スロットルと開けると白煙モクモク!?オイル上がりの原因と対策とは?
4ストロークエンジンにおいてエンジンオイルが燃焼室に入ると、まるで2ストロークエンジンのようにマフラーから白煙を吐き出します。本来は入るべきでないオイルが入る理由として考えられるのが「オイル上がり」と「オイル下がり」。このうちピストンとシリンダーの隙間からオイルが燃焼室に入る場合をオイル上がりと言います。ピストンとシリンダーが傷つくようなトラブルがないなら、オイル上がりの原因として疑わしいのは、ピストンリングにまつわる不具合による場合が多いです。

エンジンオイルは潤滑に欠かせないが、燃焼室に入っては困る

4ストロークエンジンのピストンリング。左からトップリング、セカンドリング、オイルリング、サイドレール、オイルリングの順。トップとセカンドに比べて薄いオイルリングは波形形状のサイドレールを挟み込みながらピストンのリング溝に収まって機能する。

バルブステムシール。中心の穴をバルブステムが貫通して、ステムシールの上にあるエンジンオイル(カムシャフトやロッカーアームを潤滑する)を掻き落とす。2バルブエンジンの場合、吸排気バルブに各1個のシールが付く。画像は左2個が新品、油分が付着した右2個が中古品。

4ストロークエンジンのエンジンオイルは、エンジン下部のオイルパンから圧送されて各部を潤滑します(ウェットサンプの場合。ヤマハSR400などドライサンプの機種はオイルタンクから圧送されます)。金属同士が高速で回転したり強い力でこすれ合う中で、オイルによる潤滑は欠かせません。

一方で、空気とガソリンが混ざり合った混合気にスパークプラグの電気火花で着火することで爆発的な燃焼が起こり、その力でピストンを押し下げている、ピストンの上部とシリンダーヘッド内部からなる燃焼室内にはエンジンオイルは不要です。2ストロークエンジンは混合気中にエンジンオイルを混ぜて、クランクケース内を潤滑した後に燃焼室に入り、混合気と一緒に燃焼しているので、4ストロークとは仕組みが全く異なります。

ただ、4ストロークエンジンの燃焼室周辺は常にエンジンオイルで潤滑されているので、そのオイルが燃焼室に入り込まないような仕組みが必要です。それが吸排気バルブの「バルブステムシール」とピストンの「ピストンリング」です。

混合気を吸い込んで排気ガスを排出する吸排気バルブの軸部分は、バルブの開閉にともなって往復運動をするため、焼き付かないように潤滑が必要です。ただステムと呼ばれる軸部から燃焼室にオイルが流れ込むと混合気と一緒に燃えて白煙の原因となるため、バルブステムシールというゴム部品を装着してステムに付着したオイルを掻き取り、潤滑に必要な最低限の油分だけが残るようにしています。

一方、ピストンに装着されているピストンリングには、ピストンとシリンダーの隙間を潤滑するエンジンオイルを掻き落とす役割があります。バルブステムと同様に、ピストンとシリンダーの隙間に油膜がなければ焼き付いてしまうのでオイルは絶対に必要です。しかしこの隙間のオイルが燃焼室に入ると、やはり混合気の燃焼時に一緒に燃えて白煙を吐き出します。また燃え残ったエンジンオイルはカーボンとなってピストン上部や燃焼室の壁に堆積することもあります。

いずれにしても、エンジンが焼き付かないための潤滑は確保しながら、燃焼室にエンジンオイルが入り込まないためにはバルブステムシールとピストンリングが健全であることが重要です。

 
POINT
  • ポイント1・4ストロークエンジンは、ピストンリングとバルブステムシールによってエンジンオイルが燃焼室に入らないようにしている
  • ポイント2・マフラーから白煙を吐く場合、ピストンリングかバルブステムシールが原因となることが多い

オイル下がりはステムシール、オイル上がりはピストンリングが原因となることが多い

スロットルを開けると白煙を吐き出し、排気ガスからオイルが混ざったようなにおいがする。
加速時により盛大になる。オイル下がりでこうした症状になることは皆無とはいえないが少ないので、オイル上がりと想像して間違いないだろう。


燃焼室を境に上にも下にもエンジンオイルがある中で、不幸にして4ストロークエンジンが白煙を吐き出したら、どのような状態の時に白煙が出るかを観察することで原因を想定できます。

1.エンジン始動直後やアイドリング時に白煙が出る場合

始動直後やアイドリング時はエンジン回転が低く、スロットルが開いていないことが多いはずです。スロットルバルブが閉じていると、吸える空気(混合気)が少ない状態でピストンが往復するため、吸気系に発生する負圧が大きくなります。

すると吸気バルブが開いた時に、バルブステムとステムを支えるバルブガイドの隙間にも負圧が働き、ステムとガイドの潤滑に使われるエンジンオイルが燃焼室に吸い込まれようとします。

本来であれば、このオイルはバルブステムシールによって掻き落とされるはずですが、経年劣化などでステムシールのゴムが硬化するとステムに密着する力が低下して、オイルが吸い込まれてしまう場合があります。こうしてエンジンオイルが燃焼室に入ることを、バルブステムを伝わって落ちてくることから「オイル下がり」と言います。

2.スロットルを開けて加速、走行中に白煙が出る場合

スロットルバルブが開いてエンジン回転数が上昇すると、インテークマニホールド内の混合気の流速は上がりますが、負圧は小さくなります。するとバルブステムシールからのオイル下がりが発生する条件は緩和されます。

ピストンリングは素材の鋼の張力によってシリンダー内壁に押しつけられた状態で往復して、潤滑に必要なエンジンオイルを得ながら、余分な油分が燃焼室に入らないよう掻き落としています。

ここで白煙を吐く場合、エンジンが高速で回転する=ピストンが高速で往復運動しているのにピストンリングがシリンダー内壁のオイルを掻き落とせていない可能性があります。この状態を、シリンダーとピストンの隙間からオイルが上がっていくことから「オイル上がり」と言います。

4ストロークエンジンが白煙を吐くこと自体がトラブルですが、2つのパターンに分類できることを知っておけば原因を想定するのに役立つと書いたのはそういうメカニズムがあるためです。


POINT
  • ポイント1・始動直後やアイドリングで白煙を吐く場合は「オイル下がり」
  • ポイント2・エンジン回転が高くても白煙が発生する時は「オイル上がり」
  • ポイント3・オイル下がりかオイル上がりかを知ることで、メンテナンスの方針が立てやすくなる

オイルリングの張力低下が白煙の原因だった

ピストンリングをセットしたピストンをシリンダーに挿入しようとすると、リングがシリンダーボア径より突っ張って外に飛び出そうとするものだが、白煙エンジンのオイルリングはピストンのリング溝に収まったままだ。これでは張力不足でオイルを掻き出す能力も低いはず。

トップリングとセカンドリングはシリンダーに対して強い張力を維持しており、燃焼圧力を漏らさない気密性は保持されているようだった。

さて、白煙が発生する理由と具体的な原因を説明したところで実例を紹介します。

125ccのインドネシア仕様のビジネスバイクのマフラーから盛大に白煙を吐き始めたのは、新車から1万kmも走行していない時でした。このバイクのエンジンはボアアップしてありましたが、それでもやはり走行数千kmのことです。

白煙のパターンを見ると、アイドリング時は大したことはなく、エンジン回転とスピードを上げるほど盛大に白煙を吐いています。先の例で言えばオイル上がりのパターンです。シリンダーヘッドとシリンダーを外すついでなのでバルブステムシールも交換できますが、原因はシリンダーからピストンを外した時にはっきりしました。

先に、ピストンリングはリング自体の張力でシリンダーに押しつけられていると書きましたが、このピストンに組み付けられたオイルリングはリング溝に収まったまま、まったく外向きの張力が残っていないのです。

ここでピストンリングについて触れておくと、4ストロークエンジンピストンリングはトップリング、セカンドリング、オイルリングの3本セット構成されており、トップとセカンドには混合気が爆発的燃焼を起こした際の高圧のガスがピストンとシリンダーの隙間から逃げないように密閉する役目があり、オイルリングにはシリンダー壁面のオイルを掻き落とす役目があります。

ワイパーゴムが劣化した状態で雨天走行をすると、ワイパーが動いた後も窓に拭き残しが残ることがありますが、オイルリングの張力が低下した状態でピストンが往復するから拭き残したオイルが燃焼室で燃えるわけです。

ボアアップ用の社外製ピストンにセットされていたピストンリングの品質のせいなのか、他に原因があるのかどうかは分かりませんが、新品のオイルリングをピストンにセットしたところ強い張力でシリンダーに密着し、エンジンを復元して始動したところマフラーからの白煙はピタリと止みました。つまり、オイル上がりという見立ては正しかったというわけです。

ボアアップによってメーカー純正ピストンリングが使えないので、ボア径を頼りに社外製ピストンリングを入手。機種が一致している証拠はないので、ピストンリングのリング溝の幅よりこのリングの方が厚みが大きい可能性もあり、その場合はピストンに装着できないので使えない。

幸いリングの厚さが同じだったので流用可能と判断してピストンに装着。懸案のオイルリングはピストン直径よりしっかりはみ出し、リング溝に押し戻すのに力がいるほどだった。

このエンジンは単気筒だったのでひと組のピストンリング交換だけで済みましたが、4気筒エンジンでは4倍の部品と作業が必要になります。また4気筒エンジンでオイル下がりが原因なら、1気筒あたり2バルブエンジンで8個、4バルブなら16個のバルブステムシールが必要となり、それは修理費用に直結します。

マフラーから白煙を吐き出した時、思い切りよくバルブステムシールとピストンリングの両方を交換する覚悟があれば分解前にオイル下がりかオイル上がりかを想定する必要はありません。しかし最小限のコストと手間で最大限の効果を得ようとするなら、白煙がアイドリング時に発生するのか、ある程度の速度が出ている時に発生するのか、エンジンを分解する前に想定しておくことは無駄なことではありません。


ピストンやシリンダーに傷や強く当たった痕跡はなかったが、両者の隙間にシックネスゲージを挿入してごく簡易的にクリアランスを測定しておく。リングが大丈夫でもクリアランスが過大でピストンが振れると、オイル上がりを発生する場合がある。

復元したエンジンは白煙を吐くこともなく快調に仕上がった。4気筒エンジンで白煙を吹いた時は、まずは不具合のあるシリンダーの特定した後にオイル上がりかオイル下がりかの判断を行う。

POINT
  • ポイント1・ピストンリングの張力はオイル上がりに直結する
  • ポイント2・2気筒、4気筒エンジンでは白煙の原因想定が修理費用に直結する場合もある
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