オイル交換前に暖気するのは本当に有効なのか?

バイクでも車でも、エンジンオイルを交換する前には少し暖気運転してオイルを温め、柔らかくしてからオイルを抜くと綺麗に全部抜けやすい。
誰もが聞いた事があり、誰もが疑うこと無く、ちょっと暖気してからオイル交換しているのではないでしょうか?
しかーし!
ソレってホント?

皆様にささやかな幸せとバイクの知識をお送りするWebiQ(ウェビキュー)。
今回はオイル交換前に行う暖気運転の常識を一刀両断します。

オイル交換するからには出来るだけ全部抜きたい


抜いたオイルが熱くて火傷したり、オイルに注意してたらエンジン本体やエキパイに手が当たって火傷したり、廃オイル受けの中にドレーボルトとワッシャーを落としちゃったけど熱くて拾えなかったり……。

何かとヒドイ目に合いやすいにも関わらず、オイル交換前にわざわざ暖気運転してからエンジンオイルを抜くのは、兎にも角にも「古いオイルをできるだけ抜きたいから」

……ですよね?

暖気するとオイルは柔らかくなるのか?


暖気するのは「オイルを温めて流動性を上げるため」だと思います。
そのつもりで皆さん暖気しているはず。

さて、暖気するとオイルが柔らかくなるのか?ですが、これは柔らかくなります。
オイル缶にもそのように書いてある物もあります。
「動粘度(100℃)」とか書いてあるアレです。

高温な方がオイル粘度が下がってサラサラと流れやすくなるのは紛れもない事実です。

暖気するとオイルは抜けやすくなるのか?

暖気する事で粘度が下がるとどうなるのか?
一口に粘度と言ってもイロイロあるので難しい話は全部端折りますが、高温では流動性(高温時の動粘度)が上がるので、オイルが抜けやすくなるのはホントです。

詳しい数値も詳細に規定されていますが、その数値をここに列記したところで大して意味は無いので端折ります。
エンジンオイルは暖気して温めると流動性が上がるので最後の1適まで抜けやすくなる」と思ってもらえればOK。

つまり暖気した方が良いのでは?

そのとおり。
暖気した方が良いです。

オイルが柔らかくなっていればエンジン内壁に張り付いているオイルも重力で流れ落ちやすくなるので、ベットリ内壁に張り付いているオイルが抜けきらずにたっぷり残ってしまう事態を防げます。

しかし、何事にも例外はあるものです

暖気しない方が良い場合とは?

今までの話をまとめると暖気しない手はない様に思えます。
しかし、それはエンジンオイルがエンジン内に循環している場合の話、……というのが今回のキモ。

ではエンジンオイルがエンジン内に循環していない場合とは何でしょう?
それはエンジン停止してから時間が経過して完全に冷えた車体の場合!

エンジン停止してから時間が経過しているとどうなる?

バイクショップでエンジンオイル交換される場合、バイクショップまで自走して行って交換を依頼するのが普通です。
車のオイル交換もそうですね。

この場合、エンジンオイルは熱々なので何も問題ありません。
流動性の上がっているオイルを抜けば良いのです。

しかし、自宅で自分でオイル交換する場合、どこかに走りに行ってきた直後にオイル交換開始するとは限りません。
例えば「前週末にツーリングに行ったっきりで平日は乗っていない」などの場合です。
毎日通勤で乗る方でなければありがちなシチュエーションですよね?

この場合、エンジンオイルはオイルパンに落ち切っています。(ココ重要!


ちょっと話は脱線しますが『エンジンが痛むのは始動直後の10秒間』という話を聞いた事はありませんか?
アレはエンジンを停止してしばらくするとエンジン内のオイルがオイルパンに落ち切ってしまい、次の始動時にピストンやカムシャフト等の主要部分の油膜が無いから……というのが理由です。

つまり、しばらく回していないエンジンならば、エンジンオイルは既にエンジン下(ドレーンボルトがある付近)に集まっている事を意味しています。

落ちているオイルをわざわざ上げる必要は無い

重力によって限界まで下にオイルが落ちているのですから、わざわざエンジン始動してオイルを上げる必要などありません。

「いや、暖気する事でもっと落とせるはずだ」と思うかもしれませんが、良く考えてみてください。
前回エンジン停止した時はその直前までエンジン熱々だったはずですよね?
ようするにエンジン冷えてしばらく時間が経過している状態というのは、オイル交換の為に物凄く暖気して、その後でオイルが落ちるまで物凄く待った状態と同じなのです。

だとすると?
暖気なんかしないでそのまま抜いた方が良いのは明白ですよね?

そうは言っても結構残っているのでは?


残ってます。
オイルを完全に落としきるのは実質不可能で、ピストンとシリンダーの隙間、シリンダーヘッドに溜まっている部分、循環経路でくぼんでいる部分、そんな場所のオイルは抜けません。

でも、これは暖気しても抜けない部分です。
もっと言うなら、オイルフィルター内やオイルクーラー内には分解しなければ抜けないオイルが大量に残留しています。
新品オイルと交換したのに、始動直後から何だか汚れて見えるのは、そういった部分に残っている古いオイルと混じるからです。

何だか納得行かない……

オイル交換前には暖気をしてオイルを温めて……というのは物凄く一般的なオイル交換の常識なので、納得行かないのはわかります。

しかし、上で説明したように、走行後にエンジンを止めてからエンジンが冷えるほど時間の経過した状態というのは、暖気してから長時間経過したのと何ら変わりません。
せっかく温めたオイルが落ち切っているのですから、わざわざ中途半端に温めたり、せっかく落ちていたオイルをシリンダーヘッドまで持ち上げる意味は無いです。

でも、やっぱり暖気した方が抜けやすい気がする……

エンジンが冷えているなら、間違いなく暖気しない方がエンジンオイルが下まで落ちています

差があるとしたらオイルが溜まっているオイルパン内壁に付着したオイルです。
暖気しない場合、冷えたオイルは流動性が低下するのでその分だけ内壁に付着しやすくなります。

ただ……、オイルパンは比較的単純な形状なので、内壁への付着残留量は大した量ではないと思います。
むしろ暖気後にエンジン全体に行き渡ってあらゆる内壁に付着している熱いオイルの方が多いのでは?
オイルポンプ内のオイルなどは1日もあれば綺麗サッパリ全部落ちてしまうので、最後までしっかり抜けたオイル量は暖気しない方が多いのではないでしょうか?

異論反論ももちろんあります

「いやいや、お前は何を言ってるんだ?オイル交換するんだから暖気した方が良いに決まってるじゃないか!」
もちろんそういう意見もあるでしょう。

でも本当にそうですか?
ツーリングから帰ってきて1日経過したエンジンは、十分な暖気後に1日経過した状態と何が違うのですか?
バナナで釘が打てるほどの極寒でオイル粘度が水あめのようになっているなら話は別ですが、そんな事は無いでしょう?

この話題は結構盛り上がれるので、バイク仲間で議論してみてください。
全くの同一条件で抜けたオイルの量を厳密に比較できれば一発なんですけど、さすがにそこまでやった事はないのでスミマセン。

バイク屋さんはエライ


冒頭に「抜いたオイルが熱くて火傷したり、オイルに注意してたらエンジン本体やエキパイに手が当たって火傷したり、廃オイル受けの中にドレーボルトとワッシャーを落としちゃったけど熱くて拾えなかったり」というありがちな話を書きました。

でもコレ、バイク屋さんにとっては日常です。
「こんにちは!オイル交換お願いしまーす!」と訪問してくれたお客様のエンジンオイルは余裕で100℃前後です。
だってお店まで乗って来てるんですもの。

そんな熱々のオイルを慣れた手つきでスパッと交換してくれるバイク屋さん。
しかも何も言わなくとも出てくるオイルの状態を目視し、金属粉が多くないか?水分は混入していないか?異物は無いか?粘度はあるか?色は問題無いか?量は規定量入っているか?なども確認しています。

「たかがオイル交換」「オイル抜いて入れるだけなのに工賃高い」などと思っているかもしれませんが、そんな事はありません。
ツーリングから帰宅した直後に自分でオイル交換すれば、バイク屋さんの偉大さを実感すると思いますよ!


 
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