新品部品があるなら迷わず交換。部品が無いときには最善を目指す!!

バイクで気持ち良く走るためには様々な機能がスムーズに動くのはもちろん、ライダーとバイクがハイレベルで「意思の疎通」をしてこそ走りを楽しむことができる。中でも極めて重要なのが、各種機能を作動させるケーブル=ワイヤーのコンディションだろう。新品部品があるのなら交換、無いのなら製作、ボロくてもメーカー純正ケーブルにこだわりたいのなら、確かな作動性を得るための修復が必要不可欠になる。ここでは、ケーススタディで各種ケーブルの補修にチャレンジしてみよう。

ケーブルアウターの切れやクセを修復

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現代のスロットルケーブルは、車体と擦れる部分のアウターが2重構造になっているが、昔のケーブルはメーカー純正部品でも単純な構造が多かった。また、メーカーが意図した部分とは違う場所にダメージが入ってしまうこともある。そんなときにはアウターケーブルを補強するチューブを差し込み接着補修。もしくは、厚手の熱収縮チューブを補強したい部分まで通してから、ヒートガンでチューブを温めで収縮させ、アウターケーブルを補強することもできる。

アウターはそのままにインナーのみ交換

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スロットルパイプの分解洗浄メンテナンス時に、インナーケーブルのほつれを発見。こんな時には、アウターケーブルはそのままに、インナーケーブルのみしなやかで伸びにくい現代の部品に交換することもできる。今回はステンレスケーブルやタイコ素材を使ってインナーケーブルを自作した。

「寸法比率の再現」が極めて重要

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切れかかったケーブルを抜き取ってしまう前にインナー×アウターケーブルの寸法を確実に測定しておこう。この比率を間違えてしまうと後々面倒なことになってしまうからだ。例えば、インナーケーブルが短いとアジャスター金具の範囲内で遊び調整ができず、スロットルならアイドリング維持ができず、最悪でエンジン回転が全開に!! そんなことになってしまう。それを回避するためにも現状のケーブル遊び量を確認しておこう。特に、アウターケーブルのエンド金具から巻き取りタイコ端部までの寸法を厳密に測定し、測定寸法を反映しつつ新規インナーケーブルを製作する。インナーケーブルのカット時には、ニッパではなくワイヤーカッターを利用すると、ワイヤー端部がホツれにくい。

タイコのハンダは段取りが重要

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測定寸法通りにカットしたら、タイコ(ここではキャブ側のスリーブ)にワイヤーを通して、ワイヤー先端をニッパでつまんで、敢えてエンドのヨリが開くように(ホツれるように)する。次に、太鼓スリーブのエンドとワイヤーエンドが一致するように、ワイヤーを慎重に戻そう。失敗するとスリーブから抜けてしまうので、とにかく慎重な作業を心がける。スリーブエンドにワイヤーエンドを合わせたら、ハンダ作業の前に液状ハンダフラックスをタイコ+ワイヤー(10mm程度)に塗布。容器に入れたフラックスにケーブルエンドを沈めると確実に作業進行できる。

ハンダポッドを利用しジジュッ

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ハンダポッドと呼ばれるハンダを溶かす電気器具を利用したが、ゼリー作り用の金属容器にカットしたハンダを入れ、ガスバーナーでゼリー容器を炙ることでも似たような作業は可能だ。作業時には容器が転ばないようにしっかり段取りしてから作業実践しなくてはいけない。液状ハンダフラックス(ステンレス用)にタイコ+ワイヤーを浸したら、そのままハンダポッドに沈める。ジジュッとなるが、溶けたハンダがしっかり染み込んだ頃合いにワイヤーを引き上げで硬めのオイル(ギヤオイル)に浸す。この手順でタイコのハンダ固定は完了だが、作業を繰り返すことでコツを覚えることができるはずだ。

POINT
  • ポイント1・アウターケーブルの擦れやダメージは厚めの収縮チューブで補修補強することができる
  • ポイント2・ アウターケーブルのコンディションが良さそうでインナーケーブルが切れそうなときは、インナーを交換することで修理可能
  • ポイント3・ ハンダ固定に失敗するワイヤーが抜けてしまうので、固定後は万力にタイコをクランプしてワイヤーを引っ張り、しっかり固定されているか要確認

現代のバイクなら純正部品を難なく購入することができる。しかし、これが低年式モデルだと、決してそうはいかないものだ。低年式モデルの定義が、果たしてどれほどなのかはライダー個々の感性で異なると思うが、もはや90年代に登場した人気モデルでも「メーカー純正部品の在庫」はかなり減っている。「えっ!?90年代モデルでも!?」なんて思っている方が数多いと思うが、2000年モデルでもすでに20年以上経過していると考えれば、90年代のモデルは十分な旧車。70年代以前のモデルに至っては、もはやビンテージと呼ばれるのが現実らしい。

我々バイクオーナーにとっては、年式や時間の経過など関係なく、単純に魅力的なモデルに乗り続けたいもの。しかしメーカーにとっては、このスミワケが以前と比べて、より明確になっている。実はここ数年で、販売中止やゴソウダンと呼ばれる、事実上の廃番部品が数多いのだ。

そんな現実の中、愛車を末永く楽しみたいライダーやサンデーメカニック諸氏へは「純正補修部品のストック」を強くお勧めしたい。その一例が各種ケーブル(ワイヤー)類だろう。人気モデルなら、サードパーティーのスペシャルパーツを入手可能なケースもある。しかし、すべてのモデルに社外部品があるワケではなく、自分にとっては愛すべき人気モデルであっても、他人の評価が必ずしもそうではないことが多い。過去に様々なモデルのフルレストアやセミレストアを担当してきたが、意外と部品探しに困ってしまうのが、各種ケーブルでもあるのだ。

ここでは、アウターケーブルへのサポート追加や切れかかったインナーケーブルの補修再生を実践しているが、何らかの不具合に気が付いたときには、何よりも早めに対処することが部品を延命するためには極めて重要である。作業としてはかなり地味な部類に入るが、例えばアウターケーブルを補強したことで直接的なアウター擦れは無くなり、インナーケーブルには現代的かつしなやかなステンレス製ワイヤーを使ったことで、スロットルの操作感は圧倒的に軽くなり、戻りもスムーズになった。こんな作業の重要性を知ることで、愛車ライフをより充実したものにしていただきたい。

 
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