ラジエターキャップは消耗品。冷却経路はテスターでチェック!
水冷エンジンでは定期的な冷却水交換が必須ですが、ラジエター本体やホースなど冷却水が流れる冷却経路のコンディションも重要です。100℃近くまで水温が上昇したときに、ラジエターホースが膨らんで変形したり、ホースクランプ部分から滲んでいないか? ラジエターキャップはちゃんと機能しているか? といった事柄にも注意が必要です。冷却系統を客観的にチェックできるラジエターリークテスターは、高価なわりに使用頻度が少ない機器ですが、水冷エンジン車にとってはとても頼りになります。

冷却水が沸騰しないのは加圧しているから

02-1.jpg ラジエターキャップには開弁圧が書いてあり、このキャップの場合は冷却経路内の圧力が1.1kg/cm2(約107kPa)を超えると主圧弁が開き、冷却水をリザーブタンクに逃がして圧力を逃がす。現在は圧力の単位がパスカルとなっているので、年式が新しいキャップはkPa(キロパスカル)で表示している。

エンジンが発生する熱を冷却水に伝え、ラジエターで放熱する水冷エンジン。水温計が装備されたバイクなら、低温のC「COLD」と高温H「HOT」の間に針があれば心配ありません。

ところがサーキットなどで高負荷状態が連続したり、ラジエターに走行風が充分に当たらない渋滞路での低速走行が続いたりすると、水温が高くなります。ラジエタートラブルの代表であるオーバーヒートは、冷却経路内で冷却水が沸騰して気泡が発生し、冷却水の流れが妨げられることで冷却効率が著しく低下する状態です。そうした状態を避けるために、ラジエターキャップには冷却経路内の圧力を大気圧より高く維持するための弁がついています。

水の沸点が気圧によって変化することはご存じでしょう。標高3776mの富士山頂では標高0m地点より気圧が低下するため、沸点が低下して水は87℃ぐらいで沸騰します。それとは逆に、気圧を高めることで沸点は上昇します。

この原理を利用して、ラジエターキャップには冷却経路全体の圧力を高めるための弁が組み込まれているのです。

 
POINT
  • ポイント1・冷却水の沸点は冷却経路の圧力によって変化する
  • ポイント2・ラジエターキャップ内蔵の弁で圧力を上げる

開弁圧力の設定で沸点をコントロール

冷却水を注入したラジエターの「フタ」としてだけでなく、冷却水の沸点上昇の役目を担うラジエターキャップは、単純な構造ですが賢いパーツです。キャップの裏側を観察するとリング状のゴムシールが2カ所にセットされており、直径が小さいシールが加圧の働きをしています。

エンジンを始動して冷却水温が上昇しても、サーモスタットが開くまではラジエターに冷却水が循環するわけではありません。サーモスタットが開くことでラジエター本体をはじめとした冷却経路全体に冷却水が行き渡り、温度が上昇する際に体積も膨張します。

ラジエターや冷却経路の圧力が高くなるほど冷却水の沸点は上昇します。しかし完全に密封してしまうと、温度上昇に伴う圧力上昇が過剰となり、ラジエターホースやラジエター本体の破損に繋がります。そこで、一定の圧力すなわち温度になると弁を開いて冷却水を逃がします。この圧力はラジエターキャップごとに決まっており、開弁圧と呼ばれる数字で表記されています。

1.1と数字が書かれた画像のキャップの場合、冷却経路の圧力が1.1kg/cm2(約107kPa)で開弁します。107kPaまで加圧すると冷却水の沸点はおよそ120℃まで上昇し、大気圧下よりも20℃のマージンが発生します。そして冷却水が沸騰しなければオーバーヒートにはつながらないので、冷却経路の安全性が保たれるというわけです。

スポーツタイプのラジエターキャップには開弁圧の数値が高いものがありますが、これは開弁圧を高めることで冷却水の沸点を上昇させ、オーバーヒートしづらくしているのです。

 
POINT
  • ポイント1・設定圧力で開弁することで冷却経路を保護している
  • ポイント2・オーバーヒート予防には開弁圧力が高い
    スポーツタイプのキャップが有効

リークテスターで圧力を加えて診断

03-1.jpg ラジエターリークテスターには圧力を加えるポンプ、形状が異なるラジエターキャップに対応するアダプターがセットされている。

04-1.jpg バイクのラジエターキャップに適合するアダプターをセットする。リークテスターは主に自動車用ラジエターに対応するため、バイク用ラジエターキャップの中にはテスター付属のアダプターが適合しないこともあるので要注意。

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キャップアダプターにポンプのホースを接続したら、ゆっくり加圧する。キャップから加圧することで、ラジエター本体やホースとの接合部、サーモスタットやウォーターポンプなど冷却経路全体に均等な圧力が加わる。

冷却経路の圧力と沸点の関係が理解できたところで、ようやくラジエターリークテスターの出番です。このテスターの仕組みを簡単に説明すると、冷却経路にポンプで圧力を加えて、その圧力を維持できるかを測定するものです。

このバイクのラジエターキャップの開弁圧は107kPaで、この時冷却水は120℃近くまで上昇しています。しかし街乗り主体で穏やかに走行している時は、120℃などという高温まで温度が上がることはありません。言い換えれば、水温が120℃に達しないならば、冷却経路内の圧力は107kPaまで上昇することはないわけです。

それならそれで良いかのかといえば、実はそういうわけにはいきません。

ホースとパイプの差し込み部やクランクケースとのジョイント部など、経年劣化によってあちこちのシール部分が甘くなり、107kPaより低い圧力でリークが発生すれば、冷却経路全体の圧力が低下します。すると沸点が低下してしまうのです。沸点が低下した状態を認知していなければ、突然オーバーヒートに見舞われる可能性もあります。

ラジエターリークテスターのキャップアダプターをラジエターに装着したら、ポンプで107kPaまで加圧します。この状態でしばらく待っても圧力をキープできれば、冷却経路に漏れはないと判断できます。

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ラジエターキャップの開弁圧以上の圧力を加えると冷却水漏れの原因になるので、むやみに加圧してはいけない。ポンプにゲージがついているのはそのため。外側の数字はkPaの100分の1の数値で、107kPaなので1.1で圧力を維持できれば良好。

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圧力を上げると、ラジエターアッパーホースの差し込み部分から冷却水が滴り落ちてきた。冷却水が漏れるとともに圧力が低下して沸点は低下する。冷却経路の圧力が大気圧と同じなら=水温が上昇しても冷却経路の圧力が上がらなければ、冷却水は100℃で沸騰する。

ところがこのバイクの場合、ポンプで加圧するとラジエター本体とアッパーホースの差し込み部分から冷却水が漏れてしまいました。走行中に冷却水が漏れることはなく、オーバーヒートの経験もなかったにもかかわらず107kPaまで加圧して漏れたのは、幸運にもこれまで冷却水温度が120℃に達したことがなかったということを示しています。

冷却経路からのリークと同時に、ラジエターキャップの状態もチェックできます。テスターに付属するアダプターを組み合わせ、キャップ本体を107kPaで加圧して圧力をキープできるか否かをチェックします。開弁圧以上の圧力が加わった場合、ゴムシール裏のスプリングが押し縮められてリリーフします。一方、ポンプ側のゲージの指示値が107kPaまで上がらない、または一時的に107kPaに達するものの、圧力を維持できずに低下してしまう場合は、キャップ本体の性能が低下していると判断します。

ゴムシールの硬化やひび割れなど、シール性の低下は主に経年劣化によってもたらされます。ラジエターキャップの製造メーカーは、キャップは1年に一度は交換するのが理想的な消耗部品とアピールしています。ラジエターリークテスターがあればキャップの状態を詳しく判断できますが、テスターを持っていなくても定期的にラジエターキャップを交換することで、キャップ不良によるオーバーヒートの心配は少なくなるはずです。



08.jpg テスターに付属するアダプターを組み合わせれば、キャップ自体のテストができる。


09.jpg ポンプで加圧すると、70kPaより圧力が上がらなくなった。これはキャップのシールが劣化していることが考えられる。ちなみに冷却経路が70Kpaだと、冷却水の沸騰温度は110℃となる。キャップが健全な時より10℃下がることになる。


10.jpg ラジエターキャップの裏側には大小2個のシールがあり、キャップ先端側の小シールが冷却経路の圧力を保つ主圧弁だ。シール表面には経年劣化による凹み痕がくっきりとついており、ゴム自体の弾力も失われていることから圧力を維持できなくなったと考えられる。実際にオーバーヒートしていなくても、ラジエターキャップは定期的な交換が必要だ。


 
POINT
  • ポイント1・ラジエターリークテスターで冷却経路をチェックできる
  • ポイント2・冷却経路を加圧することで冷却水のリークを発見できる
  • ポイント3・ラジエターキャップの開弁圧力確認でオーバーヒートを防止
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