ヤマハSRのクランクシャフトは分解修理が可能な組み立て式を採用!!

ICBM®技術の展開で「減らないメッキシリンダー」を商品化することに成功。長年愛し続けてきた愛車家ヤマハSRオーナー達に、ひとつの提案を推し進めているのがiBこと井上ボーリングである。ヤマハSR400と言えば、ファイナルモデルが登場したことで、1978年の発売開始から遂に生産中止となった。中古車市場では、まだまだ数多くのSRシリーズが流通しているが、今後も末永く、気持ち良く走り続けて行きたいなら、減らないメッキシリンダーのSR-ICBM®の採用と、組み立て式クランクシャフトのオーバーホールは、SRオーナーにとって気になる内燃機メンテナンスである。ここでは、エンジンフィールに少なからず影響を及ぼす、クランクシャフトのオーバーホール風景をご覧頂こう。

単品でも購入可能なクランクシャフトのショートパーツ

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これがSR400のノーマルクランクシャフトASSY。兄貴分のSR500(先に絶版車となった)と比べて、外径が10mmほど大きいクランクウエイト(クランクウェブ)を採用しているのが400クランク最大の特徴だ。1978~1979年の初期型SR500のみ、400と同じクランクウェブを採用していたことは、SRマニアなら誰もが知るところである。コンプリートエンジンのアウトラインを400/500で共通化するため、ストロークが短い400にはロングコンロッド(長いコンロッド)が採用れていたことでも知られている。

オイルコンディションがものを言う

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今回分解したクランクシャフトのコンディションは、決して悪くなかった。オーナーさんからの依頼でビッグエンドベアリングを新品部品に交換したそうだ。悪くなる前やエンジン分解したついでに、交換できる部品は徹底的に新品部品に交換しておこうと考えるユーザーが年々増えている。イザ、オーバーホールしようと思ったときに、補修部品が入手不可能だと情けないので、将来のために、せめてコンロッドキットやビッグエンドベアリングをストックしておきたいものだ。それが愛車家としての義務?

SRはすべて単品部品の組み合わせ

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コンロッドとクランクピンとベアリングの3点や、ベアリングサイドにスラストワッシャー(スラストメタル)が入る場合は、5点セットになる機種もあるが、このような部品を1セットで販売する部品名を「コンロッドキット」と呼ぶ。ヤマハSRの場合は、すべての部品を単品で購入できる設定となっている。分解した際に、痛んでいる部品を交換すれば良い仕組みを採用しているのだ。すでに絶版になっているモデル用部品をコンロッドキットとして発売している社外メーカー(輸出メインのメーカー)製品も国内には複数存在する。社外メーカー製はコンロッドキットとして販売している例が多く、2ストロークモデルの場合は、スモールエンドのニードルローラーベアリングやビッグエンドサイドメタルをセットにするキット例も数多い。

クランクウェブはビッグエンドサイドに要注意

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クランクピンを圧入する孔周辺にコンロッドの側面が当たって摩耗している例がある場合は、摩耗痕が消えるまでビンボス部分を研磨処理で対応することになる。仮に、新品コンロッドやベアリングに交換できたとしても、研磨処理後は、摩耗分だけクランクシャフトの全幅が狭くなってしまう。そんなときには、オーバーホール完成後のクランクシャフトジャーナル部分に「シム(スペーサー)」を追加し、摩耗分の帳尻合せを行うことになる。メンテナンス経験者の組み立てノウハウが試される部分でもある。もちろんそんな摩耗を想定してないメーカーのパーツリストには、そのような調整シムの設定は無い。

クランクは叩いて芯円と振れを取る

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クランクシャフトのオーバーホール時は、分解前の全幅データをメモする作業から始まり、寸法測定後に油圧プレスで分解する。各部品を洗浄点検した後に、交換部品を準備しつつ組み立て開始。左右クランクウェブは一気に圧入するのではなく、基準となるウェブにクランクピンを先行圧入。潤滑用オイル通路のある側を基準として先行で組み立て、オイル孔の通気を確認してから反対側の組み立て作業に入る。この際には、ピンの先端部分だけウェブを圧入し、位相の狂いが無いことを確認してから徐々に圧入しろを増していく。圧入の都度、芯円とウェブの傾きを検査台の上で確認しながら「銅ハンマーでウェブを叩き」芯出し振れ取りを進めていく。そのような作業を繰り返し行い、分解前の全幅に合せて(もしくはオーダー寸法に合せて)クランクウェブを圧入する。

微妙な精度公差で許容範囲内に収める職人技

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作業依頼時にクランクシャフトの芯と振れを確認すると理解できるが、そもそも相当にズレていた個体は、徹底的に調整作業してもなかなか思い通りの理想型には仕上がらないことが多い。単気筒や2気筒のクランクシャフトは、比較的高精度に仕上げることができるが、4気筒の組み立て式クランクシャフトなどで、オーダー時から大きく狂っていたものは、なかなか理想の許容範囲内に入らない例もあるそうだ。それでも専用の組み立て治具などを使って、できる限り理想の精度=許容範囲内に芯出し振れとりしているのが内燃機職人さんである。単気筒の組み立て式クランクシャフトなら、振れ幅1/100ミリ以内=ほぼゼロといった例も決して少なくない。メーカー公差=許容範囲はモデルによっても異なるが10/100=振れ幅0.1ミリ以上で要修正もしくは部品交換、といった例もある。

撮影協力:iB井上ボーリング

POINT
  • ポイント1・クランクノイズが出始めていることに気がついたエンジンは、決して酷使せず経験者の判断に耳を傾けよう
  • ポイント2・末永く乗り続けたいバイクのパーツは、エンジンに限らず部品が入手できるうちにストックしておこう
  • ポイント3・ エンジン部品を修理再生する際には、内燃機のプロショップに相談するのが近道

必要に迫られたため「重い腰を上げて……」といったこと、ありますよね?バイクライフの中にも様々な場面があるが、エンジンの分解整備やオーバーホールも、そんな要素のひとつである。

何故、分解整備が必要なのか?例えば、空冷2ストロークエンジンの全盛時代は、ある意味、無理をしてでもエンジンパワーを獲得していたのがバイクメーカーである。「スプリンター」であることや「世界最速」であることを誇らしげに登場したカワサキH1/500SSマッハⅢやH2/750SSは、パワー獲得のために大きな吸排気ポートを持つ、空冷2ストロークエンジンを搭載していた。生産性を優先した結果、ピストンリングの摩耗やピストン自体の摩耗、そして、シリンダーの吸排気ポート上下のエッジ部分がピストンリングの攻撃によって摩耗してしまう状況が発生。大切に乗り続ければ、それなりに長持ちするが、暴力的なパワー特性を楽しみ、エンジンをブン回して走ることで、極めて短命となってしまった例が多いモデルである。特にH2のピストンリングは完全な消耗品で、数千キロ(3000~5000キロ)の走行で、ほぼ賞味期限切れ!?=摩耗現度に達する例もあり、ガチャガチャ、キンキンッとメカノイズも騒々しいものになってしまう。

80年代は「レサーレブリカ全盛時代」だったが、その究極的なモデルとして登場したのがホンダNSR250Rだった。NSメッキと呼ばれたニッケル・シリコン・カーバイト系の特殊メッキをシリンダー内壁に施し、排気ポートには往復運動するピストンガイドとなる「柱」を採用。この柱の存在が、シリンダーやピストン+ピストンリングの寿命を一気に高めることに成功。しかしその一方で、ローフリクションを狙ったクランクシャフトのセンターシールは寿命が著しく短く、シールの気密性が低下すると、本来のエンジン性能を発揮できなくなることでも知られモデルだった。

Pxa08.jpg80年代のバイクブーム時には「耐久性は二の次」で高性能をウリにしたモデルも登場した。その代表的なモデルにNSR250Rがあった。

そんなエンジン寿命を延ばすためには、整備やオーバーホールが必要不可欠である。そんな修理再生で心強い味方になってくれるのが、内燃機加工のプロショップだ。埼玉県川越市のiB井上ボーリングは「減らないシリンダー作り」を合い言葉に、現代の最新技術を旧車にも展開する特殊メッキシリンダー技術=ICBM®技術を確立。特に、2ストロークエンジンの吸排気ポートに柱を追加した「柱付きICBM®」技術は、カワサキH1/H2を始めヤマハDT-1など、名だたる歴代2ストロークモデルの延命に多大なる貢献を果たした。同時に、本来のエンジンパワーを安定的に発揮できるようにもなった。数多くのユーザーが、すでにこの技術を採用し、新たなる2ストロークライフを実現している。

2ストマルチエンジンの「クランクシャフトシール問題」に関しては、ラビリンスシール技術を発展させたLABYRI®を開発。現在では、レーサーレプリカモデルでこの技術を展開し、半永久的な一次圧縮の維持を可能としている。技術的にはシンプルなイメージがある2ストロークエンジンだが、吸排気ポートの柱技術やクランクシャフトのセンターシールをラビリンス仕様へ置き換える技術は、決して簡単なものではない。

一方、4ストロークエンジンは、メカニズムが多く複雑な印象だが、エンジン各部への潤滑がしっかり行われていれさえすれば、トラブルや故障は少ない。だからこそ、「オイル交換」が何よりも重要な定期的メンテナンスのひとつなのだ。そんな4ストロークエンジンでも、ICBM®技術を投入することで、よりいっそう理想的なシリンダー硬度を得ることができ、エンジン性能をこれまで以上、長期間に渡って発揮し続けることができるようになる。カワサキZ2/Z1では、すでに数多くの実績があり、ハーレーでもアルミシリンダーを採用したエボリューション系では、ICBM®技術の実績がある。

iB井上ボーリングでは、数年前にヤマハSR向けにICBMR技術を提案。しかし、文頭で記したように「必要な状況に……」至っていないマシンオーナーが多かったため、大きな反響は無かった。ところが、昨年発表された「ヤマハSRの生産中止」が大きな話題になってからは、同モデルが様々な角度から注目され、見直されているのは確実である。iBでは、今年に入ってからヤマハSRのICBM®オーダーが増えているそうだ。それと同時に「組み立て式クランクシャフトのオーバーホール」依頼も多いようだ。

国内シーンだけでも、相当数のヤマハSRが走っているが、今後もSRライフを末永く楽しみ続けたのなら、ICBM®シリンダーの採用と同時に「クランクシャフトのオーバーホール」を実践するのは良い考えである。いずれにせよ、交換部品が絶版扱いになる前に、ヤマハSRマニアなら自分用パーツをストックしておきたいものである。

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Pxa10.jpg「ヤマハSR生産中止」ニュースが大きなきっかけになり、SRエンジンのオーバーホールやレストアが動き始めている。iB井上ボーリングへはアルミスリーブ&特殊メッキシリンダーを採用したICBMRの依頼が増えている。熱伝導性の良さから圧倒的に放熱性が良く、アルミスリーブなので軽さも比較にならない。長年愛され続けたモデルには、それなりの理由があるものだが、最後に乗りたいバイクはヤマハSRだと答えるベテランライダーは数多い。実に素晴らしいバイクだ。

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