長期放置車両のキャブレターをオーバーホールする際はジェットニードルのチェックも忘れずに!!

キャブレター車でもインジェクション車でも、長く動かさないとガソリンが劣化して燃料系統に悪影響を与えます。運良くジェットが詰まっておらず始動できた場合、フロートチャンバー内のガソリンが入れ替われば調子が戻ることもありますが、何となく安定しない……という時はジェットニードルの汚れをチェックしてみましょう。

ジェットが詰まって始動しなければフルオーバーホールだが……

02-13.jpg 何年間か不動状態にあったカワサキCS250のキャブレター。CSは単気筒なのでキャブは1個だが、4連キャブだとキャブ本体だけでなくジョイント部分のクリーニングも必要で、その際にジョイントに組み込まれているOリングの交換作業も追加となることもあるので、オーバーホール作業も大がかりになる。

ガソリンは気温や湿度の変化によって劣化します。ユーザーごとの保管状況によって性能に与える影響が異なるため、石油製品メーカーでは品質保持期間を設定していないようですが、「一般的には気温の変化が少ない冷暗所の保管であれば、ガソリン・灯油・軽油は半年程度、A重油は3カ月程度使用に関して問題ないものと思われます。」(ENEOSホームページより)という表記も見られます。

通勤や通学で日常的に使用しているバイクであれば、半年も給油しないことはないでしょう。しかし複数のバイクを所有していて乗る機会が少なかったり、安全や防犯のために自宅とは別の場所にコンテナガレージなどを借りていて、普段の生活が忙しくてついついバイクが疎かになってしまい……、ということは特別珍しいことではありません。

エンジンが掛かりづらい、パワー感が低下した気がするといった程度であれば、フレッシュなガソリンを入れれば調子を取り戻すことができますが、ジェットを詰まらせるほど劣化が進行していたら抜本的な対策が必要です。ガソリンが劣化すると独特の異臭を放つので、その臭いを嗅いだことのあるライダーであればやるべきことはすぐに理解できるはずです。キャブレター時代のバイクであれば、フロートチャンバーを外せば何が起こっているかは目で見て分かります。

ガソリンが干上がってワニスとなりスロージェットやメインジェットを詰まらせると、当然ながらガソリンが流れなくなるので、新しいガソリンを入れてもエンジンは掛かりません。この先しばらく乗らないことが分かっているなら、あらかじめフロートチャンバー内のガソリンを抜いて空にしておけば、ジェットの詰まりは回避できます。しかしこの場合、フロートバルブが乾燥して次にガソリンを入れた際にバルブシートとの気密性が低下してオーバーフローを起こしたり、フロートチャンバーから抜けきらず通路内に残ったガソリンが劣化してワニスとなり詰まってしまうことがあるので、フロートチャンバーが空なら万全とは言い切れません。

それとは逆に、環境次第ではそれなりに長期間放置しても問題なくエンジンが掛かる場合もあります。エンジン始動に重要なパイロットやスロー系は通路が狭いのでメイン系より詰まりやすいのですが、劣化のスピードが遅くワニス化していないのならラッキーです。しかしそんな場合でも、ガソリンの流れが全域でスムーズかといえば、必ずしもそうとは言い切れません。

POINT
  • ポイント1・長期不動状態を続けるとガソリンが揮発してワニスが生じ、キャブレターを詰まらせることがある
  • ポイント2・ジェットが詰まるまで劣化していなくても、他の部分に影響を与える場合がある

ニードルジェットとジェットニードルの隙間のガソリンが劣化する

03-11.jpg フロートチャンバー内は干上がってはいないが、劣化したガソリンが固形化してチャンバーやジェットに溜まっている。一見するとジェットは詰まっていないようなので、キャブレタークリーナーをスプレーして復元したい気もするが、これぐらいの汚れ具合のキャブほど要注意。

04-10.jpg ちゃんとした機能を取り戻したければ、外れる部品はすべて外して溶液タイプのクリーナーに漬け込んでじっくり洗浄した方が、後になって不調に悩まされることがない。スロー系やエアー通路の汚れは、スプレーより漬け込み洗浄の方が効き目がある。

劣化したガソリンが詰まるのは、通路が狭いパイロットやスロー系からというのは半ば常識です。しかしそれとは別に、キャブレターのピストンとともに動くジェットニードルが出入りするメインノズルと呼ばれる部分のガソリンが劣化することもあります。ジェットニードルは先端が細い針のような形状で、ニードルの高さによってメインノズルとの隙間が変化して、エンジンの負圧によって吸い出されるガソリンの量が変化します。

メインノズルはニードルジェットとニードルジェットホルダーという2ピースで構成されていて、ニードルジェットホルダーの下部にメインジェットが付いています。ニードルジェットホルダーにはガソリンが通過する縦穴の他に、ガソリンの霧化を促進するために空気を取り込むブリード穴という横穴が開けられています。そしてフロートチャンバー内にガソリンがある時は、ニードルジェットホルダーはある程度ガソリンの中に潜っています。

劣化したガソリンがワニスとなる時、ガソリンの吸い上げ口となるスロージェットやメインジェットを塞ぐのは当たり前といっても良い状況です。それと同時にメインノズル内に残ったガソリンの劣化にも注意しなくてはなりません。一般的にジェットニードルの存在を意識するのはピストンが上昇してベンチュリー内にニードルが露出してきた時ですが、スロットル開度やベンチュリー負圧が小さくピストンがベンチュリーを塞いでいる時には、ニードルはメインノズル内に収まっています。当然ですが、長期不動状態にある時はメインノズルに収まり、フロートチャンバー内のガソリンに完全に浸っています。

それゆえ、メインノズル内のガソリンが劣化する際には、メインノズル内壁とともにジェットニードル本体にも汚れが付着する可能性は充分にあります。スロー系にワニスが詰まると分かりやすく始動不能になるため、スロージェットを取り外してキャブレタークリーナーに漬け込んで洗浄を行いますが、同時にジェットニードルのコンディションもチェックする必要があります

POINT
  • ポイント1・キャブレターのベンチュリーに吸い出されるメイン系のガソリンはジェットニードルとニードルジェットの隙間で計量される
  • ポイント2・メインノズルはフロートチャンバーのガソリンに潜っているので、揮発とともに徐々に露出してワニスが生じる可能性がある

ジェットニードルの太さがまちまちならガソリン流量が安定しないのも当然

05-9.jpg メインノズル内に収まったジェットニードルにも、ガソリンが劣化した状態で付着するのは当然といえば当然。ワニスは粘りがあったり硬かったりするので、フレッシュなガソリンが触れても溶けて流れ落ちることはない。ジェットニードルはテーパー角が肝心なのにワニスの付着量によって太さがまちまちになので、メインノズルから吸い出されるガソリンの流量も安定しない。4気筒のニードルがこんな状態だったら、キャブセッティングどころの話ではない。

06-8.jpg 洗浄によってワニスを取り除いたニードルとメインノズルによって、メイン系の混合気が安定してスムーズな吹け上がりが実現する。長期放置後にキャブレターをメンテナンスする際はスローとメインジェットだけでなく、ジェットニードルやニードルジェットホルダーも合わせて洗浄することが重要だ。

スローやメインジェットが閉塞してベンチュリーにガソリンが運ばれない場合は、迷わずキャブレターを取り外してフルオーバーホールするでしょうから、その際にジェットニードルやメインノズルも洗浄するでしょう。しかしガソリンの揮発が中途半端で、フロートチャンバー内の油面が下がりきっておらず、スロージェットやメインジェットが詰まるほどではないということもあります。

このような場合に、ニードルの汚れが悪さをすることがあります。先に説明したように、通常の油面時にはメインノズル内にはガソリンがあり、その中にジェットニードルが潜っています。揮発によって油面が低下すると、ニードルの表面やメインノズル内で露出した部分にワニスが生成する可能性があります。そのままジェットが露出するまで油面が下がり続けてジェットの穴が詰まれば、フロートチャンバーにフレッシュなガソリンが入っても始動しないので分解清掃するしかありませんが、油面低下が中途半端だとガソリンが新しくなるとエンジンが掛かってしまう場合があります。

一般的に考えればこれはこれでラッキーですが、ジェットニードルにワニスが付着するとスロットルを開けていった先で不調が発生する可能性があります。画像のニードルはそのパターンで、ワニスによって表面が凸凹になり、場所によって太さがまちまちになっています。このようなニードルでは、メインノズルとの隙間で行われるガソリンの計量はまったくデタラメになってしまいます。

スロットル開度が大きくなると、メインジェットで計量されたガソリンがメインノズルから吸い出されるように思われています。それはそれで正しいのですが、メインジェットを通過したガソリンは最終的にメインノズルとジェットニードルの隙間で計量されてから吸い出されています。したがって、ワニスによってジェットニードルの表面が凸凹になっていると、ワニスが多く太い場所ではガソリンが薄く、ワニスが少なくニードル本来の太さの場所ではガソリンが濃くなってしまいます。ニードルジェットホルダーのブリード穴が詰まれば、霧化を促進する空気の量も変わってしまうためさらに不安定要素が増してしまいます。

長期放置後に、フロートチャンバー内で劣化臭がプンプンするガソリンを入れ替えただけで運良くエンジンが掛かったというような場合でも、このような理由でジェットニードルが正しく機能していない場合もあるので、フロートチャンバーから抜いたガソリンが琥珀色に変色しているような場合は迷わずフルオーバーホールを行い、ジェット類とともにジェットニードルのクリーニングも行いましょう。

POINT
  • ポイント1・ジェットニードルに付着したワニスによって、メインノズルから吸い出されるガソリンの量が不安定になる
  • ポイント2・キャブレターをオーバーホールする際は、メインノズルやジェットニードルも洗浄する
 
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