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昨年6月に開催されたスパ24時間EWCレースで、ウェットコンディションでのライディングを得意とするジノ・レイ選手は、地元の英雄のザビエル・シメオン選手に競り勝ち、表彰台を獲得した。

ロンドン出身のライダーであるレイ選手が、このベルギーの伝説的なコースで、FIM世界耐久選手権トップ3入りを狙える位置にいたのは、あきらめなかったからにほかならない。

レース開始から15時間経過時点で、F.C.C. TSR Honda Franceは、トップを走っていたが、チェーンの破損により、コース上に取り残されたレイ選手は、ピットまでマシンを押し戻すしかなかった。しかし、チームは、迅速に修理を行い、トップ10圏外からの巻き返しを開始した。

スパでの3位獲得により、レイ選手とチームメイトのマイク・ディ・メリオ選手、ジョシュ・フック選手は、EWCのタイトル争いに残ることができた。そして次の日本ラウンドでは、日本の夏の蒸し暑さの中、しかも地元の有力選手やワールドスーパーバイクのトップライダーを相手に、厳しいレースを強いられることになった。

しかし、レイ選手は、土曜日の走行練習でクラッシュし、命は取り留めたものの、重傷を負ってしまい、レースに出場することはなかった。レイ選手は、脳挫傷に加え、首の骨2本、左鎖骨、肋骨を骨折していた。また、肺を強打し、肺炎を発症した。このままだと、一命を取り留めたとしても、ライディングはおろか、歩くこともままならないのではないかと心配された。

あの忌まわしい8月の日から7ヶ月、 レイ選手は、厳しいリハビリの末、回復ということ以上の目的を視野に入れている。それは、来週(4月15日)、ルマン24時間レースで行われるパレードラップで、感動的な復活パフォーマンスを披露することである。33歳のジノ・レイ選手は、この驚異的かつ壮絶な復活劇について、次のように語っている。

Q:ジノは、今どこにいて、どう過ごしている?
「今、妻のイザベラと一緒にスペインにいて、トレーニングとリハビリの両方を続けているんだ。毎日、元気に過ごしているよ。」

Q:回復の段階はどの程度?
「脳障害が長期的にどのような影響を及ぼすかわからないから、当初、僕たちは、とても不安だったんだ。今の状態にまで回復できたことは、とても幸せでラッキーなことだと思っているよ。トレーニングは、とても順調で、体力も日々向上しているんだ。まだ時間は必要だけど、良い方向に向かっているよ。」

Q:普段の1日の過ごし方は?
「僕の普段の1日は、朝は軽い運動やヨガから始まって、お昼過ぎに、メインのトレーニングセッションを行うんだ。代わりにリハビリで埋め尽くされる日もあるけど、これも回復のために必要な事だからね。僕たちは、栄養士におすすめの食事プランを作ってもらったけど、基本的には、いつも食事には気を付けていたから、延長線上の事をやっているに過ぎないね。たまにはおやつを食べるけど、大抵は、手作りのものなだから、とてもおいしいし、食事は、野菜と果物を中心に、肉料理が多いかな。」

Q:この7ヶ月間は、あなたやご家族にとって非常に厳しいものだったと思うが、どれ程だったか?
「そうだね。この7カ月間は、自分自身にとっても、周りの人たちにとっても、とても厳しい状況だったよ。僕と一緒に大変な思いをしてきたからね。彼らには本当に申し訳ないと思っているよ。特に妻のイザベラにはね。彼女が僕にずっと付き添ってくれたから、強くなれた今の自分がいると思っているんだ。そして、いつも私の味方でいてくれる家族にも、本当に感謝したいよ。あと、僕のマネージャーのテリー・ライマーにも感謝しなければいけないね。」

Q:数えきれない支援、善意、寄付の声があったが、あなたにとって、それはどのような意味があった?
「僕にとって、すべてを意味するものだよ。本島にサポートがたくさんあって、信じられないよ。そして、みんなからのコメントひとつひとつに本当に本当に感謝しているんだ、応援してくださっているみなさん、ありがとうございした。寄付金もすごいことになっていて(今月末でGoFundMeのページを閉鎖する予定)。そのおかげで、これだけたくさんのリハビリを熟すことができて、こんなに早く回復することができたんだよ。寄付してくれた一人ひとりに一生感謝しなくちゃいけないね。」

Q:ファンの皆さん、二輪レース関係者の皆さんへメッセージを!
「僕の一番重要なメッセージは、僕をサポートしてくれた全ての人たちに『ありがとう』という言葉を届けたい。本当に気付かないうちに。本当にありがとう。僕に連絡をくれたファン一人ひとりや他のトッププロライダー達にもそう伝えたいよ。」

Q:チームメイトはいつも、あなたがF.CC. TSR Honda Franceで果たした役割について言及している。F.CC. TSR Honda Franceは、2022年シーズンの世界チャンピオンになった。それはあなたにどんな満足感をもたらすか?
「一緒にワールドチャンピオンを取ったという満足感はあるよ。僕は、彼らの協力に本当に感謝しているし、彼らとチームメイトでいたことを楽しんでいたし、僕達はチャンピオンになるために、素晴らしい時間を共に過ごしてきたんだ。」

Q:日本でのレースは覚えている?
「残念だけど、日本でのことはあまり覚えていないんだ。ただ、ある場所での記憶がフラッシュバックすることがあるんだ。」

Q:自分の身に起こった出来事に対して、怒りや絶望、悔しさといった感情はない?
「悔しさはあるよね。回復に時間を要するケガだから、僕に大きな影響を与えた不運な出来事だったと思っているよ。悔しいけど、忍耐強く、乗り越えていかなければならないんだ。」

Q:短期、中期、長期の目標について、どのような計画を持っている?
「基本的には、以前と同じレベルに戻りたいと思っているんだ。同じレベルというのは、EWCで再び先頭に立って、レースで優勝するということだよ。EWCは、僕が大好きな選手権だからね。自分の帰るべき場所だと思っているんだ。僕のレース人生を振り返ってみると、チャンピオンシップで活躍できれば満足できたし、ほとんどの大会で活躍できたと思っているんだ。だけど、EWCではちょっとした自分の家を見つけたし、ホンダにも居場所を見つけたから、またそういう状況に帰りたいと思っているんだ。」

Q:EWCレースで先頭を走るまで戻るというその見通しは、どれくらい現実的で、どれくらい楽観的なのか?
「その計画については、前向きに考えているよ。ただ、そこに至るまでには時間がかかるだろうね。ただ、最終的には、その時はすぐにやってくると思うよ。だって、僕の改善は、おそらく多くの人が思っていたよりも順調だからね。医療関係者ですら、もっと時間がかかると予想していたくらいだからね。モトクロスバイクに乗ったり、ホンダ CBR1000RR Firebladeでサーキット走行会に参加したりって、自分も周囲もちょっとびっくりするようなことをしてきたよ。正確な時間を出すのは難しいけど、もっと練習して、感覚を早く掴みたいと思っているんだ。」

Q:健康や体調管理には常に気を配ってきたと思うが、それが回復にどの程度寄与している?
「レース人生において、僕はできる限り健康であることを心がけてきたんだ。そのことは常に、自分にとって意味があったことだと思っているよ。あと、今、耐久レースの世界選手権に参加していることも、とても重要なことだと思うんだ。普段もそうなんだけど、こういう時こそ、健康や体力が高いレベルで維持されていることが、回復に役立っていると僕は思っているんだよ。僕が以前いたレベルは、健康面でも体力面でも高いレベルにあったと思う。事故に見舞われると、当然、体力が落ちるんだけど、ただ、その時自分にその基礎体力があるかないかがわかるんだよ。」

Q:レース以外の人生について考えたことはあるか?
「すでに僕は、レーシングチームを持っていて、今年はイギリスのスーパーバイク選手権でスーパースポーツに参戦する予定なんだ。チーム名は、R4R (Ready 4 Racing) Vision Racingで、これはチームが始まる前からずっとやっていたコーチングがベースになっているんだ。チームは、3、4年前からやっているんだ。イギリスを拠点にしているんだ。チームのパートナーは、Vision CPSで、以前は個人的なスポンサーだったんだ。オーナーのエリオット・マムフォードさんとは、同じイベントでゲストトークをしたときに知り合って、その時、彼が僕の実家のあるエプソム(ロンドン南西部郊外のサリー州)の近くのノースチームに住んでいることを知ったんだ。彼の息子のアルフィーは珍しい症候群を患っているんだけど、本当にかわいくて強い子で、彼や特別なニーズを持つ子どもたちのために、One Step At a Time Charityを通じてたくさんの資金集めをしているんだ。」
Q:ルマンで行われるEWC開幕戦を観戦する予定はある?
「パレードランとTSR Hondaの応援のためにルンに行く予定だよ。チームメイトやファンのみんなとの再会が本当に楽しみだよ。ホンダ・フランスがパレードラップで乗るバイクを手配してくれているんだ。TSR Hondaにカラーリングされているらしいけど、マシンのスペック等の詳細はまだわからないんだ。ルマンでレースをしたいっていう気持ちは当然あるから、とても楽しみだけど、感慨深いものにもなりそう。以前、同じようなことから復帰したライダーたちが、パレードラップをやっているのを見たことがあるんだ。その人たちをいつも尊敬していたけど、今度は僕がやることになっちゃったね。こんな機会がもらえたことに、とても感謝しているよ。パレードラップに参加できるなんて信じられないし、感情的になっちゃうよ。だって、自分がそこに行けるなんて思ってもいなかったし、パレードラップをする機会をもらえたからね。だけど、僕が事故に遭ったことをたくさんの人が知っていて、本当にびっくりしたよ。超有名なバイクレーサーからメッセージをもらうこともあったんだ。応援してくれているみんなに一番感謝しているのは、世界がいかに狭いかを知る機会を与えてくれたんだ。このようなことが起こるまで、そのことになかなか気づけないからね。世界は狭いけれど、インターネットの力はとても大きくて、ニュースはすぐに広まるから、僕はただただみんなに感謝したいし、このラップをすることで、彼らのサポートが僕の回復に役立ったことをみんなに示すことができると思っているんだ。その後はもちろん、レース場に残って、TSR Hondaチームを応援するよ。チームメイトやファンのみんなとの再会が本当に楽しみだよ。」

レース再訪:2022年スパ24時間EWCレース

Q:チームメイトといえば、つい最近もマイク・ディ・メリオ選手がスパでの素晴らしいパフォーマンスについて触れていましたが、そのような賞賛を受けたときはどのような気持ちになる?
「感謝しかないね。あの24時間レースは、最後の15分で表彰台争いを繰り広げられた素晴らしいレースだった。当時も今も、表彰台を獲得できたことを思い出すと、気分がすごくいいんだよ。」

Q:表彰台を目の前に捕らえた雨の中のレースは、どのような難しさがあったのか?
「雨でひどいコンディションに思えたけど、コーナーではグリップがよくて、2コーナーや3コーナーでは、肘が縁石に触れるほどだった。ブリヂストンタイヤでウェットレースをしたのは初めてだったけど、とてもよかったよ。あのコースの最大の難関は、レーシングライン上での直線的なブレーキングをすることだったんだ。そのために多くのライダーがクラッシュして、僕も同じことをしそうになった。1コーナーで転倒しそうになったことがあった。基本的には、周回遅れのライダー達に近づいていて、ブレーキングをした時に、コーナー進入で追いつけるかどうかわからなかったから、少し車間を取りながら観察して、違う周回でレーシングラインを外してイン側に入っていくようにしたんだ。レーシングラインを走っていると、地面にタイヤのゴムが敷かれていて、普段、そのゴムは、タイヤを滑りやすくさせるんだ。バックマーカーが接近してきた周回に、レーシングライン上を走ったんだけど、そうしたら、ブレーキを掛けている時、フロントをロックさせてしまったんだ。でも、ラッキーだったのは、それをすぐさま感じ取ることができて、なんとか助かったけどね。マイク・ディ・メリオも同じ問題を抱えていて、彼や他のライダー達は、転倒してしまったけど、僕はラッキーだったんだ。」

Q:第1コーナーで転倒したとき、もうダメだと思ったのでは?
「大きく分けて2つのことを思ったよ。1つは、僕は再びバイクに乗ることができたから、レースを続けることができると思ったこと。 でも、次に思ったのは、(シメオンを)前に出してしまったため、レースを台無しにしてしまったのではないかとも思ったんだ。彼が2、3秒前にいることは知っていたし、バックマーカーもいたから、今はただ頭を冷やして、自分の知っている走りで力いっぱい彼を追いかけて。それで何が起こるか見てみようと思ったんだ。そうしたら、なんとか追いつくことができたんだ。振り返ってみると、この時がこのレースで一番の盛り上がりだったかもしれないね。 だけど、楽しかったとは言い難いんだ。というのも、プレッシャーがあるんだよ。すごいプレッシャーが。」

Q:地元のヒーローの表彰台を阻止しようとしていたが?
「僕たちは、ザビエル・シメオンがいるSERTとチャンピオンシップを争っていたからね。この3位でチャンピオンになったとは言えないけど、チャンピオンになるためには貢献できたと思う。緊張もあっただろうし、悔しい気持ちもよく分かるよ。彼らが、僕の地元のブランズ・ハッチ・サーキットに来て、最終ラップで僕が勝利を逃したのと同じだろうからね。でも、あの時はとても興奮したし、今でも思い出すとドキドキするよ。普通なら、こんな終わり方はありえないからね。特に24時間レースで、チャンピオン争いをする2人の対決となると。そんな中、幸運にもうまくやることができたよ。」

Q:最終的に表彰台を獲得したことが評価される一方で、マシンが壊れた時、あなたがチームをレースに戻すため、尽力したことを忘れられがちだが?
「夜までレースをリードしていて、十分なリードを保っていたけど、突然チェーンが切れてしまったんだ。勝てるレースだっただけに、最悪のタイミングで、驚いたよ。できる限りマシンを押したけど、周の終わりの左ロングに差し掛かったところで、コースから引き離されて、最悪だった。バンの後ろに乗り込んで、真っ暗な中でバイクを支えていたんだ。その時点ではガレージに直接向かうサービスロードはなかったから、バンは暗闇の森の中を抜けていったんだ。森の中を走っていたから、バンの後でバイクと一緒に倒れそうになっったよ。でも、バイクを壊したくなかったから、倒れないようにしようと必死だったよ。ガレージに戻ったとき、僕達は、レースは終わったと思ったんだ。だって、チェーンが切れてしまって、バンの荷台で10分もロスしてしまったからね。それでも、チームは何とかマシンを修復してくれたんだ。僕たちは、その時点で11位にいたから、『よし、また出よう』と思って、そこからは3位を目指す戦いになったんだよ。」

Q:コース上のオイル漏れでレースが中断された後、レースが再開されず、3位まで挽回できないのではという心配はなかったのか?
「困ったことに、我々は3位につけていて、タイヤと燃料を交換するためにピットインしたときには、SERTに1周近くリードされていたんだ。ピットインしたとき、彼らは僕たちの前に出て、3位になったんだ。でも、1、2周後には、僕たちは3番手に戻ることができたと思う。だけど、僕達がピットインして外に出たところで、赤旗が出たんだ。あのタイミングだったら、僕たちは4位だったけど、あと1、2周すれば3位に戻れたはずだった。」

「何が起こったのかわからないけど、レース終了と判断され、僕達は4位に終わった。僕達は3位につけていたから、チームオーナーもメカニックもチームメイトも、みんな本当にがっかりしていたんだ。僕達がレースを制していたのに、トラブルが発生して11位まで順位を落とした。そして、その後3位まで回復したのにね。そしてレースは、赤旗中断となって、僕達は4位に後退したんだ。僕達は、荷物をまとめて、レース終了後のファンのためにパレードラップを行って、その後、またガレージに戻ってくることにしたんだ。」

「24時間レース中、僕はほとんど食べないんだけど、1時の30分前、僕たちは何も聞かされていなかったから、妻がお粥を作ってくて、それを食べたんだ。そうしたら、ショーワのメカニックで、スペインの僕の家の近くに住んでいる僕のメカニックは、『君はレースに出なければならない、君はレースに出なければならない。計画は変更されたのだから、最後までやり遂げなければならない。』と言わんばかりに、とても真剣に作業していたんだ。食べ物をほとんど履いちゃったんだけど、『他のみんなは、家に帰るために荷物をスーツケースに詰めてしまったのに、僕は選ばれたんだ!』と思ったよ。」

「僕たちは4位だったけど、自分の気持ちは『3位を獲る』だったから、テンションが上がって、外に出たんだ。1位と2位のチームは、僕の8周くらい前にいた。だけど、3位は僕のすぐ目の前で、レースを再開したんだ。ザビエル・シメオンは、Moto2のウィナーで、ウェットコンディションが得意だけど、僕は『やることをやるだけ』という気持ちだったんだ。自身はあったよ。セーフティカーが戻る瞬間を狙って、2つのコーナーを通過した時には4番手からで2番手に上がって、トップを追い抜き、バトルを繰り広げ、フロントを失てからそこから挽回する瞬間があった。興奮の連続だったよ。お粥はほとんど吐いちゃったけどね!お粥は、いつもの朝食なんだけど、24時間レース中、エナジージェルやさまざまな食べ物を食べていると、その後、お粥が食べたくなるんだ。でも、それを食べてからツナギを着て、突然レースに復帰して表彰台に上ったのだから、それだけで最高だった。素晴らしいバトルができたし、チャンピオンシップのポイント差も減らし、オープンな状態に戻して、チャンピオンを獲得できるように、僕たちはやって退けたんだ!」

もう一度見る:スパ24時間EWCレース総集編

Original Source [ FIM EWC ]

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