エンジン組立て時に、ちょっと気になるピストンリングの取り付け方法

エンジンの分解組み立て時や、手軽にパワーアップを楽しめるボアアップキットなどを組み付ける際に、確実かつ丁寧な作業を求められるのが、シリンダー内へピストンを挿入する作業。この作業時には「ピストンリング」を圧縮してシリンダースリーブへ挿入するが、この作業だけでも、実に様々な注意点がある。ここでは、ピストンリングにまつわる様々な「気にしたいこと」をリポートしよう。

ピストンはエネルギーの源

ピストンリングを組み込む相手はピストン。そのピストンが新品部品なら、ピストンスカートの前後エッジに耐水ペーパーをあて、角部分を軽く擦って面取りを行おう。利用する耐水ペーパーは800~1000番程度で、防錆浸透スプレーを吹き付け、削るイメージではなく、ピストンエッジに耐水ペーパーを「滑らせるような感覚」で、僅かに面取りを行う。オイルストンを利用する際には、一箇所ばかり集中的に磨くのではなく、全体的に均一にオイルストンを滑らせるようにあてよう。この際にも防錆浸透スプレーの塗布は必ず行おう。中古ピストンを復元再利用する際は、一概に、どこをどう対処する、というのではなく、状況に応じた対処方法があるため、ここでは、新品ピストンの組み付けに関しての諸作業に触れよう。

諸説色々ありますが基本に忠実に

トップリング、セカンドリング、そしてオイルリングで構成される4ストロークエンジン用ピストンリング。シリンダー内壁に付着したエンジンオイルを掻き落とすのがオイルリングだが、上下レールとエキスパンダースプリングによって3分割になっている仕様(現代のエンジンはほぼこの仕様)は、図解のようなセット角度にするのが基本だ。旧車系エンジンに多い鋳物の一体式オイルリングの場合は、トップ、セカンド、オイルリングの合口角度を、ズバリ120度間隔にセットする。ピストンピンの角度に対して、どの位置から等間隔に120度に、などと気にする必要は無い。何故なら、4ストエンジンのピストンリングは、エンジン稼働中に回転するからだ。

オイルリングレールの裏表!?

トップリングとセカンドリングの合口付近には、リングの表(上側)を表すマークが入る。例えば、R(リケン)、T(テイコク)、N(ニッピ)や、ボアサイズを意味する25(025OS)や50(050OS)などがそれだ。一方、オイルリングの上下レールには、特に裏表指示が無く、表記も無いが、有名チューナーの中には、レール合口を水平に押し付けたときに、合口がカクッと傾く側(突起側)を、エキスパンダーに対して内々、つまり上レールは下向き突起、下レールは上向き突起でセットするといったノウハウもあるようだ。

ピストンピンクリップは要注意

メーカー純正部品、チューニングメーカー製部品を問わず、ピストンピンクリップは組み込み前に必ず凝視確認しておこう。カットされたクリップ端末にバリが出ていることが多いのだ。そのバリをオイルストンやバック板に当てた耐水サンドペーパーで磨き落としておかなくてはいけない。エンジン稼働中にピストンピンは回転するため、状況によってはそのバリが影響して、クリップが外れやすい状況になることもある。クリップ両端ともに滑らかしてから組み込もう。

仮セットで作動性確認実施

ピストンリングの向きを確認し、合口角度を合わせてリング溝にセットしたら、コンロッドへ即組み込むのではなく、リング毎に、リング溝に対してスムーズに回転するか確認してから本組に入るのが良い。回転確認の際には、防錆浸透スプレーをリング溝に必ず塗布しよう。昔の組み立てマニュアルには、リング合口のエッジをオイルストンで軽く面取りするといった記述もあった。合口のエッジがリング溝に引っ掛かり、スムーズに回転しないと摩耗が早まってしまうためだ。

液状ガスケットは擦り込むように塗布

ピストンリングやピストンピンに気を取られ、ついつい忘れてしまうのがシリンダーベースガスケットのセットだ。ピストンを組み付ける前段階でスタッドボルトに通しておく、もしくは、シリンダーベース側へ貼り付けておくなどの方法があるが、それは組み立て者にとっての作業性の良さで決めればよい。オイル滲みの防止や、後々の分解時にガスケットがスムーズに剥がれるように、シリコン系液状ガスケットを塗布する。当の際には、ガスケットを指先にとり、親指と人差し指でガスケットを挟んで液状ガスケットを擦り込むように塗布するのがよい。

使いやすい工具の利用がベスト

ボアサイズΦ40~55mm前後の小排気量モデルのピストンを組み込む際によく利用しているのが、樹脂製のバンド型ピストンリングコンプレッサー。シンプルな造りで使い勝手が良好。どうしても使いやすいサイズのピストンリングコンプレッサーが無いときには、ジュースやお茶のアルミ缶をハサミでカットして、ホースパンドやタイラップを組み合わせて、自作のピストンリングコンプレッサーを利用している。

POINT
  • ポイント1・ ピストンリングを組み込む際は表裏を明確にする
  • ポイント2・ リングとリング溝の滑らかな作動性も確認する
  • ポイント3・ 合口角度を120度にセットしオイルリングレールの位置関係にも要注意
  • ポイント4・ピストンピンクリップエッジのバリを除去しよう
  • ポイント5・ピストンリングコンプレッサーは、シンプルに使いやすい物がベストで自作も可能

「トルクアップ」による乗りやすさと「パワーアップ」による力強さを如実に体感できるのが、ズバリ、ボアアップである。例えば、ホンダのモンキーやダックスやスーパーカブの50ccモデルをベースに、75ccや88ccにボアアップすると(数多くのコンストラクターからボアアップキットが発売されている)、その素晴らしい走りに開眼し、その日以来、エンジンチューニングの虜になってしまう4ストミニファンは数多い。そんなボアアップ時はもちろん、通常の分解整備時でも、組み付けの際に特に気を使うのが「ピストン周辺パーツ」だろう。シンプルな部品構成ではあるが、それぞれの部品には大切な役割があり、その役割を果たさないと、本来持つべきエンジン性能を発揮することができない。ここでは、そんなボアアップやエンジン整備時に特に気おつけたい、ピストンやピストンリングにまつわるチェックポイントをリポートしよう。


その1:ピストン本体
ピストンスカート前後エッジの面取りはもちろん、ピストンピンがスムーズに抜き差しできるか?確認しよう。特に、分解整備で取り外したピストンは、ピンクリップを取り外した際に、クリップ溝にバリが出てしまうことが多い。その状態のままピストンピンを差込むと、固さや渋さを感じるはずだ。抜き取ったピストンピンとクリップを目視確認しつつ、ピストンピン単品をピン孔へ差込んでみよう。スムーズに差し込めれば問題ないが、なかなか入らないときには無理して押込まず、ピン孔エッジやクリップ溝に発生しているバリをスクレパーや棒状オイルストンで磨き落とそう。作業時には防錆浸透スプレーを必ず吹き付けなくてはいけない。

その2:ピストンリングとリング溝
2ストロークエンジンの場合は、ピストンリング溝内に合口ストッパーとなるピンがあり、そこに合せてピストンリングを組み込むが、4ストロークエンジンの場合は、エンジン稼働中にピストンリングが動く(回転する)ので、組み付け段階で合口が揃わないように3段のリングを120度振り分けでセットする。この合口が揃うと組み立て作業は楽になるが、合口が揃ってしまうことでオイル通路ができてしまい、オイル上がり=マフラーからの白煙吹きの原因になってしまうこともある。

その3:ピストンリングコンプレッサーの利用
ピストンをシリンダーへ挿入する際には、ピストンリングコンプレッサーを利用する方法もある。ベテランメカニックになれば指先や爪先を上手に利用してピストンリングを溝内に押込みながら組み込む例も多い。特に、小排気量エンジンならピストンリングの張力も弱く押込みやすいので、素手組み立ても比較的容易だ。とはいえ、ピストンリングコンプレッサーを利用することで作業性は確実に高めることができる。しかし、いくら特殊工具があっても、使いにくい商品やエンジン形状(スタッドボルトの位置関係)によっては、使いにくいタイプもある。ハンドツールと同様に、ピストンリングコンプレッサーも様々な種類やサイズを所有しているとイザというときに助かることが多い。手元にどうしてもジャストサイズが無いときには、自作ピストンリングコンプレッサーで対応することも可能だ。

エンジン組み立てには様々なノウハウがあり、ピストンやピストンリング周辺だけでも、ここでのリポートがその限りではない。例えば、内燃機加工のプロショップへシリンダーボーリング&ホーニング依頼する際にも、ピストン挿入が楽かつ確実になるように、ピストンリングの挿入ガイド=スリーブ内径端末への「テーパー加工の追加」などもノウハウのひとつである。各組み立てポイントを注意深く確認し、作業進行することで、エンジン性能は間違い無く向上する。そんな仕上がりを想像しながらエンジン組み立てを楽しもう。

ピストンリングがスムーズに縮んでスリーブ内へ収まるように、ボーリング加工依頼した時には、スリーブエンドの内壁テーパー加工も同時に依頼するのが良い。スリーブ肉厚に余裕があるときは、テーパー加工の角度を浅く依頼し、ピストン&ピストンリングがより一層、スムーズに挿入できるようにするのが良い。

 
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