タイヤに配合されてるシリカって何?

タイヤの紹介記事を見ていると「シリカ配合」という説明を見た事がありませんか?
そして「何だか良く解らないけどスゴイ物が配合されていて性能が良い!」という感じで普通に読み飛ばしていませんか?

しかーし!
シリカとは何なのか?それが配合されると何が起こるのか?を知っておくと、何がどうスゴイのかが理解できて、タイヤ選択時の決め手になるかもしれません。

皆様にささやかな幸せとバイクの知識をお送りするWebiQ(ウェビキュー)。
今回はタイヤに配合されている謎物質「シリカ」の解説です。

復習1:タイヤの基本素材は2種類


ゴムで出来ているタイヤですが、実はこのゴムには大きく分けて2種類あります。
それが天然ゴム合成ゴム

天然ゴムはゴムの木をキズ付けて出てくる樹脂を集めて作るゴム。
高強度で発熱しにくいという特徴があるので、タイヤでは重量級の車両(バスやトラックや作業車など)のタイヤで採用されているそうです。

でもバイクは軽量なので天然ゴム素材のタイヤはほぼ存在せず、石油由来の合成ゴムを採用しています。

合成ゴム素材を使うメリットはタイヤの部位によって素材の特性を変えられる事。
なので、一口に合成ゴム製のタイヤと言っても全体が1種類のゴム素材で作られているわけではなく、 路面と接地するトレッド部、車重や荷重を支えるサイドウォール部、エア漏れを防ぐライナー部などで配合を変えた合成ゴムが使い分けられています

復習2:加硫とは?


ゴムはいきなり合成ゴムが開発されたのではなく、当初は自然由来の天然ゴムだけでした。
木から出て来た樹液を固めると天然ゴムの塊が完成するのですが、この天然ゴムに硫黄を加えて加熱すると弾力性が劇的に向上する事が偶然発見されました。
偶然ってのがスゴイですね。
弾力性というのは柔らかくて、変形できて、変形しても元に戻る性能の事なので、タイヤにとって性能向上したい項目が全部良くなる素晴らしい発見です。

偶然発見された硫黄を加えて性能向上させる手法ですが、硫黄を加える事から「加硫」と呼ばれています
今では天然ゴムでも合成ゴムでもこの加硫工程は必須です。

ゴム素材に硫黄を混ぜて加熱すれば加硫は完了するのですが、タイヤの素材として使うゴムを加硫するのは温度と時間の管理が難しいので各社のノウハウの見せ所です。

復習3:タイヤが黒い理由


ミシュランのマスコットキャラクターとして有名なミシュランマン(旧称:ビバンダム)ですが、タイヤメーカーのマスコットなのに何故白いのか疑問に思った事はありませんか?
その理由は、もともとタイヤは白いのが一般的だったからです。(!)
天然ゴムは乳白色をしているので、天然ゴム製だったころのタイヤが白いのは普通の事だったのです。

さて、加硫によって弾力性が向上するのがゴムの特徴ですが、これはゴムの分子が加硫によって結び付きが強固になる事で発生します。
という事は……、結び付きをもっと強化すれば更に弾力性がアップするはず。

その「もっと結び付きを強固にするための物質」がカーボンブラックとよばれる炭素の粉です。
炭素(カーボン)なのでそりゃもう真っ黒。


ゴムにカーボンブラックを混入すると更に弾力性や強度がアップしますが、カーボンブラックはインクに使われるほど黒い物質なので、ちょっと混ぜただけでタイヤは真っ黒になってしまいます。

混入割合は各社の企業秘密なのでわかりませんが、結構な量のカーボンブラックが混入してある事は間違いありません。
だからタイヤは真っ黒なのです。

問題のシリカとは?


ゴムの添加剤として長らく絶対の地位にあったカーボンブラックですが、2000年前後にカーボンブラックの代わりとなる物質が見つかりました。
それがシリカです。
わりと最近の話なのですね。
シリカ配合タイヤが世の中に普通に流通しだしてまだ20年前後しか経過していない事になります。

シリカは地球上で酸素の次に多く存在している物質で、土や岩などに豊富に含まれているありふれた物質です。
お化粧のファンデーションの主成分がシリカだったりするくらい普通の物質。
カーボンブラックが真っ黒い粉だったのに対して、シリカは正反対の白い粉になります。

シリカの別名は「ケイ素」。
化学記号で書くとSiO2なので、正確には「二酸化ケイ素」。
ガラスコーティング剤などの説明で見た事がある方も多いかもしれませんが、同じものです。
石英とか石英ガラスとか水晶とかクリスタルとか様々なカッコイイ呼び名がありますが、要するに全部シリカで、タイヤに使われているのはぶっちゃけ超細かいケイ素の粉です。

シリカを配合するとどんな良い事がある?

さて、そんなシリカですが、カーボンブラックの代わりに使用するとどんな事があるのでしょう?

シリカもカーボンブラック同様にゴムの分子同士を強く結び付ける添加剤なのですが、カーボンブラックで結合を強めた場合よりも変形からの回復スピードが速い特性になります。
路面の凸凹で変形したタイヤが素早く元の形(真円)に戻るので転がり抵抗が少なくなります
低燃費を謳うエコタイヤで採用例が多いのはこのため。

しかも変形からの回復が速いのにカーボンブラックより発熱しにくいという特性のオマケ付き。
無駄に熱ダレしないのです。

さらに!塗れた路面での摩擦力が高い、つまり雨の日の制動力に優れている事が判明しました。


ツーリング系タイヤがこぞってシリカを採用するのはこのウェットグリップ狙いという理由も有るでしょう。
実際、近年のツーリングタイヤのウェットグリップは驚くばかりですが、シリカ配合が大きく寄与しているはずです。

さらにさらに!!高温での弾性低下が少なく(=高温でも安定して反発力を生む)、そのくせ低温でも固くならない(=低温でも安定して反発力を生む)という万能っぷり。
タイヤにとって素晴らしい添加剤です。

シリカの弱点(その1)

そんな万能選手のシリカですが、弱点が無いわけではありません。
最大の弱点は導通性が無いのでタイヤに発生した静電気を地面に逃がせないこと。
カーボンブラックは炭素なのでガンガン静電気が導通するのですが、シリカはガラスの粉みたいな物なので……。

でも心配ゴム用!
じゃなかった、心配ご無用!

タイヤ製造時にトレッドの一部にシリカを配合していない細い筋が設けてあり、そこから静電気を放電するように設計されています。

タイヤのトレッドをよーく見ていると、黒い線が1周している部分があるのを目撃した方も居るのでは?
その細くて黒い線が静電気を地面に放電するアース線です。
トレッド面の広い4輪車用タイヤではアース線が2~3本入っている物もありますよ!

シリカの弱点(その2)

弱点(その2)は製造技術に関するものです。
タイヤに配合されるシリカは超細かい粉状(もともと石の粉ですので)ですが、ゴムにシリカを均一に混ぜ込んで成型するのは難易度激高なのだそうです。

しかもシリカは本来ゴムと結合しません。
そんなシリカを無理矢理ゴムと結合させるため、さらに別の添加剤を配合しなければなりません。
加硫と同じく温度と時間を正確に管理する事でシリカと結合するそうです。

ただ、ちょっと間違えるとシリカと添加剤が結合反応する前にゴムの加硫反応が始まってしまい、ゴムとシリカが結合できなくなってしまうのだそうです。

イメージとしては先に加硫されてしまったゴムがダマになってしまってシリカと結合できなくなる感じでしょうか。
こうなるとシリカと結合できなかったゴムは単に加硫されただけのゴムになってしまうので、カーボンブラック(こちらはゴムと結合しやすい)で補強したゴム以下の性能になってしまいます。


もっと言うと、そもそもタイヤの中にはワイヤーが入っていますが、金属製のワイヤーとゴムとは接着性が非常に悪い組み合わせです。
本来なら剥離してしまうそれらの素材ですが、ゴムに硫黄を含ませる加硫によってワイヤー表面のメッキと反応させて強力に結合しています。

つまり、シリカとゴムを結合させる温度と時間をコントロールした後、今度はゴムを加硫させて(硫黄を混ぜて)ワイヤーと結合させつつ、ゴムの分子同士を結合させる温度と時間の管理が必要になるというワケです。
この一連の温度と時間の管理はとても難易度が高い技術だそうで我々一般人がその全貌を知る事は出来ませんが(メーカーごとの超重要企業秘密なので門外不出)、容易ではなさそうな事は想像できます。

幸いな事にシリカの弱点はシリカ配合のタイヤを使用する我々一般ユーザーにとっては直接関係ありません。
我々はタイヤメーカーの技術に感謝しながらメリットだけを受ける事ができます。
ありがたい事です。

最新タイヤはエライ

そんなこんなでやっと実現したシリカ配合タイヤ。
寒くても固くならず、暑くても無駄にデロデロにならず、雨天時もハイグリップで、転がり抵抗が少なくて燃費の良いタイヤの完成です。

タイヤの資料に「シリカ配合」と書いてあったら、こんな基本特性を持ったタイヤなんだな?と思ってもらえれば幸いです。
説明しようとするとこの記事のように長い話になるのでメーカーはタイヤカタログで軽く書いているだけですが、実はスゴイ技術の塊なのです。

オマケ:タイヤが白っぽくなってきた?!

真っ黒だったカーボンブラックの代わりに最新技術で白いシリカが使われるようになって来ているのですが、シリカをふんだんに配合しているかどうかは見た目からは解りません。
タイヤは今でも黒いままです。

しかし、シリカの大量配合でカーボンブラックの含有率が減っているのは事実。
モノによってはカーボンブラックを使用せず、ゴムの結合剤としてシリカ100%を謳う製品もあるほど。

タイヤが黒いのはカーボンブラックが含まれているからですが、それが全て白いシリカに置き換わるとタイヤは白くなってしまうはずです。
でもシリカ含有を謳うタイヤでもやっぱり黒いままなのはなぜでしょう??

これには2種類の理由があるようです。
1つ目はタイヤが白いと弱弱しく見えるのでわざわざ黒い染料を入れて黒くしているという、ウソみたいな理由。
2つ目は僅かにカーボンブラックも含有している方がシリカ100%よりも良い場合もあるからという理由。

特に後者の理由が最近は増えて来ているようです。
この場合、カーボンブラックは含有しているものの含有量が少ないので真っ黒とまで行かなくなり、僅かに灰色っぽいタイヤになります。

バイク用のタイヤではセンター付近と両サイドでトレッドコンパウンドが違う物が多々ありますが、使っていくとかなり明確に境目が見えますよね?
アレはカーボンブラックの含有率の違いが色の変化として目視できる状態になるからです(たぶん)。
もちろんメーカーはコンパウンドによるカーボンブラック配合率の違い=シリカ配合率の違いを公表していないので憶測に過ぎませんが、タイヤの色を見る限り大ハズレではないと思っています。

一般的にハイグリップ系ツーリングタイヤではセンター付近は全天候対応するべくシリカ多めで、両サイドは雨天性能よりドライグリップを重視してカーボンブラック多めになるはずです。
なので、よーく見るとセンターはより灰色っぽく、両サイドは黒っぽく見えるはずです。

気になった方は自分のタイヤトレッド表面を観察してみてください。
激しい走りでトレッド表面が荒れたりしていなければ静電気放電用のアース線も目視できると思いますよ!

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