縁石擦ってガリッ、段差乗り上げゴツッ。凹ったホイールは修理再生!!

不運にも転倒してしまい、フレームの一部が凹ってしまったとか、サイドスタンドの付け根を縁石にぶつけて、フレームパイプに食い込み歪んでしまった、もっと酷い実例では、追突でフロントフォークが曲がり、ステアリングのキャスター角が立ってしまった!?ヘッドパイプが歪んでしまった!?などなどのトラブルもある。実は、フレームトラブルに関する悩みは、想像以上に多いのが現実だろう。そのようなフレームの補修や修正作業は、経験値がものを言う。したがって、サンデーメカニックには手出しできない分野でもある。そんなときにお願いしたのが、その道のプロフェッショナル。フレームに限らず、歪んでしまったホイールに関しても、プロに相談してみよう。

ガリキズの補修は溶接肉盛りから

ホイールペイントを剥がしてアルミ地肌を出したらシンナーで完全脱脂。その後、リム外周のガリ凹部分を溶接盛り。浅いキズのときには何度も盛り直すことなく、溶接も一度に決める。設定が難しい溶接だが、アルゴン溶接機の使い方も手慣れたものだ。

キズ直しの前に歪み直しから開始

単純なガリキズだけではなく、ホイールのバランス確認をするとキズ部分の周辺が歪んでいることもわかった。溶接部分の微修正前に、まずは歪み修正が優先なため、ホイール修正から作業進行。現在は無い旧オモカワ産業製ホイール修正機で僅かに歪んでいた部分の押し戻す作業を開始。まずは周辺機器の段取りから始める。単に患部を押すだけだと、他の部分に影響が出てしまうため、受け側の段取りも必要なのだ。

ダイヤルゲージで確認しながら

浮き上がりを防止しながら歪みがある方向に突っ張りを入れ、さらに歪み患部周辺をガスバーナーで炙りながら曲がり補正。様々な複合作業は完成形を想像できる職人だからこそできるワザでもある。溶接肉盛りした患部周辺をダイヤルゲージで再度測定し、戻りきっていない部分を大型ゴムハンマーでゴンッと一撃。鍛冶屋さんのような作業でもあるが、経験が成すワザなのだ。ゴムハンマーのゴンッが効果ありで、補修前には他の部分と比べて0.38mmほど触れていたが、ゴムハンで一撃後の振れはなんと0.03mm。これなら新品ホイールと大差は無い。

振れ取り後に溶接箇所を切削補修

溶接肉盛りの量が少なかったのでサンダーによる手仕上げにてリム形状を再現する。肉盛り量が多く、しかも特殊形状のリムエッジのときには、大型旋盤を利用しておおよそ切削加工後にハンドメイド仕上げに入る。利用したディスクグラインダーは、グリーンディスクで粗削りを行い、フラップディスクの120~150番前後で仕上げ削りを行っていく。

一気に削るのではなく単面ずつ切削

ディスクサンダーで削るときには、単面(一面)ずつ削って仕上げていく。一度にR形状に仕上げようとすると削りすぎてしまうことが多いらしい。まずは、ホイールリムの幅方向に飛び出した溶接ビードを削り、リムサイドの形状作りから始める。



ディスクグラインダーで粗削り、フラップディスクで仕上げ削りを行い、最終仕上げは600~800番のサンドペーパーで手磨き仕上げ。カスタムペイントやホイールの色変更を行う際には仕上げ後にサンドブラスト処理で旧ペイントを剥がすが、今回は純正色のまま、部分的にペイント補修を行う。

補修部分以外はマスキング


アルミ地肌にはペイントの食い付きが今ひとつなので、マスキング後に密着剤をスプレーして乾燥を待った。密着剤でペイント前処理をしないとタイヤ交換時にペイントが剥がれてしまうことがあるそうだ。密着剤が乾燥したらペイント補修部分だけ露出して、ホイール全体をマスキングする。手慣れた段取りで作業が進んでいく。まさしく職人業だ。

色合わせで素晴らしい仕上がりに

自然光の外光で色合わせを行った。単純な黒ではなくガンメタ系で細かなメタリック粒子が入っている。何度か色調整を繰り返し行ってから仕上げられた。日陰で見たときと晴天の空の下で見たときでは、色合いや雰囲気がまるで違って見えるのがこのホイールカラーの特徴。素晴らしい仕上がりに満足である。

ホイール修正機もレストア

旧オモカワ産業製ホイール修正機には様々なオプション周辺機器があるそうだ。今は無きそれら周辺機器も自社製作しているのが、今回の作業をお願いした静岡県掛川市のシャシテックだ。この修正機はオーバーホール済の商品。常時在庫があるわけではないが、バイク用のホイールの修正に必要な周辺部品もセットになったオーバーホール済商品。「修正機本体はあるけど周辺機器が無くて……」との問合せもあるそうだ。

POINT
  • ポイント1・ ホイールのキズだけではなく転倒時には歪みが発生すると考えられるので、スタンドやバランサーでホイール点検してみよう
  • ポイント2・ ホイール修正や仕上げはその道のプロに依頼することができる

バイク用アルミホイールが登場したのは70年代前半で、70年代中頃になると欧米のコンストラクターから様々なデザインのキャストホイールが登場した。70年代後半になると、日本のバイクメーカーでもキャストホイールを開発。1978年には、アルミ製キャストホイールの標準装備が解禁され、ヤマハ、スズキ、カワサキは、独自のデザインを採用したキャストホイールモデルをラインナップ。唯一、ホンダだけが、アルミリムにアルミプレス製スポークを組み合わせたコムスターホイール車をラインナップした。しかし、そのホンダも80年代中頃には、アルミ鋳造製ホイールを市販車に採用している。

キャストホイールが普及し始めた当時は、靭性が低いアルミ素材を採用していたせいか、歪み部分をプレスで押したときにスプリングバックが少なく(反発による戻りが少ない)、押した分だけ、行ったきりになってしまうケースが多かった。80年代後半、レーサーレプリカ全盛時代の部品は、逆に材質が硬く、歪み修正するのが大変なホイールもあるらしい。このように、普通では知り得ないノウハウによって、走りの印象が大きく変化するのがホイールの特徴でもある。ホイール修正職人さんは、そんな特性を理解しながら修理再生しなければ、好結果を得られないことも多いそうだ。

生産技術や素材のチョイスによって、現代のアルミ製ホイールは、硬いながらも比較的修正しやすい傾向にあるそうだ。今回、ホイール修正作業をお願いしたシャシテックの落合代表によれば、鍛造削り出しの新品ホイールのペイント依頼があったので、興味本位で作業前にリムの振れをダイヤルゲージで測定してみたそうだ。すると、その振れ幅は0.15mmあったらしい。バイクメーカー純正の新品ホイールを測定した経験は無いそうだが、サービスマニュアルを見る限り、各メーカーとも意外に「振れの許容範囲は大きくしてある?」とも思える数値を明示していることが多い。

ここで修正しているホイールは、走行中の転倒によって縁石に載り上げつつ、リムサイドをガリッと削ってしまっていた。修正後のデータでは、振れ幅が0.03mmになった。サービスマニュアルのデータに照らし合わせれば、十分合格の数値である。


取材協力/シャシテック:http://www.chassistech.jp

 
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