ハンドルがカクカクするなら要チェック!ハンドリングの要となるステムベアリング調整
真っすぐの道を走っている時でも、無意識のうちに常にバランスを取っているのがバイクです。スムーズなハンドル操作を行うためにステムベアリングのコンディションが重要なのは、50ccの原付スクーターでもメガスポーツでも同じこと。ステムベアリングはバイクを構成する部品の中でかなり小さい部類に入りますが、重要度はとても大きいので細かなチェックが必要です。

ハンドルが途中で引っかかるようなら要チェック

ステアリングステムからフロントフォークやフロントタイヤを外せば、ハンドルを左右に切った際の慣性力が減ってベアリングの状態を掴みやすくなる。ベアリングレースに打痕があると、ステムが「カクカク」と段付きで動く。

ホイールベアリングやエンジン内部のミッションベアリングは回転運動を支える部品です。一方でステアリングの軸部に組み込まれたステアリングステムベアリングには、ハンドルを左右に切る動きを滑らかにするだけでなく、前輪やフロントサスを通して路面から伝わる衝撃を受け止める役割もあります。

そのため車体各部のベアリングの中でも、ステムベアリングにはレースの打痕という固有のトラブルがあります。もちろん、ホイールベアリングやミッションベアリングにも潤滑不良や異物混入によるトラブルはありますが、ステムベアリングはもっとデリケートです。

例えば立ちゴケ程度の軽い転倒でも、フルロック状態のハンドルが路面に強く当たるだけでベアリングレースに打痕が付くことがあります。フルロック状態ではそれ以上ハンドルが切れず、入力した衝撃の逃げ道がなくなることでベアリングに強い力が加わってしまうためです。

ベアリングレースに打痕が付くと、ハンドルを左右に切る際にボールやローラーがそこで一度引っかかってしまうため、スムーズなハンドリングが損なわれます。打痕の深さによって違和感の出方は異なり、またライダーが敏感か否かでも感じ方が変わりますが、ハンドルを一気に大きく切るより、車線変更のように小さな舵角で切る時の方が引っかかりが分かりやすいことがあります。

車重が重いバイクは常にハンドルが重いため、軽量車に比べて打痕の影響を感じづらい傾向にあります。そのため、ステムベアリングのコンディションを知るには、ステムベアリングに加わる荷重をできるだけ減らすことが有効です。

センタースタンドがあるバイクなら、フロントタイヤを浮かすことは比較的容易です。サイドスタンドしかないなら、エンジン下部で持ち上げるジャッキが必要になります。またフロントタイヤを浮かせたなら、ホイールを外してしまえばハンドルを切る際にホイール分の慣性力がなくなるため、ベアリングの状態を把握しやすくなります。

 
POINT
  • ポイント1・ステムベアリングは重要かつデリケート
  • ポイント2・フロント周りの重量物を外すと状態が分かりやすい

アウターレースに打痕があれば要交換

トップブリッジを外すと、ステムシャフトは2枚重ねの薄いナットで固定されている。下側のナットの締め付けが決まったら、上側のナットで回り止めとする。ダブルナットの容量だ。

ナットの切り欠きを回すには、フックレンチとかリングレンチと呼ばれる工具を用いる。マイナスドライバーで回せなくはないが、微妙な締め付け調整ができないので専用工具を使おう。画像の工具はデイトナが販売するスライド式リングスパナ。モンキーのようにスライドする支点によって、ナット径φ35mm~75mmに対応できる。

アンダーブラケットを引き抜くと、フレームのヘッドパイプ上部に上側ベアリングのインナー/アウターが残る。下側ベアリングインナーはステムシャフト下部に圧入されており、ヘッドパイプ下部にベアリングアウターレースが圧入されている。

しかしながらせっかくフロントタイヤを持ち上げるのなら、ホイールやフロントフォーク、トップブリッジまで外してベアリングを直接目視で確認するのがもっとも手っ取り早くて確実です。

打痕の有無とは別に、ステムベアリングもグリスによる潤滑が必要な部品なので、定期的な洗浄とグリスアップはコンディション維持のためにとても有効です。ここで紹介するカワサキゼファーは、走行距離は短く転倒歴もないもののガレージ保管の期間が長く車体各部にサビが発生しているような状態です。

ホイールやフロントフォークなどを外してステアリングステムを左右に切っても引っかかりはないので、打痕はないと想像できますがステムベアリンググリスの劣化はあるはずです。

ゼファーのステムベアリングはテーパーローラーベアリングで、ボールベアリングのようにアンダーブラケットを抜くと同時にローラーがポロポロと落下しないため、ボールの紛失に気を遣う必要はありません。

フレームからアンダーブラケットを引き抜いたら、ヘッドパイプ上下のベアリングレースの傷や打痕の有無を確認します。レース表面に凹凸がある場合は再使用できないため、リムーバーと呼ばれる専用工具でレースを叩き抜きます。リムーバーがない場合は、ヘッドパイプ内側からレース内径の縁を叩ける硬い金属棒でも代用できます。

ボールベアリングは鋼球のボールと、レースとコーンというボールが転がる部品が3つに分割されますが、テーパーローラーベアリングはテーパーローラーとインナーレースが一体式で、フレームに圧入されるアウターレースと2つに分割されます。そのためインナーレースの打痕は目視で確認できませんが、アウターレースに打痕があればベアリング自体を交換します。

 
POINT
  • ポイント1・テーパーローラーベアリングは2分割
  • ポイント2・アウターレースに傷があればベアリング交換

ステムロックナットの締め付けは微妙な調整が必要

10年近く乗っていない車両だが、屋根のある車庫で保管していたおかげでベアリングにサビはなくグリスも残っている。グリス不足で走行距離を重ねると、ローラー表面のハードクロームめっき層が剥離することがあり、そうなったら交換するしかない。

インナーレースはテーパーローラーと一体で分解できない。古いグリスの汚れが残った上から新しいグリスを塗布しても汚れを押し込むだけなので、ブラシを使って内側の汚れを掻き出しておく。

ヘッドパイプ上下のアウターレースは圧入されているので簡単には外れない。レース表面のグリスをパーツクリーナーで洗浄して、ローラーが強く押しつけられ痕がないか、凹凸がないかを確認する。このレースは程度良好なので再利用する。

今回のゼファーはレースに打痕がなかったため、洗浄とグリスアップを行います。長年ノーメンテだったものの古いグリスにはまだ粘性があり、ローラーやレースにもさびはありません。歯ブラシとパーツクリーナーで洗浄したら、強い圧力が加わっても潤滑面の油膜が切れない、極圧性が高いグリスを塗布します。成分がリチウム系、ウレア系のグリスなら安心して使えるでしょう。

グリスを塗布する際は、アウターレースだけでなくローラーとインナーレースの隙間にも押し込むように塗布します。高速で回転する部分にグリスを詰め込みすぎると潤滑よりフリクションロスになる場合もありますが、ステムベアリングはそもそも加わる圧力が高い部分なので、油膜切れによるダメージを避けながら防錆にも役立つグリスはたっぷり塗布してかまいません。

復元時にもっとも難易度が高いのがステムロックナットの締め付けです。ハンドルがスムーズに切れるためには通常のボルトナットのように締め込めば良いわけではなく、しかしながら緩すぎればベアリング部分にガタが生じてハンドリングに悪影響を与えます。

この作業で難しいのは、ステム単体で締め付けた際とフロントフォークやタイヤが付いた状態では印象が全く異なることです。ステム単体ではナットを強く締めたつもりでも、フォークとタイヤの重量が加わるとハンドルを切った際の慣性力が大きくなるため、勢いが付いて締め付けが軽く感じることがあります。

ゼファー400はサービスマニュアルでは4.9Nmのトルクが指定されていますが、その前に39Nmで締め付けから一度緩めて、4.9Nmで締めることになっています。これは最初に強く締めることでベアリングとレースの収まりを整え、そこから微調整を行うことで適正な締め付けを得ようという考えのようです。

一方で別の機種では、一度締めてから緩めるという手順ではなく、最初から規定トルクで締め付けることを指定しているため、どんな方法が正解かを一概に定めることは難しそうです。

締め付けトルクが弱ければガタが出て、強ければフリクションが増えるステムロックナットの扱いは難しく、経験を積んだ作業者でも試行錯誤を繰り返して自分なりのやり方を見つけているのが実情です。とはいえレースに打痕が付いた状態やノーメンテでは操縦安定性に悪影響を与えるので、定期的な確認は必要です。


新しいグリスはアウターレースに塗るだけでなく、テーパーローラーとインナーレースの隙間に押し込みながらまんべんなく塗布する。潤滑不足でステムロックナットを強く締め付けてハンドルを切ると、レースに傷が付いてしまう。
POINT
  • ポイント1・ステムロックナットの締め付けが最大の難所
  • ポイント2・ステムの動きは軽すぎず重すぎずを目標に


 
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