押してもダメなら引いてみる!?ケーブルの給油は端から端まで行き渡らせるのが肝心

スロットルやクラッチのデリケートな操作を伝達するためのケーブルは地味ながら重要な役割を担っており、スムーズな作動性にとって定期的な洗浄と潤滑は欠かせません。油分を補給する手法はひとつではありませんが、中途半端は給油はケーブル内に汚れを溜めるだけなので要注意です。

ケーブルのフリクションで走りのテンポがずれることもある

カワサキGPZ400Fのスロットルケーブルは引き側と戻し側の2本。ハンドルスイッチ部分とは別に中間部分にもアジャスターがある。その代わり、スロットルドラムホルダーに組み付けられるケーブル端部には調整機能がない。

洗浄や給油でクリーナーやオイルを注入しても中間部分のアジャスター部分から漏れてしまうので、梱包用のラッピングテープを巻き付けてシールする。ビニールテープでもかまわない。

スロットルケーブルの役目を電気信号に置き換えた電子制御スロットルが普及しはじめたことで、アナログなスロットルケーブルでは考えられない緻密なコントロールが可能になっています。それと同時に、電子制御スロットルによってケーブルにまつわるメンテナンス項目もひとつ、消滅しました。

バイクを運転する際に当たり前のようにスロットルを操作していますが、ケーブルの動きが悪くてフラストレーションが溜まることがあります。中でもありがちなのが、全閉から僅かにスロットルを開けた時のフリクションや戻りの悪さ。エンジン回転がスパッと落ちず、アイドリングより僅かに高いあたりでグズグズしていて、スロットルを逆に回してようやく回転が落ちる時など、何かモヤモヤするものです。

この症状については給油とは別に、ケーブルのスロットルからキャブまでのケーブルの取り回しやレイアウトが原因となる場合が多いので、ガソリンタンクやハンドル、キャブレターの着脱を伴うメンテナンスを行う場合には注意が必要です。フレームのヘッドパイプからタンク下の周辺は、4気筒エンジン車ともなれば限られたスペースの中に電装系のメインハーネスやイグニッションコイルなどの部品がひしめき合い、深く考えずにスロットルケーブルを配置すると、押されたり曲げられたりで動きが悪くなることがあります。

スロット開度が大きくなれば、キャブ側のリターンスプリングが強く引かれるため閉じようとする力が大きくなりますが、小さな開度ではケーブルのフリクションに負けてしまうのです。そのため、ケーブルを着脱する作業を行った後でスロットルの動きに違和感を覚えた時は、ケーブルの取り回しを再確認してみましょう。

同じことはクラッチケーブルにも当てはまります。スロットル側に比べてケーブル自体が太くスプリングも強いクラッチですが、ハンドルバークランプやヘッドライトステー周辺をどのように取り回すかだけでレバーの重さが変化して、微妙な半クラッチの操作性に影響します。電子制御スロットルと油圧クラッチの組み合わせならこうした気遣いは不要ですが、世の中にはまだまだケーブル仕様のバイクが大量に走っており、取り回しの悪さや潤滑不良でフリクションが多いまま乗っているライダーも少なくありません。

POINT
  • ポイント1・スロットルやクラッチケーブルの動きが悪い場合、潤滑不良と同時に取り回しの悪さをチェックする
  • ポイント2・ケーブルを交換する際は、操作性に影響を与えないルートを探しながら、カーブの曲率が大きくなるよう配置する

給油の前の洗浄で汚れとサビを洗い流すことが重要

パーツクリーナーのノズルが細ければ、アウターとインナーケーブルの隙間に挿入してクリーナーをスプレーできる。アウターチューブ内に行き渡って反対側から流れ出てくるクリーナーは真っ黒に汚れているはずなので、インナーをできる範囲でストロークさせながら洗浄して、クリーナーが透明になるまで洗い流す。

ケーブルインジェクターは便利な道具だが、アウターケーブルの金具径によってはインジェクターのゴムシール内径がフィットしない場合もある。両者の径がぴったり合って潤滑剤のノズルも隙間無く挿入できれば、実に効率良く潤滑剤を送り込むことができる。

スーパーやホームセンターで購入できるジッパー付きビニール袋の端を少し切って、アウターケーブルを挿入してビニールテープを巻けば、簡単にオイル注入ジョウゴができる。この袋にエンジンオイルやワイヤーオイルを入れてまっすぐ吊しておけば、勝手に流れ込んで内部が潤滑される。

スロットルやクラッチケーブル、スクーターに多いドラムブレーキであればブレーキケーブル、さらにスピードメーターやタコメーターが機械式であればそれらのケーブルまで、すべてのケーブルには適切な油分が必要です。

フリクション化と長寿命化のため、現在のケーブルはインナーにステンレス製の複より線を使い、アウターの内面にはテフロンチューブを使用するなど進化を続けています。しかし屋外での走行を続けるうちにアウターとインナーの隙間にはゴミや汚れが入り込み、同時に雨天走行や保管中に雨水が入ることもあります。またケーブルをレイアウトする際はなるべくゆるい曲線を描くようにして、小さく曲げないようにすることが肝要ですが、それでもカーブ部分ではインナーケーブルがテフロンチューブに擦れて摩擦を生み出すのでメンテナンスが欠かせません。

走行距離や保管状況によって油分切れに至るまでの期間や時間はまちまちですが、あるプロメカニックの話によれば、12ヶ月点検を行う際は各部の動作チェックのついでに流れでケーブル洗浄と給油を行うそうです。この作業は必須ではありませんが、給油によってケーブルのライフは確実に伸び、点検後のユーザーの多くが軽くなった操作性に気づいて驚くそうなので、給油に効果があるのは確実なようです。

給油を行う際は、ドライブチェーンやベアリングのグリスアップと同様に、先に洗浄することが重要です。ケーブル内部が汚れた状態で新しいオイルを注入すると確かにケーブルの動きは良くなりますが、溜まった汚れがかき混ぜられることで広く拡散したり、固形化した汚れに中途半端に油分が加わることで粘度が上昇して軽快さが低下する可能性もあります。

ケーブルの端にインジェクターを取り付けてスプレータイプのパーツクリーナーを吹き込んだり、ビニール袋で工作した簡易ジョウゴを貼り付けて灯油などを流し込むなど、洗浄にはいくつかの方法があります。インナー端部にタイコがないスピードメーターやタコメーターケーブルは、一方に引き抜くことができれば灯油などに漬け込んで染み込んだ汚れを溶かしながら落とすこともできます。

ただし、灯油で洗浄を行った場合はアウターケーブル内部にパーツクリーナーをしっかりスプレーしてすすいで灯油成分を除去してから油分を与えることが重要です。さもないとせっかく注入した油分が内部に残った灯油で定着できず、潤滑被膜ができずに早期の摩耗につながるおそれがあります。

また、パーツクリーナーや灯油を注ぎながらインナーケーブルをできる範囲でストロークさせたときに黒い汚れに混ざって赤茶色の液体が流れ出てきたら、ケーブルのサビが進行している可能性があります。ケーブルが切れるのはタイコ付近と相場は決まっていますが、切れていなくてもサビによって内部のフリクションが増加している場合、油分を注入しても操作時のザラついた感触は改善しないこともあるので、そのような場合には予防的に新品に交換しても良いでしょう。

POINT
  • ポイント1・ケーブルに給油する前には必ず洗浄を行う
  • ポイント2・洗浄に灯油を用いた場合はパーツクリーナーですすいでから給油を行う

スプレーオイルを圧送しても粘度低めのオイルを吸引しても良い

缶スプレーほどの圧力はなく、重力落下より作業スピードを上げられる吸引式。手元にあったシリンジとビニールチューブで、袋のオイルを吸ってみる。

いろいろなところから二次空気を吸いながらも、シリンジのピストンを引くとオイルが流れ出てきた。どんな方法でも、アウターケーブル内にオイルが行き渡れば潤滑の目的は達成できる。

時間をかけてオイルがジワジワと流れ出てくると、キャブレターのスロットルドラム周辺が汚れてしまうので、エアーブローガンで余分なオイルを吹き飛ばす。これで脱脂されてしまうわけではないが、あまりしつこくやり過ぎるとせっかくの油膜が少なくなってしまうので適度にブローする。

スロットルケーブルを復元する際は取り回しでフリクションが大きくならないように注意して、スロットルドラムにケーブルのタイコをセットしたらグリスを塗布しておく。

ケーブルの潤滑に使うケミカルにはワイヤーオイル、ワイヤーグリースといった専用品があります。一般的な浸透潤滑性の高いスプレーオイルも使えますが、ケーブル専用品には水やホコリが付着しても潤滑性が維持できる特長があります。さらにアウターケーブルの内側が金属のスパイラルワイヤーがむき出しの旧来のケーブルの場合でも、インナーケーブルとの接触部分の潤滑性を確保できるよう成分が調整されている製品もあります。

金属同士が接触するという点を考慮すれば、エンジンオイルを注入するのも悪くありません。ただしその場合は粘度は低めで、アウターケーブル内にオイルを通した後で軽くエアーブローして余分な油分を排出するぐらいの手間を掛けた方が良いかもしれません。エンジンオイルの極圧性や潤滑性の高さは間違いありませんが、油温が上がらない状況ではどうしてもワイヤーオイルに比べて粘度が高く、スムーズながらやや抵抗感が強く感じられる場合があります。

どのようなオイルを使うにしても、ケーブルの端から端まで均等に油分を行き渡らせることが最も重要です。給油前の洗浄に念を入れたならなおさらです。ケーブルインジェクターを使ってワイヤーオイルを注入する際は、多少入り口側から逆流しても気にせず、とにかく反対側からオイルがジュブジュブと流れ出てくるまでしつこいほどにスプレーします。スプレーを終えたら、インナーケーブルをストロークさせ、オイルが行き渡るようにアウターケーブルの中でインナーを回しておきます。スプレー給油は手軽で作業も短時間でできるのがメリットですが、ケーブル内の狭い隙間をガスの勢いで押されてしまうので、若干ながら心配な部分もあります。

その点では、ベテランメカニックの中には今も実践している人もいる、ビニール袋にいれたオイルを重力の力でケーブル内に流し込む方法は手間と時間は掛かりますが、ケーブル内部を確実に行き渡ります。またケーブルを縦向きに置いておくことで、余分な油分がケーブルの下端から流れ出すという利点もあります。

さらにもうひとつ、ケーブルの一方からオイルを入れながら反対側からシリンジで引き抜くという方法もあります。これは重力頼みの自由落下より短時間で作業ができ、スプレー缶のガス圧より強制排出力が弱いためケーブル内をオイルがゆっくり行き渡ります。いずれの方法でも目的はひとつ、ケーブル内に油分を行き渡らせることです。

この作業によってよほど鈍感なライダーでない限り、スロットルやクラッチ操作がスムーズになることが分かるはずです。タイヤの摩耗やサスペンションのヘタリと同様に、ケーブルのフリクションロス増加もある日突然発生するものではないので気づきづらい面はありますが、徹底洗浄とこだわりの給油を行った直後の操作感を覚えておき、これが重くなったりザラッとした感覚になるたびに洗浄と給油を行えば、快適な操作感とケーブルの長寿命化がきっと両立できるはずです。

POINT
  • ポイント1・スプレーケミカル、重力落下、吸引など方法を問わず、ケーブル内に確実にオイルを行き渡らせるよう工夫する
  • ポイント2・ケーブルの洗浄と給油は一度だけではなく定期的に行うことが重要
 
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