缶スプレーでできるカスタムペイント。ちぢみ模様が個性的な結晶塗装は120℃で焼き付ける

通常の塗装はいかに表面を平滑に仕上げるかが勝負ですが、それとは正反対にきれいなちぢみ模様を出すのが結晶塗装の本領です。ひと昔前の高性能エンジンの象徴でもあるちぢみ模様が簡単にできるのが缶スプレータイプの結晶塗料。120℃で焼き付ける工程が必要ですが、工夫次第で個性的なカスタムにも使えます。

高性能エンジンの象徴をカスタムペイントに活用

カーベックが販売している結晶塗装。缶スプレータイプとスプレーガンで吹き付けるネタ缶の2種類があり、どちらも硬化剤不要の1液タイプ。焼き付け環境が必要だが、サッと塗装できるのが缶スプレーのメリット。

黒や赤の定番色はよく見かけるが、青と黄は個性的。補修だけではなくアイデア次第でカスタムに使える。

キャンディカラーやマットペイントなど、通常のソリッドやメタリックとは異なる塗料はいくつかありますが、中でも個性という点で最右翼なのが結晶塗装です。結晶塗装は一般的な塗装に求められる平滑さと真逆の仕上がりになるのが特長で、1970年代以降の自動車用高性能エンジンのヘッドカバー塗装の定番とされてきました。

縮み塗装と称されるように、硬化後の塗装表面に無数のシワが寄ったように仕上がるのが特長です。塗った直後はツヤがあり表面は滑らかですが、焼き付け乾燥を行うことで塗膜表面がランダムに縮んで独特の模様を形成します。通常のウレタンやアクリル塗料が縮むのは、塗り重ねた塗料のシンナー同士の相性が悪かったなどのトラブルが原因ですが、結晶塗装の場合は焼付によって縮む樹脂を使っているので、加熱すれば必ずちぢみ模様が発生します。

結晶塗装の特長はなんといってもデザインと質感です。加えてシリンダーヘッドカバーに施工した場合、エンジンの静粛性向上も期待できます。無数の結晶模様によって塗装面の表面積が大きくなったことでヘッドカバーから放出される共鳴音が減衰しているのではないか、ということです。自動車やバイクなどのオートモーティブ系以外の使用例としては、百貨店でファッションブランドのインテリアに使われた例があります。タイルのように正方形にカットした金属板を結晶塗料でペイントして壁面に貼ることで、個性的な内装を作り出すこともできます。個性的な仕上がりはアイデア次第というわけです。

結晶塗料は一液タイプで、溶剤やガソリンに対する耐久性はアクリル塗料やラッカー塗料と同等です。その上、模様が独特で焼き付けが必要なため部分補修が難しいという難点があります。そのため、経年劣化などで塗膜がダメージを受けた場合は全面的に剥離して再塗装を行うのが一般的です。

POINT
  • ポイント1・塗装面に無数のちぢみ模様ができるのが結晶塗装の特長
  • ポイント2・デザイン的な個性をアピールできるだけでなく機能性も付随する

見栄えの悪くなったパーツのお色直しにも使える

メーターリングはステンレス製なので錆びていないが、クロームメッキ仕上げのメーターケースはボロサビ。ワイヤーブラシとサンドペーパーでサビを落としても表面の凸凹はどうしようもなく、通常の塗装仕上げならパテでならすか、サフェーサーの厚塗りが必要。そのうえ銀で塗っても黒で塗っても「錆びたケースだから塗装でごまかしたのね」というイメージで見られがち。

脱脂とマスキングをした後に結晶塗料をスプレーする。一気に厚塗りすると垂れるので、薄く塗った塗膜を乾燥させながら塗り重ねるのがポイント。平面なら垂れづらいが、そこで厚塗りすると焼き付け中に表面が先に硬化しているのに塗料に含まれるシンナーが揮発できず、中身がブヨブヨのまま仕上がることがあるので、薄めに塗って自然乾燥でシンナーを揮発させてから重ね塗りを行う。

結晶塗装といえば黒か赤というのが一般的な印象ですが、カーベックの結晶塗装には黒、赤、黄、青のバリエーションがあり、さらに手軽にペイントできる缶スプレーとして販売されています。カーベックはガンコート、パウダーコーティング、加熱乾燥器、サンドブラストキャビネットなどカスタム塗装に関する塗料や設備の開発や販売を行っているメーカーで、結晶塗装に関してはスプレーガンで塗装するタイプと缶スプレータイプを取り扱っています。

個性的な仕上がりになることから、結晶塗装は結晶塗装の補修用のためにあると認識されがちですが、実際は焼き付け乾燥できる素材であればどんなパーツにも塗装できます。塗装後の手入れまで考慮すると現実的かどうかは別ですが、鉄製のガソリンタンクを結晶塗装でカスタムペイントすることも可能です。

ここで紹介するのは、経年劣化によってクロームメッキが錆びてしまったスピードメーターケースの塗装例です。錆びたクロームメッキを完全に補修するなら再めっきしかありませんが、メーターケースは素材が薄いのでメッキの下処理で研磨した際にサビの凹凸を除去できない可能性があります。再塗装を行うにしてもパテ入れが必要である上に、どんな色で塗装しても錆びたクロームメッキをごまかすためだという印象は拭えません。

しかし目的は同じサビ隠しであっても、塗膜に個性がある結晶塗装であればカスタムペイントという新たな価値が生まれます。

メッキのサビを真鍮ブラシで擦り落として、アセトンで脱脂洗浄を行っただけではメーターケース表面は当然凸凹のままですが、結晶塗装によって複雑なちぢれ模様ができることで素地の凹凸は目立ちづらくなります。その上で個性も得られるので一石二鳥です。

また既存の4色以外の色に仕上げたい場合は、結晶塗装を焼き付け乾燥した後で別の塗料を重ね塗りすることもでき、カスタムペイントの有効なアクセントとなるはずです。

POINT
  • ポイント1・缶スプレータイプの結晶塗装なら手軽に施工できる
  • ポイント2・補修ペイントとして活用すればカスタムテイストも得られる

120℃で20分焼き付けると均一な縮れ模様が出現する

自然乾燥でも表面は硬化するが、加熱しないと肝心のちぢれ模様ができない。90℃ぐらいから徐々に模様ができはじめるが、理想的な模様を得るには120℃で20分の加熱乾燥が必要。ヒートガンなどで局所的に加熱すると、縮れる際に局所的に塗膜が引っ張られて均一な仕上がりにならない。オーブントースターも使えるが、加熱中の温度が管理できない時は放射温度計で表面温度をチェックしながら乾燥させる。カーベックのCVジュニアは庫内温度の設定ができる乾燥器なので、理想的な条件でちぢみ模様ができる。

20分間加熱することでランダムな縮み模様が完成した。この仕上がりならカスタム目的で塗装したといっても誰も疑わないだろう。

結晶塗装を硬化させてから別の色を塗り重ねれば、缶スプレー4色以外の色で仕上げることもできる。黒で塗ったメーターケースは重厚感があり個性的だが、純正のメッキ風に光沢が欲しい場合はシルバーのスプレーを塗れば、ちぢれ模様+シルバーという新たな個性が生まれる。ただし上から重ねる色を厚塗りすると、せっかくの結晶模様が潰れてしまうのでほどほどに。

これまで何度か結晶塗装には焼き付け乾燥が必要と説明してきましたが、独特のちぢみ模様を出すためには120℃で20分の焼付乾燥が必要です。常温で塗膜は乾燥しますが、樹脂が縮む温度に達しなければ縮まないのが結晶塗料の特長です。

結晶塗装を成功させる重要なポイントは「塗膜をある程度の厚さにする」ことです。ある程度というのは漠然としていますが、薄塗りより厚く塗った方がベターです。そこには結晶装ならではの特性があります。

結晶塗料は塗装した直後の常温では縮まず、温度が100℃近くに上昇する過程で塗膜表面がランダムに引っ張り上げられてちぢみ模様が発生します。したがって塗膜が薄すぎると、焼付時に引き上げられる塗膜が不足してしまい、充分なちぢみ模様ができないのです。とはいえ一度に厚塗りすると垂れる原因になるので、1回ごとに中乾燥を入れながら3回ぐらい重ねると必要な膜厚を得られます。

もうひとつ応用テクニックとして、樹脂への結晶塗装施工方法があります。基本的に金属パーツへの使用を前提としているため、焼付乾燥温度は120℃となっていますが、実際には90℃前後から徐々に塗膜が縮み始めていくというのがメーカーの見解です。樹脂の種類にもよりますが、100℃以下なら変形や変質しないことを前提にこの特性を利用すれば、樹脂パーツへの結晶塗装が可能となります。焼付温度が低い分時間を長めに設定することで、通常の塗装では出せないちぢみ模様でカスタムテイストを演出できます。

塗膜の厚みによってちぢみ模様の大きさが変化するという特性を応用すれば、塗膜を集めにして大きめの模様にしたり、薄く塗って細かなちぢみ模様に仕上げるといった味付けも可能です。塗膜の厚さと模様の大きさの関係を知りたい場合は、テストピースで焼き付け乾燥をしてみると良いでしょう。

POINT
  • ポイント1・120℃で20分焼き付け乾燥しないと樹脂が縮まず模様ができない
  • ポイント2・うまく縮まない場合は塗膜が薄すぎる場合が多い
 
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