バイクのエンジン故障…、サーモスタットが原因かも?仕組みを理解してしっかりメンテナンスをしよう

水冷エンジンの冷却系統に組み込まれているサーモスタットは、水温に応じて開閉して冷却環境を最適に保つための重要な部品です。サーモスタットが故障するパターンには弁が開かない場合と閉じない場合があり、開かなければオーバーヒート、閉じなければオーバークールの原因となります。

トラブルの予兆は分かりづらい部品ですが、その働きを知っておけば突然の変化の理由の予測に役立ちます。

水冷エンジンの冷却の要となるサーモスタット

カワサキGPZ900Rのサーモスタットはメインフレームの下側にあり、上部のカバーは3本のボルトで固定されている。カバーにつながるホースを外したら、ボルトを外してカバーを開ければサーモスタット上部が見える。

エンジン運転時にシリンダーヘッドやシリンダーで発生する熱を冷却水に伝導させて、ラジエターで放熱するのが水冷エンジンの基本的な冷却原理で、走行時にエンジンに当たる風に頼るしかない空冷に比べて温度が安定するのが特長です。

その循環系統に欠かせない部品のひとつが水温と温度を調整する装置であり、冷却水の温度によって開閉するサーモスタットです。冷間時の始動直後はエンジン自体が冷えた状態にあり、シリンダーや燃焼室周辺の温度を早めに上昇させることが燃焼状態を安定につながります。

この時サーモスタットの弁は閉じており、エンジン内部の冷却水はラジエターに流れないため、水温の上昇による混合気の霧化が促進されて安定性が向上します(ただし弁には小さな穴が明いており、ウォーターポンプから圧送された冷却水の一部は循環しています)。やがてエンジンから発生する熱が上昇して、エンジン周辺の冷却水が一定温度に到達するとサーモスタットの弁が開き、ラジエターに流れることで放熱が促進されてオーバーヒートを予防します。

このように、サーモスタットは水冷エンジンにとって冷却をコントロールする重要な部品なのです。

 
POINT
  1. 冷却だけでなく暖機促進にも有利な水冷エンジン
  2. サーモスタットは水温調整の要となる部品

サーモスタット不具合による影響は様々

サーモスタット本体に開弁温度が刻印されており、このサーモスタットの場合82℃で全開となってエンジン内部の冷却水がラジエターに流れる。走行風やラジエターファンで冷却されたり、外気温が低くて水温が下がれば自動的に閉じてオーバークールを防止する。

一般的なサーモスタットは、水温変化によって内部に密封されたワックスが膨張収縮することで自動的に開閉しており、その開閉温度はサーモスタット本体に表示されている場合が多いです。では表示温度通りに開閉しなくなると、どのような不具合が生じるのでしょうか。

サーモスタットのトラブルで多いのが、弁が開かなくなることによるオーバーヒートです。冷間時は暖気促進の目的で閉じているのが正しいのですが、設定された温度になってもサーモスタットが開かなければラジエターに冷却水が回らないため、燃焼室やシリンダー周辺の水温だけが上昇してオーバーヒートにつながります。

水温計を装備するバイクの場合、水温計の針は高温を指しているのにラジエターコアが熱くならない場合、サーモスタットが開いていないという疑いが生じます。逆に弁が開いたまま固着している場合、冷却水は冷間時でもラジエターに循環してしまい、早く暖機して欲しいのにエンジン本体がなかなか暖まらないオーバークール状態となります。

どちらかと言えば、オーバークールはオーバーヒートに比べれば深刻度が低いように捉えられがちですが、運転中はエンジン各部の温度が適正に上昇することで総合的なパフォーマンスが発揮されます。

たとえばエンジン本体の温度に比例して上昇するエンジンオイルは、一般的に60℃台以上で所定の性能を発揮するように設計されています。そのため、低すぎる水温につられて油温も低いままでは、粘度が高すぎてシフトタッチや潤滑性能が悪くなる場合があります。またシリンダーの温度が低いままだとピストンが均等に膨張せず、シリンダーとのクリアランスが広いままでピストンが踊ったりピストンリングに負荷が掛かることもあります。

つまりサーモスタットが閉じたままでオーバーヒートになるのは問題ですが、逆に開いたままでオーバークールになるのも問題なのです。特に外気温が低い冬場はオーバークールの悪影響が顕著になるので、水温計の針がいつまでも低温を指し続けたり、低温を示すインジケーターが消灯しない時は要確認です。

 
POINT
  1. 封入されたワックスの膨張収縮で弁が開閉する
  2. 弁が開いたままのオーバーヒートも、閉じたままのオーバークールも問題

鍋で煮込んで実際の開弁温度を測定する

サーモスタットカバーを復元する際は、ハウジングとの合わせ面のOリングやパッキンが噛み込まないこと。特にこのGPZ900Rのように、カバーを斜め方向からずらしながら被せる機種の場合、Oリングがずれないように注意する。

冷却経路に空気が溜まっていると、エンジン温度の上昇に伴って膨張して冷却水の流れを阻害することがあるので、サーモスタットカバーのエア抜きボルトに適当なホースをつなぎ、エンジンを始動してエアを追い出す。ホースに気泡が混ざらなくなったらエア抜きは完了だ。

サーモスタットがセットされているのは、エンジン本体からラジエターの上部に繋がるホースの中間という場合が多く、具体的な取り付け位置は機種によってまちまちですが、カワサキGPZ900Rの場合はシリンダーヘッドの上部でメインフレームの真下にあります。上下に分割するケースを開けてサーモスタットを取り出すと、本体に弁が開く温度が表記されています。

オーバークールを起こす場合、常温でも弁が開いたままになっているので見れば分かります。オーバーヒートを起こす場合は、本当に表記された開弁温度で開くか否かを知るため、水を張った鍋にサーモスタットと温度計を入れて加熱し、水温上昇と弁の動きがリンクしているかどうかを確認します。設定温度に達しても弁が開かなければそのサーモスタットは異常なので、新品と交換します。

水温が上昇した冷却系統には高い圧力が掛かるので、サーモスタットケースを開いた時には合わせ面の異物をきれいに除去して、新品のパッキンやガスケット(機種によって異なります)を使って復元しましょう。

冷却水やラジエターキャップに比べて、目に付かない場所にあってトラブルも少ないサーモスタットは軽視されがちな面もありますが、冷却系統全般の調整役であることを理解しておき、いざトラブルが発生した際には落ち着いて対応したいものです。

 
POINT
  1. サーモスタットの取り付け位置は機種によってまちまち
  2. 開弁チェックは鍋の中で加温して確認
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