2021年FIM世界耐久選手権の最終戦、モスト6時間レースにおいて、ヤニック・ルコット監督率いるチーム、VRD Igol Experiencesは、レースが終了する最後の最後まで必死に戦い続けた。完走扱いまで至らなかったものの、その彼らの熱い決意がアンソニー・デルハールEWCスピリット・トロフィーをもたらした。
VRD Igol Experiencesが2021年FIM EWC最終戦が行われたモストに乗り込んだ時点では、Yoshimura SERT Motulとタイトルを争うことのできる唯一のチームだった。
VRD Igol Experiencesは、今シーズンの他のレースと同様に、ファクトリーチーム陣のすぐ後ろの7位に着けるというレース戦略に従い、その結果、暫定チームランキングでは総合2位につけていた。しかし、チェコでのレース開始から4時間後、今シーズン初めてのマシントラブルがヤマハ#333に襲い掛かり、このエンジントラブルにより、準優勝獲得の可能性も消滅し、フロリアン・アルト選手、フロリアン・マリノ選手、ニコ・テロール選手の3人の努力が水の泡と化してしまった。
しかし、ヤニック・ルコット監督のチームは、最後まで諦めることはなかった。エンジンが再始動しない中、フロリアン・アルト選手は、17:00(中央ヨーロッパ夏時間)のゴール後に完走扱いとなり、FIM EWC選手権の重要なポイントを獲得できるよう、1周にわたってマシンを押し続けたのだ。
ところが、ヤニック・ルコット監督のチームは、レースを最後まで諦めることはなかった。エンジンが再始動しない中、なんとフロリアン・アルト選手は、ゴール時間の17:00(中央ヨーロッパ夏時間)にチームが完走扱いとなり、重要なポイントを獲得できるよう、1周にわたってマシンを押し続けたのだ。
フロリアン・アルト選手は、確かにゴールラインを通過したが、VRD Igol Experiencesは、完走扱いに至るまでの十分な周回数をこなしていなかった。ルール上、各チームは、優勝チームの75%の周回数を超えなければ完走扱いとはならない。モストで優勝したBMW Motorrad World Endurance Teamの総ラップ数は、215周。VRD Igol Experiencesが完走扱いとなるまでには、さらに14周を必要としていた。
しかし、何が何でもモスト6時間レースを完走したいという彼らの決意が、VRD Igol Experiencesにアンソニー・デルハールEWCスピリット・トロフィーをもたらしたのであった。
VRD Igol Experiencesは、世界ランキングでの躍進も評価されている。ヤニック・ルコット監督のチームは、FIM世界耐久選手権への参戦3シーズン目にして、総合チームランキング4位を獲得した。
アンソニー・デルハール・EWCスピリット・トロフィーは、2017年3月に他界したSuzuki Endurance Racing Teamのライダー、アンソニー・デルハール選手のスポーツ精神を偲び、FIM EWCレース開催毎に審査員から授与される。
情報提供元 [ FIM EWC ]