エアーダクトを折り返すだけで4連キャブレター脱着作業の苦労が解消できる!!

オーバーホールやセッティングでキャブレターを着脱する際に、エアクリーナーとキャブをつなぐエアーダクトが邪魔だと感じるメンテ好きは多いはず。グニャリと変形させながら無理矢理キャブを引き抜くのは面倒ですが、エアーダクトを事前に折り返すだけであら不思議!!適度なクリアランスができて簡単にキャブが取り外せるようになります。

押したり引いたりこじったり……4連キャブの着脱は大騒動

1970年代のバイクらしく、キャブレターやエアクリーナー周辺のレイアウトに余裕があるKZ900LTD。これでもエアーダクトを折り返さずにキャブを外そうとすると、ダクトがからみついて大変なことになる。

エアクリーナーを装備した純正吸気系には、キャブレターでもインジェクションでも入り口側(エアクリーナー側)と出口側(シリンダーヘッド側)にゴム部品が組み込まれています。これらの部品名称はバイクメーカーによって異なります。

ホンダ
 キャブ~エアークリーナーボックス間:コネクティングチューブ
 キャブ~シリンダーヘッド間:キャブレターインシュレーター

ヤマハ
 キャブ~エアークリーナーボックス間:エアークリーナージョイント
 キャブ~シリンダーヘッド間:キャブレタージョイント

スズキ
 キャブ~エアークリーナーボックス間:アウトレットチューブ
 キャブ~シリンダーヘッド間:インテークパイプ

カワサキ
 キャブ~エアークリーナーボックス間:エアーダクト
 キャブ~シリンダーヘッド間:キャブレターホルダー

各社上記のように呼ばれています。年代や機種によって、さらにキャブレター時代とインジェクションになってからでは違いはありますが、機能が同じでもメーカー間で独特の個性があります。

ここではカワサキ車をサンプルにするのでカワサキ流の名称で統一しますが、キャブレター時代のエアーダクト(以下ダクト)とキャブレターホルダー(以下ホルダー)には、単なるジョイントとしてだけでなく、キャブレターの着脱を行ったことのある方ならお分かりだと思いますが、キャブの位置を決めつつエンジンの振動を吸収するという重要な役割もあります。

そのため、ダクトとホルダーに挟まれたキャブを着脱するには相当の手間が掛かります。ツインスパーフレームに前傾エンジンを搭載するスーパースポーツモデルであれば、燃料タンクを外してエアクリーナーボックスを上方に引き抜けばダウンドラフトキャブにアクセスできます。しかしダブルクレードルフレームとシリンダーが直立したエンジンの組み合わせでは、ダクトとホルダーが付いた状態のキャブを左右どちらかに引っ張り出さなくてはなりません。ホルダーとダクトではダクトの方が柔軟性があるため、キャブを後方に引っ張ってホルダーから外して、ダクトを潰しながら引きずり出すことになります。

これがなかなかの力仕事で、クランプ金具を外しても素直に外れることは稀で、上下に揺すったり左右にこじったりしながら、どうにかこうにか引っ張り出すというのが一般的なパターンです。経年変化でダクトが硬化しているとなおさら大変です。そうこうしているうちにスロットルケーブルがフレームに干渉して逃げ道がなくなり、途方に暮れてしまったという人もいるのではないでしょうか。

POINT
  • ポイント1・キャブレターは位置決めと振動吸収のため、キャブレターホルダーとエアーダクトで挟まれている
  • ポイント2・落下防止で簡単に外れないため、メンテナンス時にもダクトが邪魔になり簡単には外れない

クランプを外してエアーダクトを折り返すだけで隙間ができる

そんな時に試してもらいたいのがエアーダクトの折り返しです。クランプ金具が邪魔になる場合はあらかじめ取り外しておき、キャブに差し込まれた部分をエアクリーナーボックス側にひっくり返すのです。プラスチックのようにカチカチに硬化したダクトはドライヤーやヒートガンで温めると一時的に柔らかくなるので、暖まった状態で折り返します。

エアクリーナーボックスからキャブまでの距離によってはダクトの長さが不足して折り返せない機種もあるかもしれませんが、ホリゾンタルキャブの多くは折り返しが可能な程度のダクト長はあるものです。

経年変化でエアーダクトが硬化している場合は、ドライヤーやヒートガンで加熱して柔らかくすると良い。一部を急激に加熱すると変形してしまうこともあるので、指で確かめながら徐々に均等に温めていく。

常温ではとても曲がらないほど硬化しているダクトでも、熱の力で柔らかくなりグルリと折り返すことができた。エアクリーナーボックスの負圧変化や振動を吸収する部品でもあるので、プラスチックのように硬い場合は見切りを付けて交換してもよいだろう。

4連キャブはプレートでがっちり連結されているとはいえ、着脱時に無理な力でこじるのは良いことではない。エアーダクトを折り返すことでキャブをエアクリーナボックスに近づけることができ、キャブレターホルダー側に余裕ができるのでエンジンにセットしやすくなる。

スロットル操作によってエアクリーナーボックス内の負圧は大きく変動し、急開した時にはボックス内の空気が一気に吸い込まれるため、ボックス自体がキャブ側に引き寄せられます。機種によってはボックス自体がフレームにボルト止めされている場合もあり、その場合はダクトがキュッと縮んで圧力変化を吸収します。いずれにしてもダクトは負圧変化を受け止める部分になるため、一定の長さが確保されている場合が多いです。

キャブレターに被さっている部分を折り返すことで、僅かながらでもキャブとダクトに隙間ができればラッキーです。少なくとも、キャブに刺さっている部分がなくなるだけで、シリンダーヘッドのホルダーから抜けやすくなり、左右方向への自由度も大幅にアップします。ダクトがキャブに刺さった状態で左右に引っ張ると、ホルダーのクランプ金具まで変形してしまうことも珍しくありませんが、ダクトを折り返して生じた隙間にキャブを引っ張ればダクトから外れるためクランプが捩れることもなくなります。

ダクトを折り返すには、キャブとエアクリーナーボックスの狭い隙間で指先に力を込めなくてはならず、簡単にはいかない場合もあります。そんな時はとりあえず左右両端の1番と4番のダクトだけでも折り返しておけば、キャブを引き抜き際の抵抗が半分になります。ここではカワサキKZ900LTDとKZ1000Jの例を掲載しますが、どちらもダクト折り返しによってキャブの着脱が劇的に容易になりました。KZの方は純正ダクトがカチカチに硬化していたのでホルダーとともに新品純正部品に交換したため、きわめてスムーズに着脱できます。

先述のとおり、ホルダーとダクトはキャブ自体の位置を決めるためにも重要な部品です。エアクリーナーボックスを外してパワーフィルター仕様にすると、シリンダーヘッド側のホルダーだけでキャブを保持することになるため、クランプ部分に負荷が集中してキャブ自体が外れやすくなる場合もあります。またホルダーやダクトの柔軟性が低下すればエンジンの振動がキャブに伝わりやすくなり、油面の安定性にも影響を与える場合があります。ダクトを折り返すことでキャブの着脱が容易になるのはメンテナンス面で大きな利点となりますが、柔らかいゴムでキャブを保持することは安定した性能を発揮させるためにも重要です。ですからプラスチックのように硬化したダクトは、折り返しができるぐらい柔軟な新品部品に交換しておいた方が総合的に考えれば良いかもしれません。

POINT
  • ポイント1・エアーダクトを折り返すだけでキャブレターとの間に隙間ができて外しやすくなる

折り返したダクトをキャブレターにかぶせるには長軸ドライバーを活用する

純正のミクニ製VMに比べて前後長が短いケーヒンCVKに交換したことで、エアーダクト側の余裕が増えた上に、折り返したことで明確な隙間が生じた。これならセッティングでキャブを着脱する際にも悪戦苦闘しなくても良い。

エアーダクトを新品に交換して柔軟性があるので、折り返し部分をキャブに被せるのも簡単だ。

ダクトを折り返しておけば、洗浄やセッティングを行ったキャブレターを復元する際にも余計な力を加えることなくスムーズに装着できます。ダクトの開口部を折り返さない状態でキャブを押し込むと、エアクリーナーボックスへの差し込み側がずれたり外れたりして、せっかくホルダーにセットできたキャブを再び取り外す二度手間が生じることもあります。

ホルダーにキャブを取り付けたら、折り返したダクトを伸ばしつつキャブにかぶせます。ダクトに柔軟性があれば指先で戻せば簡単にキャブにはまりクランプを締めれば装着作業は終了です。一方でダクトが戻りづらい場合は軸の長いマイナスドライバーで折り返し部分をキャブ側に丁寧に起こします。KZ1000Jの場合、ダクトのクランプがバンドではなくスプリングで、これを所定の位置にはめるには先端が90°に曲がった、ピックツールのように改造した軸の長い金属棒があると便利です。先端が曲がった棒であれば、折り返したダクトをキャブに被せる作業も楽にできます。

ダクトを折り返すのはほんのひと手間ですが、たったそれだけで面倒なキャブレター着脱が劇的に楽になるので、次のキャブメンテではダクトの折り返しをやってみてはいかがでしょうか。

POINT
  • ポイント1・折り返したエアーダクトを戻すのに工具が必要な場合は、長軸のドライバーで少しずつキャブに被せていく
 
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