市販車の耐久性を確かめるために生まれたのが"耐久レース"

EWCは、Endurance World Championshipの略称でFIM(国際モーターサイクリズム連盟)が主催するFIM世界耐久選手権シリーズのことを指します。オートバイで競うロードレースの耐久レースで、年間5戦のシリーズ戦となっています。

世界耐久選手権として始まったのは1980年のこと。その歴史はモータースポーツとしては非常に古く、有名なレースとしては、1922年にフランスでボルドール24時間レースが開催されています。
特に当時はモータリゼーションの波がヨーロッパで生まれており、様々な「町工場」とも言える場所でバイクが生み出されていきました。
マシンの耐久性を図る上で、テストの意味合いも兼ねた「レース」がその発祥と言えるのです。

ル・マン24時間レースは、4輪開催の歴史が長く、2輪は1978年からスタート。この年を同じくして、日本では鈴鹿8耐が初開催されています。2016年には、EWCは年をまたいだスケジュールでの開催となり、鈴鹿8耐がシリーズ最終戦となっています。

EWCと鈴鹿8耐

「日本で一番メジャーなオートバイのロードレース」と言っても過言ではないのが、鈴鹿8時間耐久ロードレース、通称"鈴鹿8耐(スズカハチタイ)"。1978年に初開催され、1980年よりEWCの1戦として組み込まれました。

1980年代から1990年代初頭にかけてのオートバイブームと呼ばれる頃は、決勝だけでなんと「16万人」もの観客動員を記録。来客動員数が多く、鈴鹿サーキット周辺が大渋滞するほど。自分のバイクで憧れの地に向かう若者も多く、当時は熱狂の渦とも言えるほどの人気を誇っていました。現在でもレースウイークの延べ人数では10万人を超えるモータースポーツファンを集める一大イベントとなっています。

1981年にモリワキによってその才能を見出され、鈴鹿8耐でポールポジションを獲得し世界へのキップをつかんだワイン・ガードナー。
ケビン・シュワンツ、ウェイン・レイニー、ケビン・マギーと言ったライダーたちも鈴鹿8耐での活躍をステップにして世界へ行きました。

そのレースの人気と共に、日本の4メーカーは、威信を賭けて耐久マシンを製作、ワークスチームを2、3チーム投入し、世界グランプリ500cc(現:MotoGP)やスーパーバイク世界選手権で活躍しているライダーを呼び寄せ鈴鹿8耐での優勝を目指しました。

▲2018-2019年シーズンの鈴鹿8耐では、「ヤマハTECH21チーム」の復刻カラーで戦ったヤマハファクトリーチーム

1985年には、ヤマハが初めて鈴鹿8耐にワークスチームを投入。3度世界タイトルを獲得し“KING”の称号を欲しいままにしていたケニー・ロバーツと国内で活躍していた平忠彦がペアを組み、化粧品メーカーのスポンサードを受け華々しく登場し話題を呼びました。また、ヤマハワークスが2018-2019年シーズンの鈴鹿8耐に復刻カラーで出場したのは記憶に新しいです。

EWCでは数々の日本人ライダーが活躍

日本人ライダーで初めてEWCで勝ったライダーと言うと、1982年に台風が直撃し、6時間に短縮された鈴鹿8耐で優勝した、飯嶋茂男/萩原紳治組が、その歴史に名を刻んでいます。
また、1985年にはガードナーとペアを組んだ徳野雅樹、1990年にエディー・ローソンと組んだ平忠彦、1996年にコーリン・エドワーズと組んだ芳賀紀行が日本人ライダーとして優勝を果たしています。

日本人ペアとなると1997年に伊藤真一/宇川徹組が優勝し、1998年に2連覇を果たしており、宇川は、その後3回優勝し、通算5勝で鈴鹿8耐最多優勝記録保持者となっています。
その後も岡田忠之、加藤大治郎、秋吉耕佑、清成龍一、中須賀克行など多くの日本人ライダーが表彰台の頂点に立っているのです。

▲2018-2019年シーズン鈴鹿8耐で激しいバトルを繰り広げる中須賀選手(前)と高橋選手(後)

海外の耐久レースでは、1989年のル・マン24時間で多田喜代一/塚本昭一/宗和孝宏組が3位に、1994年には、永井康友がクリスチャン・サロン、ドミニク・サロンと組み優勝を果たしています。

2000年代に入ると北川圭一が2004年にル・マン24時間、ボルドール24時間で優勝すると、2005年からEWCにフル参戦し、見事2005年、2006年とシリーズチャンピオンに輝きました。これは日本人ライダー初の快挙でした。
それから約6年後の2012年にも、加賀山就臣がシリーズチャンピオンを獲得しています。

▲2018-2019年シーズンの鈴鹿8耐でヨシムラ・スズキのマシンを駆る加賀山選手

各メーカーの技術力が試される"耐久仕様マシン"

日本のカワサキ、スズキ、ヤマハ、ホンダ、ドイツのBMW、イタリアのドゥカティ、アプリリアなどが市販しているスーパースポーツタイプのバイクをベースに耐久レース仕様に改造したマシンで争われています。ほとんどのマシンが4ストローク1000cc4気筒エンジンを搭載しており、そのパワーは、200馬力前後を発揮。

過酷な耐久レースを戦い抜くための耐久性が求められ、各メーカーの技術力が、ここ(耐久レース)で証明されることになります。

▲8時間や24時間走り続ける。当然夜間も走行するため、市販車と同じくヘッドライトオンで走ります。

レギュレーションでは「EWCクラス」、「SSTクラス」と2クラスあり、SSTの方が改造範囲が狭く、より市販状態に近い仕様となっています。
外観としては世界耐久独特のものとして、スプリントレースでは見られない「ヘッドライト」などの灯火類もあり、常時点灯が義務づけられています。

近年では発光式のゼッケンナンバー表示も試されるなど、夜間も走行する耐久レースならではのカスタマイズも行われています。

開催サーキットなど

2019-2020 シーズンは、2019年9月21日-22日にフランス・ボルドール24時間で開幕し、第2戦が12月14日にマレーシア・セパン8時間、第3戦が2020年4月18日-19日フランス・ル・マン24時間、第4戦が6月6日にドイツ・オッシャーズレーベン8時間、そして7月19日に日本・鈴鹿8時間が最終戦となる、全5戦として開催予定となっています。

MotoGPでおなじみのマレーシア・セパンサーキットは、初開催となり、鈴鹿8耐に向けたトライアウトの1戦を兼ねており、多くの日本チームの参戦も予想されます。

また2021-2022 シーズンには、ベルギー・スパ・フランコルシャン24時間が新たに加わることが決定しています。

全5戦の開催サーキットの特徴を解説! [ EWC世界耐久選手権 2019-2020シーズンが開幕!開催サーキットの特徴を解説! ]

耐久レースとMotoGPの違い

MotoGPや全日本ロードレースなどの「スプリントレース」との違いは、まずスタート方式です。
スプリントレースは、1列3台ずつ並ぶダミーグリッドからスタートするのに対し、耐久レースは1列にマシンを並べ、スタートの合図があるとコースの反対側からライダーが駆け寄りマシンにまたがり、エンジンをかけてスタートする。この方式は"ル・マン式スタート"と呼ばれています。

▲伝統の"ル・マン式スタート"で、ライダーが駆け寄り、エンジンをかけてマシンを走らせます。

▲MotoGPなどのスプリントレースは、バイクに跨った状態から、整列してスタートする方式です。

レース時間が長いためガソリンの給油が必須になっており、それに付随してタイヤ交換も行っています。なお、タイヤ交換が素早くできるようにクイックリリース機構(EWCクラスのみ。SSTクラスは使用不可)が装着されています。

ガソリンタンク容量も24リットルと決められており、給油口は、最大2口となっています。近い将来は1口に統一される予定ですが、今のところ2口が主流となっています。
ガソリンの給油は特殊な器具によって24リットルのガソリンを3秒足らずで行えるようになっています。ガソリンスタンドで給油することを考えるとその速さには驚くばかりです。
当然それを飲み込むガソリンタンクにも工夫がされており、スタンダードな市販車のタンク構造とは大きく異なっているのです。

一秒でも早くピット作業を終わらせ、ライダーを送り出すために様々な部分で工夫されています。

▲メカニックが持っている銀色の筒ようなものが、ガソリンを一気に補給するものとなっています。

スプリントレースは、ライダーは一人のみですが、耐久レースは2人から3人が交代して1台のバイクに乗り8時間、または24時間先のゴールを目指します。ライダー3人の走り方やマシンセットの好み、ハンドルやステップなどのポジションの相性も重要なファクターとなり、そのライダーを支えるチームクルーたちの力、いわゆる総合的なチーム力のぶつかり合いも見どころの一つとなってきます。

レースが長ければ、天候が変わることも多くあります。「タイヤはいつ交換するのか」「いつ給油するべきなのか」「ライバルチームとのギャップ(タイム差)はどれくらいなのか」「3人のライダーのスピード差はどれくらいなのか」…

アクシデントがあればセーフティーカーが入る場面もあります。様々な場面でピットがどう判断するか?そのチームとしての、監督としての決断力も問われるところです。
スプリントレースよりも様々な要素が絡み合うのが耐久レース。その深い魅力があるEWCに、ぜひ注目してみてください!

EWCのライブ中継はHuluや日テレで![ 世界耐久選手権(EWC)の楽しみ方「ライブ中継と鈴鹿8耐の見どころ」 ]

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