グルービング工法路面(道路の縦溝)はなぜ走りにくいのか?

峠道でよく見かけるアレ
コーナーにレコード盤のように溝が彫られている路面がありますが、とにかく走りにくい!!
ハッキリ言って2輪車(バイクと自転車)の事を全く考えられてないとしか思えないですよね。

でも何故走りにくいのでしょう?
細い溝があるだけなのに何故??

しかーし!
走りにくい理由はちゃんとあります。
理由を知ったところで走りにくい事に変わりはありませんが、走りにくく感じる原理を知れば溝付き路面(グルービング工法路面と言うそうです)以外の場面で少し役立つかもしれませんよ?

そもそもグルービング工法路面は何のためにやってるの?


グルービングの施工を実施している企業で作る日本乾式グルービング施工協会のサイトによるとスリップ事故を未然に防ぐのが目的で、路面排水のアップ、ハイドロプレーニングの防止、路面の凍結防止、制動距離の短縮化、操縦安定化、直線道路や滑走路などでは雨天時のスリップ防止、交差点手前では制動距離の短縮化、などの効果があるそうです。
他には走行中のタイヤと路面の摩擦音を吸収して騒音被害を緩和する効果もあるそうです。

溝があるのだから排水性のアップとハイドロプレーニングの防止は間違いないでしょう。
タイヤの溝が無いと雨の日にスリップしやすく、ハイドロプレーニングが起きやすくなるのと逆の理屈です。

日照時に日光に当たる面積が増えて路面温度が上がりやすくなるはずなので、日照時間帯での凍結防止も理解できます。
逆に日照の無い夜間は表面積が増えるので凍結しやすくなる気もしたのですが、サイトに記載されている計測データによるとそういった事は無い事解ります。
夜間は地熱などの影響の方が大きいのかもしれません。

制動距離の短縮化については縦溝の話ではなく横溝の話のようです。
タイヤが変形して食い込むからグリップが上がるとの事で、コーナーが縦溝なのは同じ理由でスリップしにくくなるとの事。

騒音緩和は連続した溝によってタイヤのパターンノイズ(圧縮空気放出音など)が発生しにくくなるので、これも効果がありそうです。
溝の無いスリックタイヤが最も静かなタイヤになるのと同じ理由ですね。

ただ、操縦安定化については少なくとも私は納得できません。
確かに4輪車では操縦安定性向上に寄与しているように感じます。
特に豪雨や降雪などの悪天候時には一般舗装の場合よりも安定している(スピンしにくい)ように思います。
しかし……。
バイクでは明らかに操縦性は悪化し、安定化どころか不安定化してしまう事はライダーなら誰もが感じているはずです。
それが悪天候時だけならまだしも、よく晴れた乾いた路面の場合でも不安定に感じるのだからたまりません。

走りにくい感触とは?

とても走りにくいグルービング路面ですが、具体的にどのように走りにくいと感じるのでしょう?

1:ハンドルがフラつくように感じる

フロントの接地感が減り、左右にフラフラするように感じる事があります。
実際に左右に切れるわけでありませんが、今にも左右どちらかにスパーンと切れてしまいそうな不安な感じ。
これが怖くてついついハンドルを押さえてしまうとコーナーの外に向かって膨らんでしまい、ヒヤリとした方も多いのでは?

2:ハンドルが動かないように感じる

上記のは逆にハンドルが固定されてコーナーを直進してしまいそうに感じる事があります。
ステムナットを締め込み過ぎた時のように重くなるのとも違い、コーナリング中のとある角度でステアリングが固定されてしまったような感触……。
ステムベアリングのレースに打痕が付いてある角度でカクッと固定された時のような感触に近いかも。

3:左右にフラフラするように感じる

ステアリングというより、コーナリング中の車体が寝たり起きたりするような感じ……。
実際に寝たり起きたりするわけではありませんが、とにかくそんな事が起こりそうな感触がヒシヒシと感じられて何だか怖い。

4:スリップダウンしそうに感じる

上記のような不安な感じが合体して、今にもスリップダウンしそうな感触に悩まされたりします。
実際にスリップダウンまではしないものの、どうにもイマイチ……。
ペイントの上を走っている時のようなドキドキ感、砂が浮いている路面のような不安感、バナナを踏んだようなグニグニ感、そんな感じがしてしまいます。


なぜそんな感触になってしまうのか?

これはバイク特有の車体構造が影響しています。

バイクはバンク角や荷重や重心移動に応じてステアリングが左右に切れる事でバランスして走る乗り物です。
そしてこのステアリング操作はライダーが手で操作するものではなく、バイク自身が自動的にステアリングを左右に切ってバランスしています。
バイクとはそういう乗り物で、強引にステアリングを切る四輪車とは決定的に違う部分です。

普段は路面が平坦なのでライダーはステアリングが自動でバランスしている事に違和感を感じません。
ところが……路面にグルービング(溝)があると、タイヤの接地点的には平面でなくなっているのです。
ライダーは平坦路をコーナリングしているつもりなのに、タイヤは平坦路ではない挙動を示し、自動バランスするステアリングに影響する……。
この挙動が不安な感触に思えるのです。

タイヤの接地面的には平面でない?!

接地面を物凄く極端に拡大してみるとこうなってます。

まず画像A。
平坦路でバンクさせたタイヤの状態だと思ってください。
緑の線が車体中心から下ろした垂線で、赤矢印が路面との接地点です。
正面から見たところだとすると、右コーナーになりますね。
ステアリングが自動でバランスする難しい理論はここでは関係ないので端折りますが、平坦路ではこの状態でステアリングが僅かに左右に切れてバランスしていると思ってください。


次に画像B。
凹んでいる部分が超拡大したグルービングです。
先ほどの平坦路の場合と比較して接地点がより外側に移動していますよね?
極端に言うとこのような状態になっている瞬間があるという事です。
急に接地点が移動したのでバイクはバランスを取ろうとして自動的にステアリングを切ってバランスしようとします。
(左右どちらに切れるかは様々な条件で変化するので一概には言えませんが、理論的にはイン側に切れてバランスしようとします。)


最後に画像C。
同じく凹んでいる部分が超拡大したグルービングですが、今度はグルービングの位置が変わったので接地点が内側に移動しています。
再び接地点が移動したのでバランスを取ろうとして自動的にステアリングを切りますが、今度は平坦路と比較すると理論的にはアウト側に切れてバランスしようとします。

極端に書いているので実際にはこんなに大きく接地点は動きませんし、接地している部分が複数のグルービングに掛かる事もあります。
しかし、結局のところ起こっている事はこれと同じです。

ずっと同じ位置が接地し続けるのであれば問題はありません。
Bなら逆バンクの路面と同じ事ですし、Cならカントの付いた路面をコーナリングしているのと同じです。
その状態に合わせてバランスすれば良いだけ。

しかし車体(タイヤ)の進行するコーナリング曲線と、路面に施されたグルービングの曲線が一致し続ける事など有り得ません。
車体が進む度にグルーブの位置、この図で言えば接地している位置がどんどん変化する事になり、A/B/Cの状態にランダムでドンドン変化して行く事になります。
その度にバイクはステアリングを切ってバランスしようとしてしまうので、その挙動をライダーは感じ取って「不安だ」と感じるわけです。

ただし実際のグルービングはこんなに広かったり深かったりしないのでここまで大きく接地点が動いたりはしませんし、複数のグルービングをまとめて踏んでしまう事もあります。
ですので、バランスするためにステアリングが左右にガクガク切れたりはしません。
あくまでも切れそうな感触がするだけなのですが、人間はそれを感じ取ってしまうのです。
また、溝の当たり方によっては左右の動きが取れなくなる事があり、そういう時はハンドルが重くなったように感じたりします。

不安感の正体

バイクのタイヤは断面が丸いため、グルーブに乗ったタイヤは部分的に斜面を走っているのと同じ事になり、バランスするための挙動(ステアリングを左右に切る)を起こす……。
けれども、実際にステアリングが切れるより先にタイヤは別の位置に接地点が移動する。
しかも本当に接地点が移動しているわけではなくタイヤ全体では平坦路を走っているのと同じ挙動を示そうとする。

この不安定な動きをライダーが感じ取るけれど、実際に車体が不安定な挙動を示すわけではないので違和感だけが残って走りにくい。
ザックリまとめるとこういう事です。

4輪車では影響を受けにくい理由


タイヤの接地面積が横に広いので複数のグルービングを一度に踏む事になる事と、バイクと異なりトレッド面が平面なので内向力が生まれないのが理由です。
バイクが不安定な理由が理解できれば、4輪車が影響を受けない理由も納得できますよね?

ではどうすれば良いの??

どうしようもありません。
そこにグルービングがある以上、不安定になるのは避けられません。

ただし、不安定になるものの、そのまま転倒してしまう事もありません。
溝の幅は僅かなので、転倒してしまう前に次の平面にタイヤが差し掛かって切れ込みが復帰するからです。

必要以上に身構える必要はありませんが、グニグニと感触が良くないのは確か。
そこはガマンする以外に対処法は無いです。

ガマン方法

バイク特有のステアリングの動きのせいでグルービング路面では不安な感触を生んでしまうわけですが、グルービングの溝は深さが深くともタイヤが底に接地するわけではないし幅は大して広くありません。
……という事は?
ハンドルから力を抜き、フラフラしっ放しにしておけば勝手にバランスし続ける事が可能です。

「そんな無茶な……」と思うかもしれませんが、そんな事はありません。
実は常にこれと同じ事をしているのがオフロードバイクです。
凸凹だらけの路面なのに安定して走れるのはサスペンションが衝撃を吸収しつつステアリングが自動的にバランスしているからです。

不安な挙動が出そうな時にハンドルから力を抜いて完全にフリーにするのは勇気が要りますが、ハンドルから力を抜くのはバイクを上手く乗るための基本中の基本である事を忘れてはいけません。
普段からハンドルには力を入れないように注意しているのであれば、それと同じ事をグルービングで不安な挙動が出そうな感触がある状態で実行すれば良いのです。
ちょっと勇気は要りますが、そこはガマン!

因みに横溝なら大勢に影響無し


縦溝がバイクのタイヤに対していろいろ問題がある事は解りました。
では横溝はどうでしょう?
滅多に遭遇しない横溝グルービングですが、極まれに存在します。
そこに溝がある以上、何らかの影響はありそうですが……。

しかし、溝に対して直角に進行するので、バイクにとっては凸凹した振動を感じる以外は特に影響は無いようです。
少なくとも法定速度で走行していれば横溝のせいで不安定になる事は無いと感じます。

これは横溝グルービングが主に交差点手前に存在している事も影響しているでしょう。
車体が傾いていないのでステアリングへの影響が出にくいのではないでしょうか。

コーナーに横溝グルービングが施されているのは1~2回しか体験していませんが、普通に走っている限りは不安な感触は感じませんでした。

厳密に言えば溝の分だけタイヤの接地面積が減るのでグリップに影響があるのでしょうけれど、まさかコーナーをタイヤグリップ目いっぱいで走っているわけではないので特に何も感じません。
接地面積が減るという事は他の接地している部分は面圧が上がってグリップが上がる事を意味するので、体感としては「何も変わらない」となるのかもしれません。
単に凸凹感があるだけ。

制動距離の短縮化は体感できませんでしたが、かといって制動距離が伸びてしまう感じもありませんでした。
皆さまも特に気にしないで大丈夫かと思います。

実際に挙動の乱れる路面もある

グルービング工法路面は溝が細いので「感触が悪い」で済みますが、路面電車のレールや大型車の通過で路面が縦方向に波打っている場合は図で示した極端な接地点の移動が実際に起こります。
縦に荒れた路面でハンドルが取られて驚いたり、そのまま転倒してしまった経験のある方も居るのでは?

こういう理由でハンドルが振れると知っていれば、縦の轍にも対処しやすくなる……かもしれません。
できるだけ直角に交差するのがコツで、縦の段差には弱いバイク特有の特性を理解したうえで運転するようにしましょう!

関連キーワード
足回り,ハンドル,オンロードタイヤに関連した記事