2021年の新スズキファクトリーチームであるYOSHIMURA SERT MOTULは、初レースとなったルマン24時間レースを見事に優勝で飾った。この勝利を引き寄せたメンバーが、今回の勝利と要因を振り返る。
Suzuki Endurance Racing Teamは、2015年のルマン24時間レースでの優勝以来、ホームグラウンドであるフランス・ルマンでの勝利から遠ざかっていた。2021年、ルマン24時間レースで優勝したのは、正確にはSERTではなく、新しい日仏連携チーム、Yoshimura SERT Motulだ。
彼らの成功の背景には、鈴鹿8時間耐久レースで4度の優勝経験を持つYoshimura Suzukiの技術力と、FIM世界耐久選手権で18回のタイトルを獲得しているSuzuki Endurance Racing Teamの経験がある。
Yoshimura SERT Motulのダミアン・ソルニエ監督は、この優勝をこう振り返る。「Yoshimuraは、GSX-R1000Rのセットアップに尽力してくれたんだ。
燃料チャージからスイングアームの細部まで、すべてを見直してくれた。われわれも新しいフロントフォークへの変更やスイッチ類などライダーが乗りやすくするためのちょっとした工夫まで行ったよ。この新しいパートナーシップを誇りに思っているんだ。われわれには勝算があることはわかっていたけど、レース中に何もトラブルが起こらないということまでは、想像していなかったよ。これほどまでに完璧なレースは、経験したことないよ。つまり、ロスタイムがなかったから、危険を冒してまで、ペースアップする必要がなかったんだ。」
「今回の優勝は、YoshimuraとSERTだけでなく、スズキにとっても大変有意義な勝利になったよね。」と、Yoshimura・テクニカルディレクターの加藤陽平氏は語る。
「大きなプレッシャーを感じていたけど、今回のルマン24時間レースでの成功は、今までわれわれが行ってきたことへのご褒美だと思っているんだ。今回の勝利はとても重要だよ。SERTは、われわれにゼッケンナンバー#1を用意してくれたんだ。だから、熾烈でやりがいのあるこの選手権で、2021年もチャンピオンの座を守ることが目標なんだ。」
ライダーにとっても初の快挙
グレッグ・ブラック選手、ザビエル・シメオン選手、シルバン・ギュントーリ選手の3人は、ルマン24時間レースでの優勝経験がなく、そのため、今回の勝利は大変有意義なものとなった。
「この勝利は、私たち全員にとってとても意味のあるものになったね。」とシルバン選手が語る。
「SERTとYoshimuraのパートナーシップにとってもだけど、チームメンバーとしての僕にとっても、今回、初めてのレースだった。だけど、最初から最高のパフォーマンスを見せることがとても重要だったんだ。今回のレースで、僕たちには十分に力があることがわかったから、シーズンの残りのレースも楽しみながら勝ちたいと思っているよ。たくさんの経験を持つSERTと、過去3年間の鈴鹿8耐を通してこのマシンを開発してきたYoshimura、そして、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたブリヂストンタイヤなど、複数の要因が今回の勝利へ結びついたんだと思うよ。
そして、チームメイトのグレッグとザビエル。彼らは自身の経験を生かしてレースに臨んでくれた。僕にとっては初めての24時間レースだったから、彼らのアドバイスがとても役に立ったんだ。8時間レースの経験は何度もあるけど、24時間レースは、本当に違ったんだ。タフなレースになるだろうとは想像はしていたけど、それ以上だったよ。天候には恵まれたね。グレッグとザビエルは、寒かったり、雨が降ったりすると最悪って言っていたんだ。肉体的にも精神的にも疲れるからね。眠れなかったよ。いくら寝ようとしても、眠れなかったんだ。これは本当にきつかった。だけど、耐久レースでは、一晩中、立ちっぱなしで仕事をしているチームメイトがいるからね。彼らと気持ちを分かち合うこともとても大切なんだ。このチームは、真のチームスピリットを持っていて、それがとても気に入っているよ。耐久レースは、簡単ではないし、絶対に気を抜けないからね。」
ザビエル選手も、チームの結束力が勝利の要因だと考えている。「SERTとYoshimuraの提携やブリヂストンタイヤへの変更とかでチームがさらに注目されていただけに、重要な勝利となったね。だけど、最終的にはチームの組織力と素晴らしいチームの雰囲気のおかげで、すべてがうまくいった。シルバンの加入についても、彼の速さは、チームにとって確実に大きなアドバンテージとなったね。
彼は、攻撃的なライダーだけど、自分の限界を知っているんだ。最近の耐久レースでは、スピードと安定性が重視されているけど、シルバンがチームメイトになったことで、より速く走ることができるようになったのは確かだからね」。
「シルバンは、経験豊富なライダーで、そこからくる意見を僕たちと共有してくれるんだ。」とグレッグ選手は語る。
「彼のコメントや仕事ぶりを聞いていると、とても興味深いんだ。僕たちはみんな、レースをできることに喜びを感じている。だから、チームの中で一番になろうとするのではなくて、みんなと一緒にレースに勝ちたいと思っているんだ。2019-2020シーズンのボルドールでの優勝したときと同じで、開幕戦の24時間レースは、とても重要なんだ。チャンピオンシップポイントをたくさん獲得できるし、ポイントを得られれば、他のチームにプレッシャーも与えることができるしね。僕たちはここでしっかり結果を出して、たくさんのポイントを獲得したかったからね。これで僕たちは、このチャンピオンシップで優位に立つことができた。でも、これからも攻め続けなければならないけどね。」
7月17日(土)にポルトガルで開催されるエストリル12時間レースで、Yoshimura SERT Motulは、ライバルに16ポイントの差をつけ、スタートを切る。
情報提供元 [ FIM EWC ]