エンジンオイルの排出はゴムホースから!?スポーツスターの当たり前にビックリ
4ストロークエンジンの潤滑方式に注目するとウェットサンプとドライサンプに分類できます。現行市販モデルの大半はウェットサンプですが、ハーレーダビッドソンやヤマハSR400はドライサンプです。それぞれにどのような特長があるのか、その上でハーレーダビッドソンスポーツスターのオイル交換方法を紹介します。

ドライサンプとウェットサンプ

ドライサンプのヤマハSR400はフレームの一部をオイルタンクとして使っている。フレームのヘッドパイプ部分にタンクキャップがあり、オイル交換の時はここから新しいエンジンオイルを注入する。

エンジン内部にオイルを溜めておくウェットサンプのエンジンは、クランクケースカバーのフィラーキャップを外してオイルを注入する。エンジン内の油量は点検窓かキャップ一体式のゲージで確認する。

エンジンオイルには潤滑や放熱、密封などいくつもの役割があります。このオイルはオイルポンプによってシリンダーヘッドやクランクシャフトやミッションギアなどエンジン各部に圧送されて、オイルパンに流れて戻った後に再びオイルポンプで圧送されて……という循環を繰り返します。

オイルクーラー付きの場合は、シリンダーヘッドや燃焼室の外壁に触れたオイルを通過させることで、油温を下げながら循環させています。

エンジンが動いている間は休まず循環するエンジンオイルですが、エンジンの構造に着目すると「ウェットサンプ」と「ドライサンプ」という二種類が存在します。ウェットサンプはエンジンの底部にオイルパンがあり、ここに溜まったオイルをポンプで圧送する方式で、現在のバイク用エンジンの大半に採用されています。

これに対してドライサンプは、エンジンとは別の場所にオイルタンクがあり、そこからオイルが圧送されて、エンジン各部を循環したオイルはタンクに戻ります。エンジン内のオイルは重力によってエンジン下部に流れ落ちますが、ウェットサンプのようにオイルを溜めるためのオイルパンはなく、エンジンとは別の場所にあるオイルタンクに戻されます。

「エンジンとは別の場所」というと分かりづらいかもしれませんが、例えばヤマハSR400はフレームのダウンチューブをのオイルタンクとして使っており、ハーレーダビッドソンスポーツスターはライダーのシート下にオイルタンクがあります。

国産の絶版車で対照的な2台を挙げれば、ホンダCB750フォアはドライサンプで、カワサキZ1/Z2はウェットサンプです。

現在のエンジンは大半がウェットサンプなのに、なぜドライサンプがあるのかといえば、ドライサンプはオイルパンによる制約を受けないからです。例えばレシプロの飛行機用エンジンで垂直上昇やロールオーバーを行うと上下左右の姿勢が大きく変わります。オイルパンにオイルが溜まるウェットサンプ方式では、エンジンが上下反転するとオイルポンプはオイルを吸えなくなって焼き付いてしまいます。そのため、飛行機用のエンジンはドライサンプが必須です。

クルマやバイクのエンジンでもドライサンプに利点がある場合があります。クルマのレースではコーナリング時に大きな横Gが発生した際にオイルパン内部の油面が大きく変化したさいに、オイルポンプが空回りする可能性があります。ドライサンプはエンジン内を循環したオイルを回収用ポンプでオイルタンクに戻し、供給用ポンプで送り出しているので、エンジンに横向きの力が加わってもオイルが安定的に供給されます。

またエンジン下部にオイルパンがないのでエンジンの全高を低くすることができ、オフロードモデルでは最低地上高を稼いでロードクリアランスを大きくできるメリットもあります。

ただ、ウェットサンプでもオイルパンの内部に油面の偏りを防止する仕切り板を設けたり、オイルポンプの吸い込み部分だけを深くするなどの対策を行うことで姿勢変化への対応を行い、直立していたシリンダーを前傾させることでエンジンの高さを抑えているので、一般的な用途では必ずしもドライサンプが圧倒的有利というわけではありません。むしろクランクケースと別に必要なオイルタンクやエンジン外部のオイルホースなど、部品点数の増加などドライサンプならではの制約も生じます。

そうした双方の特性を考慮した上で、現在はウェットサンプが多数派となっています。

 
POINT
  • ポイント1・エンジンの潤滑方法には「ウェットサンプ」と「ドライサンプ」の二種類がある
  • ポイント2・それぞれに利点があるが現在はウェットサンプを採用する車種が多い

スポーツスターはドライサンプ

ウェットサンプの場合、エンジン底部のドレンボルトを外すとオイルパンに溜まったオイルが排出される。オイルパンの形状やドレンの位置によって、バイクを左右に傾けたり前後に揺すると排出が促進される場合がある。

エンジンと別にオイルタンクがあるドライサンプ式は、オイル交換時はタンクから抜く。SR400の場合はエンジン底部にもドレンボルトがあるので、これを外すことでエンジン内部に残るオイルも排出できる。

ホンダCB750フォアは国産初の4気筒エンジン搭載車で、世界GPへの参戦経験を生かしてドライサンプを採用していました。しかし後継モデルのCB750Fではウェットサンプとなっています。エンジンの開発段階でウェットサンプの方が合理性があると判断したのでしょう。

これに対して、昔から一貫してドライサンプを採用しているのがハーレーダビッドソンです。シート下にオイルタンクがあり、圧送用のフィードポンプから送り出されたオイルがエンジン各部を循環して、回収用のスカベンジポンプでタンクに戻ります。

ハーレーの場合、エンジンとミッションが別体なのが特長で、エンジンオイルはクランクシャフトやシリンダー、シリンダーヘッドを潤滑し、ミッションは別のオイルで潤滑しています。

エンジンとミッションが別体でドライサンプといえばカワサキのバーチカルツイン、W1シリーズも同様です。やはりシート下にオイルタンクを装備して2つのポンプでエンジンオイルを循環させ、エンジンオイルとは別のオイルでミッションを潤滑します。

CB750フォアや1978年にデビューした超ロングセラーモデル、ヤマハSR400の場合はエンジンとミッションが一体で同じオイルで潤滑しています。ハーレーやW1よりも設計が新しい分だけ、エンジン全体をコンパクトにできる一体式を採用したのでしょう。

 
POINT
  • ポイント1・ハーレーダビッドソンスポーツスターの潤滑はドライサンプ式
  • ポイント2・エンジンとミッションが別体式の場合、それぞれに専用のオイルが必要

ドレンホースはフレームに差し込まれているだけ!?

画像は1997年式スポーツスター。この時代はエンジンとフレームのマウント方法がリジッドで吸気系もキャブレターだ。現在はインジェクションでラバーマウントになっているが、エンジン潤滑方法はドライサンプを踏襲している。

クランクケース下部、リアタイヤの前にゴム製のドレンホースがある。この年代はフレーム側の丸い棒にホースを差し込んでクランプで固定している。後の年代になるとプラグを差し込む方法に変更されたが、いずれにしても国産車とは考え方が大きく異なる。

新しいオイルはシート下のオイルタンクに注入する。油量はキャップのディップスティックで確認できる。サービスマニュアルによる当時の推奨オイルはマルチグレードなら20W-50、シングルグレードなら50または60となっている。ただしシングルグレードは気温の低い冬季には使わない方が良い。

ウェットサンプでもドライサンプでも、エンジンオイルの定期交換は必要です。ウェットサンプのエンジンの場合、オイルはエンジン下部のドレンパンから抜きますが、ドライサンプの場合はエンジンとは別にオイルタンクがあるので、そこから抜きます。

ただしSR400の場合はエンジン本体にもドレンボルトが存在します。エンジンを潤滑したオイルはスカベンジポンプでオイルタンクに回収されますが、オイルタンクとエンジンの位置関係の都合上、エンジン下部にも僅かなオイルが残っているためです。

これに対してハーレーダビッドソンスポーツスターのエンジンオイルはオイルタンクからのみ排出します。しかしその方法は独特で、オイルタンクからエンジン下部に配置されたゴムホースの栓を抜くだけです。

もちろんこのホースはホースバンドで固定されています。しかし、キャブレターのオーバーフローチューブのように、車体を汚さないようにドレンボルトを緩めるとホースからオイルが排出されるならまだしも、このホースの先端までオイルタンク内のオイルが通じていて、先端のキャップを抜けばいつでもタンク内のオイルが出てしまうのいうのはオイルを抜く=ドレンボルトを取り外すというのが常識の国産車オーナーにはかなり面食らうのではないでしょうか。

ハーレーオーナーにとっては当たり前の仕組みで、現在ではホースの先に栓を差し込むようになっていますが、画像で紹介する1990年代のスポーツスターはフレームから立っている丸い棒にホースを差し込んであるだけなのでなおさら驚きます。

しかしながら、オイルタンクの出口からフィードポンプに向かう途中から分岐されるこのドレンホースによって古いエンジンオイルは効率的に抜けるようになっているので、理屈としては正しい仕組みと言えるでしょう。

 
POINT
  • ポイント1・ドライサンプ式のオイル交換はオイルタンクから排出。SR400はエンジンからも排出する
  • ポイント2・スポーツスターはオイルタンクのゴムホースから排出する
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