クランクシャフトはCOMP交換ではなく「オーバーホール」可能!!

2ストロークエンジンでも4ストロークエンジンでも、その心臓部品とも言えるのがクランクシャフト。極めて重要な部品だけに、常にコンディション良くありたいものである。しかし、過走行を始め、整備不足や整備不良によってコンディションが低下しメカニカルノイズが発生してしまうことがある。クランクノイズにも様々な音があるが、2ストエンジンなら、ピストンの焼き付きやダキツキによってクランク室に金属粉が混入し、それがベアリングに噛み込み異音を発生。4ストエンジンの場合は、潤滑系トラブル=オイル交換不備によって、クランクベアリングから異音が発生することもある。ノイズの出始めはシューッといった連続音が聞え始め、症状が悪化するとゴーッといった連続音に変化する。単気筒エンジンに多い「組み立て式クランクシャフト」の場合は、「コンプリート=COMP部品」で交換するのではなく、不良になった部品だけを購入し、修理依頼し交換することもできる。そんなエンジン部品の修理再生は、内燃機部品修理加工のプロショップで依頼することができる。

オーバーホールで蘇ったクランクシャフト

長年に渡る走行や明らかな過走行によって、エンジン始動時にシャーッといった連続音が聞えるようになった2スト原付エンジン(画像はヤマハミニトレ用純正クランクシャフト)。一念発起し、エンジンを完全分解。クランクシャフトを取り外し、コンロッド大端部に入るニードルローラーベアリングとクランクピンを新品に交換した。コンロッドも交換しようと考えたが、分解点検するとダメージや摩耗が見当たらなかったので、クランクピンとニードルベアリングのみ新品部品に交換依頼し、コンロッドはワイヤーバフで磨いて頂いた。こんなエンジン部品の修理を請け負って下さるのが内燃機部品修理加工のプロショップである。


単気筒エンジンの組み立て式クランクシャフトは、概ねこのような構造になっている。この図解モデルは70年代のスーパーカブ用。当時のモデルは、構成図の通り、単品部品で購入することができた。しかし、後の年式および現在では、COMP=コンプリート設定がメインで、単品部品が設定されてないケースが多い。しかし、共通部品を探し出して、何とか部品交換で修理したいユーザーは多く、そんなニーズは後を絶たない。メーカー純正部品の取り扱いが無くても、社外補修部品が販売されているモデルもある。

単品購入できるクランクピン交換も効果的

機種は異なるが上の図解で見たときに「14」番の部品が「クランクピン」だ。混合気の圧縮・爆圧・膨張によって得たチカラを往復運動へ変換し、クランクシャフトを回転させる源となっている部品が、このクランクピンとコンロッドの大端部に組み込まれるベアリングである。サビの発生やゴミが混入することで、大端部のニードルベアリングとクランクピンにはダメージが発生する。そんなクランクシャフトからは、カタカタッといったメカノイズが聞えるようになってしまう。


カワサキトリプル(3気筒エンジンのマッハシリーズ)のクランクシャフトをオーバーホール中。クランクベアリングやセンターシールを新品部品に交換するのはもちろん、コンロッドキット(コンロッド、ニードルベアリング、クランクピン)も、アフターメーカー製の補修部品に交換した。

単品ローラーはグリスを接着剤代わりに

ローラーがリテーナーと呼ばれるケージ(枠)に組み込まれ、一体化されている部品もあるが、中にはケージとローラーが別部品で、すべてがバラバラになってしまう部品もある。そんなローラーベアリングを組み込む際には、グリスを接着剤代わりに利用してローラーをケージにセットしつつ、落下紛失させないようにコンロッドをセットして組み立てる。


内燃機部品修理加工のプロショップでは、このような門型「油圧プレス」を利用してクランクシャフトを組み立てている。もちろん分解時にも油圧プレスを利用する。単純にプレスを使って強引に組み立てるのではなく、細部にわたって様々な組み立てノウハウがあるそうだ。


組み立て途中のクランクシャフト。一気にクランクウエイト(クランクウェブ)を油圧プレスで押込むのではなく、芯出し振れ取りを何度も確認しながら、徐々に油圧プレスで押込んでいく。


油圧プレスを使って組み立て終えたら、いよいよ芯出し振れ取りの開始である。僅か100分台の振れ取りのために、様々な道具を使って「仕上げ値」に近づけていく。ウェプの隙間にタガネのようなたたき道具を押込み、ハンマーで叩いてクランクシャフトの芯を出していく。ウェブ側が広がり気味に、シャフトの芯が「く」の字になっているときには、ウェブ側が閉じるように銅ハンマーでガツンと叩いて芯を出す。このような作業が繰り返し行われていく。


芯出し振れ取りを行うのと同時に、クランクのセット幅も仕上げ寸法通りに合せる。分解前にはクランク幅やコンロッドのサイドクリアランスデータを測定しておき、その分解前のデータ数値も参考に、組み立てられていく。

POINT
  • ポイント1・クランクシャフトにダメージがあったら「クランク交換」だけではなく「クランク修理」も視野に入れよう。
  • ポイント2・クランクシャフトはコンプリートだけではなく、構成部品の単品部品販売もある。
  • ポイント3・メーカー純正部品が無くても社外キットパーツの有無や在庫を確認し、組み換え修理内燃機のプロショップへ依頼しよう。

クランクシャフトと言えば、チューニングメーカー製ストロークアップクランクやクランクマスを減らした軽量レーシングクランクを思い浮かべるサンデーメカニックが多いと思う。モンキーやダックス、スーパーカブなど、ホンダ横型エンジンのスペシャルパーツと言えば「クランクシャフト・コンプリート」として販売されている例がほとんどだ。ボアアップやエンジンチューニングが前提の場合は、クランクシャフトはコンプリート交換するのが一般的である。しかし、ホンダ横型エンジンに限らず、気筒数に限らず、組み立て式クランクシャフトの場合は、一般的に「分解オーバーホール」例が多い。目線を変えれて見れば、チューニングパーツは「コンプリート部品交換」が一般的で、ノーマルエンジンの場合は「オーバーホール修理」が一般的だと言うことができる。


メーカー発行のパーツリストやパーツカタログを見ると、昔は組み立て式クランクシャフトの構成パーツすべてにパーツナンバーが記されていた例が多いが、最近は「コンプリート」部品として明記されていることが多い。モデルによっては、クニンクシャフトCOMPでは別部品だが、実は、コンロッドには共通部品を転用しているケースもある。メーカー純正部品だけではなく、アフターマーケットのエンジン部品メーカーから発売されているコンロッドキットを頼れば、コンプリート交換ではなく分解修理が可能になるケースも多い。ここで確認しておきたいのは、クランクシャフトに不具合が発生したからと言って、クランクシャフトを「コンプリート交換しなくても良い」ということだ。クランクシャフトを左右から支持しているメインベアリングを交換したり、コンロッドの大端部(クランクウェブ側)に入るニードルローラーベアリングやクランクピンを交換することで、実は問題なく修理再生できるケースが多いことも知っておきたい。


特に、往年の2ストロークモデルの場合は、メーカー純正部品が販売中止になっても、アフターパーツメーカーや専門店が部品メーカーへ独自にオーダーし、補修用キットパーツとして販売している例もある。例えば、カワサキの2スト大型トリプルで知られるH1/H2シリーズなどは、複数のメーカーから、コンロッド・大端部ベアリング・クランクピン・サイドメタルがキットとなって販売されていることでも知られている。原付クラスの単気筒モデルでも、過走行やコンディション維持の不備でクランクシャフトからメカノイズを発生している例は多いが、そんな小排気量エンジン用部品でも、コンロッドキットは比較的入手しやすく修理例も多い。まだまだ乗り続けることができる現実を、多くのファンに知って頂きたいものだ。


昔と比べ、エンジンオイル性能は各段に向上し、高性能なエンジンオイル添加剤も登場している昨今。何よりも「大切に乗り続けたい」と考える気持ちさえあれば、末永く乗り続けることが可能な時代になっていることも忘れずにいてほしい。


◆撮影協力◆
撮影協力:井上ボーリング

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