破れたシートは張り替えよう!プロが教えるシート張替えのコツ!
経年劣化やいたずらなどで、シート表皮が破れたままのバイクはありませんか?「ガムテープで塞げば使えるし」と放置するうちに、スポンジに雨水が染み込んで座るたびに濡れて気持ち悪いなんてことになりかねません。さらにガムテープのノリがジーンズに付着してベタベタになることも。そうなる前に、自分でシートを貼り替えてみましょう。

シート表皮の破れには自然的なものと人為的なものがある

シート表皮がボトムに巻き込む部分は強く引っ張られているので、ちょっとした物を引っ掛けただけでも切れやすい。傷が小さなうちであれば、表皮と同じような風合いの合皮の端布を裂け目から押し込んで、セメダインスーパーXのような乾燥後も柔軟性のある接着剤で裏から張ることで補修が可能なこともある。

表面のシボ模様が擦れてツヤが出ているのが長年使用してきた貫禄ではあるが、前側がかぎ裂きになっているのが残念なヤマハRZ250R用シート。表皮の種類によっては経年変化によって縮むものがあり、シートの前端がエビ反り状になってタンクとの間に隙間ができることもある。そのような場合も表皮の張り替えを行いたい。

雨風や紫外線にさらされながら、ライダーの体重や縛り付けられた荷物の荷重を支えるバイクのシート。シートはライダーとバイクの重要な接点だけに、メーカーは耐久性と座り心地と質感のバランスを考慮したシートの開発に力を注いでいます。

とはいえ、製造から10年も20年も経過した製品では、さまざまな変化や劣化が生じます。20年というとかなり昔のように感じますが、2000年に製造された車両が今年20年になるので、実は20年選手は身近に多くあるものです。

さらに時代をさかのぼり、1970年代や80年代の絶版車ともなれば40~50年を経過していることになります。家のリビングのソファやダイニングチェアを見ても、それほど長く使っている例は少ないでしょう。にもかかわらず、1980年代モデルのシート表皮が硬化してひび割れたり切れたのを見て文句や不満を口にするのは、バイクに気の毒な気もします。

シート表皮のダメージには、偶発的、自然的なものと人為的なものの2パターンがあります。前者は紫外線や風雨による劣化や隣の自転車やバイクが倒れて表皮が破れたようなパターン。後者は駐車中のいたずらが代表例です。

自然的に発生するダメージとしては、高周波で表皮に熱を加えながら模様を転写するウェルダーパターンの劣化による亀裂や、表皮の縫い合わせ部分のほつれや水の染み込みなどがあります。いずれの場合もシートスポンジが水を吸い込むと、シートに座るたびにジワッと染みだしてきて大変不快です。

いたずらの代表例はカッターナイフによる裂傷です。表皮だけを切られても頭にきますが、スポンジまで切られると自然劣化と同様に水の染みだしがあるのはもちろん、高密度タイプのスポンジの場合、カッター傷の部分から切開部分が開いてしまい、それに押されて表皮が大きく開いてしまうことがあるのです。

ガムテープやゴミ袋を貼ったり巻いたりして急場をしのぐ例もありますが、見た目も悪いしもちろんシート性能も悪いので、できるだけ早急に補修を行いたいものです。

 
POINT
  • ポイント1・屋外での使用を前提としたバイクのシート表皮の耐久性は他の合成皮革と比較しても抜群に優秀である
  • ポイント2・スポンジが吸水すると乾きづらいので、シート表皮が破れたら早めの補修が必要

表皮の張り替えにはタッカーが必要

1)シートボトムに打ち込まれたステープルはマイナスドライバーやニッパやラジオペンチなどで1本ずつ丁寧に引き抜く。
2)表皮の固定はステープルだけでなく、接着剤を併用している場合もある。ボトム側に残った接着剤は取り除いておこう。ボトム側に折れ残ったステープルも引き抜いておく。
3)かぎ裂き部分のスポンジは若干欠損しているが、全体的なコンディションは年式相応と言って良いだろう。いたずらなどで表皮を切られ、スポンジにも切り傷がある場合は、切れた部分を張り合わせておく。これをせずに表皮をかぶせると、一部分だけ窪んで見えるなど違和感が残る。
4)高密度のウレタンスポンジを使っている年式が新しい機種では大した差は出ないが、絶版車のスポンジ単品を干して乾燥させると、乾燥前と比べて明らかに軽くなることがある。


バイクのシート張り替えでは、専門店に依頼する、車種別にカットされた既製表皮を自分で張る、一枚物の表皮を自分で張る、という選択肢があります。もっとも確実で完成度も高いのはプロに任せるパターンです。ネットで検索すれば、いくつもの張り替え業者の情報にヒットします。

一枚ものの合成皮革を張るというのは、ダイニングチェアのように座面が比較的フラットな椅子ならまだしも、立体的な裁断が施されたバイク用シートをきれいに張るのはかなり難しいのが現実です。表面にシワが寄らないよう強く張ればスポンジの角やエッジが潰れてボッテリとした見栄えになりやすく、一方で張りが足らなければ各部にたわみやシワができて見るも無惨になります。

車種別専用設計の表皮を自分で張るパターンでは、どんな表皮を使用するかによって仕上がりの質感と満足度が大きく変わります。目的がカスタムであれば、タックロールや切り返しなど自分好みのデザインの表皮を選ぶことができます。

しかしベース車が絶版車で、往時の純正デザインにこだわりたいとなると表皮選びが難しくなってきます。

どんなデザインの表皮も縫製で作ってくれるシート専門店であっても、カワサキZ2やホンダCB750フォアのようなウェルダーパターンができるとは限りません。ウェルダーパターンを作るには高周波溶着機が必要で、さらに純正デザインの専用の押し型も必要となります。縫製で同じデザインができたとしても、溶着でなきゃ……というライダーは存在します。

そんなオーナーにおすすめなのが、絶版車専門ショップが製作する純正同様のリプロ表皮です。いくつかのショップやメーカーが製品を販売していますが、特定の機種に特化した専門ショップならではのこだわりと再現度の高さを目の当たりにできます。

絶版車用に限らず、機種専用設計と謳うシート表皮の多くは、純正シートスポンジの形状に合わせた立体裁断を行っており、フィット感が良いのも特長です。ただし、スポンジのアンコ抜きやアンコ増しをしようとすると、表皮が余ったり不足することもあるので注意が必要です。こうした問題に対応するため、カワサキZ系のリプロダクトパーツを開発販売するドレミコレクションでは、Z1/Z2用にアンコ抜き対応のシートレザーも販売しています。

さて、シート表皮を自分で張り替えようと思った場合、道具が必要になります。カワサキZ1/Z2やホンダCB750フォアのように、シートボトムが鉄板製の時代の表皮は、鉄製の爪で固定していましたが、現行車の樹脂製ボトムはステープルと呼ばれるコの字状の金属製の針をタッカーという機械で打ち込んで固定します。簡単に言えば大きなホッチキス(これは特定の製品名ですが)のようなものです。

タッカーにはハンドタイプとエア式と一部に電動式があり、ハンドタイプは廉価ですが木材の合板への使用が前提で、硬いシートボトムに打ち込むには苦労する可能性が高いです。エアタッカーはとても強力でシートボトムに余裕で針を打つことができますが、本体の値段がそれなりに高価なのと、エアーコンプレッサーが必要な点がネックとなります。

専門店にオーダーする際のシート張り替えの費用はまちまちですが、タッカーとコンプレッサーを一から買いそろえるとなると、プロにオーダーした方が結果的にリーズナブルになると思います。コンプレッサーはすでに所有していて、タッカーのみ購入すれば良いというパターンなら、チャレンジしてみると良いと思います。

以前デイトナから発売されていた、RZ250R用純正と同型状の高密度スーパーウレタンと表皮のセット。表皮は販売終了となったが、現在もシートウレタン単体は販売されている。へたった純正スポンジを交換するだけで、ホールド性が向上するのでおすすめ。

 
POINT
  • ポイント1・初めてシート表皮を張り替える場合は機種別専用設計の表皮を選ぶと張りやすい
  • ポイント2・シートボトムの素材が樹脂なら表皮を固定するためのタッカーが必需品

シートベースとスポンジを固定すると剛性感がアップ

1)よく乾燥させたシートスポンジを復元する際は、純正スポンジと同じ位置に接着剤を塗布する。接着面積が多くなるほどシートの剛性感は向上するが、多少は自由度がないと乗り心地が硬くなってしまう。
2)スポンジとシートボトムの両方に接着剤を塗って張り合わせる。ボンドG17に代表されるゴム系の接着剤は、塗布面がある程度乾くまで待ってから押しつけるのがコツ。
3)シート表皮の前後に三角の切り欠きあるので、この印をシートボトムの中心に合わせる。
4)エアーコンプレッサーの圧力でステープルを押し出すタッカーで、シート表皮を固定する。純正同等のリプロ表皮であれば、純正のステープルが打ち込まれていた場所を参考に固定すると良い。


ここではシート先端部分がかぎ裂き状に破れたヤマハRZ250用シートをサンプルに張り替えを行います。35年以上昔の絶版車ですが、1980年代モデルなのでシートベースは樹脂製です。

古いシート表皮を剥がす際は、シートボトムのステープルを丁寧に引き抜くことが重要です。どうせ新たに打ち込むのだからと中途半端に折れた状態で残しておくと、新品のシート表皮が引っかかって穴が開いたり破れる原因になります。またステープルが打ち込まれていた穴にバリが出ていたら、これもカッターナイフやスクレーパーでそぎ落としておくと、表皮を張る際に引っかからずスムーズに作業ができます。

シートボトムから簡単にスポンジが剥がれるようなら、必ずスポンジを天日干しして染み込んだ水分を飛ばします。表皮が切れて水を吸っているなら、この作業は必須です。ただし、スポンジとシートボトムがしっかり張りついている場合、無理に剥がそうとするとスポンジが破れるリスクがあるので、あまり深追いしない方が無難です。とはいえ天日干しは必ず行いましょう。

スポンジが剥がれるシートであれば、シートボトムとの接合面には必ず接着剤を塗布してから組み立てます。接着ポイントは純正シートと同じ部分とします。面倒だからと接着剤を塗らずにスポンジを載せて表皮を被せると、タッカーでステープルを打つ際にずれて安定しない上に、ライディング中もボトムとスポンジがずれて腰が落ち着かない状態となります。

塗布する接着剤は一般的にゴム系の溶剤形接着剤を用います。シート専門店では缶入りをハケで塗ったり、スプレーガンで塗布することもありますが、市販のチューブ入りタイプで効果は充分です。

接着剤が乾いてスポンジとシートボトムが一体化したら、表皮を張り込みます。機種専用で裁断されている表皮であれば、前後左右ともおおまかにスポンジのデザインにしたがっていると思いますが、まず最初に前後方向を仮止めします。

ここで使用している表皮は、中心を合わせるためのセンターマークが付いているので、これをシートボトムの中心線に合わせて、タッカーで仮止めします。またシート表面と裏側に回り込む部分で縫製してあるので、この縫い目をスポンジの端に合わせることで、前後方向の引っ張りすぎや緩すぎを防止できます。

旧車や絶版車の中には、シート表皮とスポンジの間にビニールを挟んでいる例もあります。これは純正シート表皮が裁縫タイプで、縫い目の防水加工が完璧でなかった時代の対策で、大半が溶着による製法を採用している現在の市販車では見ることはありません。ただしシート専門店の中には縫製後の防水処理、スポンジに水を吸収しないためにビニールを挟んでいる例もあります。

前後を仮止めして左右を押さえる際は、必ずシートボトムの左右同位置を交互かつ均等に引きながらステープルを打ち込みます。また針を打つ間隔は、初めは隙間を多めに広く打ち、左右のバランスを確認しながらシワやたるみを取るように狭い間隔で増し打ちします。さらに、どうしてもシワが取りきれない部分は、ドライヤーで軽く加熱して表皮を柔らかくすることで張りやすくなることを覚えておくと良いでしょう。

とはいえ最初から量産レベルの品質を求めるのは無理なので、最初の仮止めは前後と左右のバランスを見ながら、余裕のある位置にステープルを打つ。その後、徐々にステープルの数を増やしてピンと張るようにする。

表皮の裁断は表皮を製造するメーカーの設計次第で、この表皮の場合は前側は余裕があるが後方はかなりギリギリ。表面側にシワが出ないようグイッと引っ張り、中央部分にステープルを打ち込む。

 
POINT
  • ポイント1・シートボトムからスポンジが剥がれるなら、必ず天日干しにしてスポンジ自体を乾燥させる
  • ポイント2・シート表皮は最初に前後の位置を決めて、その後シートボトム左右に沿ってステープルをタッカーで打ち込む
 
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