気づかぬうちにオイル漏れやロッドの傷が!?見えないから気づかないリンク式リアサスペンションの劣化

伝統的な2本サスよりタイヤのストローク量を稼げて、スプリングやダンパーのプログレッシブ特性が得られ、重量物を車体中央に配置してマスの集中化を図ることができるモノショックは、スポーツバイクのリアサスペンションの定番となっています。しかし外から見えづらい分、劣化やダメージに気づきづらい側面もあります。たまには車体の下からリアサスを覗いてみましょう。

車体の中心にある分、走行中の汚れを浴びやすい

ここで紹介するカワサキGPZ400Fは集合マフラー付きでセンタースタンドが取り外されているので、2連タイプのパンタグラフジャッキでリアタイヤを持ち上げて作業を行う。スイングアームを支えるメンテナンススタンド(レーシングスタンド)は、タイヤを取り外す際には使えるが、リアショックやリンクを外す際には使えないので要注意。

リアタイヤを外すと、タイヤの中心線上にリアショックがあるのがよく分かる。ここではすでに取り外しているが、純正ではリアショックをカバーするようにスイングアームから下にフェンダーが付いているので、タイヤから直接走行中の雨水がかかることはない。とはいえ車体の下部なので、汚れやすいのは確かだ。

リアサスペンションのモノショック化は、1970年代後半に登場したモトクロッサーへの採用をきっかけに、オン/オフ車を問わず採用が拡大したメカニズムです。ライダーや荷物などの荷重を支えながら、走行中の安定性を確保するという目的だけではなく、モノショック化によりスポーツライディングに欠かせないサスペンションの性能アップが実現しました。

スイングアームとシートレールの間に配置された2本ショックの場合、リアタイヤのストローク量とスプリングの反力は単純な比例関係にあります。荷重によってスプリングがどれだけ伸び縮みするかを示すバネ定数が一定なら、ストロークが大きくなるほど(リアが沈むほど)スプリングの反力は大きくなります。そのためワインディングやサーキットなどサスペンションの負荷が大きくなる場所を走行する際はバネ定数が大きい、つまり硬いスプリングが必要になります。

しかし硬いスプリングを使用した場合、街中やツーリングなどサスペンションへの荷重が小さな領域でも反力が大きいため乗り心地が悪くなるという影響が現れます。またスイングアームとシートレールの間のショックはつっかえ棒となり、ストローク量に制限ができてしまいます。

これに対してモノショック、なかでもリンクを用いたモノショックは2本ショックとは異なる特性を作り込むことができます。性能向上に効果的なのはプログレッシブ特性と呼ばれるものです。単純に言えば、リアタイヤのストローク量が小さい範囲ではスプリングの反力が小さく、ストロークが大きくなると反力も大きくなる特性です。リンクのレバー比という要素によって、タイヤのストローク量に対するスプリングへの荷重を2次曲線的に増加させることで、街中では柔らかく、スポーツ走行では腰砕けにならず締まった走りを実現しているのです。

同時にスイングアーム後部に重量物が付く2本ショックに対して、スイングアームピボット近くに装着されるモノショックは、バイクの部品の中で最も重いエンジンに近いことでマスの集中化にも役立っています。スタイルが重視されるトラディショナルモデルや小排気量モデル、ビジネスユースにも応える必要があるスーパーカブなどを除けば、オン/オフロード車を問わずスポーツバイクでモノショック化が進んでいるのは自然の成り行きでもあります。

性能面では2本ショックに劣るところがないモノショックですが、その能力を維持するには定期的なメンテナンスが必要です。2本ショックはスイングアームとシートレールの間をつなぐだけのシンプルな構造ですが、リンク付きのモノショックは複数のレバーとピボット(支点)が存在します。車体とライダーの重量を受け止めながらピボットがスムーズに運動するには、ブッシュとベアリングの間の潤滑が重要で、洗浄とグリスアップが不可欠です。車重が重いビッグバイクになれば潤滑不足の状態でもサスペンションはストロークしますが、無理矢理作動させられることでブッシュやベアリングが焼けて動きが悪くなり、荷重変化の小さい領域のショックをスムーズにショックに伝達できなくなり乗り心地が悪化します。

リンクとともにリアショック自体のチェックやメンテナンスも必要です。多くのモノショックは車体の中心の低い位置にレイアウトされていて、走行中にタイヤが巻き上げる汚れが付着しやすい状況にあります。そのためインナーフェンダーや泥よけなどリアショックを汚れから守る装備がありますが、防水や防塵が完璧とはいえません。それは2本ショックでも同様ですが、車体の外側から見えづらい分、気づかぬうちに劣化が進行している場合もあるのです。

POINT
  • ポイント1・荷重が小さい時は柔らかく、大荷重で踏ん張るモノショックはリンクによるプログレッシブ特性が特長
  • ポイント2・車体中心にあるショックは汚れやすく、リンクのブッシュは潤滑が必要なので定期的なチェックが必要

バンプラバーの崩壊やピストンロッドのサビに注意

このショックはリモートタイプのプリロードアジャスターを装備しているので、フレームからセットで取り外す。下部マウント部分にはダイヤル式の減衰力アジャスターも付いている。

ピストンロッド表面のメッキにはこれから成長するかもしれない薄いサビが発生しているのでメタルコンパウンドなどで表面を磨き、ゴムシールを潤滑できるスプレーを吹き付けておく。ショックアブソーバーのキャップ部分に若干のオイル滲みが付着しているので、すでに僅かながらの漏れはあるのかもしれない。

ピストンロッドにセットされているドーナツ状のバンプラバーは完全に崩壊しているので、ボロボロの状態でスプリングの隙間から取り出した。単品で供給されていない部品なので、スプリングとロアマウントを取り外してホームセンターなどで売っているゴム足を挿入するか、サスペンションの専門業者にオーバーホールを依頼する。

車体下部に装着されたモノショックで注意すべきポイントは、ピストンロッドのサビとショックアブソーバーのオイル漏れ、さらにバンプラバーの劣化です。これらの要注意ポイントは2本ショックにもすべて該当しますが、先述の通りショック本体が見えづらい分見過ごしがちです。

いずれのダメージや劣化も、走行中に浴びせかけられる水分や砂利やホコリ、保管中に地面から受ける湿気によって進行します。雨天走行やツーリングなどを日常的に行うことで、前輪が巻き上げた雨混じりの小さな砂利でエンジンのクランクケース前側の塗装がツヤ消し状態になってしまうことがありますが、リアショックにも同様の影響が及びます。

雨水と砂利がピストンロッドに付着した状態でショックがストロークすれば、ショックアブソーバーのオイルシールに引っかかって傷を付ける可能性があります。雨天走行中であれば雨水が潤滑剤代わりになってオイルシールのリップ部分で掻き落としてくれることが期待できますが、走行後に汚れた状態のまま保管すると、水分だけが蒸発してピストンロッドに砂利が張り付いてしまうおそれがあります。洗車の際にいきなり乾いたウエスで塗装を擦ると細かな傷が付きやすいのと同じで、汚れが付着して乾いたピストンロッドをいきなりストロークさせればオイルシールを傷めるリスクがあります。

レース用のマシンでもないのに毎走行後にピストンロッドまでクリーニングするのは、理想的とはいえ現実的ではないでしょう。とはいえノーチェックのまま乗り続けて、ある時突然オイル漏れに気づいて慌てるより、たまには確認して汚れを落としてラバーパーツ潤滑剤をスプレーしておくだけで、ロッドの汚れやメッキのサビの発生を遅らせることはできるはずです。

ピストンロッドの汚れやサビと同時に、ショックアブソーバーからのオイル漏れもチェックします。モノショックの多くはアブソーバーが上部にある倒立型で、2本ショックで一般的な正立型と逆向きに装着されています(2本ショックでもリザーバータンク付きのショックは倒立型になります)。倒立型はショック上部にダンパーオイルがあるため、アブソーバー下部のオイルシールがダメージを受けるとピストンロッドを伝ってオイルが流れ出てしまいます。

オイルが抜ければピストンロッドの先にあるダンパーピストンが作動しても減衰力が発生しないので、縮んだスプリングは同じ勢いで伸びてしまい衝撃は減衰されません。ショックアブソーバーのオイル漏れは個人で修理できるトラブルではないので、修理は専門業者にお願いするか、純正部品やアフターマーケットのショックユニットに交換しなくてはなりません。経年劣化によるオイル漏れや、ダンパーオイルの汚れによる性能低下もあるので、手入れさえしていればずっと使い続けられるというわけでもありませんが、なるべくオイル漏れを起こさないようにダンパーピストンのコンディションに気を配るのは絶対に有効です。

一方、経年劣化として致し方ないのはバンプラバーの劣化です。ショックがフルストローク近くまで縮んだ際に緩衝材として機能するバンプラバーはゴムやポリウレタンなど柔軟性のある素材で作られており、ポリウレタン製のラバーは空気中の水分や湿気と反応することでボロボロに崩れてしまう場合があります。この場合、スプリングやダンパーピストンにねじ込まれているマウントを取り外して新しいバンプラバーを挿入するのが理想ですが、純正部品でバンプラバーだけが販売されることはないので、オイル漏れの場合と同様にサスペンションの専門業者に修理をお願いすることになります。

POINT
  • ポイント1・走行中にピストンロッドに付着する水分や汚れはロッドのサビやオイルシールを傷める原因になるので要注意
  • ポイント2・経年劣化で崩壊したバンプラバーの補修はサスペンション専門の業者に依頼する

ショックを取り外したらリンクの洗浄とグリスアップも行いたい

リアショックを取り外したのなら、リンクやスイングアームもついでに取り外して洗浄とグリスアップを行っておくと良い。このバイクは10年以上メンテナンスを行っておらず、各部のグリスは乾ききっていた。

スイングアームとリアショックとリンクをつなぐロッカーアームには大きな力が加わるのでグリス不足のカラー表面のメッキには当たり痕が付いている。メッキが剥離するところまでは進行していないので洗浄とグリスアップで再使用できたが、さらに症状が悪化していたら部品交換が必要だ。

リアショックの性能低下やダメージを恐れるあまりにバイクに乗らないというのはまったくの筋違いで、走ったらしっかりメンテナンスすることで性能を維持していくというのがあるべき姿でしょう。

フルカウルモデルでサイドスタンドしか装備していないと、リアショックの着脱自体がとても難しい場合もあります。そのような場合でも、現状を把握するためだけでも床や地面に寝転がって車体の裏側からショックやリンク周辺の状況を確認するのはおすすめです。その上で、ブラシやウエスが届くようならショック本体やピストンロッドの汚れを拭いてゴムと金属の潤滑に使えるスプレーを吹き付けておきます。ただし過剰にスプレーするとかえって汚れが付きやすくなるので、スプレー後にショックを数回ストロークさせたらきれいなウエスでピストンロッドを拭いておきます。

センタースタンド付きのバイクや、サイドスタンドのみの車両でもエンジン下を支えられるジャッキを所有しているのなら、車体からショックを取り外して単体で洗浄、ピストンロッドへの潤滑ができれば、アブソーバーからのオイル漏れやピストンロッドの点サビなどをつぶさに観察できてさらにベターです。

また作業環境や所有工具的にリアショックを取り外せるのであれば、この機会にリンクの洗浄とグリスアップも行いたいものです。リンクの分解とメンテナンスについては別の記事にアップしてあるので参考にして頂ければ幸いです。

いずれにしても、2本ショックよりモノショックの方が性能は確実に優れています。その優位性を保つためにも、定期的なコンディションチェックとメンテナンスを行いましょう。

POINT
  • ポイント・リアショックを取り外すことができる場合は、リンクも取り外して洗浄とグリスアップを行う
 
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