干内径が太い鉄パイプを準備し、パイプエッジでボールレースをたたき込み圧入するのが良い。接着剤代わりにグリスを利用することでスチールボールはセットしやすくなる。

数を間違えずに組み込もう

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ベアリングレースに打痕が付くとステアリング操作がスムーズに行かなくなり、ゴリゴリ感が発生する。分解時にはグリスが汚れているので、すべて単品部品にしてから洗浄。汚れをしっかり洗い流してから新グリスを塗布しよう。ベアリングレースを確認し「打痕が残っていなければ」、ボールレースもボールも旧部品を再利用することができる。トップナットの締め付けトルクは、メーカーによって締め付け指示が異なる。強弱の加減には注意しなくてはいけないが、目安としては、ホイールが無い状態でフロント周りがスムーズにスーッと動く感じにすればよい。自重で勢いよく動いたり、作動が渋いのも良くない。締め付け調整には、アジャスタブル式フックレンチを利用すると作業性が良い。

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部品点数が少なく、しかもシンプルな構造となっているため、あっという間に組み立てられる。ボルトを含め、部品が揃ってさえいれば、車体の組み立ては半日もあれば余裕なのが原付クラスである。作業台の上に毛布などを敷いて作業を進めることで、部品を落としても毛布が衝撃を吸収し、部品の紛失防止にも役立つ。

取材協力: カーベック

POINT
  • ポイント1・ フロントフォークを分解したら、すべての部品を洗浄する。その際にはガソリンを利用すると良い。
  • ポイント2・インナーチューブは単品にしてからしっかり確認しよう。曲がりが発生すると部分的に強く擦られ、楕円の減り痕が部分的に残ってしまう
  • ポイント3・ベアリングレースをフレームのステアリングヘッドパイプへ圧入する時は(抜き取るときも)、レースが斜めにならないように要注意。
  • ポイント4・トップナットの締め付けは、過不足無く何度も確認しよう

組み立て作業前には、しっかりした段取りと準備が大切である。部品1個、ボルト1本、ナット1個が行方不明なだけで、組み立て作業はそこでストップ!!要するに、組み立て前の段取りをきっちり行い、不足部品が無いことを確認してから作業に取り掛からないと、効率良く作業が進まなくなる。仮に、原付クラスのモデルなら、車体の組み立て時間は1日あれば十分。今回は、車体が小さく部品が軽いことも幸いし、半日もかからず組み立てることができた。

ホンダの70年代に登場した原付クラスのモデルは、共通部品を採用している例が多い。例えば、フロントフォークのインナーチューブは、チューブ径がΦ27ミリ仕様なら、ほぼすべてのモデルでインナーパーツや肝心のオイルシールは共通部品となっている。ここで作業進行しているモトスポーツSL70は、1970~74年頃まで発売された北米市場専用の輸出モデル。そのSL70は、XL70へと進化し、その後は縦型4ミニエンジンのXR75(国内ではXE75)へバトンタッチしたことでも知られている。

日本国内ではレアなモデルのため、あまり知られていないが、同シリーズモデルは、車体サイズがほぼ同じで、初代SL70~XL70だけではなく、耐型エンジンのXR75に至っても、インナーチューブの長さが同じだった。横型エンジンを搭載したSL70やXL70だけではなく、縦型エンジンのXR75でも同サイズを採用。そこで、XR75用社外補修パーツを購入したところ、大きな仕様変更は無くの寸法関係は同一。部品の流用で組み立てることにした。

旧車のフルレストアで一番苦労するのは部品の調達である。特に、メーカー純正の新品部品を探し出すには、苦労がつきものだ。輸出仕様の場合、以前はパーツリストやパーツカタログを見つけ出すだけでも大変だったが、今のご時世、恵まれたことにインターネットがあるので、国内モデル以上に輸出モデルの方が部品管理されていて、見つけ出すのは容易かも知れない。

そんな海外のインターネットサイトで部品番号を調べ、国内モデルと比較しつつ使用部品を分析。その甲斐あってインナーチューブはDachiブランドのXR75用を流用した。ひと昔、ふた昔前とは違って、見つけやすくなった部品も数多くあるので、インターネットで部番などを調べて、部品発掘を楽しみつつ、これからも旧車のフルレストアを楽しみたいものである。

 
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