Viltaïs Racing Igolは、2022年9月17日~18日、ポール・リカール・サーキットで行われたボルドール24時間レース第100回記念大会の激闘の末、優勝し、大きな成功を収めた。しかし、F.C.C. TSR Honda Franceは、同レースで、FIM世界耐久選手権タイトルを獲得し、さらに大きな栄光を手にした。

F.C.C. TSR Honda Franceのタイトル獲得は、南フランスの太陽の下でのドラマチックなレース展開と、ルマンやスパ・フランコルシャンでの24時間レース、そして日本での鈴鹿8時間レースと、盛りだくさんのEWCシーズンを締めくくるにふさわしいものであった。

満員のスタンドの前で、Viltaïs Racing IgolのEWC初優勝は、ドラマチックであると同時に、やや想定外の出来事だった。しかし、これは舞台裏でのヤニック・ルコット監督のたゆまぬ努力、フロリアン・アルト選手(ドイツ)、エルワン・ニゴン選手(フランス)、スティーブン・オデンダール選手(南アフリカ)のトリオの素晴らしい走り、さらにリザーブライダーのジェームス・ウェストモアランド選手(イギリス)が大きく貢献することで報われたといえるだろう。

Viltaïs Racing IgolのBol d'Orの勝利により、EWC2022年シーズンの4レースの勝利は4つの異なるチームによって占められ、今シーズンのチャンピオンシップは大きく展開さ れたシーズンと言える。また、ポール・リカール・サーキットでのEWCレースの予選と決勝ラップレコードは、それぞれイルヤ・ミハルチク選手(1分51秒641)とシャビ・フォレス選手(1分52秒979)が更新し、その優勝の難易度の高さを証明した。

EWCのエースたちがボルドール後半に失速
ERC Endurance-Ducatiは、ボルドール24時間レースの終盤90分まで、勝利に向かい順調にトップを快走していたにもかかわらず、マシントラブルでストップしてしまった。その結果、Wójcik Racing Teamがトップに立つことになった。しかしその直後、このポーランドチームのヤマハマシンはスローダウンしたため、マチュー・ギネス選手はマシンをピットに戻して修理を行った。

その後、ダン・リンフット選手がヤマハ #77をコースに戻したときには5分以上が経過しており、マチュー選手、ダン選手、シェリダン・モライス選手の願いもむなしく、優勝への望みはなくなっていた。同じくフランスを拠点とするヤマハプライベートチームのViltaïs Racing Igolはがトップに立ち、その後はリードを広げ、そのままレースは終了した。

一方、Wójcik Racing Teamは、今季最高成績となる2位を獲得。そして、ジル・スタフラー監督が引退する前の最後のEWCレースとなったWebike SRC Kawasaki Franceは3位を獲得した。Webike SRC Kawasaki Franceは、ボルドール前の2022年シーズン戦では一度も表彰台に上がれず、このレースでも一時はリードしていたが、エンジンの配線トラブルで後退したが、前線に見事復帰を果たした。

ERC Endurance-Ducatiのデビッド・チェカ選手とシャビ・フォレス選手とっては、チャズ・デイビス選手が背中を痛めてレース続行が不可能となり、レースの大半を2人で担っていたため、終盤の失速は非常に辛いものとなった。ガレージでは感情的になる場面もあったが、デビッド・チェカ選手はドイツチームの迅速な修復により、最後の1時間は冷静さを取り戻し、レースに復帰した。そして、ERC Endurance-Ducatiは、終了間際の2時間にも予定外のピットストップを行ったFIM世界耐久選手権タイトル獲得チーム、F.C.C. TSR Honda Franceに続く5位を獲得した。

MACO Racingは大健闘の6位、その次にはTeam Bolliger Switzerlandが入り、ニコ・トゥーニ選手がレース開始後に2コーナーでクラッシュしたものの、総合9位でフィニッシュした。Team LRP Polandはさらに2番手後方の11位でフィニッシュし、Motobox Kremer Racingと日本のニューカマーチームのTONE RT Syncedge 4413 BMWがトップカテゴリーでそれに続いた。

レースをリードし、EWCタイトル争いにも絡んでいたTATI Team Beringer Racingは、日曜日の朝にテクニカルトラブルによってストップ。フランスチームとライダーのレオン・ハスラム選手、グレゴリー・ルブラン選手、バスティアン・マッケルズ選手にとって非常に残念な結果となった。

RAC41-ChromeburnerとTeam 18 Sapeurs Pompiers CMS Motostoreがスーパーストックで活躍
スーパーストッククラスでは、RAC41-ChromeburnerがBMRT 3D Maxxess Neversを抑え、昨年の順位と逆転した形となり、優勝を飾った。Pitlane Enduranceが3位を獲得した。RAC41-Chromeburnerは、チームのレギュラーライダーであるクリス・リーシュ選手、ウェイン・テッセルズ選手に加え、最終戦にはフランス人ライダーのジョナサン・ハルト選手を起用した。

ジョナサン選手は、2021年のボルドール・スーパーストッククラスで優勝したBMRT 3D Maxxess Neversチームの一員であり、彼の加入は、後半にホンダマシンのマフラーが故障するという危機を乗り越える力を与えるなど、チームに大きな影響を与えたようだ。

No Limits Motor Team、Falcon Racing、Énergie Endurance、JMA Racing Action Bike、Team 33 Louit April Moto、ADSS 97, Team Aviobike, Team 202, TRT 27 Bazar 2 La Bécaneは完走したものの、Team LH Racing、National Motos Honda, 3ART Best of Bikeはリタイアという残念な結果に終わっている。

OG Motorsport by Sarazinは、2:50頃にアレックス・プランカサーニュ選手がクラッシュするまでクラスをリードしていた。この転倒でコースサイドのバリアが修復される間セーフティーカーが導入された。一方、Wójcik Racing Teamのスーパーストッククラスチームは、クラスポールポジションを獲得したが、終盤にマシントラブルにより表彰台を逃した。

Team 18 Sapeurs Pompiers CMS Motostoreは、マシントラブルによる修復に数時間を要してしまい、戦列を離れたが、FIM耐久ワールドカップのタイトルを獲得した。しかし、ルマンでのスーパーストッククラス優勝とスパ・フランコルシャンでの2位獲得により、フランス人ライダーのバティスト・ギテ選手とヒューゴ・クレア選手、オーストリア人ライダーのフィリップ・スタインマイヤー選手を擁するヤマハチームがタイトルを獲得するには十分な結果であった。

F.C.C. TSRホンダ・フランスがFIM EWCワールドチャンピオンに輝く
F.C.C. TSR Honda Franceにとって、ジョシュ・フック選手がフレディ・フォレイ選手とアラン・テッカー選手のパートナーとしてEWCの頂点に立った2017-18シーズンに続き、2度目のFIM世界耐久選手権タイトル獲得に成功した。日本チームのTSR Honda Franceは、ボルドール24時間レースで、チャンピオンを狙う5台のうちの1台として参戦したが、ライバル4台がトラブルに見舞われ、敗退する中、見事チャンピオンに輝いた。マイク・ディ・メリオ選手とジョシュ・フック選手は、ジノ・レイ選手に代わってアラン・テッカー選手と共に、ホンダマシン #5を駆り、今年最後のイベントに参戦した。ジノ選手は、先月開催された鈴鹿8耐でのクラッシュで頭部に重傷を負い、現在回復中だが、今年前半のルマン24時間レースとスパ24時間EWCレースで表彰台に立つなど、F.C.C. TSR Honda Franceのチャンピオン獲得に貢献した。ディフェンディングチャンピオンのYoshimura SERT Motulは2位、Viltaïs Racing Igolは3位となった。なお、最終結果は確定次第、発表となる。

F.C.C. TSR Honda Franceが祝杯をあげる一方で、予選でポールポジションを獲得したBMW Motorrad World Endurance Team、YART - Yamaha Official Team EWC、Yoshimura SERT MotulのEWCタイトル候補3チームを含むいくつかのチームがボルドールの苦渋を味わうことになった。Team Moto Ainも、予選では5番手と健闘していたが、テクニカルトラブルが発生し、完走できなかった。

ボルドールのハイライトとなったシャビ・フォレス選手のスリップストリームオーバーテイク
第100回記念大会のオープニングラップでは、グレッグ・ブラック選手、マイク・ディ・メリオ選手、シャビ・フォレス選手、マーカス・ライターバーガー選手がそれぞれトップに立つというFIM世界耐久選手権らしい展開となった。しかし、ミストラル・ストレートのスリップストリームで3人のライバルをオーバーテイクしたシャビ・フォレス選手が、最も華麗なパッシングを披露した。その模様はこちら.

Yoshimura SERT Motulの加藤監督、EWCボルドールのリタイヤを受け、その心境を語る
Yoshimura SERT Motuの加藤 陽平監督は、メカニカル的なマシントラブルによってボルドール2連覇とFIM世界耐久選手権2連覇を逃したことについて、その心境を語っている。序盤、グレッグ・ブラック選手がトップを快走していたが、34周目に渡辺 一樹選手にスイッチした直後、スズキ GSX-R1000R #1にトラブルが発生した。全文はこちら から.

EWCコミュニティがジノ・レイ選手へのサポートを表明
ジノ・レイ選手は、先月開催された鈴鹿8耐の練習走行中にクラッシュし、頭部に重傷を負い、ボルドール期間中、回復に努めているが、ジノ選手はボルドールの開催中、FIM世界耐久選手権ファミリーとして、ここに居なければならないメンバーの一人であった。このレース活動を通して、テレビ中継やEWCのソーシャルメディアチャンネルで、彼の家族が立ち上げた、彼にとって重大なリハビリのためのGoFundMeの呼びかけが宣伝された。また、今シーズン、ルマンとスパ・フランコルシャンで表彰台を獲得したF.C.C. TSR Honda Franceの人気イギリス人ライダー、ジノ・レイ選手を応援するため、全チームにKeep fightingのステッカーが配られ、選手はそれをマシンに張ってレースに参戦した。ジノ・レイ選手の支援活動に関する詳細はこちら

ライダー達のコメント
スティーブン・オデンダール選手(Viltaïs Racing Igol、ヤマハ YZF-R1、ボルドール24時間レース・フォーミュラEWC優勝チームライダー)。 「このレースは本当に素晴らしかったよ。フランスのチームの一員として、フランスの地で優勝できたことは、本当にうれしいよ。ヤニック・ルコット監督はこの日を夢見ていたんだ。僕とチームメイトはそれを実現させたからね。この勝利は本当に、本当にうれしいよ。もちろん、こんなことになるとは思っていなかった。ただ、やること全てを最大限に努力しなければならないって思っていたからね。それをやっただけなんだ。で、その結果、こんな大きなトロフィーを手にすることができたんだ。EWCでの初表彰台を勝利で飾ることができるなんて、最高だよね。

ジョシュ・フック選手(F.C.C. TSR Honda France, ホンダ CBR1000 RR-R, FIM世界耐久選手権優勝チームライダー)。 「過去の経験から、チェッカーフラッグが振られるまでレースが終わってはいけないんだ。昔、もっとひどい状況から這い上がって、レースに勝ったこともあるからね。他のライダーと同じで、僕たちも何度も難し状況があったんだ。でも、僕らは決してあきらめないで、その都度、少しでもいいから前進してきたんだよ。夜通し、いい走りができたし、3人ともコンスタントに速かったと思うよ。朝、明るくなったら全体の様子を見ようと思っていたんだけどね。優勝はまったく計算に入れていなかったよ。でも、僕らの目標をチャンピオンシップ重視するか、それともレースで優勝を重視するか、どちらかを選ばなければならない時が来たんだ。他のライダーがブローアップしていくのを目の当たりにし、少しナーバスになっていたこともあって、エンジンを守ることにしたんだ。できる限り慎重に走ることを心がけ、そしてチーム、ホンダ、そしてパートナーのためにチャンピオンシップを勝ち取ることだけを考えていたよ。」

ウェイン・テッセルズ選手(RAC41-Chromeburner、ホンダ CBR1000RR-R、ボルドール24時間レース・スーパーストッククラス優勝チームライダー)。 「本当にいいレースだった。個人的には、後半がかなりきつかったんだけど、マシンが本当によく走ってくれたし、仲間のジョナサン(・ハルド選手)とクリス(・リーシュ選手)が頑張ってくれたからね。とてもうれしかった。ルマンではチームメイトのグレゴリー(・ファストレ選手)が負傷して、ちょっとひどい状況だったんだけど、彼のためにも優勝できたし、ここで表彰台に上れたこともうれしいよ。」

フィリップ・スタインマイヤー選手(Team 18 Sapeurs Pompiers CMS Motostore、ヤマハ YZF-R1、FIM耐久ワールドカップ優勝チームライダー)。 「いやー、ジェットコースターみたいにアップダウンが激しくて、本当にきついレースだったよ。ワールドカップで優勝できたのは本当に素晴らしいよ。ポイントを獲得して何とかなったし、予選も良かったし、シーズン中、チームは完璧に機能していたんだ。全員がよく頑張ったと思うよ。」

結果とその他

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