バッテリー上がり注意! 電圧に加えて電流測定で危機回避
スパークプラグに火花を飛ばし、ヘッドライトなどの電装品を動かすために必要なバッテリー。一部のバッテリーレス車を除けば原付からビッグバイクまで大半のバイクに搭載されるバッテリーは、エンジンの回転とともに充電されます。バッテリーのコンディションチェックは端子電圧で行うのが一般的ですが、もう一歩踏み込むとさらに詳細な診断ができることを知っておきましょう。

バイクの発電系は電圧と電流の2方向で考える


赤黒のリード棒に加えて、本体にリング状の測定部分があるのがクランプメーターの特徴。先端が洗濯ばさみのように開きリングの中に電流を測定する配線を通すことで、配線の周囲に発生する磁界を測定して電流値に置き換える。


バイクのメンテや一般的な電気工作で用いるサーキットテスターで測定できる電流値は最大でも1アンペア程度。だがこのクランプメーターは40アンペアと200アンペアのレンジを切り替えて大電流を測定できる。

バイク全体を見ると複雑で理解できないと思ってしまう電気ですが、小学生時代の理科までさかのぼれば「電圧」と「電流」の組み合わせが電気だということ学んでいるはずです。蛇口をどれくらい開けるかが電圧でバケツに溜まる水の量が電流だと、水道にたとえて学んだ覚えもあるのではないでしょうか?

バイクの発電系やバッテリーチェックを行う際、一般的に行われるのはバッテリー端子電圧を測定しながらエンジン回転を上下させて電圧の変化を確認する方法です。
レギュレートレクチファイアの特性にもよりますが、12Vバッテリーならエンジン回転が4000~5000rpm時に14V弱~15V前後まで上昇することが多いはずです。

しかしこれでは電流値が分かりません。つまりバケツ=バッテリーに溜まっている電気の量は分からないのです。水道の例で考えると、ホースが細くても水圧は高くなりますが、バケツがなかなか溜まりません。同じ水圧でもホースが太くなれば、短時間でバケツがいっぱいになります。

これをバイクの発電系とバッテリーに当てはめると、状態を正しく把握するには電圧に加えて電流の測定が重要というわけです。


POINT
  1. 電気系のメンテナンスを行うには電圧と電流をセットで考える
  2. 電圧が高くても電流が小さければ発電量不足になる場合も

クランプメーターがあれば発電電流を測定できる

直流電圧モードでバッテリー端子にリード棒を当てれば、通常の電圧測定ができる。エンジン回転を上げれば端子電圧も上昇することを確認できるが、本当にバッテリーが充電できているか否かは電流測定を行うことでより明確になる。


中学校の理科では電圧計は回路に並列につなぎ、電流計は直列につなぐことを学びます。サーキットテスターの赤黒のリード棒でバッテリーのプラスマイナス端子に触れるのは並列つなぎとなります。一方、回路に直列につないで電流を測定しようとすると、いったん回路を切断しなくてはなりません。また、一般的なサーキットテスターは大電流を測定できるよう設計されていないので、バイクやクルマの発電系チェックには使えません。

ここで重宝するのがクランプメーターと呼ばれる測定器です。

クランプメーターは電流が流れる際に発生する磁界を測定して電流値に換算しています。そのため実際に回路を切断して割り込ませなくても、ハーネスの外側からクランプで挟むだけで電流が測定できるためとても便利です。

電気の流れと書いて電流というだけあって、電圧と電流には異なる性質があります。乾電池は1.5V、12Vバッテリーは12.8Vのように、電圧は電流が流れても流れなくても一定の値があります。これに対して電流は流れていなければゼロ、ある方向への流れをプラスとすれば、反対側に流れる際はマイナスとなります。

バイクの充電系にあてはめて具体的に説明すると、オルタネーターからレギュレートレクチファイアを経由してバッテリーのプラス端子に流れる電流のうち、バッテリーを充電する電流がプラス表示されれば、ヘッドライトや点火系で消費され放電される電流はマイナス表示となります。
このプラスとマイナス表示はクランプメーターの接続方向によって逆に示すこともできますが、バッテリーの充電電流を測定することが多いため、充電時にプラス表示とすることが一般的です。

ちなみに、旧車をはじめ1970年代の絶版車の一部に標準装備されていた電流計も、発電量が多い=バッテリーが充電されている時にはプラス表示、放電量が多い時にはマイナス表示となるよう設定されています。

 
POINT
  1. クランプメーターは配線を挟むだけで電流が測定できる
  2. 電流の値は充電と放電でプラスとマイナスが入れ替わる

エンジン回転を上げても電流値がマイナスのままだと バッテリー上がりに要注意


流れるようなデザインのZ1から一変し、直線的なイメージへフォルムチェンジを果たしたZ1-Rを用意しました。大柄なフロントカウル内には燃料計と電圧計を装備した豪華仕様です。

では電流計を標準装備したカワサキZ1-Rをサンプルとして、クランプメーターを使った電流測定の具体例を説明しましょう。クランプメーターはレギュレートレクチファイアからバッテリーターミナル方向に電流が流れる、すなわちバッテリーが充電されているときに電流値がプラスとなるように配線を挟みます。

レギュレートレクチファイアからバッテリーのプラスターミナルにつながる配線にクランプメーターをセット、リセットしてゼロ点を合わせてからエンジンを始動する。発生電流は回転数の上昇とともに大きくなり、最大で7アンペアほどになった。過充電を防ぐため、アイドリング回転の電流値はゼロか若干のマイナスとなっていることが多い。

この状態でエンジンを始動すると、アイドリング時は0.1アンペア台のプラスか、あるいはほんの少しのマイナス表示かもしれません。そしてエンジン回転の上昇に伴って電流も大きくなるはずです。ただしレギュレートレクチファイアでバッテリーの充電状態を測定して制御しているので、バッテリーの状況が良ければ充電量はあまり大きくなりません。

大電流を消費するヘッドライトを点灯すると、メーター内の電流計の針がマイナス側に振れて充電より放電の割合の方が大きくなっていることが示された。常時点灯が当たり前の現行車ではこのようなことはないが、ヘッドライトを任意でオン/オフできた旧車絶版車は、アイドリング時にプラスマイナスゼロ、ヘッドライト点灯でマイナスが通常だ。

電流が大きく動くのは、ヘッドライトやブレーキランプなど電力を消費する電装品を使った時です。バッテリー電圧12.4Vで55Wのヘッドライトを点灯すると、単純計算で4.4アンペアの電流が消費されます。この際の消費量が発電量を上回れば電流測定値はマイナスとなり、バッテリーは放電状態になります。

ヘッドライトとテールライトを点灯すると、アイドリング時にバッテリーから2.75アンペア放電していることが数字として分かる。バッテリー電圧が12.5Vと仮定すれば、電装品で35Wほど消費されていることになり計算が合う。エンジン回転数を上げればマイナスがプラスに転じてバッテリーが充電されるが、ナビ代わりのスマホの充電やバッテリーから電源を供給する電熱ウェア類を使用すると、発電能力の少ないバイクでは放電過多によるバッテリートラブルも心配になってくる。

エンジン回転を上げて発電量を増すことでマイナスが解消すれば再びバッテリーは充電されますが、過剰に放電され続けて点火用の電流まで消費すればエンストしてしまいます。
特に絶版車においては、スマホの充電や電熱ウェアなど1970年代には存在しなかった電気系アクセサリーが増えたことで、走行中のバッテリー上がりのリスクは増えているのが現実です。端子電圧は13~14Vまで上昇するのに、夜間や電熱ウェアを使うとバッテリーが上がってしまう時には、充電電流を測定してみると原因が分かるかもしれません。

 

POINT
  1. アイドリング時の電流は小さくても問題ない
  2. 電流値はエンジン回転数に比例して大きくなる
  3. 電装品で使用でマイナスとなった電流がエンジン回転上昇でプラスに転じことが重要
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