油圧ディスクブレーキのエアー抜きは「小ワザ」の集大成で楽々作業!!

経験者でもナメて掛かると大変な思いをしてしまうことが多いのが油圧式ディスクブレーキのエアー抜き。ブレーキラインを交換したときなどは、ライン内部が完全な空っぽになるため、より一層、エアー抜き作業が大変になる。一般的にブレーキフルードの交換入れ換えは、2年に1度。几帳面なライダーやレーシングマシンなら、雨天走行毎に交換するのが当たり前となっている。そんなブレーキフルード交換時に様々な小ワザを使うことで、ブレーキフルードのエアー抜きは間違いなく効率良く効果的に行うことができる。ここでは、そんな小ワザを使ったエアー抜きを実践してみよう。

いつでも使えるように在庫しておきたい、しかし……

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ハーレー・ダビッドソンの多くはシリコン系ブレーキフルード(DOT5)を採用しているが、国産車やその他の外車や四輪車の多くがグリコール系ブレーキフルードを採用。一般的には「DOT4規格」の商品が純正指定となっているケースが多く、グリコール系とシリコン系は完全分離するため、混ぜて使うことは厳禁!! グリコール系ブレーキフルードは吸湿作用が強く、しっかり密閉保管していないとフルード性能が低下してしまうため、理想的には使い切りサイズを複数常備しておくのがベストだろう。我々のガレージでは、使用頻度が極めて高いため、1リットル缶を常備している。

サイドスタンドでハンドルは左に切って

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空っぽのマスターシリンダー内からオイルラインを通じてブレーキキャリパーへブレーキフルードを送り込む作業は想像以上に大変。経験者ならそれを御理解いただけるはずだ。重力で流れ落ちるような気もするが、決してそうではない。ブリーダーへ負圧機器を接続することで、エアー抜き作業は一気に効率良く行うことができるが、常に手元に負圧機器があるとは限らないし、コンプレッサーを常備しているとも限らない。ここでは、シリンジ(注射器のような工具)にシリコンチューブをセットして、ブレーキフルードの注入→エアー抜きにトライしてみた。まずはブレーキフルードをシリンジに吸い上げて作業開始。Wディスクの場合は、マスターシリンダーから「遠い=左側」キャリパーから作業を始めよう。エアー抜きブリーダーを緩めて、ブリーダー→キャリパー→ブレーキホースというように、シリンジでブレーキフルードを「逆送=逆流し」で押し込む(流し込む)のだ。ブリーダーを緩めすぎるとネジ部分の根元からフルードが滲み漏れてしまうので、緩め加減を調整しながら、ブリーダーネジの根元にグリスを盛ってフルード漏れを抑えるのがひとつのテクニックだ。ブレーキラインの途中にジャンクションとバンジョーがある場合は、マスターシリンダー側のブレーキホースバンジョーボルトを緩めることでフルードの流し込みが容易になる。しかし、ボルトとブレーキバンジョーをティッシュやウエスで覆うなどしないと、溢れ出たブレーキフルードまみれになってしまうので要注意だ。ティッシュを使うことで、逆走させたフルードでティッシュが濡れ、フルードの立ち上がり完了を知ることができる。左側を終えたら右側も同じように作業進行かるが、ジャンクションの左キャリパーへつながるバンジョーボルトは締め付け、ここではブレーキマスター側へつながるホースのバンジョーボルトを緩める。そして、同じようにボルト周辺をティッシュで覆い、溢れ出ないように作業進行するのが良い。

リザーブタンク側へポコポコと……

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ブレーキキャリパーからジャンクションまでのフルード逆走を確認したら、緩めたバンジョーボルトを締め付けてパーツクリーナーで周辺を脱脂洗浄しよう。さらにフルードを逆走させると、リザーブタンク内のフルードポートから、立ち上がってきたブレーキフルードがタンク内に溢れ出てくる。ポコ、ポコポコッ……。フルードの立ち上がりを確認したら、リザーブタンクのロアレベルまでフルードを注ぎ入れよう。

サイドスタンドでハンドル左切が基本ポジション

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サイドスタンドでハンドルを左に切ると、リザーブタンクが斜めになるため、ブレーキフルードをリザーブタンクへ入れ過ぎないように (溢れ出てしまう!!) 要注意。キャリパーのブリーダーボルトや各部のバンジョーボルトの締め付けを確認したら、ハンドルを左切状態のままブレーキレバーを小さく小刻みにストロークさせよう。この作業によって、ブレーキマスターシリンダー内に噛み込んでいるエアーを、マスターシリンダーのポートからジュワジュワっと抜き取ることができる。小刻みにストロークさせることで、小さな泡がたくさん出てくるのがわかるはずだ。またこの際に、リザーブタンクのダイヤフラムラバーのコンディションも確認しておこう。指先で伸ばして、切れやひび割れや硬化劣化が無いか確認しよう。ゴムが劣化するこによってダイヤフラムの役割を果たさないと、ブレーキパッドの引き摺り原因になってしまう。

太い輪ゴムが「特殊工具」へ変身する!?

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太い輪ゴムや不要になったタイヤチューブの輪切りを、輪ゴム=特殊工具として利用することもできる。例えば、エアー抜きしたつもりでも、レバータッチが今ひとつカチッとならないことがあるが、それは間違いなく通路内のエアーを抜け切れていない証拠。例えば、作業途中に休憩するような際には、サイドスタンドでハンドルを左末切りにして、ブレーキレバーを握った状態で(輪ゴムで)縛り、そのままの休憩。すると、時間の経過で通路内に残った気泡が上へ上へと登っていき、その後のレバーポンピングでエアー抜けしやすくなる。四輪自動車では、ブレーキペダルを踏み込んだ状態で、野球のバットや長い棒をセット。そのまま経過観察することで、ブレーキペダルの踏み込みがカチッと固くなることが多い。バイクの場合は、盗難防止用ブレーキレバーロックを利用しても良い。

忘れがちなクリーニング仕上げ

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ブレーキフルードは吸湿作用が強い。それが原因で水分を寄せ、汚れやサビを発生させてしまうことが多い。エアー抜き作業でブリーダーを緩めようとしたら、ネジ山部分がさび付いて緩まなかったり、最悪でポキッと折れてしまうこともある。後々、そんなトラブルに遭遇しないために、エアー抜き作業後には、ブリーダー通路内をパーツクリーナーでしっかり洗浄。その後、ゴムキャップは必ず取り付けよう。ゴムキャップを紛失している車両は、必ずキャップを購入して取り付けよう。

POINT
  • ポイント1・ 小ワザを使うことでブレーキのエアー抜き促進は可能になる
  • ポイント2・エアー抜き作業を効率良く行いたいときには、バンジョーボルトを緩めてエアー抜きしてもよい。その際には、ボルトやパンジョーと工具をウエスで巻いてフルードを飛び散らさないように要注意
  • ポイント3・ サイドスタンド+ハンドル左末切りのブレーキレバー握り込み作業は、想像以上にエアー抜きを効果的に行える

何も考えずに、何時間もブレーキレバーをポンピングし続け……。そんな経験は無いだろうか!?リザーブタンクへ注入したブレーキフルードは、オイルラインへ流れ落ちるのが当たり前のようだが、決してそんなことは無い。メンテナンス初心者時代には、誰もが経験したことがある事象のはずだ?

ブレーキフルードが流れるオイルラインや各部品の通路は、想像以上に狭い。通路内部の空気がスムーズに流れるような状況でなければ、ブレーキフルードはスムーズに流れ落ちない。オイルラインを新品に交換しても、キャリパー内部にブレーキフルードが残留していると、いくらエアー抜き用ブリーダーを緩め、ブレーキレバーをポンピングしたところで、ブレーキフルードはなかなか流れてくれないものだ。

そんなときにこそ経験がものを言うが、そこには様々なテクニックが存在する。そのひとつが、サイドスタンドで車体を傾け、ハンドルを左末切りにしたポジションでの作業だろう。このようなポジションにすることで、ブレーキマスター~キャリパー間で、一番高い位置がマスターシリンダーになる。そのため、そこへ向けて噛み込んだ空気が上昇していく……といった具合だ。ハンドル形状によっては、マスターシリンダーの取り付け角度が変わり、高低差が理想的なポジションにならなくなることもある。そんな時には、ハンドルのクランプ角度を変えたり、マスターシリンダーを外し、別に固定するなどの方法もある。この作業で要注意なのが、リザーブタンク内のブレーキフルードがこぼれないような角度やフルード量を保つことだ。

さらなる一例として、リアタイヤの下に板を噛ませ、より一層の高低差をつけるといった方法もある。そんな方法の時には、バイクが倒れないように、リアブレーキペダルを踏んだ状態で固定しておくのが良いだろう。

単純なブレーキフルードの交換入れ替えなら、旧フルードを完全に抜いてしまうのではなく、継ぎ足し交換がベスト。具体的な手順は下記の順。

  • 1:リザーブタンク内のフルードをティッシュで吸い取り、タンク底に溜まった汚れもティッシュできれいに拭き取る。
  • 2:新しいブレーキフルードをリザーブタンク内に注入。最初から満タンレベルまで入れると、作業しにくくなるので少量ずつ継ぎ足す。
  • 3:キャリパー側のエアーブリーダーにシリンジ+チューブを差し込み、シリンジポンプを引き上げ(吸い上げ)ながら、ブリーダーを開放。さらにブレーキレバーを握った状態で、リザーブタンク内のブレーキフルードの流れ方を確認する。
  • 4:ブレーキフルードが送り込まれてリザーブタンクの液面が低下するので、先にエアーブリーダーを締め付けてからブレーキレバーを開放。リザーブタンクのブレーキフルードが減ったら、追加注入する。
  • 5:シリンジ内に溜まった古いブレーキフルードを廃液入れに移す。

このような手順で1~5の作業を繰り返すことで、ブレーキフルードを全量入れ替えることができる。レバーをポンピングする者と、シリンジを引き上げブリーダーを開け閉めする者、作業者が2名いれば、より一層、作業は楽になる。もちろん慣れれば1名作業でも余裕で作業進行できるようになるはずだ。

四輪車の場合は、コンプレッサーの圧縮空気で負圧を起こす専用ツールをブリーダーに差し込み、エアー抜きを容易かつ確実に行うが、バイクでも機器が揃っていれば、驚くほど素早くブレーキフルード交換を実践することができる。

 
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コメント一覧
  1. ?s=55&d=mm&r=g めだか☆ より:

    お節介なコメント失礼します。

    筆者様ほどではありませんが、基本的な整備は自分で行うレベルでバイクと付き合っています。

    内容で気になるのが、安全性に関する観点を見落としている点です。
    基本的には整備書に載っている方法がベストなはずで
    、整備初心者の方がこの記事を見て、甘く考えて整備すると大事故を招く可能性すらあります。

    例えばですが、
    ブレーキラインの途中をある程度緩めて〜
    漏らさないように〜の所は曖昧ですし、漏れた場合やチェックの仕方に触れていません。
    ブレーキ周りに使用するグリスの選択にも注意が必要と感じます。
    フルードタンク内の拭き取りにティッシュを使うとティッシュの粉?が中に残ってしまうと思います。

    などなど口煩い内容ばかりですが、
    ブレーキ周りを整備する時に第一に考えるべきは安全だと思います。
    バイクに乗る方、整備する方が悲しい思いをしないように記事にもご留意頂きたいと思います。

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