ジュリアン・ダ・コスタ氏は、2020年8月にルマンで最後の耐久レースを走った。2021年現在、彼は、ダンロップのタイヤエンジニアとして幸せに働いている。

ほんの数カ月前まで、ジュリアン氏は、ファクトリーマシンのシートに座っていた。2020年のルマン24時間レースにDucati ERC Enduranceから参戦し、それが最後のレースとなった。39歳のフランス人ライダーは、現在、レーシングスーツから作業着に着替え、プローブキットを携えて、タイヤと地面の温度をチェックしている。

ジュリアン氏は、突然だが、慎重に準備されたこの変化の理由を次のように語っている。
「よく考えた上での決断だったから、今はとても幸せなんだ。ここ数年、様々な出来事があって、いろいろ考えさせられた。トップレベルのスポーツでは、自分がベストであると自信を持てなくなったとき、引退へのカウントダウンが始まるんだよ。僕は、ダンロップで、ライダーとして5年間、トラックエンジニアとして1年間、トータルで6年間働いて、再トレーニングに時間を費やしてきたんだ。結局、コロナのおかげで、ライダーとしての人生から引退することができた。そんな過渡期を経て、この新しい仕事を始めるための時間を持つことができたんだ。」

同じ言葉で会話ができる
ダンロップのエンジニアの中でも、ジュリアン氏は、ライダーとして活躍していたため、独自の立場を築いている。2010年から2012年にかけて、ルマン24時間レースで3勝、ボルドールで1勝を挙げた。2013年には、FIM EWC世界選手権のタイトルも獲得した。そのため、彼は、ライダー達の声を理解することに優れている。

「ライダーの経験を持っているスタッフが他のライダーの意見を聞くことは、一般のスタッフよりも理解するのに適しているんだ。それに、僕の実績と経験から、ライダー達からはある程度の信用と信頼は得ていると思うし、そうであってほしいね。新しいタイヤをテストしているとき、少しでも迷っているようなら、彼らの気持ちを汲み取ってアドバイスをするようにしているんだ。僕は、その意見を理解して、いくつかの解決策をあげられるからね。ちょっと前まで、ライダー側の立場にいたわけだし、今でもその気持ちはよくわかるんだ。僕は、メカニカルなことも好きだし、テクニカルなことを理解し、データなどを分析したりもしているんだ。ライダー達に自信を持って、単なる憶測ではなく、確実な情報を提供することができるこの仕事を楽しんでいるよ。」

ジュリアン氏は、ライダーにとても評判が良い。
「半年前まで、彼は僕らと同じようにマシンに乗っていたからね。」と、Webike SRC Kawasaki France Trickstarのライダー、ジェレミー・ガルノニ選手は語る。
「いい考えだと思うよ。僕のライダーとしての経験の中で、タイヤエンジニアとこのような会話をするのは、初めてかもしれないよ。他のメーカーも見習うべきだね。元ライダーをタイヤエンジニアとして起用するということは、ライダーとタイヤエンジニアが同じ次元で会話できるということだからね。タイヤエンジニアが理論上のことを語っても、実際にタイヤをテストしているわけではないから、素直に信用できないことがたくさんあったんだ。僕たちがテストしたすべてのタイヤについて、ジュリアンは、とても理解してくれている。彼がそばにいることは、僕たちにとっても大きなメリットでもあるんだ。」

チームメイトのエルワン・ニゴン選手、デビッド・チェカ選手も同じ意見をもっていたが、デビッド選手は、さらにこう付け加えた。
「彼は、ライバルの一人だったから、何か違和感があるよね。最近、サーキットでもそんな人が少なくなってきているからね。僕も年をとったように感じるよね。」

情報提供元 [ FIM EWC ]

関連キーワード
おすすめの記事