
クランクケースの合わせ面からほんの少しすつにじむエンジンオイル。原因を特定して対処するのが正しいのは分かっていても、エンジン全バラは荷が重い。そんな時はエンジンの外側から液体ガスケットを塗って様子を見るのもひとつの手段です。その場しのぎと思われがちですが、想像以上に功を奏する場合もあります。
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液体ガスケットやパッキン紙を使っても漏れることはある

内部のオイルや冷却水が漏れないように、エンジン部品の合わせ面には一般的にパッキン紙を挟んだり液体ガスケットを塗布しています。それらは一度組み立てられたら分解するまで気密性を保ち続けるのが理想です。
しかし中には、分解していないにもかかわらず経年劣化によってオイル滲みが発生する場合があります。それは長年乗り続けてきたバイクだけでなく、メーカーが新車を製造する際にも発生する可能性があります。部品の製造や管理が厳密ならばそうそうありませんが、例えば鋳物製部品を鋳造する際に巣穴ができたり、加工上の不具合で目に見えないようなクラックが入ってしまうこともゼロとはいえません。
新車からしばらくの間は問題がなくても、そうした不具合は後々になって発症することがあるので厄介です。家電製品でも「●●タイマー」というフレーズがありますが、大量生産される工業製品のひとつであるバイクにも製品不良というより運、不運の問題で何らかの不具合が発症することがないとは限りません。実際に、そうしたバイクや症状に遭遇したことがあるライダーもいることでしょう。
クランクケースの合わせ面から漏れるほどではなく、わずかににじむような状況はオーナーにとってどうにも気になるものです。中には「漏れてくるのはオイルが入っている証拠だから」と軽く捉えるライダーもいますが、何とかしたいと思う人も多いはず。
このような場合にはエンジンを分解して合わせ面のパッキン紙を交換したり、液体ガスケットを塗り直すのが根本的な対策方法です。唯一無二の正攻法と言っても良いでしょう。ただ、僅かなオイル漏れ以外に不具合がないのに(オイル漏れ自体がすでに不具合ですが)エンジンを分解するのは作業内容としてバランスが悪いと感じるのも事実です。
- ポイント1・機械的な損傷やトラブルがなくても、エンジン部品の合わせ面からエンジンオイルや冷却水が僅かににじむこともある
エンジン外部から液体ガスケットで目止めできることがある




そんな時に試しにやってもらいたいのが、オイル漏れ部分の外側から液体ガスケットを塗布する作業です。そんな手抜き作業で対処できるわけがないと馬鹿にするかも知れませんが、段取りをしっかり行えば実用性の高い補修になります。ここでは液体ガスケットを使用していますが、外部からスプレーしてゴム皮膜を形成することでオイルや水漏れを止めるリークリペアという名称のケミカルも存在し、多くのユーザーから信頼を集めています。
エンジン外部からオイルや水漏れを塞ぐ際に重要なのは、液体パッキンを塗布する部分の脱脂洗浄を入念に行うことです。液体パッキンが硬化後にシール効果を発揮するといっても、塗布面に油分が残っていたら密着しません。オイルの漏れがほんの僅かであればパーツクリーナーをスプレーしてウエスでしっかり拭き取った状態で塗布しても良いでしょう。
しかし一晩止めておくと地面にオイルが垂れた痕が残るぐらいの漏れ具合なら、エンジンオイルを一旦抜いて、新たに漏れないようにしてから洗浄して塗布した方がしっかり密着するはずです。
ここで紹介するのは原付2ストロークエンジンのクランク室からの僅かな滲みで、内容的にはガソリンと2ストオイルの混合物となります。4ストのエンジンオイルや2ストのミッションオイルのように、クランクケース内に溜まっているオイルが流れ出ているわけではありませんが、明らかに一次圧縮が漏れているとなるとパワーダウンやエンジントラブルにつながるためオーバーホールが必要です。
今回は一次圧縮が漏れるほどではなく、クランクケース下部の合わせ面に沿って染みのような滲み痕がある程度だったので、パーツクリーナーで脱脂洗浄を行った上で、耐ガソリン性の液体ガスケットを塗布しました。
ちなみに、液体ガスケットは主成分の違いによってシリコン系と溶剤系に分類され、ガソリンが触れる部分には溶剤系のガスケットを使用します。ここで使用したパーマテックス製のモトシール1はエンジン周りのメンテナンスや補修で重宝するケミカルで、塗布後24時間で完全硬化します。
余計なところにはみ出さないようマスキングテープで養生し、塗膜がなるべく均一になるよう小筆を使って塗布し、24時間の硬化時間を取った後は僅かなオイル漏れが完全に止まりました。液体ガスケットやリークリペアですべてのオイル漏れを解消できるわけではありませんが、オーバーホールするまでの対症療法としてはトライする価値はあるといえるでしょう。
- ポイント1・エンジン外部から液体ガスケットや専用ケミカルをスプレーすることでオイル滲みや漏れを止められることがある
- ポイント2・オイル漏れや滲みを修理する際は、液体ガスケット塗布面の脱脂洗浄を入念に行う