バッテリーを外す時は「マイナス」が先。電気メンテの常識をもう一度おさらい

交流で発電した電気を直流に変換してバッテリーに蓄えるのが、バイクや自動車の発電装置の基本です。メンテナンスや交換でバッテリー本体を外す時は、先にマイナス端子を外して次にプラス端子、取り付ける時はプラスが先でマイナスが後というのは経験的に知っていても、その理由まで意識したことはあるでしょうか?答えはマイナス端子の先のリード線の行き着く先にあります。

マイナス端子を先に外さないとバイクが燃えることも!?

バッテリーの端子にショート防止のカバーが付いている場合、プラスとマイナスの両方に付くか、プラスだけに付くかのどちらかだ。マイナスにカバーがあってプラスは裸のまま、というのはマイナスアース車ではありえない。バッテリーを外す際はマイナスのターミナルビスを先に取り外すのが絶対条件。

マイナス端子にセットしたドライバーが傾いたり、他の干渉物にじゃまされてフレームに接触するというのはありがちな一例。この時、プラスのリード線が端子に固定されていても、マイナス端子とフレームには電位差(電圧の違い)がないので接触した時に何も起こらない。

気温が低下する冬季はバッテリーにとって辛い季節といわれています。バッテリーの充電と放電は化学反応によって行われていて、化学反応は全般的に温度によって活性が左右されます。主剤と硬化剤が化学反応で結合して硬化するウレタン塗料やポリエステルパテも、乾燥時に加熱することで硬化が促進されます。

気温の低下による内部抵抗の増加がバッテリーの充放電容量低下の要因とされており、前日は普通に走っていたのに、翌朝突然エンジンが始動できなくなるという症状に見舞われることがあります。

本来は10の容量があるバッテリーの容量が7まで低下しても、エンジンが回っている間はオルタネーターで発電した電気があるため、点火系統や灯火系統などの電装系は正常に機能します。しかしエンジンを止めると7の容量しかないため、大電流を必要とするセルモーターを回すことができず、突然エンジンが掛からなくなった!ということになるのです。補充電で性能が回復すれば良いのですが、それでもダメな場合は交換が必要です。

バッテリー交換でバッテリー本体のターミナルから端子を外す際、マイナス端子を先に外して、次にプラスを外すのは電気いじりの常識として知られています。交換時だけでなく、USBソケットやグリップヒーターなどの電気アクセサリーを装着する際も、ショートを防止するためにマイナス端子を外すように指示されています。

何故マイナス端子なのでしょうか?プラス端子を先に外すと何がいけないのでしょうか?

目覚まし時計やテレビのリモコンなど乾電池で作動する電気製品で、プラスとマイナスのを繋ぐ順番が決まっているという話は聴きません。ただし電池の電極形状と電池ボックスの端子の形状(マイナス側はコイル状の場合が多い)から、外す時はプラス側が先で、取り付ける時はマイナスを先にする方がやりやすいことが多いです。

電気系のアクセサリーを取り付ける際に、アクセサリーの電源コードがフレームに触れてバチッ!とショートして、そこで慌ててマイナス端子を外した経験のあるライダーもいるかもしれません。そんなうっかりミスならまだしも、いい加減に配線した後付けアクセサリーの電源コードがガソリンタンクで潰れて被覆が切れて芯線がフレームに接したり、バッテリーの上に置いた車載工具袋からバッテリーのプラス端子とフレームにまたがるようにプライヤーが転がり出たら、下手をしたら車両火災につながる大事故につながります。

バイクや自動車の鉛バッテリーも乾電池も直流電池という点では同じなのに、バイクのバッテリーには取り付け、取り外しの順序が決まっている理由は、電気回路の構成に由来します。バッテリーから出た電気はイグナイターやヘッドライトなどの電気装備を通って再びバッテリーにつながることで回路となりますが、バイクやクルマは電気装備、すなわち負荷の先は配線を使わず、車体の金属部を導体として回路を構成しているのが特長です(負荷の種類によっては配線で回路を構成するものもあります)。

POINT
  • ポイント1・電気系のメンテナンスやカスタムを行う際は、作業前にバッテリーのマイナス端子を外すのが鉄則
  • ポイント2・バッテリーのプラス端子とフレームの間でショートが起こると、車両火災につながる恐れがある

バイクや自動車のフレームは電気回路の一部となっている

これはプラス端子を先に外そうとして、車体にドライバーが接触した際に起きることを電球で置き換えたサンプル。プラス端子をくわえたワニ口クリップの反対側を電球のお尻に付け、金具部分をフレームのボルトに接触させると点灯する。つまりバッテリープラス~電球~フレーム間で回路ができるということ。電球を介しているから良いが、クリップの金具を直接フレームに当てたらショートして配線が溶けるかもしれない。プラス端子にセットしたドライバーがフレームに触れても同じ事が起こる。電気はバッテリープラスから負荷を通ってバッテリーマイナスに戻ると言われるが、その間にフレームを通っている。だからプラス端子とフレームの接触は御法度なのだ。

バッテリーを取り付ける際はプラスが先で、ターミナルボルトを締めたら絶縁用のゴムカバーを確実にかぶせておく。経年劣化やバッテリー端子とリード線の向きが合わないとカバーがそっぽを向いて端子が露出したままになることもあるが、むき出しのプラス端子とフレームがショートしたら車両火災につながりとても危険。カバーがセットできないなら、せめてビニールテープやハーネステープでプラス端子を絶縁しておく。

ヘッドライトを例にバイクの電気回路を観察してみます。

バッテリーのプラス端子につながる配線は、イグニッションスイッチを経由してヒューズボックスに入り、そこからハイ/ロービームを切り替えるディマースイッチにつながり、その先でヘッドライトバルブにつながります。そしてヘッドライトを出た配線は、そこからバッテリーのマイナス端子に戻らず、丸形ギボシによってフレームに固定されます。

配線の一方をフレームにつないだ電気装備を機能させるには、バッテリーのマイナス側のリード線もフレームにつないで回路にする必要があります。最近のバイクはバッテリー周辺に多数のコードがあって確認しづらいですが、電気装備が簡素な絶版車のバッテリー周りを見ると、マイナス端子につながった太いコードがエンジンのクランクケースにボルト止めされている例が少なくありません。

機種によっては、灯火類などを配線でバッテリーのマイナス端子につながるものもありますが、ウインカーやホーンや電動ファンなどの電気装備のマイナス側をフレームに接続するものをボディアースといいます。

つまり、車体の金属部分がすべてマイナス側の配線の一部になっているということです。

だからバッテリーのプラス端子とフレームが直接触れればそこに電気が流れてショートし、バッテリー直結で後付けの電気アクセサリーを接続する際にも、配線を不用意にフレームに接触させるとパチッ!と火花が飛ぶことがあるのです。

ではなぜフレームを回路の一部に使うことにしたのか。それはバイクや自動車の電気装備の中で最も大電流を必要とするセルモーターに関係があります。セルモーターの作動時間はわずか数秒ですが、クランクシャフトを回すため大きなトルクが必要で、そのためには大電流を流せる抵抗の少ない配線が必要です。

バッテリーのプラス端子からスターターリレーと、スターターリレーからセルモーターをつなぐプラス側の配線は他の配線に比べて圧倒的に太いのが特長です。しかし回路に大電流を流すにはプラス側だけでなくマイナス側の配線も相応に太くしなくてはなりません。入り口が太いのに出口側が細ければ、そこで電気抵抗が発生してしまいます。そこで導体であるフレーム自体をマイナス側の配線として活用することで、大電流をスムーズに流せるようにしているのです。

車体を配線の一部として使えば、セルモーター以外の電気装備もマイナス側の配線をいちいちバッテリーまで戻さなくても回路が成立することになり、量産車においては配線の重量やコストを低減できることもメリットになります。電気系のアクセサリーを取り付ける際、プラス側の配線はバッテリーから取り出すのに、マイナス側はクワ型端子で車体のどこかのボルトに共締めすれば良いのは、すでにフレームが回路の一部であるからです。

その代わりに、バッテリーのプラス端子とフレームの間を金属や導体でつなげば回路ができてしまい、電気を消費する負荷がなければ短絡してショート状態になります。誤ってプラスのバッテリー端子を先に外そうとしてドライバーがフレームに触れた瞬間にバチッ!と火花が飛ぶのはそのせいです。一方でマイナス端子とフレームの間には電位差がないので、マイナス端子を回すドライバーがフレームに触ってもショートしません

バッテリーを取り付ける際も考え方は同様です。もしマイナス端子を先に接続すると、マイナス側を付ける際にはドライバーがフレームに触れてもショートは起きません。しかしマイナスを先に付けることでフレームは回路として半分成立してしまうので、プラス側の端子を取り付ける際にドライバーがフレームに触れればショートします。

先にプラス端子を付ければ、プラス端子を締める際にはフレームはまだ回路になっていないので何も起きません。次にマイナスのリード線をバッテリーのマイナス端子に当てるとフレームはマイナス側の配線の一部になりますが、マイナス端子との電位差がないのでショートしないのです。

電気は苦手というライダーも少なくないようですが、「バイクや自動車はフレームそのものを電気回路の一部に使っていて、それがマイナス側だからプラスの電気を直接接触させてはいけない」と覚えておけば、バッテリーを外す時はマイナスが先、取り付ける時はプラスが先という順番が理解できることでしょう。

POINT
  • ポイント1・バイクや自動車の大半は、フレームを電気配線の一部に使うマイナスアースを採用している
  • ポイント2・バッテリーのマイナス端子とフレームの間には電圧の差がないので、端子とフレームに工具が接触してもショートしない

マイナス配線の接触不良や劣化にも要注意

カワサキKZ900の太いマイナスリード線はメインハーネスにはつながらず、エンジンのクランクケースにボルト固定されている。ボディアースにならないマイナス線は、太いリード線の後ろにチラリと見える細い配線だ。ボディアースがいかに重要かが分かる。

ボディアースのリード線はクランクケースの後方にボルトで固定される。ウインカーやホーンなど、車体各部でボディアースされた電流はフレームからエンジンに伝わり、この丸型端子からバッテリーマイナス端子につながっている。大電流を流すセルモーターのプラスリード線はとても太いが、モーター本体からマイナス線は出ていない。プラスから入った電流はセルモーターで消費され、残った分はモーターケースからクランクケースに伝わり、ボディアースによってバッテリーマイナス端子につながる。

電気回路を構成する上で重要なのは、接続部分の抵抗をできるだけ減らすということです。配線を用いる場合も、旧車であればコネクターやギボシ端子が腐食していないかどうかを確認します。経年劣化による端子のサビは電気抵抗増大の原因となり、抵抗の大きなところに電流を流すことで熱が発生し、コネクターを溶かしたり発火の原因となる場合もあるので注意が必要です。

ボディアースも考え方は同様です。バッテリーのマイナス端子から車体に接続するリード線の抵抗は、なるべく小さいことが理想です。経年劣化によってリード線の芯線が断裂しかかっているような場合は金具部分をかしめ直したり、リード線を新品に交換することをおすすめします。クランクケースにボルト止めするタイプであれば、ケースに接する丸型端子表面の酸化状態なども確認しましょう。端子部分の導通効率アップを謳うボルトやワッシャーも市販されているので、そうしたパーツを装着しても良いでしょう。

またボディアースポイントから離れることで、電気的な抵抗が増す可能性があることも知っておくと良いでしょう。例えばウインカーをハンドルパイプやヘッドライトステーに装着してその場でアースを取った場合、ハンドルがラバーマウントだったらハンドルパイプとトップブリッジの間で大きな電気抵抗が生まれる可能性があり、ヘッドライトステーに樹脂製のグロメットが使ってあればやはり電気抵抗になります。さらにハンドル周りであれば、不導体のグリスをたっぷり塗布したステアリングステムベアリングが電気の流れを阻害する可能性があります。

純正でライト周りのマイナス配線をボディアースとしているある機種では、メインハーネス内にアース線を含めてヘッドライトケースからフレームまで戻して、フレームにボルトで固定しており、さすがにメーカーが考えるだけあると感心させられます。もしハンドル周りに電気アクセサリーを取り付け、そのマイナス側の配線がボディアースによって接続するタイプだったら、ハンドルやトップブリッジなどではなく、フレームのヘッドパイプ周辺やガソリンタンク下のボルトで固定することで、より効果的なボディアースとなります。

同様に、カスタムの一環としてスイングアーム下にウインカーやホタルランプを付ける際にも、スイングアームピボットがブッシュ支持の場合は導電性が良くないので、取り付けるパーツがボディアースの場合、プラス側とマイナス側の配線をまとめてフレームまで配線して、そこでボディアースにするかバッテリーのマイナス端子まで配線した方が確実に作動します。

バッテリー着脱時の順序の意味を知ることから、電装系の配線の仕組みや理屈も分かってきます。難しくて意味が分からないと敬遠するだけでなく、より実践的な内容から興味を持つことで電気いじりが楽しくなるはずです。

NGCジャパンが開発したアーシングヘルパーは、特殊表面処理を施したボルトと純度の高い銅ワッシャーの組み合わせによって、ともすれば電気の流れのボトルネックになりがちな固定部分の抵抗を激減させるアイテム。セルモーターの勢いが増したりヘッドライトが明るくなるなど、リーズナブルで違いが体感できるパーツとして人気がある。

POINT
  • ポイント1・旧車や絶版車はアース線自体の劣化や接触不良に要注意
  • ポイント2・ボディアースの電気系アクセサリーを装着する際は、アース線をフレーム本体またはバッテリーのマイナス端子までまで延長して取り付けることでアクセサリーパーツの効率がアップする
 
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