ブローバイガスとは何?排気ガスと何が違うの?

言葉としては聞いた事があるけれど
「ブローバイ」とか「ブローバイガス」とか、エンジンチューニングやクランクケース減圧などに興味があると出てくる言葉なので聞いた事があるという方も多いはずです。

でも、結局ブローバイガスとは何なの?どんな役目があるの?どこから出てきてどこに行くの?などなど、少し突っ込んだ話になると実はよく解ってないという方が大半なのでは?

しかーし!
ブローバイガスだけならそんなに難しいものではないです。

皆様にささやかな幸せとバイクの知識をお送りするWebiQ(ウェビキュー)。
ブローバイガスを上手く処理しようとしたりガスを有効利用しようとすると突然難しくなるのですが、その前にブローバイガスそのものをしっかり理解しておきましょう。

ピストン上側の気体の流れ

まず初めに、そもそも4ストロークエンジンは下記のような原理で作動しています。

  • 1:吸気
  • ピストンが下降していくとシリンダーの体積が増えるので、外部から何かを流入させねばなりません。
    ※なぜピストンが下がるんだ?という疑問は下まで読むとわかります。
    この時に吸気バルブが開くと、シリンダーで発生した負圧によって吸気通路から大気を吸入する事ができます。
    吸入する大気に霧化した燃料(ガソリン)を混ぜておくと、「混合気」と呼ばれるやたら燃えやすい状態になった大気をエンジン内部に吸い込む事ができます。

  • 2:圧縮
    ピストンが下がり切ったところで吸気バルブを閉じると、吸い込んだ混合気の逃げ場は無くなります。
    この状態でピストンが上昇に転じると、混合気をグイグイ圧縮する事になります。
    この時にどのくらい圧縮するのか?の比率を表しているのが圧縮比。

    混合気は燃えやすい気体ですが、そのままでは単なる「やたら燃えやすい気体」でしかありません。
    圧縮する事ではじめて爆発的に燃焼する事が可能になります。

  • 3:燃焼(爆発)
    ピストンが上昇しきった時(圧縮しきった時)にスパークプラグで着火すると、混合気が爆発します。
    (正確には超急速な燃焼ですが、爆発と表現される事が多いですし、我々はエンジンを設計するわけではないので爆発と考えた方が理解しやすいです。)

    燃焼によって混合気は爆発的に膨張しながら燃焼ガスとなりますが、この時発生する膨張圧力でピストンが勢い良く押されて下降します。
    この「勢い良くピストンを押し下げる力」がエンジン出力となります。

  • 4:排気
    下降しきったピストンはその勢いで今度は上昇に転じます。
    シリンダー体積が減少するので、この時に排気バルブを開くとシリンダーの体積分だけ燃え終わった燃焼ガスが排気されます。
    上昇し終わったところで排気バルブを閉鎖して燃焼室内から排気ガスの排出は完了。
    上昇しきったピストンは今度は下降に転じるので、最初の「1」に戻ります。

詳しくはもっともっと複雑な要素があるのですが、大まかにはこんな工程でエンジン動いています。
ピストンの上側(燃焼室側)の気体はこんな過程で燃焼室に出たり入ったりしており、その途中で燃焼したり膨張したりしています。

ピストン下側の気体の流れ

ピストン上側はエンジンパワーに直接関わるので様々な解説が唸るほどありますが、特に何も生み出さないピストン下側の気体についてはほとんど注目されていませんでした。
少なくとも30年前にその辺りの解説をしていた文献はほぼ無かったと言って良いでしょう。
クランクケース減圧などが注目され出した20年前くらいから少しづつ注目されるようになって来ましたが、クランクケース減圧に否定的な方も多い事から、まだまだオカルトの領域を出ていない様に思えます。

クランクケース減圧の話は一旦置いておくとして、まず最初に重要な事はピストン下側にも気体は存在するという事です。

ピストン下側とはつまりエンジンオイルがバシャバシャ掛かるエンジン内部そのものの事ですが、エンジン内部は真空でもなければ全てオイルで満たされているわけでもありません。
オイル以外の部分は空気が入っています。

でもピストン上側の吸気経路とは異なりエンジン内部は基本的に密閉空間なので、外部から気体が出たり入ったりはしない(=気体が流れたりはしない)のが基本です。

ただし「基本じゃない事もある」というわけで、次の項目以降で基本じゃない部分を解説します。

エンジン内部の気体の状態

通常のバイクのエンジンはエンジンそのものと変速機(ミッション)が一体構造になっています。
(外車の一部やスクーターでは変速機が別体であったり、変速機とエンジンが仕切られて独立した別室になっている場合があります。)

エンジン内部はオイルで潤滑されていますが、高速回転している部品だらけなので潤滑オイル(=エンジンオイル)の雫が飛び散りまくり!
あまりに激しく飛び散るので一部は細かい霧のようになりながらエンジン内を激しく漂っています。
エンジンオイルの暴風雨がエンジン内で吹き荒れているとイメージしてもらえばOK。

エンジンが掛かっている時にオイル注入キャップを開けるとエンジンオイルの暴風雨が噴き出してくるので体感する事も可能ですが、一瞬で床と顔面がオイルまみれになるのでオススメはしません。

実は外気と繋がっているエンジン内部

そんなエンジン内部ですが、エンジン停止すれば冷えて外気温と感じ温度になりますし、始動すれば100度前後の高温になります。
冷却方式が空冷だろうと水冷だろうと高温のオイルは循環してますし、ピストンの上の皮一枚隔てた向こう側は燃焼室で数百℃の炎で熱せられているのですから外気温より熱くなるのは当然です。

さて、気体は熱すると膨張し、冷めると収縮する特性があります(ボイル=シャルルの法則)。
エンジン内部の気体(オイルの暴風雨が吹き荒れている空気)も同様なので体積が変化します。
この体積変化に対応しなければなりません。

また、ピストンの上下運動に伴い、ピストンが上昇するとエンジン内部空間は体積が増加するので負圧になりますし(ピストン上側の燃焼室内は逆に正圧)、ピストンが下降するとエンジン内部は体積が減少するので正圧になります(ピストン上側の燃焼室内は逆に負圧)。

一般的な4気筒エンジンではどこかのピストンが上昇する時には別のどこかのピストンが下降するので理論的には圧力変化が無いのですが、実際にはそれぞれのピストン間を空気が移動しなければならないので、空気の慣性で圧力変化が生じます。

そんなエンジン内の気体の体積変化や圧力変化を吸収するため、エンジン内部の膨張した空気を排出したり、圧力変化に対応するための穴が開けてあり、ホースでエアクリーナーボックスに繋がっています。
エンジン内の気体がエンジンに出たり入ったり(吸われたり吐き出されたり)呼吸しているように見える事から、この出入口の事をクランクケースブリーザー、あるいは単にブリーザーと言います。
ブリーザーから出たホースはエアクリーナーボックスに接続されますが、エアクリーナーボックスは吸気の為に外気と繋がっているので、結果としてエンジン内部はホースを通じて外気と繋がっている事になります。

なお、このエンジン内部とエアクリーナーボックスを結ぶホースの事を『ブリーザーホース』と言います。
別名、『ブローバイホース』!
遂に出た!ブローバイ!

ピストンで燃焼室とエンジン内部は区切られている

これまでの説明の通り、ピストン上側は燃焼室で、ピストン下側はエンジン内部です。
つまり、ピストンで区分けされているだけ。

このピストンですが、シリンダー内部を上下に移動しているので、当然ながら隙間があります。
隙間が無い(ピッタリ嵌っている)とピストンが上下に動く事ができませんからね。

隙間はピストンリングとエンジンオイルの油膜で密閉されており、燃焼室内にエンジンオイルが漏れ出さないようになっていますし、燃焼室からエンジン内部に混合気が入らないようになっています。

これが完璧なら何も問題無かったのですが……。
ピストンが動くという事は、僅かな隙間が絶対必要なのです。
ピストンリングにしても完全な輪になっているワケではなく1か所は必ず切れている部分があるので、どうやっても隙間は無くせません。

隙間があるとどうなるのか?

ピストンがスムーズに上下運動するためにシリンダーの間には必ず隙間があるのは上記の通り。
非常に狭い隙間ですが、何しろピストン上側は混合気の燃焼爆発で圧力が急上昇する場所。
強大なパワーを生み出すその圧力が原因で、ピストン横の僅かな隙間を燃焼ガスが吹き抜けてしまうのです。
そして、この吹き抜けたガスの事をブローバイガスと言います。


高性能な水冷エンジンなどはこの辺りの性能が高くなっており、せっかく発生させた圧力を無駄にしないように細心の注意が払われていますが、 空冷エンジンなどは非常に隙間が大きく(光にかざすと隙間から光が漏れているのが目視できるほど)、結構な量の燃焼ガスがエンジン内部に入り込みます。

燃焼ガス以外にも燃焼室内に残留していた未燃焼ガス(燃えきっていない混合気)も同時にエンジン内部に押し込まれます。
エンジンオイルが劣化する原因の一つがこのブローバイガスに含まれる不純物だったりするので、いかにエンジン内に漏れ出しているか想像できるのではないでしょうか。

エンジン内にどんどん入って来るブローバイガス

さて、このブローバイガスですが、エンジンが稼働している間は常にエンジン内部に漏れ続けています。
そのままエンジン内部にどんどんブローバイガスが入って来るとどうなるでしょうか?

もしもエンジン内部が完全な密閉空間で外部と隔離されていた場合、流れ込んだガスの圧力でエンジン内部の圧力がどんどん上昇してしまいます。
最終的には圧力に一番弱い部分(たいていの場合はどこかのオイルシールやガスケット)を吹き抜いてしまい、そこからエンジンオイルが噴出する大惨事になってしまいます。
最悪の場合はエンジンブロー。

ブローバイガスを抜かねば!

エンジンが壊れては困るので、どんどん入って来るブローバイガスを何とかして抜かないとなりません。

上手い具合にどこかから抜けれてくれれば良いのですが……と思ったらありました!
それが先ほど登場したクランクケースブリーザーに接続されているブリーザーホース!

エンジン内部の圧力変化を吸収する為のホースがあるのですから、このホースからブローバイガスを抜けば一件落着です。
やったぜ!

実は温度変化に伴う体積変化やピストン上下運動による圧力変化よりも、吹き抜けてくるブローバイガスの方が遥かに多いです。
だからこそブリーザーホースの事をブローバイホースとも言うワケです。
車種によっては1本では足りず、2か所からガス抜きホースが出ているエンジンもあるほど重要なホースです。

大昔に流行った「ブローバイ大気開放」

エンジン内部に吹き抜けたブローバイガスを抜くためのブローバイホース(ブリーザーホース)ですが、抜けやすくするには排出抵抗が少ない方が良かろう!という理由で、大昔はブローバイホースを大気開放するのが普通でした。
しかしブローバイガスに含まれる未燃焼ガス(有害)を大気開放するのは環境に良くないので、大気開放は禁止になった歴史があります。

ただしレースの世界ではそういった排出ガス規制が無かったので、つい最近まで大気開放していました。
そしてそれを真似て公道用の市販車でブローバイを大気開放に改造するのが80年代までは流行っていました(違法ですが)。
ナンバープレートの横の辺りまでブローバイホースを伸ばし、ホース出口をチラ見せするのがレーサーっぽくてカッコイイという認識だったのです。

大した圧力は掛かっていないのに何故かステンレスメッシュのオイルホース(のような物)で、ホース出口をオイルライン用フィッティング(のような物)のアルミ部品で飾るのがオシャレ!ビニールホースでナンバー横に持ってくるのはダサい!そんな風潮でした。
今から思えばアホっぽい見た目のうえ、ブローバイガスがだだ漏れなので後ろを走っているとかなりクサいという謎の改造でした。

今やブローバイガスの大気開放が何の効果も無い事が知れ渡ったのと、自分のバイクの周りがクサイ事を嫌う健全なユーザーが増えた為、そういった改造は完全に下火になっています。
わざわざ大気汚染に加担する意味は無いので、皆さんも今さら大気開放に改造したりするのは止めましょう。
別に性能向上したりもしないので、「大気汚染上等!」でやる意味も無いです。

排出したブローバイガスはどこへ行く?

さて、無事にエンジン内部からブリーザー経由で排出されてエアクリーナーボックスに入ったブローバイガスですが、その後はどうなるのでしょうか?

実はこのガス、通常の吸気と混じって再びエンジン燃焼室に吸い込まれて燃焼されてしまいます。

このようにブローバイガスを大気開放せずに再燃焼させるシステムの事を「クローズドループ式」と言います。
現代のバイクであれば必ずクローズドループ式です。

ブローバイホースからオイルが垂れる理由

ところで、エアクリーナーボックスを開けてみたら内部にあるブローバイボースの接続部付近がオイルまみれだったりする事があります。
ホースを外したら中からオイルが垂れてくる事もあります。

この理由は、ブローバイガスと一緒にエンジン内部のオイルの暴風雨も出てしまうから、です。
エンジン内部はオイル暴風雨が吹き荒れていますが、ブローバイガスは結構な量があるので、ガスの排出時にオイルも一緒に出て行ってしまうのですね。


ただ、オイルが出続けるとオイルが減ってしまいますし、エアクリーナーボックス内はオイルでタプタプになってしまいます。
これを防止するためにオイルセパレーターという部品(気液分離装置と言います)が途中にあるのですが、それでも分離しきれなかったオイルがエアクリーナーまで来てしまうと、ボックス内にオイルが噴出する事があるのです。
たいていの場合、エンジンオイルの入れ過ぎが原因です。

また、そこまで行かなくともブローバイガスと一緒に排出されたオイルの霧がホース内部を通過している途中で冷やされ、ホース内でオイルが結露してしまう場合があります。
これがホースからオイルが垂れてくる理由です。

特に冬は寒いので結露しやすく、エンジン内の水分と合わせて結露が乳化してしまい、ブリーザーホース内にマヨネーズを詰め込んだような状態になる事もあります。
マヨネーズが冷やされて凍結するとブローバイガスの脱げ道が無くなるので、上で書いた『もしもエンジンが密閉されていたら』と同じ状態になり、オイルシールやガスケットを吹き抜く事になります。

「そんな極端な……。」と思うかもしれませんが、私の身近だけでもガスケットを吹き抜いてしまった例が2件もあるので油断大敵です。

2ストロークエンジンでブローバイガスは発生するのか?


2ストロークエンジンにはブローバイガスを放出するホースがありません。 それは何故でしょうか?

燃焼圧力によってピストンの横をスリ抜けてクランクケース内に入ってしまう不完全燃焼したガスや未燃焼の混合気をブローバイガスと言うのであれば、2ストロークエンジンでもブローバイガスは発生する事になりますよね?
むしろピストンリングにオイルリングが無かったり、吹き受けを防止するリングの数が少なかったりする2ストロークエンジンの方がブローバイガスの発生が多いような気もしませんか?

正解は「2ストロークエンジンでもブローバイは発生する」です。

ではなぜ2ストロークエンジンにブローバイホースが存在しないのでしょうか?
その理由は「2ストロークエンジンの場合、クランクケース内も吸気通路だから」です。

クローズドループもへったくれも無く、そもそもクランクケース内は未燃焼ガスで常に満タン。
4ストロークエンジンとは抜本的にエンジン構造が異なり、吸気された混合気は一旦ピストン下側のクランクケースに流入する構造なので、クランクケースは密閉されていなければならないのです。

また、2ストロークエンジンはシリンダーの横が穴だらけで、その穴の大多数(排気用の穴以外は全て)はクランクケース内と直結しています。
ブローバイガスなんか比較にならないほど大量の未燃焼ガスがその穴を通ってクランクケース内に入ってしまう宿命なので、ブローバイガスを気にしている場合じゃない。

まとめると、2ストロークエンジンでもブローバイガスは発生する、しかしブローバイガスが抜けた場所はもともと未燃焼混合気の通り道、だから発生したブローバイガスは混合気と混じって再び燃焼室に吸入されて燃焼される。
こうなります。

ただ、ピストン横をブローバイガスが吹き抜けるという事は圧縮が漏れている事でもあるので、性能重視の2ストロークエンジンではそちらの方が遥かに問題です。

ブリーザーホースは絶対に塞いではダメ

宿命的に発生するブローバイガス、そのブローバイガスによって上昇してしまうエンジン内部圧力、その圧力を抜きつつ未燃焼ガスを再燃焼させて大気汚染を防止するのがクランクケースブリーザーとブローバイホースの役目です。

ジャマに感じる事もあるブローバイホースですが、切断したり塞いだりすると100%重大なトラブルに発展します。
だから絶対に塞いではいけません!!

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