旧車、絶版車オーナーは要注意!サビの原因になる!?開放式バッテリーの排気パイプの取り回し

鉛の極板と希硫酸による化学反応で放電と充電を行う鉛バッテリーは、バイクや自動車の電源にとって不可欠な存在です。現在ではメンテナンスフリータイプが主流ですが、絶版車や旧車を中心に開放式もまだまだ健在です。そんな開放式バッテリーに必ず付いている排気パイプの重要性を知っていますか?

化学反応で酸素と水素ガスを発生する開放式バッテリー

1983年に登場したGPZ400Fは、兄貴分である1100F、750F、550Fと同様のハーフカウル付きの流麗なスタイリングと空冷2バルブながら54馬力を発揮したエンジンで人気となったモデル。バッテリーは当然開放式で、YB10L-A2(GSユアサの場合)を搭載する。

タコメーメーター内に電圧計を装備すると同時に、燃料タンク上の液晶モニターには電解液のレベルが低下した時に点滅するワーニング表示がある。充放電を繰り返すことで電解液中の水分が減少する開放式バッテリーならではの親切装備。

ピンク色の部品は電解液が入ったセルのキャップ1個と交換して取り付ける液量センサ。先端の電極に電解液が触れなくなった時点で液晶モニターが点滅する。液面がロアレベルギリギリになると、加減速による姿勢変化で電極が露出して点滅することもある。

6V車なら3個、12V車なら6個のキャップが付いた開放式しかなかった1980年代以前には、液漏れを防ぐためバッテリーの搭載方法は垂直するしかありませんでした。しかし密閉式メンテナンスフリーバッテリーの登場によって縦横斜め、どんな積み方でも可能になったことで、バイクメーカーにとってニューモデル開発時の自由度が大幅にアップしたことは間違いありません。

開放式でも密閉式でも、鉛を含む電極と希硫酸の電解液による充放電を行う化学反応には違いはありません。ただし密閉式は化学反応時に発生する酸素ガスが極板に吸収されるよう設計されており、電解液をゲル状にしたりセパレーターに染み込ませているメンテナンスフリータイプは液体状態の電解液が少ないため、バッテリーをどんな向きに傾けても電解液がこぼれないのが特長です。

そうしたモダンなバッテリーに対して、旧車や絶版車でおなじみの開放式はバッテリーの筐体内に液体の希硫酸がたっぷり入っています。そして充電時には電解液が電気分解を起こして、プラスの極板から酸素ガスを発生、マイナスの極板からは水素ガスを発生します。新品のバッテリーを車体に装着する前に補充電を行うと、電解液の注入口に細かな水滴が付着しますが、あれは充電時に発生したガスによって揮発した電解液の一部です。

バッテリーを車体に搭載してからも、オルタネーターで発電した電気で充電する際にはガスが発生するため電解液の水分が徐々に減少するため、定期的に補水を行わなくてはなりません。そして充電時に発生するガスや、車体が大きく傾いたり転倒した際に電解液を排出するために設けられているのが排気パイプです

POINT
  • ポイント1・開放式バッテリーは充電時にガスを発生するが、密閉式MFのバッテリーは発生した酸素ガスを電極で吸収して外部に放出しない
  • ポイント2・開放式バッテリーで発生するガスや電解液の飛沫は排気パイプから排出される

反応によるガスや電解液の逃げ道として重要な排気パイプ

開放式でもメンテナンスフリー式でも、新品バッテリーは使用前に補充電を行うことで完全充電状態となり、長期間に渡って安定した性能を発揮できる。

バッテリーの上部カバーの端に下向きに口を開いているのが配管エルボー(GSユアサの呼称)です。12Vバッテリーの場合、2Vを発生するセルをひとつの単位として、6つのセルをつないで12Vを発生していますが、配管エルボーは各セルの上部を跨いで配置されていて、各セルで発生するガスやこぼれた電解液をまとめて排出します。

開放式バッテリーの場合、充電状態が正常であっても化学反応としてガスが発生します。旧車のレギュレートレクチファイアの中には充電電圧が高めに推移するものもあり、その場合はより多くのガスが発生します。したがって電解液中の水分の蒸発も盛んになるため、液量チェックも頻繁に行わなければなりません。充電電圧が低ければガスの発生も抑制されますが、現状のバッテリー電圧よりも高い電圧を加えなければ充電自体が始まらないので、詰まるところガスの発生をなくすことはできません。

そこで重要になるのがエルボーの先に差し込む排気パイプの存在です。キャブレターのドレンチューブなどといっしょに車体下部に大気開放されている排気パイプは、バッテリーから発生するガスを逃がしています。サイトカバー内側やバッテリーケース、リアフェンダーの内側や取扱説明書には、必ずと言って良いほど排気パイプの通し方が記載されているはずです。

バイクを走らせる上で必要不可欠な電気を溜めるバッテリーは、開放式の時代は同時にとても危険でデリケートな存在でもあります。誤って希硫酸に触れたことのあるライダーなら分かるでしょうが、衣類に簡単に穴が開き、手肌に付着すればヤケドのような刺激があり皮膚にダメージを与えます。安全に使いたくても水素ガスや酸素ガスを発生し、希硫酸をこぼす可能性のある部品だからこそ、排気パイプを確実に接続することが重要なのです。

POINT
  • ポイント1・バッテリー電解液の希硫酸は強酸性で危険なので排気パイプで車体下部から排出する
  • ポイント2・パイプが途中で潰れないよう、バイクメーカーの指示通りの通し方でセットする

パイプの通し方次第でフレームやスイングアームが錆びることもある

排気パイプがバッテリーケースで潰されて途中で裂けてしまい、リアサスペンションの上部マウント部分が錆びている例。フレームの中でも特に強度が必要な部分だけに、このような通し方は避けなくてはいけない。もちろんメーカーが定める配置とは異なり、オーナーのミスによるものだ。

このGPZ400Fのバッテリーケースは独特で、排気パイプはバッテリーの配管エルボーに直接差し込むのではなく、バッテリーケースのフランジ部分の排水口のような部分に挿入する。この近辺のフレームのサビはすべて電解液の飛散によるものと考えて間違いないだろう。

バッテリーの配管エルボーとバッテリーケースのフランジ部分がオフセットしているため、短いパイプがクランク状に曲がってしまう。この部分で潰れるとガスや電解液の飛沫はバッテリーケース下の排気パイプに流れる前に配管エルボー直下で漏れてしまうので、無理に押し込まないよう注意する。

手持ちのパイプを排気パイプとして使う場合は、配管エルボーに挿入する近くにカッターでスリットを入れる。発生するガスや電解液は通常はパイプ内を通って排出され、スリットは何らかの理由でパイプが潰れたり詰まった時だけ排出するのが目的なので、出口近くでは意味がないのだ。

排気パイプでありがちなトラブルがパイプの潰れです。バッテリーケースからサイドカバーの内側を通ってパイプガイドに沿って車体下部に向かう途中で他の部品に押されてパイプが潰れてしまうと、パイプ内のガスや電解液が流れず溜まってしまいます。バイクメーカーではそうした事態を避けるために排気パイプの通し方を定めていますが、それに従わずとりあえず通しやすい場所に配置してサイドカバーをセットして、その内側ではパイプが潰れていた……という例は少なくありません。

バッテリーメーカーでは簡単に潰れないよう肉厚のチューブを使っていますが、硬くて取り回しづらいからとわざと薄くて柔らかいチューブに交換しているライダーもいるようですが、そうした行為は避けた方が良いでしょう。

パイプが途中で潰れると配管エルボーから排出されるガスの逃げ場がなくなることで、水素ガスには爆発の危険性も発生します。そのため、バッテリーメーカーの排気パイプの一方にはスリットや小さな穴が開いており、パイプが途中で潰れて圧力が上がってもそこから逃がせるようになっています。もし排気パイプに汎用チューブを使う場合、エルボーに差し込んだ直下にスリットを入れておきましょう。

ただし、配管エルボーの近くにスリットがあるということは、バッテリーケースやフレームの近くにガスの出口があるということになり、電解液の希硫酸が付着すれば塗装は剥がれてフレームは腐食します。スリットはあくまで緊急避難的な放出弁であり、排気パイプの下部から排出できるよう、パイプが潰れないルートを通すのが本来の姿です。

また、バイクを横から眺めた時に車体下部から垂れ下がっている排気パイプがカッコ悪いと短くカットする人もいますが、パイプの出口がスイングアームやフレームに近いと排出された電解液で塗装を傷めることになるので、スタイルはさておき排気パイプの出口はフレーム下まで下げておいた方が良いでしょう。

定期的な補水や補充電など、高性能なメンテフリーや最新のリチウムイオンに比べると何かと手の掛かる開放式バッテリーですが、性能を最大限に発揮させる上でも排気パイプの扱いにも気をつけたいものです。

POINT
  • ポイント1・排気パイプが途中で潰れてもガスを排出できるよう、パイプの上部にスリットを入れておく
  • ポイント2・スイングアームやフレームの塗装を傷めないよう、排気パイプは途中でカットせず取り付ける
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