プロが教える! エアーフィルターエレメントの種類と大切な役割、定期点検の方法
エアークリーナーケースの入り口に取り付けられたエアーフィルターエレメントは、空気中のチリやホコリを取り除く重要なパーツです。スポンジや不織布を折り畳んだエレメントが汚れで詰まると、吸入空気量が減少してエンジン本来の性能が発揮できなくなるので、走行距離に応じた定期交換が必要です。また林道ツーリングなど土ぼこりや汚れが多い環境で走行した後は、指定時期より早めのチェックがおすすめです。

スタイル優先のエアーファンネル仕様のリスクとは?


メッシュ状のフレームの上にスポンジを貼り付けたタイプのエアーフィルターエレメント。新品当時は引っ張っても伸びる柔軟性があるが、経年劣化によってボロボロに剥がれるようになってしまった。これを放置したまま走行を続けると、剥がれたスポンジがエンジンに吸い込まれるリスクも高まるので早急な交換が必要だ。

エンジンが動くためには空気が必要なのは誰もが知っていることでしょう。キャブレターでもインジェクションでも、吸い込まれる空気に応じてガソリンをミックスして、混合気としてエンジン内に吸い込まれた後に爆発的燃焼によってパワーを生み出しています。

そして私たちが日常生活でマスクをするのと同様に、エンジンが吸い込む空気からチリやホコリを取り除いているのがエアーフィルターエレメントです。花粉症の人にとって、花粉が大量に飛散する季節にマスクなしで行動するのが無謀であるのと同様に、バイクにとっても吸気系にエアーフィルターを付けずに走行するのはエンジンの寿命を縮めるだけで百害あって一利なしの行為です。

確かに、2000年代以前のキャブレター時代のレーシングマシンにはエアークリーナーボックスやエアーフィルターが付いておらず、ファンネルのみというスタイルが一般的でした。しかしそれはサーキットという限られたエリアの中で、エンジンのメンテナンスも頻繁に行う条件だから成立したもので、予測不能な走行条件で数万キロを走行することもある公道向けには、たとえパワーアップ目的であっても推奨できるものではありません。

中にはファンネル仕様で何万キロも好調に走ったバイクもあるかもしれませんが、それは偶然と幸運が重なっただけかもしれません。わずか数ミリの砂粒でも、吸排気バルブに噛み込む可能性はゼロではありません。一方でエアーフィルターエレメントがあれば、その可能性は限りなくゼロになります。キャブレター車のファンネル仕様はカスタムとしての魅力がありますが、その分リスクがあることも理解しておく必要があります。

インジェクションモデルはどうかといえば、まずはファンネル化によるスタイリング面でのカスタム効果のある車両がそもそも極端に少ないことと、インジェクターの吐出量を決めるためにエアークリーナーケース内のセンサーが必要な機種もあるため、ファンネル仕様への変更はあまり一般的ではないようです。
 
POINT
  • ポイント1:人にとってのマスクと同様、バイクにとってエアーフィルターエレメントは重要
  • ポイント2:スタイル重視のエアーファンネル仕様はリスクを自覚する必要がある

ジャバラタイプのエレメントには「乾式」と「ビスカス式」の2種類がある


ビスカス式のエアーフィルターエレメントは、一見しただけでは乾式と明確な違いが分かりづらい。よく観察するとやや湿っているようにも思えるが、取扱説明書やサービスマニュアルにビスカス式を明記されている場合はエアーブローは行わないようにしよう。

空気中のゴミを取り除くエアーフィルターエレメントは、走行距離や走行条件によって汚れが溜まります。すると掃除機のダストフィルターに汚れが詰まった時と同じように、吸い込める空気量が低下します。掃除機にはゴミが溜まっても吸引力が変化しないサイクロン式がありますが、バイクのエアーフィルターエレメントにサイクロン式はないので、オーナー自らが点検して洗浄や交換をしなくてはなりません。

愛車の取扱説明書やサービスマニュアルには、エアーフィルターエレメントの点検や交換について距離や期間が「交換は2万km走行ごと」などと記載されているはずです。ただし湿気やホコリ、汚れが多いシビアな走行条件にある場合はそれより短い距離で点検を行うよう補足事項が追加されている場合もあります。

エアーフィルターエレメントの素材によってメンテナンス方法は異なります。洗浄してフィルターオイルを塗布することで繰り返し使用できるスポンジタイプのエレメントは、トレールモデルを中心にわりと最近まで使われていますが、使用期間が長期に及ぶとスポンジ自体が劣化してボロボロに崩れてしまうことがあります。その状態でエンジンを始動すれば、スポンジの破片がキャブレターやエンジンに吸い込まれて不調の原因になるので、たとえ走行距離が交換時期に達していなくても数年単位で時間が経過している場合は、一度ケースから取り出してスポンジの状態を確認してみることが重要です。

濾紙タイプのエレメントにも「乾式」と「ビスカス式」の2種類があるので注意が必要です。乾式には乾いた濾紙や不織布が用いられており、汚れた場合はエレメントの内側から外側にコンプレッサーの空気を吹き付けて清掃することができます。エレメントは山折りと谷折りで蛇腹状になっていますが、吸気側から見て谷部分に汚れが多く溜まるため、エアーブローすると盛大にホコリが飛び出すことがあります。

これに対してビスカス式は、エレメントに油分が浸透させてあるのが特長です。スポンジエレメントのフィルターオイルと同様に、エレメント表面の油分によって細かいホコリまで吸着しますが、エアーブローすると油分が飛んでしまうので清掃は原則禁止で、交換時期が来たら迷わず交換します。
 
POINT
  • ポイント1:エレメントの交換時期は取扱説明書に記載された期間に従う
  • ポイント2:乾式エレメントはエアーブロー可能だが、ビスカス式は不可

エアーフィルターが目詰まりするとキャブセッティングが濃くなる?


エアーフィルターエレメントを取り外したら、エアークリーナーケース内をきれいなウエスで拭いて清掃しておく。キャブレター車の場合キャブの吹き返しがある可能性があり、オーバーフローパイプがないケーヒンCVKなどは、油面が高いとケース内にガソリンが溜まっている場合もある。

私たちが使用するマスクが目詰まりすると息苦しくなるように、エアーフィルターに汚れが詰まるとエンジンが吸いたいだけの空気が吸えなくなる場合もあります。するとエンジンパワーが低下することは想像がつきますが、キャブレター車の場合は空燃比が変化することがあります。

空気の通路であるベンチュリーを通過する空気の量に応じてガソリンを供給するのがキャブレターの役割ですが、そのガソリンはインジェクション車のように機械的に噴射されるのではなく、ベンチュリーに発生する負圧によって吸い出されます。スロットルを開けてベンチュリーが開けば、エンジンはエアークリーナーケースを通じてそれに応じた空気を吸い込もうとします。

ところがここでケースの入り口にあるエアーフィルターが詰まっていると、エンジンが求めるだけの空気が流れなくなり、ベンチュリーにかかる負圧が大きくなってしまい、その負圧によってキャブレターのフロート室から必要以上のガソリンが吸い出されてしまうのです。空気の入り口を絞って燃料を濃くするのは、冷間時の始動性を向上させるためのチョーク機構と同じことです。エアークリーナーケースの近くに置いたウエスが吸い込まれそうになって入り口を塞ぐとエンジンは止まってしまいます。

そこまで極端ではないにせよ、エアーフィルターエレメントが目詰まりすればそれらと同じように相対的にガソリンが過剰な状態になり、プラグがかぶる傾向になっていきます。プラグの状態をチェックして電極がくすぶり気味だった場合、キャブレターのセッティングだけではなくエアーフィルターエレメントの状態も合わせてチェックしましょう。

インジェクション車では、各部のセンサーでどのような情報を検知しているか機種によって異なる場合もありますが、エアーフィルターエレメントの詰まりによって吸入空気量が減少すると、それに合わせて燃料噴射量も補正されて空燃比は変化しないこともあります。ただしプラグがかぶらないからといっても、空気量が減れば当然パワーダウンにつながるので、エアーフィルターエレメントのコンディションが重要であることには変わりはありません。

また、インジェクション車の中にはエアークリーナーケース内の圧力変化を測定して燃料噴射量に反映している機種もあります。この場合、ケースにエレメントをセットしてカバーを取り付ける際に合わせ面のシールが剥がれたり浮いていないことを確認するのも重要です。


クランクケースのブローバイガスがエアークリーナーケースに接続されている機種では、ケース下部に半透明のチェックホースが付いていることがある。このホースに入荷したオイルが溜まっていたら、エアークリーナーカバーを外してケース内を清掃してホース内も洗浄しておく。

POINT
  • ポイント1:エアーフィルターエレメントが目詰まりするとチョーク作用が発生する
  • ポイント2:キャブレター車はエレメント詰まりで燃調が濃くなる場合がある
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