1980年代の懐かし装備!!フロントセミエアフォークはイコライザーホースからのエア漏れに注意

バイクブームの到来とともに技術的にもさまざまなチャレンジがあった1980年代モデル。その代表的なものが、インナーチューブに空気を入れるエアアシスト式フロントフォークです。金属製のフォークスプリングとエア圧の良いとこ取りを目指したものの、静かに消えていったセミエアフォークを維持するには適切なエア圧が不可欠です。

技術的過渡期にあった1980年代の象徴的メカニズム

一般的なフロントフォークであれば、フォーク着脱でフロントカウルを外す必要はないが、このGPZ400Fはトップブリッジの下にイコライザーパイプが付いているため、カウルまで外した方が作業性が良い。

センタースタンドの有無にかかわらず、フロントタイヤを外す際はエンジン下を支えるジャッキが必要。ダブルクレードルフレームなので、2連パンタジャッキでダウンチューブを持ち上げる。

現代の視点からすれば技術的に未成熟だった1970~1980年代のバイクには、新たな各種メカニズムが採用されました。今では当たり前のリンク式リアサスペンションやフューエルインジェクション、デジタルメーターもこの頃に登場した技術です。

走行性能に関わる部分では、ブレーキング時の過度な姿勢変化を抑制する機械式アンチノーズダイブシステムやここで紹介するセミエア式フロントフォーク、フロント16インチタイヤやラジアルタイヤの初採用などがあります。このうちラジアルタイヤは今では当たり前の装備になっていますが、アンチノーズダイブやセミエアフォークは後世に受け継がれない消滅技術となりました。とはいえそれらの基本思想は電子制御サスペンションやABSなど新しく登場した技術によって実現、継承されているので決して間違いだったわけではありません。

フロントフォークの内部にはオイルと金属スプリング、そして大気圧と同圧の空気が入っています。柔らかいサスペンションで乗り心地を重視すれば、ハードなブレーキングでフォークが底突きし、スポーツ性能を重視して硬いスプリングを使えば通常走行での乗り心地が悪くなる。セミエア、エアアシスト式と呼ばれるフォークには、インナーチューブ内に大気圧より高い圧力を加えることで、乗り心地と操縦安定性の両方を向上させる目的がありました。

フロントフォークがストロークしてインナーチューブ内の空気室容積が減少すると、空気ばねの反発力は二次曲線的に大きくなります。これに対して金属スプリングのばね定数は多くの場合一定なので、ストロークが大きくなると空気ばねの影響度が高まります。フォークオイルの油面を上げることでインナーチューブ内の空気容積が減少するため、空気ばねの反発力を上げることができます。

しかし油面を上げすぎて、フロントフォークのストローク範囲の中で空気室がゼロになるとオイルロック状態になってそれ以上縮まなくなるので、オイル量の増加にも限界があります。そこでインナーチューブ内をあらかじめ加圧しておくことで、大きくストロークした際の反発力を確保しようというのがセミエア式の狙いです。

高荷重領域では空気ばねを積極的に利用することで、金属スプリングは比較的低荷重領域を担当することになるためバネ定数の小さい、つまり柔らかいスプリングを使用できることになります。柔らかいスプリングを使えるということは線径を細くでき、バネ下重量の軽量化にも寄与します。そのため、通常走行では小さな荷重でサスペンションが良く動き乗り心地が良く、凹凸の激しい路面やブレーキング時にフォークのストローク量が増えると空気ばねの反発力が高まり衝撃を受け止めるという理想的な性能を発揮することが期待されました。

トップブリッジ上に固定されているセパレートハンドルを取り外す。インナーチューブ最上部に見える六角穴付きボルトはトップキャップではなく、ハンドルバーを固定するためのもの。

POINT
  • ポイント1・フロントフォークの特性は、金属スプリングと空気ばねを合成した特性で機能する
  • ポイント2・セミエア式フォークは空気ばねに大気圧以上の圧力を加えることで、乗り心地の良さと踏ん張りの強さを両立した

イコライザーホースアダプターのOリングが重要

フロントタイヤとフェンダー、トップブリッジとアンダーブラケットのクランプボルトを緩めてフロントフォークを抜き下げると、円筒状のカラーと左右のインナーチューブをつなぐイコライザーパイプも同時に下がってくる。このカラーの上下に、加圧されたインナーチューブのエアを密封するOリングがセットされている。

イコライザーパイプのカラーを抜くと、インナーチューブ側面に空気穴がある。単純にイコライザーパイプを外して復元すると、ストロークするたびにインナーチューブ内の空気とフォークオイルが噴出する。エアを加えることではじめてフォークの反発力が規定通りになるため、イコライザーパイプカラーやトップキャップのOリングの機能が損なわれるとフロントフォーク自体の性能も低下する。

走行距離や使用期間でフォークオイルが劣化するのはセミエア式か否かに関わらず共通で、定期的なオイル交換が必要。ただしセミエア式は、分解前にイコライザーパイプのOリングが入手できることを確認しておいた方が良い。経年劣化で硬化したOリングは、再使用をきっかけにシール性が低下して空気が漏れ始めることもあるからだ。

1970年代末から普及し始めたセミエア、エアアシスト式フロントフォークは、ソフトな乗り心地と踏ん張りの良さがセールスポイントでした。確かに、開発時の狙いは的を射ていたかもしれません。しかし現実の世界には経年変化があります。タイヤの空気圧でも、1ヶ月で10%程度減少するという報告があり、定期的な空気圧チェックが欠かせません。

セミエア式フォークに加える圧力はだいたい0.7~0.8kg/cm2(1980年代のキロ表記で。現代のSI単位なら0.07~0.08Mpa)程度なので、タイヤの空気圧に比べれば低いですが、インナーチューブ上部のトップキャップのOリングから漏れないとは限りません。また機種によっては左右フォークの内圧を均等にするためイコライザーホースを採用していることもあります。

この場合はインナーチューブに小さな穴があり、イコライザーホースを通じて空気が行き来できるようになっていますが、イコライザーホース自体の気密性を保つためのOリングも時間の経過とともに柔軟性が低下して空気が漏れる可能性があります。さらに空気を入れるためのエアバルブも空気の出口になる可能性があります。

インナーチューブの空気室に加圧すると、わずか0.7~0.8kg/cm2であってもフロントフォークが伸びて車体前半がスッと持ち上がります。これが何を示すかというと、セミエア式フォークの金属スプリングは加圧がないと弱いということになります。空気室が大気圧と同じ圧力であってもフォークの反発力は低下しますが、もしイコライザーホースからエアが漏れる状態なら、フロントフォークがストロークしても空気ばねがまったく働かず、フロントブレーキを軽く握っただけでフォークが底突きしてしまいます。金属スプリングがあるから踏ん張るのでは?と思うでしょうが、ストローク量が多い領域では空気ばねの働きが不可欠なのです。

フロントフォークのメンテナンスではフォークオイルの交換やオイルシールのチェックを行いますが、セミエア式フォークではそれらに加えて定期的な空気圧チェックとシール性維持に重要なOリング類のケアも必要です。ストローク初期には柔らかく、奥ではしっかり踏ん張るという理想の追求によって登場したセミエア式でしたが、ダンパーやスプリングの性能向上に押されてやがて消えていきます。

インナーチューブの空気室容積の重要性を理解すると、フォークオイルの注入量が重要であることが分かるはず。注入量は容量とオイルレベルの2つの方法で規定されているが、古いオイルを排出してもフォーク内に一定量の残りがあることを考えると、インナーチューブ端から油面までのオイルレベルの方が誤差が少なくなる。このバイクの場合、容量ならアンチノーズダイブ機構が付く左フォークが247.5~252.5ml、右フォークは217.5~222.5ml。オイルレベルは左右とも440±2mmとなっている。

POINT
  • ポイント1・セミエア式フォークは加圧によってサスペンションの性能を発揮するので、エアを漏らさないためのケアが必要
  • ポイント2・イコライザーパイプ部分からのエア漏れはセミエア式フォークの致命傷となる

エアアシストは無くてもインナーチューブ内の空気室は重要

インナーチューブのトップキャップはネジ式ではなく、インナーチューブ内に押し込んでCクリップで固定する。キャップ根元のOリングが摩耗、硬化しているとインナーチューブ内の圧力をキープできないので、劣化の有無にかかわらず新品に交換する。

イコライザーパイプのカラー上下のOリングを新品に交換して、アンダーブラケットに通したインナーチューブにセットする。イコライザーパイプを曲げたりOリングにストレスを与えないよう、左右のカラーにインナーチューブを均等に通しながらトップブリッジにセットする。イコライザーパイプのカラーがインナーチューブのCクリップに接触したら所定の位置に到達した合図となる。

現在でも生き残っているセミエア式フロントフォーク装着車の性能を発揮させるには、何はともあれ加圧した空気を漏らさないための対策が重要です。画像で紹介しているカワサキGPZ400Fは、上下にOリングがセットされたカラーがインナーチューブに挿入されており、そのカラーに接続されたイコライザーパイプで左右フォークの内圧をバランスさせています。Oリングに柔軟性があり、インナーチューブのトップキャップのOリングも健全な間は標準値0.7kg/cm2の空気ばね圧が維持されますが、エアバルブから加圧しても短期間で抜けてしまう=大気圧に戻ってしまう時は対策が必要です。

1980年代の機種になると純正部品が販売終了になっている場合もあるので心配ですが、Oリング類の新品交換が唯一無二の回復方法です。Oリングの入手が困難な場合にエアアシストをキャンセルするには、金属スプリングのバネレートをアップして、インナーチューブの空気穴を塞ぐ必要があります。スプリングを交換する際にどれほどのバネ定数のスプリングを選択すればよいかは簡単には導き出せませんが、例えば同じような車格の他機種でセミエア式ではないフォークからスプリングを流用するのはひとつの手段です。その場合、先述したようにインナーチューブの空気穴を完全に塞がないとストロークのたびに空気室のエアが抜けて空気ばねが全く働かないため注意が必要です。こうしたトラブルをきっかけにサスペンションやホイールなどのカスタムを行うオーナーも少なからずいるようですが、ノーマル状態で乗り続けたいというならOリング類の確保は必須です。

一方で、エアアシストを持たないフロントフォークでも空気室の圧力やコンディションは重要です。フォークオイル上面からトップキャップまでの距離は一般的にオイルレベルや油面高さと呼ばれています。フォークオイル注入時にインナーチューブ端面から油面までの距離を測定して合わせて、スプリングをセットしたインナーチューブを伸ばした状態でトップキャップを固定することで、空気室の容積が決まります。

この状態でフロントフォークをストロークさせると空気室が減少して空気ばねの反発力が上昇していきますが、トップキャップのOリングの気密性が低下して空気室内の容積が減少するとフロントフォークの特性が変化してしまいます。特性変化でありがちなのは、トランポでバイクを運搬する機会が多い場合です。タイダウンベルトなどでフロントフォークを長時間縮めた状態にしておくと、インナーチューブ内の空気が圧縮されることでトップキャップのOリングから漏れることがあります。するとタイダウンベルトを外しても空気室が大気圧以下となり、いわゆるフォークが入って自由長が短い状態になってしまいます。

このような場合には一度トップキャップを緩めて、空気室を大気圧に戻してやることが必要です。キャップの上部にエアバルブが付いている機種は、前輪を浮かせた状態でバルブを押して空気を入れることで負圧から大気圧に戻ります。

現在では過去の技術となったエアアシスト式フロントフォークですが、当時の性能を最大限に引き出すには適切な空気圧管理が重要であることを理解しておきましょう。

インナーチューブに空気を入れるエアバルブはイコライザーパイプの左側カラーにあり、標準空気圧は0.7kg/cm2となっている。エアーコンプレッサーでは一気に加圧してしまうおそれがあるので、手動式の空気入れで少しずつ加圧する。わずか0.7kg/cm2でもフロントフォークが伸びて車体の前部が持ち上がる。

若干高めに注入して、エアを抜きながら標準値に合わせていく。加圧タイプではないフロントフォークの場合、前輪を地面から浮かせた状態でトップキャップを緩めたり、キャップ上部のエアバルブのムシを押してインナーチューブ内圧を大気圧と同じにする。

POINT
  • ポイント1・セミエア式フォークでなくても、インナーチューブの空気室圧力がサスペンション性能に大きく影響する
  • ポイント2・フォークが縮まった状態で空気室のエアが抜けてしまったら、フォークを伸ばしてキャップを開けるかエアバルブを開いて大気圧に戻す
 
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