バイクの印象を左右するシート色。柔軟性のある合成皮革を塗り替えるための専用塗料とは

自分なりの主張をアピールすることは重要ですが、あまり個性的だと浮いてしまう場合もあります。シート色はバイクの印象を決定する重要な要素で、定番の黒をはじめタンや白を用いることもあります。現状の色を変更したい時にはシート表皮を張り替えるのが一般的ですが、専用のペイントで塗装する方法もあります。ここでは奇抜な白色のシートを黒に塗り替える手順を紹介しましょう。

合成皮革やビニールレザーを塗る塗料には柔軟性が必要

デザインは本家チャピィに比較的近く、座面のウェルダーパターンもそれなりにうまくできているのに、なぜか真っ白の表皮が張られた海外製のキットバイク。シート専門店に張り替えを依頼しても良いが、ほぼ未使用でスポンジにも表皮にもダメージはないので、カラーリングでイメージチェンジを図る。

塗料のオカジマで販売している皮革用塗料。黒、白、青、赤など9色の主剤と硬化剤、希釈用のシンナーと艶消し剤を組み合わせて使用する。塗料のサイズによって異なる価格はホームページに掲載されている。

この皮革用塗料はハケ塗りとガン吹きで使えるが、シート全体を塗装する場合はスプレーガンの方が仕上がりが良くなる。コンプレッサーの高圧エアー内の水分を分離するセパレーターと、スプレーガンに流れるエアー流量を調整するレギュレーターを併用した。

ビッグスクーターのカスタムが盛り上がった時代、ツルツルテカテカの黒や白のエナメル調シートレザーが流行しました。バイクのシート表皮といえばシボ加工(シワ模様)がついたものという固定観念のあるライダーにとっては違和感のある選択でしたが、逆に言えばシートひとつでバイク全体のイメージが大きく変わることを実感したものです。

表皮の「色」も同様で、定番の黒一色に対して黒/白の2トーンやベージュ系のカラーになるだけで高級感やお洒落なイメージが強調されるものです。シート全面だけでなく、後部にメーカーがプリントされたり、側面に機種名が印刷されるだけでも個性になります。

ペイントというと燃料タンクやカウルやフェンダーなど、固い部品に施工するものだと思っているライダーは多いでしょう。塗料の主成分はさまざまな種類の樹脂で、塗装時には液体でも乾燥硬化すると固い塗膜になるのが一般的です。トレールモデルのフェンダーのように元々柔軟性のある素材(ポリプロピレンなど)は成型時にトナーと呼ばれる着色剤を加えて無塗装で使用する場合が多いですが、こうした素材に塗装する場合、硬化後に塗膜が割れないよう軟化剤という添加剤を加えるよう指定されていることもあります。そうしておかないと、フェンダーがねじれた時に塗膜が割れてしまうからです。

しかし中には、硬化後も塗膜が柔らかく変形に追従する塗料もあります。その一例が皮革用塗料です。この塗料は硬化後も塗膜に柔軟性があり、バイクのシートに用いられている合成皮革を塗装できるのが特長です。プロからアマチュアまで幅広いユーザー向けにペイント材料や塗装用資材を販売している塗料のオカジマの皮革用塗料は、主剤と硬化剤を混ぜてスプレーガンで吹き付ける2液型ウレタン塗料で、黒や白、赤、黄、青など色数も豊富に揃っています。

シート表皮はライダーが乗車することで擦られシワが寄り折れ曲がります。季節による変化もあり、夏場には柔らかく冬になると硬くなります。同じ2液型ウレタン塗料でも、こうした点は外装用とはまったく異なります。柔らかい合成皮革に密着して剥がれない上に、曲げたり引っ張られたりしても塗膜が割れることなく定着し続けるというのは、考え方によってはこちらの方が数段シビアであるともいえます。タッチアップ補修用の塗料はいくつかのメーカーから発売されているようですが、2液型のスプレーガン用塗料としては寡聞にしてこの塗料以外に出会ったことはありません。ニーズが限られているという事情もあるでしょうが、厳しい条件をクリアする塗料を製品化するのは難易度が高いのかもしれません。

POINT
  • ポイント1・一般的な塗料は乾燥によって樹脂成分が硬くなるので、柔軟性のある部分に塗装すると割れたり剥がれることがある
  • ポイント2・皮革用塗料を使用することで柔軟性のあるシート表皮を塗装できる

しっかり密着させるには何よりも脱脂洗浄が重要

マイペットやママレモンなど家庭用の洗剤を使ってシート表面の汚れを取り除く。バイク用の(合成皮革用の)シートクリーナーがあれば、それを使っても良い。パーツクリーナーやシンナーは素材にダメージを与えるリスクがあるので避けた方が無難だ。黒い表皮は汚れが目立ちづらいが、洗ってみると洗剤が真っ黒になることもある。

塗装の実例に用いるのは、ヤマハが1970年代にファミリーバイクとして発売していたチャピィに似たデザインの海外製キットバイクに装着されていた、白色の表皮で張られたシートです。白色の車体色に合わせたカラーリングなのかもしれませんが、少々個性が強すぎて奇抜に思えるので、皮革用塗料の黒色を使って再塗装します。

どんな塗装でも重要なのは下地作り、特に脱脂洗浄です。シートは常に変形しているようなものなので、外装パーツと違って傷や凹みを気にする必要はありませんが、塗装時の弾きや密着不良、塗装後の剥がれを防ぐには汚れや油分の除去が必須です。食器洗い用の中性洗剤や、家具や床やソファの洗浄に使える家庭用クリーナーなどを活用して、座面と側面の縫い合わせ部分の内側なども入念に洗浄します。

ここでは白色のシートを使っているので塗装前の汚れ具合が分かりやすいですが、元野色が黒色だと汚れが目立たない分、洗浄が疎かになりがちなので気をつけましょう。中性洗剤で黒いシートを洗うと、白い泡があっという間に茶色に濁って驚くことがあります。

普段の手入れにシリコン系の保護剤を使っている場合は、より一層の注意が必要です。外装部品の塗装でもシリコンは天敵で、どれだけ高性能なプライマーやサフェーサーを使ってもシリコンの上では弾いてしまいます。シートの色を変えられる材料としては缶スプレータイプの染めQという製品もあり、このラインナップには専用のクリーナーがあるので、それを使って洗浄するのも良いでしょう。

また、すでにシート表皮が硬化したり、ひび割れが生じるなど劣化が進行している場合は、脱脂洗浄を行っても塗料の密着性が低下することがあります。この場合は塗装による補修ではなく、抜本的に表皮を張り替えた方が確実です。

POINT
  • ポイント1・シート塗装の準備として徹底した脱脂洗浄を行うことが必要
  • ポイント2・普段のシートの手入れにシリコン系の艶出し剤を使用している場合は、より入念に脱脂を行う

一気に厚塗りせず薄く塗り重ねることが成功の秘訣

最初から厚塗りするのではなく、塗りづらい外縁部分から薄っていく。脱脂不足で塗料が弾いてしまう場合も、塗膜が薄ければシンナーで油分を拭き取ることができる。黒色の塗料は下地を隠蔽する力が強いので、白いシートが見る間に黒く塗装されていく。

周囲が終わったら側面や座面など面積が大きい部分を塗っていく。部分的に過剰にスプレーし続ければ垂れることもあるだろうが、均一に塗る意識で作業を進めていけば垂れやすくはないようだ。黒シートの上から黒色をスプレーしても、しっかり塗れる手応えがある。

紹介する皮革用塗料は、主剤と硬化剤を混合して専用のシンナーで希釈して使用します。塗装方法はハケ塗りとスプレーガンによる吹き付けが可能で、それぞれ指定された割合で希釈します。さらに専用の艶消し剤もあり、テカり具合も好みで調整できます。
脱脂洗浄後に完全乾燥させたシートをスプレーガンで塗装する際は、最初から厚く塗ると弾きを発見した際に修正が難しく、塗料が垂れる原因となるので、缶スプレーや通常のウレタン塗装と同様に薄く塗り重ねるように心がけます。

いきなり座面の真ん中から塗り始めるのではなく、外周から塗っていくのもポイントです。塗りやすい目立つ部分から塗り始めて塗りづらい外周部分が後になると、塗りづらい部分を重ね塗りするうちに先に塗った部分が厚塗りになってしまう可能性があります。逆に塗りづらい外周部分を先に済ませておけば、座面や側面の目立つ部分を塗り終えた時点でそれ以上塗り重ねる必要はなく、全体的に均一な仕上がりを得られます。

どんな塗料にも共通しますが、この皮革用塗料も黒色は色の載りが良く、真っ白の表皮を簡単に黒く塗ることができました。スプレーガンで霧を細かくして塗り重ねることで、表皮のシボを埋めてしまうこともなく、塗膜を感じさせることもありません。またシートに座ったり表皮を曲げてもヒビが入ったり膜状になって塗装が剥がれることもありませんでした。他の機種ですが、塗装後10年近く経過した後でもヒビや剥離はない状態を維持している例もあるので、補修用としては必要充分な耐久性も備えていると実感しました。

シートの状態や使用状況などによって耐久性は増減するので何とも言えませんが、スプレーガンを使える環境があればかなり高品質な再塗装ができると思います。

塗膜でシボが潰れたり部分的にムラができることもなく、縫い合わせ部分にも塗料がしっかり付着しており、黒色の表皮で張ったシートかのように見える。白色をは試していないが、ロゴマークなどをマスキングテープで作れば、この上から文字を入れることも可能。カスタムはもちろん、古いバイクのレストアにも使える塗料である。

POINT
  • ポイント1・塗装する際は塗りづらい部分から先に進める
  • ポイント2・初めから厚塗りせず、薄くスプレーして弾きがないことを確認してから重ね塗りを行う
 
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