整備不良でキップを切られるなんてつまらない。日常点検よりもう少し本格的な灯火類チェックを実践しよう

原付でもリッタークラスでも公道を走行するすべてのバイクには適切なメンテナンスが必要で、そのために国土交通省ではユーザーが行える範囲の日常点検項目を定めています。エンジンやブレーキなどの点検項目の中で、見落とされがちなのが灯火類。ヘッドライトもウインカーも作動して当然と思いがちですが、そこにもメンテが必要です。走行前に愛車の周囲をグルリと回って、作動状態を確認してみましょう。

昨日まで大丈夫だったのに……が多い灯火類トラブル

2灯式テールランプを採用するカワサキGPZ400F。それぞれの電球は8W/27Wのダブルフィラメントでテール/ブレーキランプとして機能する。テールレンズの下部がクリアになっており、テールランプ点灯時に光が下に抜けてナンバー灯となる。そのため、市販のLEDバルブを装着する際に赤色に点灯するバルブだとナンバー灯も赤くなるため車検に通らないので注意が必要。

電球の端子はスプリングで押されるホルダーの電極に接しており、接触部分に加わる圧力や振動によって時間の経過とともに徐々に端子が摩耗して山が低くなっていく。ホルダー側からの圧力によって端子間に隙間ができることは稀だが、W球の端子の一方だけが減ると接触不良の原因になりかねないので、著し減摩している時は交換する。

数年前までは市販車ではあり得ないと思われていたLEDヘッドライトやテールランプ、ウインカーがすごい勢いで普及しています。電気カスタム好きのライダーはLEDを基板に並べてウインカーやテールランプを自作していたものですが、バイクメーカーや純正部品で採用してしまうと、腕を発揮する場もありません。

どんな部品にも共通しますが、新しい技術が普及する時は一気です。昔はレンズの面積が一定以上なければ車検に通らなかったウインカーも、爆発的に明るいLEDの普及によって今では1円玉と変わらないほどのレンズサイズでも余裕でクリアできるほどです。ヘッドライトにしても、H4などのハロゲン電球を使わなければならないという制約がなくなることで、個性的なデザインであっても光軸や光量がしっかり確保できるようになっています。自動車で見られるようになってきた、ポジションランプとウインカーでレンズを共有して白とオレンジに光るシステムも、LEDがあればこそできる技です。

とはいえそうしたニューモデル以外では、まだまだフィラメントを用いた電球(バルブ)を使用するバイクが圧倒的多数です。電球の中には非常に細いフィラメントがあり、ここに電圧と電流を加えることで電気エネルギーを光エネルギーとして取り出しています。そしてこの手の電球には長短の差こそあれ必ず寿命が来ます。フィラメントが切れたら交換すれば良いのですが、その時がいつなのかはユーザーには分かりません。

昨日まで大丈夫だったのに……というのは、白バイやパトカーに整備不良を摘発された時に真っ先に口をついて出るセリフです。ヘッドライトなら切れればお先真っ暗なのですぐに気づくでしょう。球切れによってリレーの負荷が変化して点滅回数が速くなるウインカーも分かりやすいです。ただし幅広いワット数に対応する頭の良いICタイプのリレーを使ったウインカーの場合、電球が1個切れていても点滅回数が変わらない場合もあるので注意が必要です。

見落としがちなのがテールランプやナンバー照明です。テールとブレーキランプを1個の電球で行うダブル球のうち点灯時間が長いテールだけが切れると、夜間の被視認性が極端に悪くなります。テール/ブレーキ球の場合、両者のワット数の差が顕著なのでライダー自らが走行中にテール球の点灯状況を把握するのは容易ではありません。それに対してブレーキランプが点灯するのは減速や停車中だけで、停車中であれば自車のブレーキランプが後続車に写り込むのを確認するのも容易です。

車検つきのバイクの場合、テールランプやナンバー灯の不点灯は車検不合格の原因としても多く指摘されているようです。昨日まで点灯していたか否かは別として摘発されなかったのは幸運ではありますが、整備不良の状態で走行していたのであれば褒められたことではありません。

POINT
  • ポイント1・普段からメンテナンスしていてもフィラメントを使った電球は突然切れることがある
  • ポイント2・テールランプやナンバー灯は電球が切れて不点灯になっていても気づきにくい

意外に作業内容が多い日常点検項目

スモーク仕様のレンズとテールランプボディの合わせ面にはゴムパッキンが挟まっているが経年劣化でゴムが痩せたり硬化すると密閉性が低下することがある。レンズの内側は思った以上にホコリが付着しているので、中性洗剤できれいに洗うと良い。

電球表面にホコリが付着するとすりガラスのような状態になる。これがすぐさま光量低下につながるわけではないが、クリアであるに越したことはない。ウインカーボディとレンズの気密性の低さは、湿気や水分の浸入によって電球やホルダーの金具部分に錆が生じる一因となる。錆が発生していたらその錆を取り除くのはもちろん、レンズやステーのパッキンの状態も確認しよう。

ホコリが付着した電球はパーツクリーナーをスプレーして、柔らかいウエスで汚れを拭き取る。電球は使用時間が長くなると発光するフィラメントが細くなり、最終的に切断した時点で球切れとなる。幸運にも切れずに長く使用した電球の中には、口金とガラス部分のかしめが甘くなり球だけがグラグラに動くものがある。そうした電球は破損する前に交換する。

灯火類の不具合をいち早くキャッチするために最も有効なのが日常点検です。車検の有無にかかわらず、トラブルを未然に防止して安全に走行するための点検項目は国土交通省により定められています。自動車の場合エンジンルームで5項目、外周4項目、運転席で6項目の計15項目があり、バイクではワイパーやウインドウォッシャー関連を除く11項目となります。自動車と異なりボンネットがない分、バイクの日常点検は容易といえます。もちろんここにはランプ類の点灯、点滅に関する点検も含まれます。

ライディングウェアを着てヘルメットをかぶったら、すぐにでも跨がって走り出したいと思いますが、ここでちょっと我慢して灯火類を作動させた状態でバイクの周囲をグルリと回ってみましょう。エンジンを始動しないとヘッドライトが点灯しないタイプのバイクは、始動してちょっと暖機させる間にできる作業です。

ユーザー車検で車検場に行ったことのあるライダーなら分かると思いますが、検査コースに入る前の灯火類チェックは、ウインカー左右、ヘッドライト上下切り替え、テールランプ点灯から前後ブレーキ操作と、実にリズミカルに行われており、その所要時間はほんの30秒もかからないほどです。ひとりでチェックする場合、前後ウインカーの点滅を車体の横に立って同時に確認し、車体の右に立ってテールレンズに左手をかざしながらテールとブレーキランプの点灯を確認します。ブレーキランプはブレーキレバーとブレーキペダルのどちらでも適切なタイミングで点灯していることが重要です。特にリアブレーキはペダル高さの調整を行った場合、ブレーキスイッチの高さを調整することが重要です。ブレーキランプが点灯していないのに減速しているのはとても危険なので、ペダルを踏んでブレーキがきき始めるより前に点灯するようにスイッチを調整しておきましょう。

灯火類関連で見逃しがちなのがレンズのヒビ割れです。駐輪場やガレージ内でバイクを移動していて柱や隣のバイクにコツンと当たることは稀にありますが、この時に当たり所が悪いとプラスチック製のレンズが意外にあっさりひび割れて、それに気づかないことがあります。ヒビの入ったレンズや一部が欠損したレンズでは車検も通らないので、交換か修理を行わなくてはなりません。

POINT
  • ポイント1・日常点検は整備や車検とは別に、不具合の兆候を発見したり点検時期を知るのに重要
  • ポイント2・灯火類は走行前に車体の周囲を回りながら作動させることでチェックできる

接触不良や電極、端子の摩耗や腐食も要チェック

電球の中でも点灯時間が長く、消費電力が大きい分高温になるヘッドライトの電球は素手で触れてはいけない。指の脂が付着すると点灯時にヒートスポットとなりガラスが割れやすくなると言われている。もし触れた場合はパーツクリーナーで脱脂洗浄してからヘッドライトケースにセットする。

常時点灯式ヘッドライトの現行車の場合、走行中は常に大電流がコネクターを流れている。コネクターとバルブの接点に水分が付着して腐食すると、電気抵抗が増加して熱となりコネクターが焼損することもある。そうしたトラブルを防ぐため、コネクターには接点復活剤や導電性のグリスを塗布しておくと、長期間に渡って電気の流れがスムーズになる。

ヘッドライトバルブとヘッドライトボディの防水防塵のためのダストカバーは、取り付け時に上下が決まっているので正しく装着すること。中心部分にラバーシール組み付け剤かシリコングリスを薄く塗布することで、カバーがバルブに食いつくことなくスムーズに着脱できる。

日常点検の結果、すべてのランプが正常に作動すれば現状では問題ありませんが、先に述べたようにフィラメントを使った電球には今日は大丈夫でも明日切れるかもしれないという宿命があります。そうしたトラブルを回避するには、切れそうな兆候の有無を把握して経年劣化している部分はコンディションを回復しておくことが有効です。時々作動不良になるが軽く叩くと直るという動作が不安定な電球類も、叩くだけでなく取り外して確認するのが有効です。

ウインカーやテールランプには、気密性を高め擦れ音を低減するためボディとレンズの間にパッキンをセットしていることが多いですが、このパッキンがあってもホコリが侵入してレンズの裏側や電球の表面が思った以上に汚れていたり、電球とホルダーの間で腐食が発生している場合があります。

レンズや電球表面の汚れは柔らかいマイクロファイバータオルを湿らせて拭くだけできれいになり、ついでに反射鏡の汚れも拭き取れば視認性の向上も期待できます。ガラス表面のホコリではなく内側に焦げたような黒いススが付着している場合は交換時期です。また電球を取り外して端子が摩耗している場合も、接触不良を引き起こす場合があるので交換しておいた方が無難です。この場合、ホルダー部分底部の端子表面に荒れがないかもチェックしておきましょう。電球が接するホルダー内側に腐食があるなら、丸めたサンドペーパーで錆を削り落として防錆剤か接点復活剤をスプレーしておけば表面保護と導通性確保の一石二鳥となります。

灯火類の中で一番の大物であるヘッドライトは流れる電流も大きいので、端子部分の接触抵抗によるコネクター部分の焼損の有無を確認します。接触抵抗が増えて電流ロスが増えると、ヘッドライトの光量が低下してコネクターに熱が溜まるなど悪影響が重なります。そうなる前に、電球とコネクターの端子接触部分に接点復活剤やターミナルグリスを塗布しておくと良いでしょう。ここでケミカルを塗布しておけば、次にコネクターを外す時に端子から抜けやすくなります。

日常点検では灯火類の点灯、点滅状態やレンズ破損の有無をチェックしていれば問題はありません。しかし長く乗り続けてきたバイクならもう一歩踏み込んで、電球を着脱して摩耗や腐食の有無を確認すれば、トラブルの芽を摘む予防整備にもなります。灯火類は自分の動きを相手に伝える重要な手段でもあるので、突然の不調に慌てることがないよう日頃のメンテナンスを実践しましょう。

POINT
  • ポイント1・レンズとボディの間のパッキンや潰れたり硬化するとランプ内にホコリや水分が入りやすくなる
  • ポイント2・電球とホルダー部分が錆びている時はホルダー内部の錆を落として接点復活剤をスプレーすると良い
 
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