見つからない部品は「ワンオフ製作依頼」or「DIY製作」で入手可能!?

旧車好きかつバイクいじりが大好きなサンデーメカニックやサンメカレストアラーには興味深い内容かも知れないが、高性能な最新モデルが大好きで、バイクライフを楽しんでいるライダーにとって、このようなリポートは興味の対象外かも知れない。旧いバイクをいじる楽しさを知らない人、興味がない者にとって、旧車のレストアなど想定外だろう。しかし、ここでは敢えて、フルレストア過程の一部をご覧頂こうと思う。もはやビンテージカテゴリーと呼ぶに相応しい、60年代初頭に登場したヤマハ2ストモデルのフルレストアだが、こんな作業=実体験こそが、経験の積み重ねになるのだ。

削りだしでワンオフ製作

タイトルの画像は、大型モデルに多い「スイングアームピボットの設計様式」だが、60年代初頭以前には、原付2種モデルでも、大型車と同じような設計がなされているモデルもあった。スーパーカブの登場によって、様々な部品を効率良く生産し、コストダウンすることが、ニューモデル開発に於いては命題となっている。当時すでに、原付クラスのモデルは、焼き付け式ラバーダンパーをスイングアームピボットに圧入し、ゴムのねじれで作動性を確保するシステムを採用していた。

フルレストア進行中のこのモデルは、1962年型のヤマハYA5。このモデルが設計された当時は、実用車であり商用車でもあった同モデルだが、実は「スポーツツーリング」カテゴリーを好むライダー向けのモデルでもあった。そんな経緯があったからなのか、同モデルの車体構成部品には「ハンドリングのヤマハ」と呼ばれた当時のマシン開発の片鱗をうかがい知ることができる。

車体のペイントを終え、スイングアームを組み込む際に、その締結ポイントとなるスイングアームピボットブッシュが入手できなかったため(旧車のレストアでは当たり前のあるあるです)、ここでは、耐摩耗性が高い「樹脂のムク棒」、材質的には通称「ジュラコン」と呼ばれる黒色樹脂棒を利用し、ピボットブッシュを削りだし製作することにした。

棒の削り出しには旋盤を利用


WEB通販で購入したジュラコンを旋盤のチャックにクランプし、回転する素材に刃具を当てることで、思い通りの寸法に削り出すのが「旋盤加工」である。見た目や切削材料が違うが、木製工芸品の「こけし」を削り出すのと同じような方法でスイングアームピボットブッシュを削りだし製作した。ぼく自身、バイクに乗ること、走らせることが大好きだったが、現在はバイクいじりやメンテナンス実践の方が大好きで、ガレージ設備を充実させている。ぼくを含め、そんなベテランライダーが増えつつある昨今だが、ガレージ=自分専用のスペースさえ確保できれば、部品作り用の各種汎用工作機械を買い揃えることも夢ではない。最新の大型バイクを新車購入するだけの予算があるなら、動力電源(200V)の引き込みから中古の汎用旋盤、中古の汎用フライス盤を始め、エアーコンプレッサーなどの機器を買い揃えることもできるはずだ。


樹脂製ピボットブッシュの内側を作動するのがカラーだが、この摺動部分にガタがあってはならない。圧入後、スムーズに作動することを前提に内径切削を仕上げる。削り出しブッシュ外径は、スイングアーム側の穴に圧入するため、穴の径よりも僅か100分の数ミリほど太く削り出さなくてはいけない。これが完成したブッシュシュとその内側で作動する金属製のカラー(ヤマハ純正部品)である。カラー外周にはグリス溜まりがスパイラル状に加工されている。

圧入固定を接着剤の併用で強固に


ピボットブッシュを圧入する際は、滑りを良くする一方、乾燥後の固着を確実に行える強力接着剤を併用した。圧入公差が正しければ、走行中にブッシュが回ってしまったり抜け出てしまうことは無いが、ここでは、接着剤を併用する理由がもうひとつある。それは、圧入時のブッシュを滑りやすくするためだ。エンジンなどにオイルシールを圧入したことがある経験者なら御理解頂けると思うが、この接着剤が樹脂と金属の摺動性を高め、スムーズな圧入を可能としているのだ。圧入時はハンマーで叩いたりすることなく、このような部品の場合、上記画像のように大型万力を使ってパーツ同士を挟み、万力を閉じることで押し込むのがベストだろう。

カラーはガタなくスムーズに回転

ブッシュを圧入したらカラーを差し込んでみよう。この際に、仮にガタがあってはブッシュ製作の失敗である。逆に、カラーを差し込めないときは、内径公差設定のミスだと考え、リーマを通してカラー外径に合わせてブッシュ内径を仕上げ直そう。微妙な寸法調整が必要なときには、アジャストリーマと呼ばれる微妙な寸法調整可能なリーマを利用するのが良い。

グリス逃げを防止するキャップとOリング

ピボットシャフトに取り付けられているグリスニップルから専用ガンでグリスを定期的に押込み、カラーとブッシュの潤滑性を高めなくてはいけない。押込んだグリスが流れ出ないように保持するのが、左右のピボットをそれぞれ封じるキャップワッシャーとOリングである。このOリングが切れていたり、摩耗していてはグリスを保持できない。キャップワッシャーなどの金属部品はすべて再ユニクロメッキでキレイに仕上げてある。こんな部分までしっかりやってこそフルレストアなのだ。


POINT
  • ポイント1・入手できない部品は他機種用純正部品の流用や加工で使えるように改造することもできる
  • ポイント2・スイングアームのピボットブッシュや自己潤滑性が高いジュラコンや砲金素材のメタルから削り出すことで自作することができる
  • ポイント3・ 自作した部品がしっかり機能しているか?ここではスイングアームをフレームへ組み込み、作動性やガタの有無を確認した

メーカー純正部品の供給は、対象モデルの生産中止から10年もすれば経過すれば、販売中止の部品が目立つようになるのが一方的だ。しかし、人気モデルであり、補修部品の供給が必要不可欠だと考えられるモデルの場合は(メーカー自身がそう考える場合)、10年を超えようが主要部品は供給されるケースが多い。バイクメーカーではなく、アフターパーツメーカーの中には、特定の人気モデル用パーツを徹底的に生産販売している例もある。商売が成立するから当然のお話だと思うが、国内のバイク文化が成熟した今となっては、メーカーの垣根を越え「旧車部品の製造販売を管理する組織」があってもおかしくないと思うが、なかなか思い通りにならないのが現実のようだ。

ここでは、販売中止になり、もはや入手困難なスイングアームピボットブッシュをDIY製作しているが(販売中止が当たり前な60年前のモデル)、仮に円筒状のブッシュやカラーであれば、旋盤加工で部品は自作することができる。「大は小を兼ねる」といった発想で大型旋盤を利用し製作しているが(この旋盤とて機械産業的には小型品)、現在はAC100Vの家庭用電源で使える高性能な卓上旋盤も販売されているので、今回のようなブッシュの自作は決して難しくない。

原付クラスの実用モデルと言えば、スイングアームピボットには「焼き付けゴムブッシュとカラーが圧入」されていると相場は決っている。しかし、このモデルを完全バラバラに分解し、フルレストアを進めていく途中には、様々なパートで本格的な作り込みを採用していることに気がついた。フロントフォークの内部構造もそうだし、まさにここでリポートするスイングアームピボットもそうだった。常識的にはコストダウンの焼き付けゴムブッシュだろう。しかしヤマハYA5は、しっかりした作動性を約束してくれるメタルカラーとブッシュが組み込まれていたのだ(純正部品は強化プラスチックと当時は呼ばれたベークライト製ブッシュを採用)。現代ではまず考えられない本格的な作り込みである。

そんな旧車に振れることで、当時、バイクメーカーがこのモデルをどのように位置づけし、設計開発を進めてきたのか?当時の開発思想を、少なからず知ることができる意味でも、旧車いじりを趣味にしフルレストアを楽しむことは、実に意義あることだと考えている。

フルレストアは自己満足の世界

ヤマハが2ストエンジンモデルしか作らず、しかも「オートルーブ式」と呼ばれるオイルポンプを装備していない時代に開発販売されたのがヤマハYA5。あの「赤とんぼ」と呼ばれたヤマハ初の量産モデル=YA1をルーツに持つ2スト125ccシリーズモデルだ。もはや空冷2ストエンジン自体が絶滅種だが、この時代の2ストモデルは、ガソリン給油時にエンジンオイルを混ぜて給油する「混合ガソリン仕様車」。ガソリン給油だけで走るとエンジンが焼き付いてしまう。ヤマハ製の量産エンジンへ「ロータリーディスクバルブ吸入方式」を初採用するなど、さまざまな試みがなされたモデル、それがYA5だった。実用商用車のYA5に対して、ダブルシートとホワイトウォールタイヤを標準装備したのが、スポーツツーリングモデルのYA5デラックスだった。


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