夏のバイクに暖機運転は必要?必要ない?間違った暖機方法では逆にエンジンを痛める事も・・・!

誰しも寒い時期なら暖機運転した方が良さそうな気がしているはずです。
でも夏の暑い時期だとどうでしょうか?

直射日光の当たる場所に停めておくと表面は触れないほど熱くなってるし、少なくとも冬のように始動直後はエンジンの調子がイマイチ……なんて事は無いはずです。
暖機運転しなかったとしても走り出せばすぐにエンジンが熱くなるし、始動直後にいきなり全開でフル加速するなんて事も無いから夏は暖機運転なんかしなくても良い。
……そんな気がしませんか?

しかーし!
暖機運転ってそういう事ではないのですよ。
暖機運転の意味を知れば、「夏でもした方が良い」とか、「冬はもっとした方が良い」とか、「そもそも暖機運転など不要」とか、そういった杓子定規な言い方は出来ないとわかっていただけるはず。
季節や気温に関わらず、暖機運転とは何ぞや?という本質に迫ります。

一般的に暖機運転と言われている事

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暖機運転と聞いてイメージするのは、「エンジン始動後にしばらくアイドリングさせ、エンジン本体や冷却水やオイルを温めてから走り出す事」
大多数の方がイメージする暖機運転はコレだと思います。

実際、そうやって暖機している方を目撃する機会も多いですし、愛車を大事にしている方ほど丁寧に暖機運転を実施しているのではないでしょうか。
愛車を大事にするならちょっと温めたら直ぐに出発!ではなく、もし全開にしても大丈夫なほどキッチリ暖めてから出発するのが最も良い!(実際にはしないけれど)と思われているのではないでしょうか。

そもそも暖機運転をする目的とは?

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水温を適温まで温めてエンジン内部の部品を動きやすくする!……という認識の方が多いと思いますし、その通りなので正解です。
もう少し詳しい方なら水温以外にもエンジンオイルを温めて流動性を増す!とか、エンジン本体を温めて各部のクリアランス、例えばピストンとシリンダーの隙間を適正値にする!という認識の方も居るでしょう。
全部正解です。

エンジンは適切な温度で最適なクリアランスになるように設計されているので、適温に温めて動かした方が絶対に良いです。
エンジンオイルや冷却水も、適切な温度で使用してこそ最高の性能を発揮するようになっています。
どんなエンジンであれ、『エンジンとはそういう物』なのです。

冬の寒い日など、温めなければエンストしてしまう場合もありますが、それはエンジンが適温でない為に各部のクリアランスが適切になっていない、オイルが暖まっていないので粘度が高い、ガソリンが気化しにくいので混合気の状態が良くない、などの理由が重なるからです。
だからまともに動き出す事が出来るようになるために暖機運転をするのです。
ところが……下記のような意見もあります。

暖機運転不要説

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「最新のエンジンは暖機運転なんかしなくても壊れたりしないように設計されており、暖機運転など不要!」という説もあります。

実はある意味これも正解です。
昔の空冷でキャブレターのエンジンならともかく、最新の水冷インジェクション車(FI車)では水温や油温もセンサーで読み取っており、エンジンが冷えている時は自動で積極的に温めようとしますし(=アイドリング回転数が上がったりして、昔で言うところのアクセルをふかしているのと同じ状態になる)、冷えた状態でいきなりスロットル全開にしてもその分だけ混合気を濃いめに補正したりするので普通に走り出せてしまいます。

昔と違って各部のクリアランスも精度が上がっているので、冷えていても隙間がガバガバになったりキツキツになってしまうような事はありません。
このあたりは古い設計のエンジンとは明確に違うので、暖機運転不要というのは間違いではありません

それに、古い設計のエンジン、例えば空冷+キャブレターのようなエンジンであっても、暖機運転をしないと即刻壊れてしまうような事はありません。
そういうエンジンは寒い冬だと暖機運転をしないとエンストしてしまう……など、多少は暖機せざるを得ない事情もありますが、夏の暑い時期なら平気なはず。

だから暖機運転など不要……というのは一理あるのですが、実はそこには別の意味が含まれています
ココをカン違いして「最新エンジンだから暖機運転なんか不要!わざわざそんな事しなくても壊れない!燃料もインジェクションで補正してくれるから特別な操作なんかしなくても何も問題無し!」と思っていると、大きな罠に首まで浸かっている事になります。
そうではないのですよ。

暖機運転はエンジンだけの話ではない

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エンジンは暖機運転無しでも大丈夫、それはそうかもしれませんが、問題はエンジン以外の部分がある事です。
バイクはエンジンだけで走るわけではありません。

前後のサスペンション、前後のタイヤ、チェーン、そういった『動いて熱を持つ事が前提のパーツ』は本来全部暖機する必要があるのです。

安全性に関わるので、極論を言えば暖機しなければならないのはエンジンよりもそういった部分かもしれません。

暖機運転不要というのは『タイヤや人間も暖機する必要があるのだからエンジンだけ暖機しても無駄』という意味です。
『今どきのエンジンは冷え冷えのままいきなり乗り出しても壊れないから暖機運転なんか不要』という事ではありません。
ココ、非常に重要。

大事なのは暖機時間や水温ではない

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もちろんエンジンは適温に温めて動かした方が良いに決ってます。
温めなくても壊れないかもしれませんが、温める必要など無いというワケではありません。

だからといってアイドリング状態でダラダラと冷却水やオイルを温めても大した意味はありません。
夏なら5分、冬なら10分』とか、『水温計の温度が動き出すまで』とか、『油温が50℃になるまで』とか、暖機運転には諸説ありますが、そういう事ではないのです。

本格的に走れるようになるにはそのくらいの時間が掛かるし、そのくらいの温度が必要なのは本当です。
でも、走り出す前にエンジンだけそういった温度にしても片手落ちという事です。

もっと怖い話をすると、厳冬期にはエンジンオイルが寒さで固く(粘度が上がって流動性が下がる)なりますが、固くなったオイルのせいで簡単に油圧が上がるので油圧を逃がすリリーフポートが開いて油圧を逃がしてしまうのです。
こうなるとオイルポンプ直後の油圧が高まっているだけで実際の油圧は実は低いという現象が発生します。
その低い油圧のままアイドリングを続けていると……、カムシャフトの潤滑が不足してカジったり、コンロッド大端部の潤滑が不足してメタルが傷んだり、結構致命的なダメージを負う可能性が高まったりします。
夏なら無縁の話ですが、アイドリングで暖機するというのはそういう事でもあります。

怖い話ついでに言えば、アイドリング中の混合気(ガソリンと空気を混ぜたもの)は理想的状態とは程遠く、エンジン内部の燃焼室にカーボンが蓄積しやすくなります。
エンジンを労わるつもりで行っている暖機運転のせいで、余計にエンジン内部の状況を悪化させてしまうのです。

しかしエンジンは温めた方が良い、車体各部も温めた方が良い、でもアイドリングで延々と温めるのは良くない。
困りましたね……。

間違いだらけの暖機運転

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自宅から出発したら6速全開の最高速まで一気に加速!なんて人は居ませんよね?
仮にそれが可能な場所だったとしてもしないはずです。

状況をまとめると、最新の水冷式エンジンを搭載したインジェクション車であれば、水温が上がるまで延々とアイドリングさせる暖機運転など百害あって一利なしです。
昔のようにある程度暖機していないとまともに動かすのが困難……といった事は無く、そのまま普通に動き出せるだけの優れた制御を持っているからです。
暖機運転無しでいきなり動き出したからといってエンジンが壊れたりもしません。

止まったままアイドリングの暖機運転でエンジンを温める事はできます。
しかし、これで暖まるのはエンジンだけ、それも燃焼室に関わる一部のみです。

エンジン内部を循環している水温が上がったり油温が上がるのでエンジン全体が暖まるようなイメージがありますが、そんな事はありません。
5分や10分のアイドリングではエンジン全体で見るとほとんど暖まっていないに等しいです。
ほんの気休め程度。

そして、上に書いたように暖機運転はエンジンだけを温めれば良いというものではありません
エンジンと同様に車体全体を暖機させる必要があるのです。

車体を暖機すると言うと今一つピンと来ないかもしれませんが、例えばサスペンションのダンパーオイルは摺動させる事で発熱して本来のダンピングを生みます。
冷えたままではダンパーが効きすぎている事になります。

タイヤも暖機する必要があり、冷えたタイヤではゴムが固いので本来のグリップは期待できません。
走る事で動かして、内部から温める必要があります。

盲点として、ライダー自身の暖機も必要です。
暖機というより、バイクを自在に操る感覚を取り戻す時間と言っても良いです。
人間は非常に優秀なので久しぶりにパッとバイクに跨っても普通に運転できますが、「運転できる」のと「積極的に操っている」のは全然違います。
ライダー自身がバイクの運転感覚を再確認する時間が必要なのです。

エンジンの暖機は単にスロットルのツキを良くしたりエンストしないようにしたりギヤチェンジしやすくしたりするだけですが、むしろエンジン以外の暖機の方が重要である事がお解りいただけたでしょうか?
そんな大げさな……と思われるかもしれませんが、安全に関わる部分なので非常に重要です。

夏でも暖機運転(暖機走行)は必要

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もうお解りですね?
暖機運転で大切なのはアイドリングでエンジンオイルを温めたり水温を上げる事ではありません
エンジン、オイル、冷却水を適温にする事はもちろん大事ですが、それと同じくらい車体全体を適温にする事が大事なのです。
エンジン本体やクーラントやオイルだけではなく、タイヤ(それも表面温度ではなく内部も含めたもの)や我々ライダー自身の暖機が重要。
それに、長時間のアイドリングはそもそもエンジンに良くないです。

つまり、エンジン始動して(エンストしない程度に)僅かに暖まったらたらサッサと走り出してしまい、暖機走行しながら自分自身も含めた全てを馴染ませるように温めながら走る。
しばらく走っているとエンジン、水温、油温、車体、自分自身が馴染んでくるので、徐々にいつものペースに戻して行く

暖機運転というより暖機走行というイメージですぐに走り出すのが最良です。
身体が馴染むころにはエンジンの暖機なんか勝手に終わってるというワケです。

これは季節を問いません。
夏は暑いから人間がバイクの運転感覚を取り戻すのが早いですか?
そんなわけないですよね!

オマケの話

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エンジン始動したらすぐにゆっくり走り出し、全てを馴染ませるように温めながら暖機走行……が難しい車種も存在します。
それはスクーターなどのCVT(無断変速機)を使った車両。

CVT変速の宿命としてエンジン回転数と車速を切り離して任意にコントロールできないので、エンジンは低回転のまま車速だけ増速していくとか、車速は低いけれどエンジンは回し気味にとか、そういったコントロールが(不可能ではないけれど)非常に難しいのです。

ですので、取り敢えず速度は抑え気味に、アクセル開度は少なめにして走り出すのが最良でしょう。
止まったままアイドリングさせて、エンジンだけ温めるよりは断然良いです。

また、レースでは走りながらの暖機する事が出来ないので、スタート前に止まった状態でエンジンを温めます。
(タイヤはタイヤウォーマーで温めますし、ライダーは準備運動で馴染ませます)
この時のエンジン暖機ですが、上で書いたような理由により長時間のアイドリングで温めたりはしません。
むしろ積極的に油圧を上げたい、低回転域のレース用燃料噴射マッピングでは極端に燃焼室にカーボンが溜まるなどの理由により、始動と同時にかなりの高回転域を使って温めます。
親の仇の如く空ブカシしているように見えますが、市販車の『走りながら暖機』を物凄く極端に行うとそうなってしまうというわけ。

形だけ真似てアイドリング状態からブンブン空ブカシするのは何の意味も無い恥ずかしい行為だから止めましょうね。
排気騒音がうるさいので近所迷惑なだけで良い事は何もありませんよ。

 
今回紹介した製品はこちら
 
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コメント一覧
  1. ?s=55&d=mm&r=g 匿名 より:

    万年初心者ライダーですが読者として読んでいても、記事をまとめて本にして出したい気分になりそうですけど、本を買わずして無料で読めるなんて、いわゆるいい時代ですねーというやつですね。おもわずMicrosoftノートに印刷して保存してしまいます。

  2. ?s=55&d=mm&r=g 匿名 より:

    読み物として非常に楽しめました。
    ご年配の方が暖気は絶対必要って振りかざす理由が良く分かりました。そういう過去があったのですね。
    老若男女問わず今を生きるライダーには有益で分かりやすい記事でよかったです。

  3. ?s=55&d=mm&r=g 通りすがりのトラック運転手 より:

    暖気論争は、昔も今も諸説ありますからね。
    その中では、割と読める記事だと思いますけど。

  4. ?s=55&d=mm&r=g 匿名 より:

    意味のないムダな話の長いこと、文字数で原稿料が出るのか。
    三分の一も読んでないが、要は暖気運転はエンジンだけじゃなく車体の各煽動部とライダー(人間)の準備が目的だって事だろ。

    • ?s=55&d=mm&r=g 匿名 より:

      あなたのような超ベテランの上級者であればそうかもしれませんね
      でもそれだけだと、「じゃあ従来の暖機運転は何がダメなのか」がわからないから多少長くなってもしっかり説明してるんじゃないですか?
      それにご存じないのかもしれないんですけど、この記事を読むのはあなたのような超大ベテランの上級者でこのくらい常識だろって認識のある人ばかりではないんですよ
      全然知らない初心者だって読むんだから、その人のために丁寧に書く必要がと思って書いてるかもしれないじゃないですか?
      それとも私には全然詳しくないですが、文字数で原稿料が変わるという根拠は何かあるんでしょうか?
      そもそもこの程度の文章量で「長い、3分の1しか読んでない」とおっしゃいますが、この記事より遥かに文章量の多い読み物って、ここだけの話物凄い沢山あるんですよ…意外ですよね?

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