異音が出ていないのにマフラーから白煙が止まらない!!エンジンオイルが燃えるオイル上がりとは?

2ストエンジンはガソリンとエンジンオイルを同時に燃やしますが、4ストは燃焼室内にオイルが混ざらないよう設計されています。しかし新車時はともかく、走行距離が増えて年月を経ることで各部が摩耗してオイルが燃えることもあります。異音が出ているわけではないのに走行中にマフラーから白煙が出続ける場合、オイル上がりが原因かも知れません

オイル上がりとオイル下がりの見分け方

002-12.jpg エンジンが暖まっても空ぶかしすると白煙が収まらない。走行負荷の無い状態で回転変動が大きい時にはより顕著に吐くが、通常走行時にフル加速などをしなければこれほど大げさではないので、実際のところあまり気にしていなかった。

003-13.jpg コンプレッションゲージでの測定はどのシリンダーも下限ギリギリで、長く乗るつもりなら本格的なチェックが必要な状態だった。シリンダーヘッドはバルブステムシールを交換し、シリンダーを外してさらに確認。

ピストンとシリンダー、コンロッドとクランクシャフト、カムとタペットなどなど、エンジン内部の摺動、回転部分には潤滑のためのエンジンオイルが不可欠です。一方で混合気が爆発的燃焼を繰り返す燃焼室内へのエンジンオイル浸入は防がなくてはなりません。というのは4ストロークエンジンの話で、2ストは異なります。

2ストロークエンジンはクランクケース内で混合気を一旦圧縮してから燃焼室に送り込むため、クランクシャフトやコンロッド、シリンダーとピストンを潤滑するオイルを4ストのようにケース内に溜めておけません。そのため外部からオイルポンプによって2ストオイル(エンジンオイル)をクランクケースに送り込み、クランクシャフトやコンロッド周辺を混合気と一緒に通過する際に潤滑を行い、最後は燃焼室で燃えて排出されます。4ストエンジンの排気ガスに対して2ストのそれが白煙になるのは、排気ガスにとともに燃えたエンジンオイルも排出されるからです。

2スト車のエンジンオイルは、エンジン内部の潤滑とともに燃焼するよう設計されていますが、4スト用オイルは潤滑だけが目的で燃焼は想定されていません。クランクケース内やシリンダーヘッドのカムシャフト周りは常に多量のオイルが循環していますが、そのオイルを燃焼室に入れないために機能しているのがバルブステムシールとピストンリングです。

バルブステムシールは4ストエンジン固有の部品で、吸排気バルブが存在しない2ストにはありません。カムシャフトに押されて開閉するバルブの軸=ステムに密着するゴム製のステムシールは、伸縮するフロントフォーク内部のオイルを漏らさないオイルシールと同様に、シリンダーヘッド潤滑用のオイルを燃焼室に入れない働きをしています。

これに対してピストンリングは4ストでも2ストでも使用されており、燃焼室で混合気が燃焼した際の圧力がクランクケース内に漏れて逃げるのを防ぎながら、シリンダーとピストン間を潤滑するエンジンオイルが燃焼室に入らないように掻き落としています。

4ストエンジンにおけるバルブステムシールとピストンリングの機能を理解すれば、4ストエンジンのマフラーから白煙を吐き出した際の原因もある程度想定できるようになります。

経年劣化による硬化やバルブガイドから抜けてしまうトラブルなどにより、ステムシールの機能が損なわれた場合、シリンダーヘッド内のオイルがバルブステムを伝って燃焼室に流れ込んで燃焼します。これがオイル下がりです。一般的にエンジン始動時に白煙が出る時はオイル下がりが疑わしいとされています。

これはエンジン停止時に吸気バルブのバルブガイド周辺に溜まったエンジンオイルが、始動時の負圧と共に燃焼室に吸い込まれるためです。シリンダーヘッド内部のデザインによっても異なりますが、オイルが連続的に循環する運転状態でバルブガイドがオイル溜まりに浸らなければ、始動からしばらく後には白煙は減少します。

ピストンリングに問題が生じた場合、シリンダーとピストンを潤滑するエンジンオイルが掻き落とされず運転中に常時燃焼室に入ってしまうため、走行中に常に白煙が出続けます。これがオイル上がりの典型的な症状です。

POINT
  • ポイント1・2ストロークエンジンと異なり4ストエンジンのオイルは燃焼室に入らない
  • ポイント2・4スト車のマフラーからオイル由来の白煙が出る場合、オイル上がりとオイル下がりの2つの原因が考えられる

ピストンリング外周の摩耗だけでなく張力低下が原因になることもある

004-12.jpg ホーニングのクロスハッチは消滅気味だが、シリンダーは樽型に摩耗しているわけでもなく大きな傷もない。こちら側は年式相応に見える。

006-9.jpg 4個のピストンは均等にかぶり気味だが、付着したカーボンが湿り気味なのがオイルが混ざっている証拠。汚れ方が揃っているところから、リングの問題は1カ所だけでないことも想定できる。

暖機が終わった後も走行中にずっとマフラーからオイル臭い白煙が出る場合、オイル上がりが疑わしくなります。シリンダーから燃焼室にオイルが上がってしまう原因としては、ピストンやシリンダーの摩耗によるピストンクリアランスの拡大やピストンリングの摩耗が考えられます。このうちピストンやシリンダーが摩耗した場合、ピストンの打音など機械的な異音を伴うことがあり、ユーザーもエンジン音が明らかに変わったという自覚症状がある場合もあります。

対してピストンリングに問題が生じた場合、それによって異音が発生しないこともあります。エンジンから壊れたような音が出ていないのに白煙だけが出る際は、ピストンリングに原因があるかもしれません。

単気筒エンジンなら原因となるシリンダーは明白ですが、2気筒以上であればコンプレッションゲージで圧縮圧力を測定することで、複数のシリンダーの一カ所でトラブルが起きているのか、それそも全体的にダメなのかが分かります。特定のシリンダーだけ極端にコンプレッションが落ち込んでいるなら、そのシリンダーのピストンリングが破損しているかもしれません。

ピストンリングの機能不全として真っ先に考えられるのが、シリンダー内壁と接触しているリング外周の摩耗です。リングとシリンダーの接触部分はエンジンオイルによって潤滑されていますが、長期間に渡ってオイル交換を怠ったせいで粘度低下や油膜強度の低下が発生、摩耗が進行してしまうことがあります。これを防ぐには定期的なエンジンオイル交換が最も効果的です。

リングの摩耗はメンテナンスに関わる面もありますが、リング自体の問題で張力が低下してオイル上がりを起こす場合もあります。ピストンのリング溝に収まったピストンリングは、適切な張力でシリンダー内壁に押しつけられることで気密性を保っています。しかし経年変化や素材の問題により張力が低下し、シリンダーへの密着度が悪くなりオイルを掻き落としきれなくなることがあります。混合気が燃焼室で爆発的に膨張すると、その際に発生した強い圧力はピストンを押し下げると同時にピストンリング溝にも回り込み、ピストンリングをシリンダーに押しつける力となります。それでもリング自体の張力が低下するとオイル上がりを許してしまうのです。

さらに長期間乗らずに不動状態にあったエンジンでは、ピストンリング溝の中でリングが固着して、充分な張力を発揮できなくなることでオイル上がりを起こすこともあります。

POINT
  • ポイント1・シリンダーとピストンの隙間にあるオイルを掻き落とす能力や効率が低下することでオイル上がりが発生する
  • ポイント2・ピストンリングの合い口隙間の拡大や張力低下、リング溝内での固着がオイル上がりの三大要素

シリンダーにピストンリングを挿入して合い口隙間を測定すれば一目瞭然

007-7.jpg トップリングとセカンドリングに違和感はないが、3ピース構造のオイルリングがリング溝にはまり込んだままで張力不足のように見える。上下の薄いサイドリングに挟まれたスペーサーは、本来サイドリングをシリンダーに押しつけるスプリングの役目をしているが、外周を指でつかむとまったく反発力なくリング溝に沈み込んでしまう。

008-5.jpg ピストンから外したリングをシリンダーに挿入すると、合い口隙間が明らかに大きすぎる。サービスマニュアルでは0.7mmが使用限度だが、到底それどころではない。これだけギャップが広いと、ピストン側面に吹き抜けたブローバイガスが付着するものだが、オイルリングから下は意外なほどきれいなのが不思議。ただ、これでは再使用できないのでピストンリングは要交換。

オイル上がりを起こしたエンジン向けに、オイル消費量を軽減させる効果を謳ったケミカルも存在します。強い油膜によってシリンダーとピストンの気密性を高めてオイル上がりを軽減させる効果があるようですが、原因がピストンリングの摩耗や張力低下などの場合、根本的な治療方法はリング交換しかありません。同時にピストンクリアランスの測定も行い、必要ならばピストン交換も行います。こうなってしまうと、エンジンメンテナンスの中では一大事です。

ここで紹介するカワサキZ1000J改は走行中の白煙が顕著で、ピストンリングを確認したところどういうわけかトップリングの合い口がミリ単位まで広がっていました。サービスマニュアル上の標準値は0.20~0.40mmで、上限でも0.7mmとなっているのでまったくの問題外です。

さらに3ピース構造のオイルリングのサイドレールは、そのほとんどがリング溝に埋まったままになっていました。固着はしておらず溝の中をスムーズに回転するものの、波状のスペーサーがサイドレールを押し出しておらず、オイルを充分に掻き落とすことができなかったようです。ちなみに、スペーサーをリング溝に組み込む際に合い口が重なり合ってしまうとサイドレールが入りづらく、端部が重なることでスペーサーの直径が小さくなり、サイドレールをシリンダーに押しつける張力が低下する原因になります。

今回の事例ではピストンとシリンダーのクリアランスは適正で、合い口隙間の拡大や張力低下などリング側の問題が重なったことがオイル上がりの原因となっていました。合い口隙間の拡大に関しては、突然数ミリ単位にまで広がることはなく、オイル交換をきっかけに白煙が顕著になったことから想像すると、以前はオイル上がりを少しでも目立たせないように高粘度のエンジンオイルが入っていたのかも知れません。

ピストンリングに限らず、エンジン内部の消耗や摩耗は徐々に進行していきます。中には部品の素材が原因で発生する特徴的な事象もあり、そのような場合はユーザーには分からないし対処ができません。しかし日常的なメンテナンスを怠れば、いつの日かツケが回ってくるかも知れません。ピストンリング摩耗の最大の原因はオイル管理の悪さであることは確かなので、遙か先のことだから大丈夫だと過信せず必要なメンテナンスを適切に行うことが重要です。

POINT
  • ポイント1・コンプレッションゲージを用いた圧縮測定でもピストンリング関連のトラブルが想定できるが、確定するにはリング単品のチェックが必要
  • ポイント2・ピストンリングが摩耗する速度は緩やかだが、リングとシリンダーの潤滑状態を良好に保つためにはエンジンオイル管理が重要
 
今回紹介した製品はこちら
 
関連キーワード
20210625_garage_sale_point_336_280.png
車種に関連した記事
エンジンに関連した記事