動きの悪いスイッチを無理に使えば摩耗や破損することも。慎重に分解洗浄して磨いてリフレッシュしよう。

ウインカーやホーンなど自分の動きを相手に知らせるためのハンドルスイッチはいつでもスムーズに操作したい。しかし時間の経過と共に可動部分が汚れてフリクションが増えて動きが渋くなることもあります。ハンドルスイッチは部品が細かく構造も複雑ですが、汚れを落とし適度な潤滑を与えることで快適な操作性を取り戻すことができます。

潤滑剤をスプレーするだけでは汚れは落ちない

02-8b.jpg 新車から30年以上を経過したバイクのハンドルスイッチは多かれ少なかれ劣化している。保管が屋内か屋外かによってコンディションの差は明らかで、屋外で紫外線にさらされていたスイッチハウジングは表面がザラザラに白化してノブが折損していることも珍しくない。

03-8b.jpg ヘッドライトのON/OFFスイッチが存在した時代のバイクは、ヘッドライトへの電気は右側のハンドルスイッチに流れてから左側のディマースイッチに入って、HI/LOを選択した後にヘッドライトにつながる。接点が存在するだけ電気抵抗になるので、潤滑不足で動きが悪くなった接点が汚れや腐食が付着すれば光量不足の原因にもなりかねない。

04-8b.jpg スイッチハウジング内の部品は樹脂のハウジング素材にタッピングビスで固定されているので、ビスを緩める際も締める際も雌ネジにダメージを与えないように作業を行う。

サービスマニュアルの配線図を見れば分かりますが、ハンドルスイッチは車体各部に張り巡らされた電装品をコントロールする重要な部品です。例えば左右のウインカーは、メインスイッチがオンになるとウインカーリレーにバッテリーから電流が流れた後にウインカースイッチに到達し、左右どちらかにスイッチを操作することで前後のウインカーバルブに電流が流れて点滅が開始します。ヘッドライトも同様で、バッテリーからの電流がディマースイッチでハイ・ローを選択して通過することで、ライトバルブが点灯します。

ウインカーもヘッドライトも、フィラメントを使った電球からLEDバルブへと進化していますが、スイッチ自体は今でもメカニカルな接点を使った物が主流です。そうなると、接点と可動部が存在することで発生する劣化やトラブルは避けられないものとなります。

ハンドルスイッチ周りの不具合で典型的なものといえば潤滑不足による作動性の悪化と、接点端子の酸化による接触不良です。どちらも半年や1年という単位で発生するものではありませんが、5年10年と経過すると徐々に可動部分のフリクションが増大します。

操作性悪化の影響を受けやすいウインカースイッチの内部を紐解くと、スイッチノブにつながるアームがあり、アームの先端が左右にスライドする接点につながります。接点自体は固定接点と可動接点に分けられ、可動接点にはスイッチ操作時の端子位置を決めるためのスプリングとスチールボールが組み込まれています。

それぞれの部品はエンジンにおけるオイルや、ホイールベアリングにおけるグリスのような明確な潤滑目的の油脂が塗布されているわけではありません。また定期的な交換が指定されているわけでもありません。しかしアームの支点や可動接点や端子が完全ドライ状態であれば、1回の作動時のフリクションは無視できるほどでも、それが積み重なれば明確な摩耗につながります。

バイクメーカーや電装品を開発製造するメーカーでは、標準的な使用期間を元に設計を行っているでしょうが、旧車や絶版車の人気が高い昨今では20年、30年単位で生き残っている中古車は少なくありません。こうしたバイクのスイッチの動きが渋いと感じる時、接点潤滑剤や浸透性のある潤滑スプレーを吹き付けると症状が改善します。ただ、状況が良くなるのは一時的で、スプレーに含まれる溶剤が揮発すると再び動きが渋くなってしまうことも少なくありません。

潤滑不足に加えて汚れが原因でフリクションロスが増加している場合、ドライブチェーンの汚れを落とさずチェーンルブを重ね塗りするのと同じで、潤滑剤が混ざったホコリやゴミがコンパウンドのように作用してしまうという心配もあります。

POINT
  • ポイント1・どんなバイクでもハンドルスイッチが電装系の要となる
  • ポイント2・ハンドルスイッチは経年劣化による作動性の悪化が避けられないので、必要に応じたメンテナンスを実施したい

ハンドルスイッチを分解する際はパーツ構成を入念に確認する

05-7b.jpg ヘッドライトスイッチの接点は焼けや腐食のないきれいな状態だった。パーツクリーナーで洗浄した後にシリコン系のグリスを薄く塗布して復元する。

06-8b.jpg ヘッドライトスイッチのアームの支点部分に組み込まれる段付きカラーとワッシャーは、洗浄後にリチウム系のグリスを薄く塗布する。この支点はタッピングビスで固定されるので、樹脂の雌ネジを破損しないよう締め付け時のオーバートルクに注意する。

07-8b.jpg ホーンスイッチはフレームとボタンを分解するのが難しいタイプだったので、サンドペーパーを接点部分に挟んで表面を磨く。ボタンを押すと大電流が流れる部分なので、接点のコンディションは良好に保っておきたい。

根本的にハンドルスイッチの作動性回復を図るなら、スイッチを分解して洗浄して、可動部分それぞれに適した潤滑を行うのが理想です。ただしハンドルスイッチはそもそも分解整備を行う前提がないため、内部で摩耗や破損が見つかっても補修用の部品は設定されていません。またスイッチの種類によっては簡単に分解できない場合もあるので、すべてが理想通りにできるわけではないことを理解した上で作業を行いましょう。

ここで紹介するスイッチは1980年代のウインカースイッチと、1960年代の旧車用スイッチです。どちらも小さなビスやワッシャーを使ってスイッチハウジングに部品を固定しているので、事前にスマホのカメラなどでそれぞれの部品の組み付け順序を記録しておき、分解時には部品を紛失しないように細心の注意を払いましょう。

1980年代のスイッチは接点部分が組み立てられた上でスイッチハウジングに収まっているので、接点端子までたどり着くには一段と面倒な分解作業が必要です。ここで爪が折れたりスプリングを紛失すると復元が一気に難しくなるので、端子の位置関係やスプリングなどの組み付け状況を入念に確認しながら丁寧に作業します。

スイッチを分解した際には、端子の摩耗や腐食、樹脂部品の摩耗など各部の状況も確認します。ホーンボタンをグリグリと押し回さないと大きな音で鳴らないスイッチを分解したところ接点が焼けていた、ディマースイッチをハイビームに切り替えると点いたり消えたりする原因が端子の摩耗によるものだったという例は、絶版車では珍しいことではありません。摩耗していたからといって交換する部品が入手できるとは限りませんが、電装品の作動状態が不安定な場合、スイッチが原因なのかハーネスや電装品自体に問題があるのかを推測できます。

復元時に塗布する油脂は、樹脂パーツ同士の接触ならシリコングリス、端子の接点には接点グリス、ウインカーレバーのアームなど金属部にはリチウム系やウレア系のグリスが良いでしょう。いずれも塗りすぎは汚れを呼び寄せる原因となるので、薄く塗布するのがポイントです。その上で復元時は部品の組み立て順序を改めて確認します。ありがちなのが小さな端子の裏側から小さなスプリングで与圧を加える部品構成で、スプリングと端子間の絶縁体を入れ忘れるミスです。回路構成にもよりますが、端子→絶縁体→スプリング→スチールボール→車体という組み合わせの中で絶縁体を入れ忘れると、端子→車体が導通状態になり電装品が作動不良を起こしたり回路がショートする場合もあります。

そうした注意を払った上で組み立てたハンドルスイッチは、驚くほど滑らかに作動するようになります。中古車として購入して新車当時の操作感を知らなければ、これが新車当時のスムーズさだったのか!と感動するほどです。

POINT
  • ポイント1・ハンドルスイッチ内部の部品を完全に分解するのが理想だが、細かい部品を紛失しないよう管理することが重要
  • ポイント2・接点部分の端子を着脱する際は、導通すべき回路か絶縁すべき回路かを見極めた上で復元する

分解ついでにスイッチボックスも磨いて見た目もリフレッシュ

08-5b.jpg 画像の製品はモデルチェンジしているが、工具ショップのストレートでは黒樹脂部品のコーディングケミカルを取り扱っている。ストレート以外でも同様の製品はケミカルメーカーから数多く販売されている。

09-3b.jpg ハンドルスイッチなど使えれば見た目は気にしないという意見もあるだろうが、白くかすれた状態と半ツヤ黒を比較すればコーティングしたハウジングの方が何倍も魅力的。ヘッドライトやウインカースイッチの動きも滑らかで実用面でのメリットも大きい。

10-3b.jpg 酸化皮膜に覆われたアルミ鋳物製の旧車用ハンドルスイッチ。金属磨き用ケミカルの前にサンドペーパーなどで下地を作りたいが、形状が複雑なのでスイッチノブやボタンを取り外した方が磨き作業も行いやすい。

11-3b.jpg スイッチハウジングを分解してサンドペーパーで水研ぎして、アルミ部品を磨くケミカルで軽く擦ればしっとりとしたツヤに仕上がり、古さを感じさせない見た目になる。ディマースイッチの支点は汚れを落としてグリスを薄く塗布する。

せっかく機能を回復したのなら、それに相応しい見た目も手に入れたいもの。紫外線によって白化してしてしまった黒い樹脂製のスイッチハウジング、かつてはシリコンスプレーで潤いを与えるのが一般的でした。しかし現在は成型状態の未塗装樹脂パーツ用のコーティング剤が充実しているので、これを塗布してしっとりとしたツヤを回復するのが良いでしょう。このコーティング剤は塗装ではないので、ハウジングのレタリング文字を塗り潰すことはありません。

コーティング剤ではカサカサが回復しない場合、ヒートガンで熱を加えると樹脂そのものの潤いがよみがえることがあります。これは樹脂の種類によって効果が異なるのと、まったく効果がない場合もあるので見極めが重要です。さらに塗装による補修もありますが、未塗装の成型樹脂と塗装仕上げでは質感が異なるのと、スイッチハウジング全体を塗装してした後のレタリングの再現するが難しくなります。

旧車に多い金属製のスイッチハウジングの場合、樹脂製ハウジングより磨き甲斐があります。サンドペーパーや不織布研磨剤で地道に磨くことでしっとりとした光沢から鏡面仕上げまで好みに応じた光沢で仕上げることができます。

スイッチの作動性がガサついたり粘り強く感じられるようになったら、外部からクリーナーや潤滑スプレーを吹くのではなく分解組み立てを行うことで、操作性が大幅に向上するだけでなくその後のパーツ寿命を延ばすことができ一石二鳥となります。

POINT
  • ポイント1・色が抜けてしまった樹脂製のスイッチハウジングには未塗装樹脂パーツ用コーティング剤が有効な場合がある
  • ポイント2・金属製のハウジングはサンドペーパーやコンパウンドで磨き上げるとハンドル周りが引き締まる
 
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