販売台数はピークの1/10!これからのバイク業界はどうなる?!

「バイクが売れない」と言われています。
それもそのはず、現在のバイクの販売台数は最盛期の1/10しかありません。
これはもう『激減』と言う以外に無いでしょう。
販売台数が昨年比で〇〇%減少とか、ライダーの平均年齢が54.7歳であるとか、暗い話しか聞こえて来ないバイク業界の昨今。

しかーし!
「案外そうでもないよ?」と言うと意外ですか?

皆様にささやかな幸せとバイクの知識をお送りするWebiQ(ウェビキュー)。
販売台数が最盛期の1割しか無い事だけを見て悲観するのは早計だぜ!という、ちょっと希望のある話です。

これが2006年以降のバイク出荷台数推移です

※一般社団法人 日本自動車工業会より
ご覧のありさま。
急降下が止まらない……。
バイクが売れない理由ならいくらでもあるし、まぁ仕方ないよね……。
バイクはもうオシマイ。

世間はだいたいそんな論調です。

どのジャンルが売れなくなっているの?

ではここでもう一度先ほどのグラフを見てください。
一目瞭然、販売台数が急降下しているのは原付1種です。
逆に原付1種以外の排気量区分ではそんなに落ち込んでいるようには見えません。

これは実際にその通りで、年によって多少の動きはあるものの大昔から126cc以上の排気量区分では販売台数に大きな変化はありません。
全販売台数に占める原付1種の構成割合が大きすぎるので、他の排気量動向が見えなくなっているだけです。

全体の販売台数は減っている、しかし減っているのは原付1種(50cc)だけである。
ザックリ言うとコレが真実です。

原付1種(50cc)が売れなくなった原因

いくつか要因があると思いますし、その要因を無くそうとバイク業界は躍起です。
しかし本当にそうでしょうか?

そもそも売りすぎていた

1982年に販売台数はピークを迎えますが(約328万5000台/年)、当時はホンダとヤマハで「H・Y戦争」と呼ばれるほど過激に販売台数競争が行われていました。
最も販売台数の稼げる50ccは薄利多売で台数を稼ぐ事が至上命題とされていて、車種によっては赤字販売も行われていたそうです。

モータリゼーション黎明期だった

今でこそ各家庭に車が1台あるのはわりと普通ですが、1970年代はまだまだ自家用車の普及率は低かったのです。
車はとても高価な乗り物で、おいそれと買えるシロモノではありませんでした。
(今も気軽に買えるものではありませんが)

東名高速道路が開通したのが1969年ですので、バイクの販売台数ピークはそれから13年後。
高価なクルマは買えないけれど、急速に発達していく生活環境の変化に追従して便利に生き抜くには『何らかの交通手段が必要だった』のです。
そんな要望を満たすために登場したのが原付一種のスクーター!

それまでの「バイク = 大きくて重くてとても乗れない」、「カブ=小さくて軽いけど変速操作があって不安」という層に対して、「軽量、手軽、簡単操作、低価格」な50ccのスクーターは絶大な支持を集め、爆発的に普及していきました。
日本のモータリゼーションの幕開けだったのです。

その他の要因

ヘルメット着用義務化、3ナイ運動、暴走族の衰退、路上駐車取り締まり強化、排気ガス規制、騒音規制……、さまざまな理由はありますし、業界はこれらの規制が原付不振の原因と考えているようですが、そんな事は衰退の本質ではない気がしています。


ようするに販売台数ピークの時が異常だったのです。
それまでの徒歩、自転車といった人力移動中心の生活だったものが、動力を使った個人的移動手段が普及していく生活様式(=モータリゼーション)にシフトしていく中、最も低価格な移動手段として原付1種に白羽の矢が立っただけ。
そこに登場した『手軽な移動手段=スクーター』という乗り物が皆の望んだものであっただけ。
簡単に言えばそれだけの話だったのではないかと思います。


原付1種の販売台数は戻るのか?


戻りません。
日本のモータリゼーション開花に絶大な役目を果たした原付1種ですが、今やモータリゼーションは当たり前になり、その役目は更に手軽な電動自転車や、さらに利便性の良い軽自動車に移ったのではないかと思います。
「軽量、手軽、簡単操作、低価格」で普及した原付スクーターの特徴は、そのまま現代の軽自動車(AT車)に当てはまる事からも解ります。

原付1種が規制されまくって不便だから……ではなく、スクーターに求める役割が変わったという事でしょう。
かつて『生活必需品』であったものから、配達などの『仕事の道具』や、電動自転車と軽自動車の間をつなぐ『中途半端な距離の便利な移動手段』へ、存在意義が変化したと見るべきはないでしょうか。

バイク業界は過去の販売台数が忘れられず、あの栄光を再び!という方向を目指してしまいがちですが、上記の理由から『販売台数拡大路線』を目指してはダメだと思います。
かつての需要はもう無いので、販売台数は需要とバランスするところまで落ちるはずです。
それがどの規模なのかは誰にも判りませんが、今よりも更に大きく落ち込む事は確実です。

ただ、そうなると原付スクーターの販売修理を主業務としていた『昔ながらの街のバイク屋さん』は大ピンチです。
単純に考えて売上1/10以下ですからね。
店の方向性を変えるか廃業するかの岐路に立たされている状態で、メーカー側もディーラー再編成に向けて動き出してします。

今後、街の小さなバイク屋さんは数を減らし、大型量販店と大型のディーラー店舗に販売の主体が移り、特殊な整備技能を持つ個人店が僅かに残る、そんな構図になるのではないかと予想しています。

50cc以外は安泰なのか?


販売台数だけを見れば安泰そうに見えます。

50cc以上のバイクは『わざわざ2輪免許を取らなければ乗れない乗り物』なので、実用よりも趣味の要素が大きくなるジャンルです。
そして、趣味にするほどバイクが好きな人がいつの時代でも一定数居るのは、51cc以上の販売台数が大昔からほぼ変化しない事からも読み取れます。

しかし、この後に控えている状況を考えると単純に安泰とは言えません。

原付2種(~125cc)の場合


4輪車の世界は2輪車の1歩先を行っているので、4輪車の状況を知ればこの先の2輪車の方向が何となく見えてきます。

まず、世界は電動化に向かっています。
それが本当に環境に良いのか?については個人的に大いに疑問ですが、世界が電動化に向かっているのは間違いありません。
静かで、出足からトルクフルで、燃料代(電気代)が安く、構造が単純ゆえにメカニカルな故障が少ない、排気ガスが出ない。
価格や耐久性や航続距離の問題に少し目を瞑って短期的なメリットを見れば、電動車は街乗りの移動手段として最適と言えます。

そんな中、最も実用性が大事なこのクラスでの電動化はほとんど進んでいません。
電動化はまだバッテリーの充電時間などにも問題を抱えていますが、短距離移動用途がメインのこのクラスで電動化が進んでいないのは結構マズい状況かもしれません。

軽二輪・小型二輪(126cc~)の場合


今のところは安泰です。
しかし、上で書いたように「この後に控えている状況」を考慮するとこのままではジリ貧です。

ではその「この後に控えている状況」とは何でしょう?

新規制、ユーロ6!

4輪の世界では1960年代から排気ガス浄化に対する規制が始まっていました。
有名な米国のマスキー法では1970年に大幅な規制強化が行われ、規制を突破するために動力性能の大幅な低下を招いています。
技術の進化でこれは克服されましたが、その後も次々と規制は厳しくなって現代に至ります。

4輪に比べて絶対数の少ない2輪車は長らく排気ガスなどの規制はありませんでしたが、1990年代末期から本格的な規制がスタート。
世界各国の規制の他、日本独自の厳しい規制(日本は世界基準に対して騒音に対する規制がより厳しい傾向)もあり、2ストロークエンジンやキャブレター搭載車などが軒並みラインナップから消えたのは記憶に新しいところです。

現在は日本独自の排ガス規制から国際標準に合わせた規制へと変更され、ユーロ5と呼ばれる2020年規制となっています。
表をご覧いただけば解るように、この20年で年々厳しくなってきた排ガスなどの規制値推移はハンパではありません。
これにプラスして年々厳しくなる騒音規制が加わるのですから只事ではないです。

しかし、高度に電子制御され、触媒や還元装置を備えた吸排気システムを持つ低騒音エンジンをメーカーは作りました。
特にユーロ3以降は排気ガスの状態を常時監視してインジェクション制御へフィードバックする手法が普及し、一気に近代化されました。

2020年の今年に登場する新型車は全てこの規制を突破している素晴らしいものばかりです。
厳しい規制を突破しながら、過去最強のパワーを絞り出す車両が次々と登場し、特に大型車の性能向上は目を見張るばかり。
30年前、初代CBR900RRの出力は120ps強だったように記憶していますが、ほぼ同じ排気量で厳しい規制を突破しながら現代のCBR1000RR-Rはほぼ2倍近い218ps!
技術の勝利!メーカーさんはエラい!

本当にヤバいのは2024年に控えているユーロ6

規制の内容はまだ決まっていません。
しかし、このユーロ6では大幅に規制が厳しくなると言われています。
それこそ1970年のマスキー法並みに。

世界は電動化へ向かっていると書きましたが、これを促進したいという思惑も働いているのでしょう。
この辺りは政治的な狙いもあるので単純に「環境のため」と言い切れない部分もありますが、とにもかくにも劇的な規制でガソリンエンジンの牙は根こそぎ抜かれてしまう予想です。
二度と立ち直れないくらいに!

2030年にはガソリンエンジン販売禁止?!

既にヨーロッパ各国で2030年からガソリンやディーゼルなどの内燃機関搭載車の販売を禁止する事が表明されています。
イギリス、フランス、スペインなども全面禁止となる事を宣言しており、順調に行けば20年後の2040年には世界各国でガソリンエンジンを搭載した車両は(4輪も2輪も)販売禁止となります。
最終的には過去の車両も含めてガソリンエンジン搭載車での公道走行が禁止となる可能性もゼロではありません。
マフラー、キャブレター、エアクリーナーなど、エンジンに関わる業界は大ピンチです。

ユーロ6規制開始までの間について

1960年代、排気ガス規制や安全基準がほぼ無かった時代の4輪車はレーシングカーとスポーツカーの境界がほぼ無く、レーシングカーそのままと言っても良い過激な車が公道走行可能でした。
それらの車はパワーこそ現代の車に劣りますが、軽さを武器に未だに超一級の走りを見せます。
『運転する事そのものの楽しさ』なら現代の最新型より上と言っても良いでしょう。


それと同じ状況は90年代のバイクでもありました。
レーサーレプリカにSPキットを組んだ過激なバイクがソレです。
電子制御は一切無いので乗りこなすのは非常に難しいですが、その難しさやメンドクサさも過激な乗り物の持つ魅力の一つでした。


そして現代。
車もバイクも電子制御技術の進歩によって、ひと昔前なら夢物語だった最高出力を自在に乗りこなせる過激なモンスターが各メーカーで凌ぎを削っています。
そしてこれは内燃機関を動力とする乗り物の最後の灯となるでしょう。
10年後、20年後に「あの時代はスゴかった」と言われる状況にあるのです。
過激な超高性能車が好きなら、今は間違いなく『買い時』です。


環境問題、騒音問題、健康問題、政治的思惑などから、(ユーロ6が履行される)2024年以降に今より高性能な内燃機関搭載型の車両が登場しない可能性は非常に高いです。
ちょっとくらい無理してでも最後のガソリンモンスターを買っておくべきかもしれません。
新規車両や新規エンジンは簡単に開発出来るものではないので、現在あるラインアップがホントに最後になるかもしれません。
繰り返しますが、ユーロ6発動まではあと3年しかありません。

近い将来訪れる電動化について


乗り物は音と振動と匂いがある方が良い
そういう意見は解ります。
私もそのクチですし。
しかし、だからと言って電動を全て否定するのもどうかと思います。

確かに少し前までの電動は子供騙しでしたので低性能なイメージが強いかもしれませんが、最近の電動はめっぽう高性能です。
実用重視の4輪車の電動化とは異なり、趣味で乗るバイクが電動化するにはガソリンエンジンの性能を超える性能が必要でしょう。
しかし、これは容易に達成してしまうと思います。

既にパイクスピーク(アメリカで実施されるヒルクライムレース)の歴代最高タイムは電動車が叩き出したものですし、競技に特化したラジコンでもエンジンと電動のタイム差はほぼありません。
起動時に最大トルクを発生するモーターの特性はバイクに向いているとさえ思います。
単気筒やVツインに慣れ親しんでいる方なら容易に想像できるのでは?

恐らく、未来のバイクでは電動ラジコンカーのようなチューニングパーツが出揃い、アンプだの配線だの高出力バッテリーだのへの換装と、その制御がチューナーの腕の見せ所になるのでしょう。
全く新しいモーターチューナーが登場して繁盛するのかもしれません。
そして、パワーソースがエンジンからモーターに変わっても車体に求められる性能は変わりません。
ガソリン4気筒とは全く異なる出力特性の大トルクに耐えるべく、今までとは違う車体ノウハウも求められるはずです。

内燃機関のような音も振動も匂いもありませんが、動力剥き出しのバイクでは『モーターならではの音や振動や匂い』はあります。

動力が何であれ、タイヤ2個でバランスしながら走る限りバイクの魅力は永遠不滅です。
動力が何であれ、車体を整備できるバイクショップは永遠不滅です。

まとめ

  • 日本のモータリゼーション開花の役目を終えた原付1種は、今後かつてのような売れ行きに戻る事はありません。
  • 原付2種は近距離移動手段に特化して早急に電動化される必要があります。
  • 軽二輪と小型二輪は、ユーロ6規制がスタートするまでの今後数年間に内燃機関搭載型として究極性能を発揮します。
  • ユーロ6規制はガソリンエンジンに終止符を打つかもしれません。
  • 電動化の波はバイクにも訪れますが、逆に性能は向上します。
  • 街のバイク屋さんは淘汰され、大型量販店と特殊な個人店だけになります。
  • マフラーなどのアフターパーツは需要が無くなりますが、電動チューニングパーツに華が咲きます。

以上、すべて根拠の薄い個人的な予想でしかありませんが、かなりの確立で当たる予感もします。

ただ、時代がどれだけ変わろうとも、『人が乗ってバランスを取ってあげないと転倒してしまうタイヤが2つしかない変な乗り物』である限り、バイクの魅力は不滅です。


心配なのは『電子制御のジャイロを搭載して絶対転倒しない自動運転すら可能な安全なバイク』……という方向に進んでしまう事です。
その方向に進化すると、バイクは車と比較して『単なる不便な乗り物』でしかないので滅んでしまうかもしれません。
そうならない事を願っています。

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