車種専用表皮とタッカーがあれば、愛車のシートもシワなく張れる!

経年劣化やイタズラでシート表皮に穴が開くと、そこから浸入した雨水がいつまでも染み出すようになります。ガムテープなどで一時しのぎをしてもすぐに症状が再発し、テープのノリがべたつくのも不快です。そんな時はシートを貼り替えるのが最善策で、立体裁断済みの表皮が販売されている機種では、かなりクオリティの高い仕上がりも期待できます。

車種専用表皮が用意された機種ならラッキー

02-2b.jpg 経年劣化によって座面と前面の溶着部分が剥がれ、他にも小さな裂け目があるスクーター用のシート。これぐらいの傷なら手当もせず乗り続けるユーザーもいるだろうが、一度水分を吸い込んだスポンジは乾きづらく、座るたびに内側からジワッと染み出して不快な思いをすることも多い。

03-2b.jpg ニッパなど刃先が鋭い工具でタッカーの針を抜いて表皮を剥がすと、表皮が避けた部分の下のスポンジは表面が擦れて削れている。手当が遅れるほどスポンジの傷みが進行し、表皮を張り替えても凹みが目立ってしまう場合もある。スポンジ自体が湿っている場合はすぐに張り替えず、風通しの良い場所で数日間でも陰干しして乾燥させる。タッカーの針を抜く際にシートボトムに折れ残ったら、そのままにせず引き抜いておく。

シートはライディング中、常にライダーを支え続けている重要な部品です。そして洗車の際はワックスやコーティングによって磨き上げられる燃料タンクやカウルなどの外装パーツと違って、カーシャンプーでザッと洗っただけでおしまい、というぞ雑な扱われ方をするかわいそうな面もあります。

そんなシートが注目されるのは表皮が擦れた、切れたなど不具合が生じた時ばかり。経年劣化や腹立たしいイタズラなど原因はさまざまですが、シート表皮が切れたり穴が開けばそこから水が染み込むので、ライダーとしては不快でなりません。スクーターや小排気量車ではシート全体にすっぽりとポリ袋をかぶせたり、ワイルドにガムテープを貼ったりするオーナーもいますが、見ためも良くないしポリ袋シートは滑るし、ガムテープは衣服にノリが着くと後処理が面倒です。

年式が新しいバイクであれば、純正部品でシートアッセンブリーが販売されている可能性があるので、それに交換するのが手っ取り早くて簡単です。ただ、部品としてのシートは想像以上に高額です。そこでシート屋さんに張り替えを依頼するのが次善の策となります。汎用のシート生地を元に純正風に仕上げてもらうのも良いでしょうし、これを機会にシートをカスタムする手もあります。

そしてもうひとつの手段が自分で張り替える方法です。DIYの流行でネット上にはリビングのイスやソファーまで張り替えるテクニック動画がアップされており、それと同じ感覚でバイクのシートも自分で貼り替えるのです。バイクのシートはダイニングチェアやソファーよりも起伏に富むため、一枚もののシート表皮をきれいに張り込むのは容易ではありません。ただ、これも動画サイトなどを検索すると部分的に切り込みを入れて縫い合わせるなどして、器用に立体感を再現している人もいます。

もっと手軽に仕上がりの良さを求めるなら、車種ごとのシート形状に合わせて作られた張り替え用表皮を探してみましょう。原付スクーターやビジネスバイクであれば、純正と似た形状に仕立てられた表皮が比較的安価に販売されていることがあります。また補修と同時にカスタムにも使えるよう、色遣いが派手な表皮が用意されている機種もあります。

POINT
  • ポイント1・シート表皮が擦れたり切れると、雨水などによってスポンジが傷みやすくなるので早急に補修する
  • ポイント2・機種専用の縫製済み表皮を活用することで、質感の高い張り替えが可能になる

きれいに張り込みたいならタッカーが欲しい

04-2b.jpg コンプレッサーのエアーで勢いよく針を発射するエアータッカーを使えば、シートベースの樹脂が硬くても余裕で打ち込める。手動タッカーは値段の安さが魅力だが、エアーや電動に比べて針の勢いが弱いのでシートベースの表面を突破できずに曲がってしまうことも多い。

社外品のシート表皮はミシンで裁縫された製品から、純正と同様に高周波溶着で貼り付けられた製品までさまざまで、機種専用品といってもスポンジ形状とドンピシャでは合わないものもあります。純正通りの寸法でも張り込み時にコツが必要でも、シート表皮を張り込む際に用意したいのがタッカーです

タッカーはステープラー(ホッチキス)の親玉みたいな固定具で、コの字型の針状の金具でシートベースに表皮を固定します。文房具のステープラーには飛び出す針を受け止める相手の部品がありますが、シート表皮を固定する際は針をシートベースに突き刺すだけです。そのため、針を勢いよく発射することが必要です。

タッカーには手動式、電動式、エアー式の3タイプがあり、コスト面では手動式が有利です。電動式やエア式は機器の値段はそれなりに高価ですが、針を打ち出すパワーがあるのでシートベースの硬さは気になりません。シートを貼るのは目の前にある1個限りと決めているなら、電動式やエアー式タッカーを購入するのはもったいない気もしますが、先々いろいろできる可能性があるという点では、投資しても良いかもしれません。

シート表皮の張り込みで仕上がりを追求するなら、常に表皮にテンションを掛けながらシワが寄らないように作業するのがポイントです。シートの中心線と表皮の中心を合わせたら、前後どちらかに最初のタッカーを打ち込みます。前側を先に決めたなら、次に表皮を強く引っ張りながら後ろ側の中心に針を打ちます。

この時、手動のタッカーだと表皮を引っ張りながら針を打つためにも力が必要です。気を抜けば表皮が弛むかタッカーが甘打ちになりがちです。一方、電動やエアー式ならトリガーを握るだけで勢いよく針が飛び出すので、表皮を引っ張ることだけに集中して作業を進められます。その結果、間違いなく仕上がりが良くなります。部分的にシワができて張り直す場合でも、何度やり直すにしてもトリガー握るだけなので、妥協無く張り込みできるメリットがあります。バイクのメンテナンスではシート張り替えでしか出番のない道具ですが、その代わりシート張り替えでは圧倒的なパフォーマンスを見せつけてくれるのが電動式、エアー式タッカーです。

POINT
  • ポイント1・シートボトムにシート表皮を固定するには、固定金具を打つためのタッカーがあると便利
  • ポイント2・手動式タッカーよりエアー式や電動式などの動力タイプの方が勢いよく針を発射するので張り込みに集中できる

表皮とスポンジの間に防水シートを挟むか否かは状況次第

05-2b.jpg 使用する表皮が縫製仕上げで、スポンジの前端部が崩れかかっているので、防水シートを併用する。厚すぎると張った表皮の下に防水シートのシワが見えてしまうことがあり、かといって薄いと表皮とスポンジの間で擦れて長持ちしない懸念もあり難しい。スポーツバイクのようにシートの上で大きく体重移動することのないビジネススクーター用なので、防水性を重視して厚めのビニールを使用する。

06-2b.jpg 使用したシートカバーはNTB製で、スクーターからスポーツバイクまで数多くの機種別カバーを取り揃えている。作業を行ったUA03J用のウェビックでの販売価格は税込2797円。この値段ならガムテープを貼るより張り替えを選択するのが正解だろう。別途必要なタッカーだけがハードルになる。

07-2b.jpg 原付スクーターでも部品としてのシート価格は1万9000円近く(ヤマハニュースギアの場合)するので安価ではない。また表皮だけの供給はなくアッセンブリー扱いとなるので、シートベースやスポンジが再使用できるのなら社外メーカーの表皮を選ぶのも合理的。新品純正シートの価格を考えれば、表皮+タッカーという選択肢も悪くない。

表皮とシートスポンジの間に防水シートを挟むか否かは、スポンジの状態と張り込む表皮の構造から考慮する必要があります。シートベースが鉄板で目の粗いスポンジを使っていた1960年代のバイクでは、表皮とスポンジの間にビニールが挟んである機種がありました。高周波溶着によるウェルダーパターンと呼ばれる模様と、ミシンによる縫製が併用されていた時代で、縫い目からスポンジに水を染み込ませない目的がありました。それに対して現在の純正シート表皮は大半が溶着で縫い目はなく、装飾的にミシンを使っていても裏側はシールしてあるため、スポンジが雨水を吸うことは皆無です。

しかし補修目的で張り替える場合は事情が異なります。悪質なイタズラでシート表皮を切り裂かれた場合、スポンジにも刃物が入っていることがあります。この場合、切断面にゴム系接着剤を塗布してズレないようにしてから表皮を張りますが、他の部分と比べればどうしても接着部分が動こうとします。そのような場合はシート表皮とスポンジの間に一層追加することで、スポンジとシート表皮のフリクションを軽減できる利点があります。ただ表皮が動きやすくなるため、シートのホールド性が低下するように感じられる場合もあります。

また交換する表皮が縫製仕上げの場合、縫い目から雨水が入る可能性があるので、スポンジを湿らせないようにシートを入れる場合もあります。縫製仕上げのカスタム表皮でも、スポンジ保護用のシートを使う場合があります。表皮を張る前に裏側からコーキング剤を擦り込むことで縫い目の目止め効果が期待できるので、そうした上で防水シートは使わないという選択肢もあります。

シートはライダーがいつも触れる部分だからこそコンディションを保ちたい部分です。見栄えの問題ももちろんですが、シート本来の機能を損なわないためにも、ダメージを受けた表皮はなるべく早く張り替えた方が良いでしょう。

POINT
  • ポイント1・防水シートを使うか否かはシート表皮自体の防水性やスポンジの状態に応じて決める
  • ポイント2・縫製仕上げのシート表皮の場合、裏側からコーキング剤を塗布することで雨水の浸入を防止できる場合もある
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