エンジンからジワジワにじむオイル漏れ。圧入タイプのオイルシールなら外側から交換できる

ドライブシャフトやチェンジシャフトなど、エンジン内部から取り出すシャフト類にはオイル漏れを防ぐオイルシールが組み込まれています。このシールの要はリップ部分の柔軟性と滑らかさで、経年変化などで性能が低下するとオイル漏れを引き起こす原因となります。シャフトやシール近辺にオイルにじみを発見したら、早めの交換が必要です。

リップの接触でオイル漏れを防ぐオイルシール

機種によって異なるが、このバイク(ヤマハAT90)はエンジン左側にクラッチレリーズアームがあり、クラッチを断続するプッシュロッドが左側から貫通している。そのためドライブスプロケット周辺には3個のオイルシールが圧入されている。

オイルシールが見えないほど堆積していたチェーンルブと泥が混ざった汚れを取り除いたところ、チェンジシャフトのオイルシールからミッションオイルが滲みだした。製造から半世紀を超えている旧車なので、シールが劣化していても何の不思議もない。

フロントフォークのアウターチューブやホイールのハブ、エンジンであればチェンジシャフトやアウトプットシャフトやクラッチのプッシュロッドに組み込まれているのがオイルシールです。フロントフォークを例にすれば、アウターチューブ内部にフォークオイルがあり、その中をインナーチューブが摺動しています。アウターチューブ端部に圧入されたオイルシールには、アウターチューブ内のオイルを外に漏らさず、外部から水分やホコリなどを侵入させない役割があります。

オイルシールを構造面から見ると、一般的には回転や摺動する部品と接するシールリップ部分と、外部からの侵入を防ぐダストリップ部分の2つのリップで構成されています(用途によってはリップがひとつのシングルリップもあります)。

単なる蓋であれば、Oリングや液体ガスケットなどを併用しながら穴を塞げばオイル漏れを防止できますが、回転や摺動など部品がシールの中心を貫通しながら、なおかつ内部のオイルやグリスを漏らさないオイルシールはとても高い精度が必要で、性能を維持するにはそれなりのケアが必要です。

シールリップがオイルを止めるためには、接触している部品の表面が滑らかであることが重要です。当たり前の話ですが、シャフトの表面がサンドペーパーのようにザラザラであれば、リップは摩耗して気密性を発揮できません。

フロントフォークであれば、インナーチューブの摺動面の硬質クロームめっきに点サビが発生すれば、そのサビがシールシップ部分を往復するたびに傷をつけます。インナーチューブはドライブスプロケットがつながるアウトプットシャフトのように回転せず、常に同じ位置にあるので、シールリップも一カ所だけが点サビで擦られることでダメージが拡大して、やがてフォークオイルが漏れ出します。ただ、フロントフォークのアウターチューブにセットされたオイルシールは、普段バイクに乗っていても目に付きやすい場所なので異常に気づきやすいという面はあります。

一方で、エンジンで使用されているオイルシールは、フロントフォークとは状況が異なります。アウトプットシャフトのオイルシールはドライブスプロケットの裏側にあり、飛散したチェーンルブによる汚れが堆積しやすく、ダストリップは厳しい状況に置かれます。クランクケース内を貫通するクラッチのプッシュロッドは回転でも摺動でもなく往復運動となり、汚れたロッドをオイルシールに押し込むような動作になります。

チェンジシャフトをシールするオイルシールは、シフトチェンジ動作によるシャフトの回転角度は僅かですが、アウトプットシャフトと同様に砂利などを巻き込んだチェーンルブで汚れ、シフトチェンジ動作によってシャフト自体がこじられることでリップに対して横方向の力が加わるのが特徴です。

こうした過酷な環境に置かれたオイルシールを長持ちさせるためには、何はともあれシール周辺の汚れを放っておかないことが重要です。ドライブスプロケット周辺は油系と砂利や土系の汚れが付着しやすい部分であり、その汚れがオイルシール付近にあればダストリップやシールリップにダメージを与えるであろうことは明白です。

そして適切なケアを行ったとしても、ゴム部品であるオイルシールは経年劣化によって硬化したりリップが傷むのは致し方ないので、オイル漏れが始まったら早急に交換することが重要です。シールリップが切れたからといって、いきなりクランクケース内部のオイルが全部漏出することはありません。しかし漏れ出したオイルはさらにスプロケットカバー内部の汚れを加速させる要因となり、他のオイルシールにも被害が拡大する恐れがあるので、早めに対策することが重要です。

POINT
  • ポイント1・オイルシールはエンジンやフロントフォークなどの内部のオイルを外部に漏らさず、回転や摺動などの運動部分の気密性を保つ
  • ポイント2・シールリップが傷つくとオイル漏れにつながるので、オイルシール周辺の汚れはこまめに除去する

オイルシールには圧入タイプと挟み込みタイプがある

カワサキZ1のアウトプットシャフト周辺の様子。クランクケースにはアウトプットシャフトやクラッチのプッシュロッド、チェンジシャフトのオイルシールがつかないことが分かる。

3種類のオイルシールはクランクケースにビス留めされるトランスミッションカバーに圧入されている。このカバーはエンジンがフレームに搭載された状態でも着脱できるので、オイルシール交換はとても容易。Z1系からZ1000J系、ニンジャやZZR1100などの水冷モデルもこの仕様を踏襲している。

トランスミッションカバーをエンジンに装着するとこのようになる。

エンジン内部から外部に出るアウトプットシャフト、チェンジシャフト、プッシュロッド部分に組み込まれたオイルシールは、組み付け方法によって2タイプに分けられます。ひとつは圧入タイプで、もうひとつは挟み込みタイプです。

圧入タイプは文字通り、オイルシールのハウジングに外から押し込んでセットします。クランクケースが左右分割の単気筒エンジンでは、オイルシールはすべて圧入タイプとなります。

対する挟み込みは、上下分割タイプのクランクケースのアウトプットシャフトで使われることがあるもので、オイルシールの外周にツバをクランクケースの溝に合わせてセットします。よく知られたところではホンダCB750Fシリーズのアウトプットシャフトのオイルシールがこのタイプです。

クランクケースでツバを挟んでいるので簡単に抜けないのが利点ですが、いざシールリップがダメージを受けてエンジンオイルが漏れ始めたら、クランクケースを分割しないと交換できないので補修作業はとても大がかりになります。

上下分割タイプのクランクケースでも挟み込みではなく、圧入タイプのオイルシールを採用しているエンジンは多く、オイルシールが抜け出ないように外側からプレート状のリテーナーで押さえつけているものもあります。

圧入と挟み込みはどちらにも一長一短がありますが、ことオイルシール交換の難易度だけに注目すれば圧入タイプの方が容易です。

アウトプットシャフト周辺のオイルシールの組み付け方法で個性的なのは、カワサキの4気筒シリーズです。Z1/Z2からZZR1100/1200に至るまで、アウトプットシャフトとクラッチプッシュロッド、チェンジシャフトのオイルシール3点セットはクランクケースに直接セットされておらず、クランクケースにビスで固定されているトランスミッションカバーに圧入されています。このため、シール部分からオイル漏れが発生した際は、トランスミッションカバーを外すことで3個のオイルシールを簡単に交換できるようになっています。

POINT
  • ポイント1・クランクケースに装着されるオイルシールには、圧入タイプと挟み込みタイプの2種類がある
  • ポイント2・クランクケースの合わせ面につば付きシールを挟み込むタイプは、圧入タイプより交換に手間が掛かる

圧入タイプのオイルシールならエンジン外部から交換できる

先端が尖ったラジエターホースピッカーをオイルシールに突き刺してハウジングから引っ張り出す。チェンジシャフトとシールリップの接触面に傷が付くと新たなオイル漏れの原因になるので、シャフトを引っ掻かないように注意する。

取り外した古いシールのリップ面には明らかな傷は見えないが、ゴムの弾力性は失われており、おそらくシャフトを締め付ける圧力が低下していると思われる。オイルシール本体に記載された「12 22 5」の数字は「内径12mm 外径22mm 厚さ5mm」という本体寸法を示している。

オイルシールを通す際にチェンジシャフトの端面でシールリップを傷つけないよう、ビニールでカバーしてから通すと良い。また、シール外周には潤滑とオイル漏れ防止を兼用するため液体ガスケットを薄く塗っておく。

ここでオイルシール交換作業を紹介するのは、1960年代に製造されたヤマハAT90の例です。先にチェーンルブが堆積したクランクケースを灯油で丸洗いする投稿で用いた車両で、オイル汚れを洗浄した後にミッションオイルを交換してしばらく経過したところで、チェンジシャフトのオイルシールからジワジワと滲みが発生し始めました。シール剤のように働いていた汚れを落としたことで、シール機能の劣化が露呈したようです。

すでに製造から50年を経過しているバイクなので、オイルシールがプラスチックのように硬化していても当然なので、アウトプットシャフトとクラッチのプッシュロッドと合わせて交換します。このエンジンのクランクケースは左右合わせで、オイルシールはすべて圧入タイプなので、古いオイルシールを取り外せば交換は容易です。

オイルシールの外し方にはいくつかの方法があります。シャフトとシールの間に薄いフック状のツールを滑り込ませて、スライディングハンマーで引く方法。オイルシールの表側にタッピングビスをねじ込んで、プライヤーなどで引き抜き方法。ここで使用したのはぴったり密着したラジエターホースを外す際に、ホースとラジエターの口金の間に差し込んで隙間を広げるラジエターホースピッカーという工具を用いた方法です。

ホースピッカーは先端が鋭利で軸部の強度が高いので、シャフトに傷をつけないように注意しながらダストシールの隙間に差し込んでこじれば、オイルシールを簡単に取り外すことができます。

アウトプットシャフトのように回転する部分は、オイルシールのリップによって接触部分が摩耗している場合があります。ただ、シャフトの外側にはカラーがセットされており、実際にはオイルシールと接するのはカラーという場合も多いので、リップによって摩耗しているのがカラーであれば、カラーとオイルシールを交換すればオイル漏れを止めることができます。チェンジシャフトの場合は回転ではなく決まった角度の範囲内で動いているだけなので、リップとの摩擦によってシャフトが摩耗することは少ないと考えて良いでしょう。

オイル漏れが発生した部分のオイルシールは、今なお供給されている純正部品を使用します。オイルシール自体は工業規格でサイズが決まっているので、シール自体の寸法表記から標準品を購入することもできます。このシャフトの場合、内径12mm、外径22mm、厚さ5mmを使用しています。ただしすべての部分のオイルが標準品というわけではなく、中には機種専用品もあるので注意が必要です。

新たなオイルシールを組み付ける際は、リップに傷をつけずハウジングに対して傾かないようまっすぐ圧入することが重要です。チェンジシャフトの突き出しが長いので、ここではシール径に合った塩ビ製パイプで押し込みました。

圧入タイプのオイルシールであれば、多くの場合は専用工具を用意することなくシール交換が可能です。エンジンオイルやミッションのオイルのにじみを発見したら、なるべく早く対処しておきましょう。

チェンジシャフトが長くソケットでは届かないので、ホームセンターで手に入る塩ビ製のパイプでオイルシールを圧入する。ハウジングに対して傾かないことが最重要ポイント。

このバイクの場合、オイルシールとほぼ同径のプレーンワッシャーが被さってCクリップで位置決めされる。それによってチェーン周りの油や泥汚れは付着しづらいが、オイルシールの寿命を延ばすには著しく汚れる前に洗浄することが有効だ。
POINT
  • ポイント1・古いオイルシールを取り外す際は、シールに接するシャフトやカラーを傷つけないように注意する
  • ポイント2・新しいオイルシールをセットする際は、外周に液体ガスケットを薄く塗布してパイプなどで平行に圧入する
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