21年ぶりにスパ・フランコルシャン・サーキットに戻ってきたFIM世界耐久選手権は、ベルギーの伝統あるその格式にふさわしいレースを展開し、絶え間ないアクションとドラマに満ちたものとなった。
BMW Motorrad World Endurance Teamは、昨年10月に開催された6時間耐久レースに続き、EWC24時間レースで初優勝を飾った。スパ24時間EWCレースは、サーキットの難易度の高さと最後の5時間の雨により、ライダーの技量が最大限に発揮されたレースとなった。
ジェレミー・ガルノニ選手(フランス)、イルヤ・ミハルチク選手(ウクライナ)、マーカス・ライターバーガー選手(ドイツ)の活躍はもちろんではあるが、元ライダーでもあるヴェルナー・デーメン監督率いるベルギーチームの団結力と、ダンロップを装着したBMW M1000RRの信頼性の高さも忘れてはならない。
ピレリタイヤを装着するカワサキマシンで参戦したTati Team Beringer Racingは、新しくこのチームに所属したロイック・アーベル選手と既存のフランス人ライダー、グレゴリー・ルブラン選手、アラン・テッカー選手とタッグを組んで、総合2位、プライベートチームのトップに輝いた。
F.C.C. TSR Honda Franceは、Yoshimura SERT Motulを抑えて、最後の表彰台を獲得した。両チームとも、この夜、大きなピンチを乗り越え、見事復活を遂げた。3時間を切った時点で、大量のオイルがコース上に撒かれ、その除去のために長い赤旗中断を余儀なくされた。そのため、ジノ・レイ選手は、レース中断前、ピットストップにより地元のヒーロー、ザビエル・シメオン選手に奪われた3位のポジションを取り戻すために、わずかな周回数しか与えられないことになった。難しい路面コンディションにもかかわらず、ジノ選手とザビエル選手は何度もポジションが入れ替わる激しいバトルを繰り広げたが、ジノ選手がこの戦いに競り勝った。この結果、2021年FIM世界耐久選手権の覇者で4月のルマン24時間レースの勝者のスズキマシンを駆るYoshimura SERT Motulは、8月の鈴鹿8耐に向けてタイトル争いに15ポイントの差をつけていることになった。
Yoshimura SERT Motulは、FIM世界耐久選手権で10時間にわたる壮絶な戦いの中、トップに立っていたが、シルバン・ギュントーリ選手のスティント時、クラッチとギアボックスにトラブルを抱え、ブリヂストンタイヤを装着するスズキ GSX-R1000Rは、その交換のためにピットに入ることを余儀なくされた。この作業には25分以上かかり、ベルギー人ライダー、ザビエル・シメオン選手の優勝への望みは絶たれた。
F.C.C. TSR Honda Franceは、同じ日本チームを襲った不幸に乗じて首位に立ったが、15時間経過後、ジノ・レイ選手のスティント時、CBR1000RR Fireblade SPのチェーンが切れ、今度はF.C.C. TSR Honda Franceが絶望的な状況を迎えた。その結果、イギリス人ライダージノ選手は、マシンをピットまで押して戻るしかなかった。この遅れに加え、修理に費やした15分で、F.C.C. TSR Honda Franceは10位まで順位を落としてしまった。
日曜日の朝、雨脚がさらに強まる中、スズキのイギリス系フランス人ライダー、グレッグ・ブラック選手とホンダのフランス人ライダー、マイク・ディ・メリオ選手が、それぞれ相次いでクラッシュし、両チームとも最悪の事態に陥った。
グレッグ選手はマシンを引きずりながらピットに戻り、応急処置を施したが、マイク選手はマシンへのダメージを最小限にとどめ、そのまま走り続けた。
ポールポジションからスタートしたYART-Yamaha Official Team EWCは、3時間後にスピードセンサーの交換のため予定外のピットストップを強いられた。4分以上の遅れはあったものの、ライダーのニッコロ・カネパ選手(イタリア)、マービン・フリッツ選手(ドイツ)、ポールシッターを獲得したマービン・フリッツ選手(チェコ)の奮闘により、オーストリアチームは再び優勝争いに加わることになった。その後、マービン選手とBMWのイルヤ選手がトップ争いを繰り広げ、18時間経過時点でBMWがトップに立っていた。しかし、ニッコロ選手のスティント時、YZF-R1がエンジントラブルに見舞われ、その状況はそう長くは続かなかった。
その他、Wójcik Racing Team EWC 77がトップ5に入り、Viltaïs Racing Igolとオーバーヒートの問題を乗り越えたTeam Moto Ainがこれに続いた。Team LH Racingは、終盤で順位が入れ替わったTeam Bolliger SwitzerlandとTeam LRP Polandのの前でゴールし、ダンロップ・スーパーストック・トロフィーとFIMエンデュランス・ワールドカップの栄誉と総合8位を手に入れた。
Team 33 Louit April Motoは、スーパーストック部門で首位を走っていたが、ケビン・カリア選手がウエットコンディションで転倒し、その影響でカワサキエンジンがブローしてしまい、栄光を逃すこととなった。Team 18 Sapeurs Pompiers CMS Motobaseは、当時2位を走っていた。しかし、バティスト・ギテ選手が多くのライダーが転倒したレ・コンブでクラッシュし、トラブルに見舞われた。しかし、このフランスチームは、トラクションの問題に悩まされていたOG Motorsport by Sarazinの前で2位をキープした。
National Motosは首位争いに加わっていたが、石でホンダマシンのラジエーターを損傷し、エンジンがオーバーヒートしたためリタイアとなった。No Limits Motor Teamは、「技術的な問題」で予定外のピットストップを2回行い、8時間経過前にステファン・ヒル選手が転倒したことでさらにチャンスを逃した。
スーパーストックのポールポジションを獲得したWójcik Racing Team STK 777 Yamahaのダニー・ウェッブ選手は、最初のスティントで早くも転倒を喫し、マレク・シュコペック選手のアクシデントもあって出遅れることとなった。BMRT 3D Maxxess Neversは、相次ぐトラブルのため、優勝戦線から脱落した。今朝方、3ART Best of Bikeのクラッシュにより2度目のセーフティカーが導入された。5時間経過前にも、JMA Racing Action Bikeの事故により1度目のセーフティカーが導入されている。JMAチームのスズキマシンは一時、炎に包まれたが、大規模な修理によってレースは続行されている。Falcon Racingは、エンジンブローにより好成績を残すことができなかった。しかし、Pitlane Endurance、Team Aviobike、RAC 41 ChromeBurner、Énergie Enduranceは20位以内に入賞した。TRT 27 / Bazar 2 La Bécane、Team 202、ADSS 97が完走し、フォーミュラEWCのMotobox Kremer Racingも完走した。
ランディ・ド・プニエ選手がスタートから2時間半後にクラッシュし、Webike SRC Kawasaki Franceにとって心痛の出来事となった。フロリアン・マリノ選手は、スタートからラ・ソースまで先頭を走るなど、オープニングアワーでは、上位5台によるトップ争いに加わっていたが、彼のスティント終了間際にシケインで他の選手と接触、転倒し、好成績への望みはここで遠ざかっていった。ZX-10RRの修復に3分以上を費やした後、エティエンヌ・マッソン選手のスティントが始まったが、エティエンヌ選手もブレーキトラブルでシケインで転倒。そのため、6分の遅れが出ていたが、ランディ選手の転倒により、この悲惨な午後に拍車をかけた。一方、フロリアン選手は転倒後、病院に運ばれ、メディカルチェックを受けた。
ERC Endurance-Ducatiは、燃料ポンプのトラブルにより、レース序盤に予定外のピットストップを余儀なくされ、早くも出鼻をくじかれた。スタートで出遅れたシャビ・フォレス選手に続いての出来事だった。しかし、夜になって再び問題が発生したため、チームはリタイアを余儀なくされた。
スリル満点のスタート、EWCがスパで華麗な復活
リエージュ24時間の精神を復活させたスパ24時間EWCレースは、満員のメインスタンドと照りつける太陽のもと、華麗なルマン式スタートで幕を開けた。そして、スタートから1時間、何度もトップが入れ替わり、素晴らしいアクションが繰り広げられた。トップ5のグレッグ・ブラック選手、マービン・フリッツ選手、ジョシュ・フック選手、フロリアン・マリノ選手、マーカス・ライターバーガー選手が何度もオーバーテイクを繰り返し、次々とトップを奪い、ファンや世界中のライブ中継を見守るファンを魅了した。
ライダーのコメント
マーカス・ライターバーガー選手、フォーミュラEWCクラス(BMW Motorrad World Endurance Team):「特に終盤の天候に対応するのは大変だったよ。でも、チームメイトと一緒に24時間レースで初優勝できたことは、とても誇らしくて、幸せだよ。この勝利はチームのものなんだ。だって、彼らはこの数年間、懸命に働いてきたから、このレースで勝つのが至極当然なんだよ。このレースで僕たちは最速ではなかったかもしれないけど、ミスしなかったし、技術的なこともうまくいっていたから、とても満足しているよ。昨年のモストでの初優勝は格別だったよ。特に最後の数周がね。雨で難しいレースだったけど、結果的には今日の方が楽だったかな。でも2レースしか残っていないからね。これからが勝負なんだよ。チャンピオンを取りに行くよ。頑張るよ。」
ルーカス・トラウトマン選手、スーパーストッククラス(Team LH Racing):
「信じられないよ。僕はスペアライダーの予定だったし、何年も休んでいたから、感覚を取り戻すために、世界耐久選手権で何キロか走る必要があったからね。
レースに出る予定ではなかったんだけど、成果が出せて良かった。マシンは問題なく、誰も転倒せず、ミスもなく、最高のレースができた。ペースは決して良くはなかったが、1位でゴールするためには、まずは完走しなければならないからね。
獲得ボーナスポイント
12時間から24時間のEWCレースでは、フォーミュラEWCクラスとダンロップ・スーパーストック・トロフィークラスに8時間と16時間後にボーナスポイントが与えられる。各カテゴリー上位10チームに与えられるポイントは、上位から10-9-8-7-6-5-4-3-2-1ポイントである。
次戦:鈴鹿8時間耐久レース、日本、8月5-7日
鈴鹿8耐は、世界的な健康危機のために2019年以来開催されていなかったが、2022年FIM EWCカレンダーに復帰することになった。ホンダ傘下のモビリティランドが運営する鈴鹿は、8の字型のユニークなレイアウトが特徴で、コーナーの種類が多いため、ライダーにとってかなりのチャレンジとなる。1962年に日本の自動車メーカーのテストコースとして開設された鈴鹿サーキットは、1978年に第1回鈴鹿8時間レースが開催された後、9年後にF1日本グランプリが開催された。
鈴鹿8耐は、EWCのスケジュールの中でも人気のあるレースで、それ以来、国際的なレースイベントでも重要な役割を果たしており、長年にわたってトップの二輪グランプリレーサーが参加し、勝利を収めている。
情報提供元 [ FIM EWC ]