接着剤より高強度!溶かして芯を埋め込む樹脂パーツ補修方法【カウル修復】

事故や転倒ばかりでなく、経年劣化によって割れたり欠けることもある樹脂パーツ。
半田ゴテなどを用いた溶着は、強度が必要な場所を強固に修理するために有効ですが、補修部分に補強を追加することでさらに高強度を期待できます。
うまく補修すれば痕跡も目立たないプラスチックリペアキットを使いこなしてみましょう。

強度が必要な樹脂パーツの補修は面倒


樹脂パーツ側のスリットをフレームのフックに引っ掛けて固定する場合、経年劣化でスリット部分が割れてしまうことがある。割れた部分が小さい上に力が加わるため、単純な接着では再び剥がれてしまう。

バイクの外装に使われている樹脂パーツは、ABSやPP、アクリルやFRPやカーボンなどさまざまな素材が使い分けられています。このうちスクーターの外装やバイクのサイドカバーなど、使用頻度が高いのがABSです。

外部からの衝撃によってひび割れや脱落などのダメージを受けた樹脂パーツを補修するには、接着剤を使うのが一般的です。接着剤は樹脂素材の接着面に対して化学的、物理的または機械的に作用して結合させるケミカルで、接着する樹脂素材によって使える製品と使えない製品が分かれます。

またディスプレイを主体としたプラモデルと違って、バイク用パーツには接着後も力が加わることもあるため、見かけ上着いているだけでなく機械的強度が必要な場合があります。

そこで修理経験が豊富なサンデーメカニックが多用するのが、熱を利用したリペアテクニックです。金属素材の溶接と同じ理屈で電気工作で用いる半田ゴテで破損部分を加熱して、溶かしながら一体化させるのです。破損部分を突き合わせて加熱するだけでなく、溶着部分と同じ樹脂素材を用意すれば欠損部分を埋めたり盛り上げることもできます。

ただし補修素材自体を溶かすため、過度に加熱すれば変形したり炭化することもあるのである程度の経験とノウハウが求められます。また溶着部分の面積が小さい突き合わせ溶着では、思ったより強度が上がらず再破損してしまう場合もあるので注意が必要です。

 
POINT
  • ポイント1・強度が必要な樹脂パーツの補修に有効な溶着
  • ポイント2・身近な半田ゴテは使い方にコツが必要

電気で加熱したステンレス製ピンを溶かし込む


これは工具メーカーのストレート製リペアキット。ステンレス製のピンに電気を流して加熱して、樹脂に溶かし込んで補修する。電気エネルギーを熱に変えて利用するのはニクロム線ヒーターと同様。

同じ熱を使う修理方法の中でも、熱の影響範囲を局所的にしながら強度を確保できるやり方があります。それが補修部分に金属製のピンを埋め込むプラスチックリペアキットです。いくつかのメーカーから複数の製品が販売されていますが、いずれもハンドル部のスイッチを押して通電すると、ステンレス製ピンに電流が流れて加熱されて樹脂を溶かしながら埋め込まれます。

半田ゴテの場合は溶着部分を広く加熱することでパーツ自体が変形するリスクがありますが、プラスチックリペアキットでは細いピンだけが熱されることで補修部分への熱影響を最小限にとどめられます。

また半田ゴテで厚みのある素材を中心部まで加熱すると、補修部分以外の手直しが必要になりますが、ピンを押しつければその形状どおりに素材に潜っていくので加熱の影響範囲を過度に広げず補修が可能です。

さらに溶着部分に金属製のピンが残るため、例えばサイドカバーやカウルなど板厚が薄い面補修を行う際にも接着や単純な溶着に比べて物理的な強度が向上します。ピンが補修部分にしっかり食い込んで外れないよう波形形状となっており、さらに補修箇所に合わせて曲げられる柔軟性もあります。


補修部分に応じて太さや形状が異なるピンを使い分ける。強度面だけを見れば太いピンの方が有利だが、補修部分の素材の厚さや大きさに応じて選択する。

 
POINT
  • ポイント1・ステンレス製ピンを加熱して樹脂を溶着
  • ポイント2・ピンの効果で接合部分の強度をアップ

FRPやカーボンには使えないが汎用性の高さが魅力


割れた部分を突き合わせて、クラックを縫うようにピンを埋め込む。波形のピンをしっかり食い込ませることで溶着部周辺の樹脂にも熱が加わり強度がアップするが、パーツ表面に近づくほど波形模様が浮き出してしまうので欲張りすぎないこと。

ここで紹介する製品の場合、補修素材の厚みと体積に応じてピンの加熱温度が3段階に調整できます。カウルのような比較的薄い素材は低温で、カウルの固定用ピンのような強度が必要で体積が大きい部分は高温に熱することで、見た目に影響を与えず耐久性の高い補修ができます。

使い方はいたってシンプルで、補修したい部分にピンを橋渡ししてスイッチを押して加熱するだけです。半田ゴテと違ってピンに熱が加わるのはスイッチを押している間だけで、なおかつ温度上昇のレスポンスが良いのでピンの周辺に熱が伝わる前に、補修部分にスーッと埋まっていきます。

ハンドルを強く押しつけるのではなく、加熱されたピンが自重で樹脂パーツに潜っていくような感覚で扱うとうまく補修できます。ピンは亀裂部分の表面に張りついているより、ある程度埋め込んだ方がピンの周辺の樹脂を溶かすことで強度が上がります。

亀裂を突き合わせた際に断面がピタッと合うような破損箇所では、ピンを裏側からうまく埋め込むことで表側の塗装面に与えず、補修の痕がわからないような仕上げができるのも溶着ピンの特徴です。

ただしピンを押しつける力が強すぎたり、素材の厚さに対して温度が高いと反対側に突き抜けたり、ピンの波形が表面に浮き出てしまうこともあるので注意が必要です。また、樹脂パーツの中でもFRPやカーボンなど熱硬化性樹脂には、ピンが溶け込まないため使えません。

とはいえ、樹脂パーツ全般に対する適応性と使い勝手の良さ、仕上がり強度の高さは大きな魅力です。接合部が割れてグラグラのカウルや、グロメットに刺さるピンが折れてしまった絶版車のサイドカバーなど、捨てるには惜しいがそのままでは使えない破損パーツの再利用に、強い味方になることは間違いありません。

 
POINT
  • ポイント1・熱硬化性樹脂のFRPやカーボンには使えない
  • ポイント2・接着剤が着きづらい素材も補修可能
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