キャブでいじるのはジェットとニードルだけじゃない。セッティング前には条件を整えることが重要

ジェットやニードルを変更することで混合気の濃さを調整できるのがキャブレターです。エンジン本体や吸排気系の仕様がノーマルであれば部品交換は不要ですが、それらに手を加えて吸気の状態に変化が生じた場合はセッティングした方が良い場合があります。しかしそれ以前に確認しておく部分があります。そしてこれはセッティング変更時だけでなく、ノーマル状態で使用するキャブレターにとってもまた重要なポイントとなります。

なにはともあれ油面が最重要。多気筒キャブなら高さを揃えるのが大前提

002-3.jpg フロートバルブがバルブシートに軽く接触し、フロートバルブ後部のプランジャーが押し込まれていない状態で、キャブ本体とフロートチャンバーの合わせ面からフロート下面までの高さを測定する。フロート高さは多くの機種のサービスマニュアルに記載してあるが、規定値を外れている時に調整が可能か否かはフロートの構造や素材によって異なる。非調整タイプの場合はフロート本体を交換する。

003-3.jpg 先端の円錐部分にバルブシートとの当たり痕があるフロートバルブは、フロートが上昇して閉じても気密性が悪くガソリンが流れ続ける可能性がある。またバルブシートの当たり面にゴミが付着していたり腐食している場合も漏れの原因になるので、綿棒に金属磨き剤を付けて磨いておく。

003_1.jpg キャブレターのタイプによっては、バルブシートが取り外せるものもある。この場合、バルブシートのOリングに亀裂や切断がないことを確認しておく。経年劣化で潰れ癖が付いたO リングを再使用すると、取り外し前と当たり所が変わって漏れ始めることもある。ガソリンタンクがキャブより高い位置にあれば、Oリングがダメになれば重力で流れ込もうとするのだ。

空気が流れる通路であるベンチュリーを流れる空気の量に合わせて、フロートチャンバーからガソリンが吸い出されるのがキャブレターの原理です。アイドリング時はスロットル開度が小さくベンチュリーを流れる空気も少ないため、吸い出されるガソリンの量は少なく、スロットル開度が大きくなるにつれてベンチュリー内を流れる空気が多くなるため、吸い出されるガソリンも多くなります。

キャブレター内部ではパイロットジェット(スロージェット)、ジェットニードル、メインジェットの組み合わせによって吸入空気量に合わせたガソリン供給を行っています。そのため、エアクリーナーボックスをパワーフィルターに交換したり、マフラーを変更するなど吸排気系のバランスを変更して、同じスロットル開度に対して流れる空気の量が変化した場合には、その変化に応じてガソリン流量を変えるためにジェットやニードルのサイズを変更します。

これがキャブセッティングと呼ばれる作業で、あくまでキャブが吸い込める空気量に応じて行う作業であることを理解しておくことが重要です。現状よりもっと多くのガソリンを供給すればエンジンパワーがアップするはずだと考えてジェットの番数を大きくしても、そもそもエンジンが空気を吸っていないのならガソリンの流量も上がりません。

さらに、キャブセッティングの実作業を行う際の前提条件として押さえておくべきポイントがいくつもあります。

まず最初に確認するべきなのは、フロートチャンバー内のガソリンの油面高さです。フロートチャンバー内の油面はフロートの浮沈で一定に保たれています。そしてキャブレター開発時には、油面の基準値が設定されています。この基準値に対して実際の油面が高い場合、ジェットから出るガソリンは多く、つまり混合気は濃くなり、油面が低ければジェットから出るガソリンは少なく、詰まり混合気は薄くなります。フロートチャンバー内のガソリンはベンチュリーを流れる空気が発生する負圧で吸い出されますが、油面がベンチュリーに近ければ=油面が高ければ少ない負圧でも吸い上げられ、逆に遠ければ=油面が低ければ大きな負圧で引かないと吸い上げられないため、油面の高さが重要なのです。

油面の高さはキャブ本体とフロートチャンバーの合わせ面からフロート下面までの距離か、フロート内のガソリン量を実測する実油面のどちらかで判断します。この時、規定寸法と実測値に差違がないことが前提となりますが、多気筒エンジンの場合はそれぞれのキャブレターの油面の相対比較も重要です。せっかくジェットを変更しても、フロート内の油面がバラバラでは、実際に吸い出されるガソリンの量も増減する可能性があります。

混合気の濃い薄いはスパークプラグの焼け具合で判断するのが一般的ですが、ジェットセッティングが同じなのに焼け具合が違って混乱した結果、原因は油面高さの不揃いだったということもあります。もちろん、エンジンの吸気量の不揃いが原因でプラグの焼け具合が揃わない場合もありますが。

フロート関連では、フロートバルブとバルブシートの気密性の善し悪しも油面に影響を与えることがあります。静的な状態ではフロートが上昇してバルブシートに当たるとガソリンを止められるのに、エンジンに取り付けて振動が加わるとバルブとバルブシートの当たり面からフロートチャンバー内に流れ込んで油面が上昇するという不具合です。

バルブシートが圧入タイプでOリングを使っているキャブも要注意です。経年劣化によってOリングに細かなクラックが入ると、フロートバルブが閉じていてもバルブシートの外側からフロートチャンバーにガソリンが流れこんで実油面が高くなってしまうことがあります。セッティング以前に、フロートの高さを調整しているのにオーバーフローが止まらない様な時は、バルブとバルブシートの状態を確認してみましょう。

POINT
  • ポイント1・フロートチャンバー内の油面の高さによって、ジェットやニードルのサイズが同じでも混合比の濃さが変化する場合がある
  • ポイント2・フロートレベルの寸法や実油面の高さを正しく調整するのはもちろん、多気筒エンジンの場合は各フロート高さのバラツキも取り除く

パイロットスクリュー先端のカーボンが低開度のガソリン流量に影響する

004-3.jpg パイロットスクリューの先端にカーボンが付着すると、パイロットアウトレットの通路が塞がれてしまう。これはまだ軽傷だが、こってり付着するとスクリューの戻し回転数を増やさないと低速が安定しなくなる場合もある。押しつぶされたOリングも気密性低下の原因になるので交換しておきたい。

005-1.jpg スロットルバルブの真下、ベンチュリーの底にあるのがパイロットアウトレット。スロットルグリップから手を離したアイドリング状態でも、スロットルストップスクリューによってバルブは僅かに開いている。この時パイロットアウトレット部分の負圧が最も大きくなっており、燃焼室から吹き返したカーボンもここを狙って飛んでくる。

006-3.jpg キャブレタークリーナーに浸してカーボン汚れを溶かし、目の細かいスチールウールや不織布で磨き上げる。汚れを落とすのに夢中になって先端のテーパー部分に傷を付けないよう注意しよう。どんなキャブでもパイロットスクリューの戻し回転数は1回転1/2から3/4となっている。

スロットル全閉付近のスロー系のセッティングを左右するのが、エアースクリューやパイロットスクリューです。エアースクリューはエアクリーナーからキャブ内部に入る空気の量を調整する部分で、スクリューを締めると空気量が減るため相対的にガソリンが増えて混合気が濃くなり、緩めるとキャブの中に多くの空気が入るためガソリンが減少して混合気が薄くなります。つまりエアースクリューは、スロー系の中で空気とガソリンの割合を調整するスクリューということができます。

これに対してパイロットスクリューは、ベンチュリーの出口側にあり、キャブの中で空気とガソリンが混ざってできた混合気の絶対量を調整します。したがってスクリューを緩めれば多くの混合気が吸い出されるため濃くなり、締めれば吸い出される量が減少するため混合気が薄くなります。

パイロットスクリューはパイロットアウトレットと呼ばれるスロー系の混合気出口に装着されており、スクリュー先端のテーパー部分でアウトレット出口の面積を調整します。パイロットアウトレットはスロットルバルブの近くにあってエンジンからの吹き返しの影響を受けやすく、カーボンスラッジが付着することもあります。ここで問題となるとなるのがカーボンがパイロットスクリューに付着した場合です。そもそもパイロットアウトレットとスクリューからなる出口面積が小さいのですが、スクリューにカーボンが付着することで出口面積がさらに減少してしまう場合があります。するとアイドリングからスロットル開け始めのセッティングが薄くなってしまい、出だしのパンチ感が減少します。

この症状だけに着目してパイロットジェット(スロージェット)の口径を大きくしてしまうと、スロットルバルブ開度が増えて混合気の出口がパイロットアウトレットからスローポートに切り替わる領域で必要以上にガソリンが供給されて混合気が濃くなってしまうことがあります。

パイロットスクリューに組み込まれている極小サイズのOリングの状態にも注意が必要です。このOリングはスクリューとキャブボディの隙間から吸い込まれようとする二次空気を遮断するために重要な部品です。パイロットスクリューはスロットルバルブよりエンジン側にあるため、スロットルを閉じたアイドリング時には大きな負圧が掛かっています。そのためOリングがなければスクリューの雄ネジとキャブの雌ネジの隙間を通じて空気を吸い込もうとします。実際にどれほどの空気量が増加するかは分かりませんが、キャブレターメーカーがここにOリングを組み込んでいるということは、二次空気の浸入を防ぐ目的があるのは間違いありません。

つまり、パイロットジェットのセッティングが必要かな?と感じた場合には、ジェット交換の前にパイロットスクリュー先端にカーボンが付着しているか否かを確認するのが先決というわけです。

フロートチャンバー内の油面もパイロットスクリューのカーボン付着も、一見するとキャブセッティングとは無関係に感じるかも知れません。しかしスロー系の混合気を左右するこれらの部分は、実際のセッティング作業に取り掛かる前に状況を確認して整えておくべき部分でもあります。パイロットジェットやジェットニードルに触れる前に、まずは前提条件をクリアにしておくことを忘れないようにしましょう。

POINT
  • ポイント1・スロットル全閉から微開時の混合気を調整する機構には、エアースクリュータイプとパイロットスクリュータイプの2通りがある
  • ポイント2・パイロットスクリューの先端に付着する吹き返しによるカーボンはセッティング前に洗浄しておく
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