メーカー純正デカールが廃番!!だったら「複製デカール」で仕上げる!!

80sレーサーレプリカモデルの再生で、何よりも重要かつ大変な作業と言えば、グラフィックデカールの仕上がりが鍵を握る「外装パーツレストア」だろう。ここでは、割れてしまっているプラスチック製カウルのベース作り提案とともに、各種デカールの「高品位ワンオフ」に関する具体的なアイディアをリポートしよう。パソコンいじり好きならチャレンジしてみる価値はある!?

年式違いでカラーリングは異なるものの……

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レストア進行中のモデルは1987年型スズキ250ガンマ(左のカウル)。今回は、このフロントカウルの再生にスポットを当ててみよう。オリジナルカウルは完全にヒビが入り破壊欠落寸前だったが、カウル形状やベース色が同じながら「グラフィックデザインが異なる」1986年型250ガンマ用中古パーツ(程度上に見える右側)を使い、1987年仕様を作ろうと思う。

貼り込み済みデカールをきれいに剥がす

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「大工さんのように、いろいろカタチが違ったノミを使い分けています」とは作業を担当して下さったモデルクリエイトマキシの板橋さん。大工さん道具で知られるノミをしっかり研いで、切れ味抜群に良くしている。切れが良くないとカウル本体にキズを付けてしまうことが多いそうだ。ナックル部分のモデル名デカールを慎重に剥がしていった。

極上カウルに見えても剥がすのは大変

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比較的高年式部品や旧車用でも日焼けしていない部品なら、切れ味の良いノミを使うことでデカールは美しく剥がすことができるらしい。程度が良く見えても旧い部品なので、このガンマ用はさすがに簡単に剥がすことはできなかった。霧吹きで水ミストを吹いたり様々な角度から慎重に剥がしていった。何とかデカールを剥がせたので、仕上げに使ったのがポリッシャー。極細目コンパウンドで磨き、かなり良い仕上がりになった。

Pta07.jpg茄子のような紺色、通称「茄子紺」のベース色は、当時のウォルター・ウルフ仕様の代名詞的カラー。後期型になるとシャンパンゴールド系のベース色もあった。グラフィックパターンを合わせるために、まずは純正デカールをすべて剥がして、ポリッシングでツルツルつやつやに仕上げられた。目立つキズがあるときにはこの段階で補修しよう。

フリーハンドデータをパソコンに取り込みカット

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サンプル用フロントカウルのグラフィックパターンを鉛筆でなぞって型紙を作る。純正デカールの見切り段差を利用して鉛筆でなぞり、それをハサミでカット。今回は、片側(左側)だけ作って、右側は反転し手作業進行。ハサミでカットした型紙の輪郭を複合機のスキャナーでデータ取りする。このデータを元に、カットラインの円弧をイラストレータソフトで美しく仕上げてカッティングデータへ変更する。パソコンを使いこなせれば、こんな楽しみ方もできるのだ。

カッティングマシで形状カット後に色合せ

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グラフィックパターンの輪郭をカッティングテータへ変更し、プロッターで切り抜く。このときに利用するカッティングシートは、屋外ユースでも変色しにくいUV対応品。赤の色味は選びようもなく、一色しか無いのだが……。ここから先の工程でモデルクリエイトマキシのノウハウが炸裂!!

カッティングシートの上に色合せペイント

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まったく同色のカッティングシートがあるはずも無い。ここでは、屋外用の赤色UVカッティングシートをベースに1987年グラフィックの赤色を再現する。この赤色シートの上にウレタンペイントを施し乾燥させる。調色作業には「一日の長」があるのはご存じの通り。金属に塗られている色深度のあるペイントは調色が難しいが、デカールの印刷調色は比較的のっぺりしていて再現しやすいそうだ。

シート上でグラフィックラインをペイント入れ

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赤ベースのカッティングシートに調色した赤ペイントを吹付け仕上げたが、この調色も曲者で、フロントカウル、サイドカウル、シートカウル、同じ赤色のはずが退色で微妙に違っていた。赤色カッティングシートには、扇状にカッターの刃が入っているので、グラフィックデザインに合わせてマスキングを施す。カッティングシートの中で、色分けのペイントを行うようだ。

ゴールドは「メーカーロゴ色」から調色

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ゴールドカッティングシートが在庫に無かったので、塗膜の発色が良い白カッティングシートをベースに調色作業を行った。調色でゴールドが再現できても、白ベースのカッティングシートだとカッターの刃を入れたときに、ペイント断面に僅かな白色が出てしまうので、同色のカッティングシートをベースに調色するのがベストらしい。

貼ってから塗り分けではなく先にペイント

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マスキングテープと養生テープを使い分けて塗り分けを開始。赤色ベースにした後に白ストライブとゴールドでデザイン通りに塗り分けていく。幅寸法はサンプルカウルから採寸。今回のマシンオーナーのリクエストは、まったく同じ色分けのペイント仕上げではなく、ノーマルカウルのように、カッティングシートの貼り込みで「グラフィック&カラーリングを両立させる」ということだった。

まるで純正部品のようなデカールの完成

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カッティングマシン(プロッター)の刃でカットラインを入れた後に、境界部分をゴールドでペイントしている。カット後の断面色は出にくいが、ところどころで現れていた。しかし、ベースシートが赤なので目立たなかった。白のストライブを追加してからマスキングテープを剥がせばナックル部分の扇形が完成する。塗り終わり直後は完成イメージが湧かなかったが、余白と言うか、不要な部分を剥がすると、ご覧のように立派なデカールが完成!! メーカー純正デカールの複製品製作依頼があるときには、このような段取りで製作しているそうだ。80年代の、たばこメーカー系レプリカは根強い人気だそう。

貼り込みにもテクニックが必要

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カッティング文字の貼り付け時は、慎重に保護テープを剥がす。エアー噛みがあるときには滑りやすいように水スプレーを吹き、ゴムヘラを使ってやさしくエアーを抜く。ロゴのような細く狭い範囲でもエアーが噛み込みやすいので、ナックルガード部分の扇状デザインのように広範囲な部分の貼り込みは、最初から霧吹きで水を吹付けながら作業進行するのが良いそうだ。

1986年デザインから1987年デザインへ変貌!!

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この仕上がり!! 未補修カウルのツヤ落ち劣化とはひと味違ったシャープさがある。敢えて純正部品と同じように、ステッカーの上からクリアペイントを施さない仕上がりにした。トータル的にバランス良く仕上がった。

POINT
  • ポイント1・デカール欠品でも見本があればレプリカデカールをワンオフ自作できる
  • ポイント2・UV対応のカッティングシートをベースにペイント仕上げで複製するため、貼り込み時の擦りには細心の注意を払おう
  • ポイント3・赤仕上げなら赤ベース、ゴールド仕上げならゴールドベースのカッティングシートチョイスが基本

限定モデルの「ウォルター・ウルフ仕様」をフルレストアするとなれば、外装パーツの仕上がりが、その出来栄えを大きく左右する。ベースモデルを知るバイクファンなら、誰もが外装パーツの仕上がり具合が気になるはずだ。もちろん、それはマシンオーナーも同じだった。カラーリングだけは、何とか再現しないと……。しかし、肝心のフロントカウルが劣化でヒビ割れ。当初は、クラックを接着して、磨き仕上げのみで再生しようと考えた。しかし、ABS樹脂素材のカウル自体がすでに経年変化で割れやすくなっている。そのため、仮に再生できたとしても、その後の走行振動で再びバラバラに…… とも考えられた。

いろいろ思案した結果、ここでは、同型デザインのカウルを採用したの年式違いのフロントカウルを入手。リペイントで仕上げようと考えたそうだ。そんな矢先に見つけたのが、同じウォルター・ウルフ仕様でも、1年だけ年式違いの1986年式用のフロントカウル。同じデザイン、同じベース色だったのはラッキーだが、グラフィックパターンがまるで違っていた。そんな状況をモデルクリエイトマキシ主宰、板橋さんに相談すると、魅力的な返答=提案があった。

「ベース色は同じなので、デカールを剥がしてからカウルを磨いてベースカウルを作りましょう。純正のサンプルカウルから採寸して、デカールをワンオフすることで、何とかなると思いますよ」。要するに、グラフィックデカールはサンプルカウルから採寸して切り出し、その採寸グラフィックをベースに色合わせすれば、スズキ純正デカールに匹敵した(考え方によってはそれ以上のクォティ?)ものをワンオフできる、というのが板橋さんの提案だった。さらに「デカールが廃盤になって見つからないと、ペイントの塗り分けで仕上げざるを得ないことが多々あります。でも、カッティングシートを使ってその上にカラーリングを施し、完成したカッティングシートをカウルに貼って仕上げれば、ノーマルカウルの雰囲気を再現することもできます」と板橋さん。

保管環境が良かった絶版車の中には「このキズが無ければ!!外装パーツはパーフェクトだったよな!!」なんてお話を聞くことがあるが、そんなパーツの再生にも、今回のような修復方法がベストではないかと思う。デカールの上からペイントを載せ、キズ隠しも可能なのだ。もちろん完全オールペイントベースでも、不人気車や国内モデルには、レプリカデカールキットなど存在しないケースが多いので、そんなモデルのフルレストア時にも、今回のテクニックは応用できるはず。デカールを作らない補修レベルなら、しっかり脱脂した後にマスキングを手抜きせずに行い、ウレタンペイントで仕上げれば、きっと満足の結果を得られるだろう。

ペイントの色合わせに関しては、部品現物を持ち込むことで調色サービスを行っている塗料専門店もあるので、DIY派のユーザーやサンデーメカニックにとっては、心強い味方となるはずだ。今回の実例を参考に、様々な修理再生を「応用」で楽しんでみよう。

取材協力:モデルクリエイトマキシ

 
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