キャブレター修理が珍しくない旧車。燃料系路のネジ山ナメは即刻対処

旧車のコンディション維持は高年式車と比べればそれなりに大変だが、一度コンディションアップできれば、その後は普通に走れることが多い。不調な箇所を特定できたなら、できるだけ早くに対処したいものである。しかし、旧車修理には旧車修理なりの専門知識が無ければ簡単には事が運ばないのも事実。国産バーチカルツインとして高い人気を誇るのがカワサキW1シリーズだが、鼓動振動が多い関係で、ボルトが弛みやすいモデルとしても知られているが、そのボルトを増し締めする際に、トラブルを引き起こしてしまいがちなのが「キャブレター」でもある。

キャブレターのネジ上がりも修理可能!?

ボール盤の面板にイケールと呼ばれる直角固定座を当て、同時にキャブレターをイケール面に寄せ付け、フロートチャンバー面が直角になるようにキャブレターを自在クランプで固定。何度か確認しながら固定状況をより良くしていく。自在クランプで固定する際にも、キャブ本体を変形させないように、押さえ木を併用しつつ作業を進める。ボール盤の面板およびイケールに対して直角に固定できたら、燃料ホースを締め付けるネジ山を下穴サイズでドリリング。ナメてしまってネジ山を削り落とし、新たなネジ山を再生する段取りである。

タップが傾かないような段取りが大切


下穴加工を終えたら、ボール盤のチャックにネジ型補修コイル(リコイルやスプリューやヘリサートと呼ばれる商品)を挿入するための専用タップをセットし、キャブボディーのバンジョー面に対して直角になるようにタップを手回しで食い込ませる。ある程度食い込ませて道筋を付けることができたら、タップハンドルで残りのネジ山を仕上げていく。このあたりの作業には、数多くの経験が必要。ネジ山が曲ったら、即ガソリン漏れの原因につながる。

ネジコイル挿入用の下穴が完成した。カワサキW1用のミクニ製キャブレターの場合は、ネジコイルを挿入できる肉厚が残っているので良いが、このような補修作業を物理的にできないキャブレター=肉厚が薄くてどうにもならないケースもある。

ネジコイルを加工したネジ山に挿入

新たに立て直したネジ山にM10P1.25のバンジョーボルト用ネジコイルを挿入。


ネジコイルは各メーカーで挿入治具のタイプが異なる。これはスプリュー社製。


曲がったリード部分がネジ底付近に見える。このリードは作業完了後に除去する。


専用ツールを利用して、ネジコイル(ここでは日本スプリュー社商品を利用)を打ち込んだ。これでネジ山強度が高まる。バンジョーボルトと触れ合うネジ山部分がキャブボディのアルミ×鉄ボルトから、鉄×鉄になり、しっかり締付けることができるようになる。

挿入時のリード=舌をカット

ネジコイルにはリード部分と呼ばれる折れ曲がり部分=通称「舌」があるので、平ポンチなどで軽く叩いて折り、先細プライヤーなどでピックアップしておこう。この作業は必ず実施しよう。切り取り忘れるとバンジョーボルトで舌を押し切り、後々のトラブルになってしまう。

これで安心のバンジョー継ぎ手

カワサキW1の燃料ホースを差し込むバンジョーがこれ。このバンジョーを締め付ける際に、無理に締め付けるとネジ山がナメてしまので要注意。エンジン振動によって弛みやすいので、尚更ネジ山をナメやすい。今回、取材協力を頂いた大阪の山之内キャブレターでは、バンジョーボルトの締め付けネジ部分の深さ調整やバンジョーとの相性を調整するために、厚さの異なるアルミ製パッキンワッシャーを用意し、最善の状況でバンジョー継ぎ手を締付けられる対策を行っている。


取材協力 : 山之内キャブレター


POINT
  • ポイント1・ 加工可能な肉厚があれば良いが、肉厚が無いときには、諦めなくてはいけない
  • ポイント2・下穴加工時にキリ(ドリル)に傾きが出ないようにしっかりボディを固定しなくてはいけない
  • ポイント3・ネジコイルを挿入する際は、最初のひと山より下までコイルエンドが沈む位置まで挿入調整
  • ポイント4・ ネジコイルを挿入したらリード=舌部分を必ず除去しないとトラブルの原因になる

絶版車の好調不調とキャブレターのコンディションには、深~い因果関係があるのはご想像頂けると思う。ここでは、キャブレター修理を専門に取り扱うメンテナンス業者のご協力を得て、修理再生の様子をご覧頂こう。2スト、4ストエンジンを問わず、キャブレターは精密部品のひとつである。しかし、その一方で「分解しやすい」ことから、数多くの旧車ファンがDIYでメンテナンスしている例も多い。単純に汚れた通路の詰まりやフロートなどの作動不良が原因で、不調に至っているようなら、正しく組み立て直すのみでトラブル復旧することもできる。

しかし、分解途中でネジ山がナメてしまったり、無理矢理分解したことでフロートを支える「支柱が折れてしまったり」などなど、メンテナンス経験の少ないユーザーに分解されたことで「取り返しのつかないトラブルに陥ってしまった……」なんてことも少なくない。そんな、悔やんでも悔やみきれない後悔に遭遇したことがあるライダーも、中にはいるかも知れない……。仮に、そのような大トラブルに陥ってしまったキャブレターは、おおかた使用不可能になってしまうものだ。しかし、その筋のプロ、その道の経験豊富なメカニックなら、もう使えない!?と思っていたキャブレターが、修理再生できる=復旧可能なケースがあることも覚えておきたい。

ここで修理しているカワサキW1用キャブレターは、燃料ホース用継ぎ手の固定ネジ山がナメてしまったトラブルを抱えていた。エンジン振動や走行振動で、燃料用バンジョー継ぎ手を固定していたバンジョーボルトが緩んでしまい、何度も繰り返し増し締めしているうちに、ネジ山がダメになってしまう、いわば「カワサキW1あるある」のようなトラブル内容だ。特に、英国車を中心に、このような構造のキャブレターは多い。<

トラブルを発見した際に「これは難しいかな?」と思ったときには、自分自身で何とかしてやろう!!などと考えず、プロにお願いした方が確実かつ近道なことも多い。修理再生しようとして、さらに症状を悪化させてしまう実例が、実は数多いのだ。修理再生経験が豊富なプロメカニックは、たんたんと仕事をこなしていくが、それはまさに経験豊富だからこそ成せる業でもあるのだ。それでも自分自身で修理チャレンジしてみたい、というのもサンデーメカニックの性だろう。

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