取材レポート

投稿者:

kimi

2015年05月22日

「世界のArai」の真髄に迫る!アライヘルメット講習会レポート


先日、埼玉県大宮駅から程近くのアライヘルメット本社にて「アライヘルメット講習会」を受講してきました。
実は業界内でも話題のとてもディープな講習会。今回はその内容を徹底的にレポートします!

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アライ本社正面。右手のウィンドウには世界で戦ってきたヘルメットが展示される。

アライヘルメットの理念とは

まずはアライヘルメット代表取締役、新井理夫社長の挨拶から講習会はスタート。
簡単な沿革と企業理念の説明をしていただいた。
新井社長、お歳は今年で77歳だが驚いたことに現役のライダー。自社製品のヘビーユーザーでもある。安全性、快適性をテーマに「他メーカーより、少しでも、ほんのわずかでも良いものを作る」ということを理念にヘルメットの製造を行っているとのことで、後々お伝えするが、その理念がデザイン、構造にも大いに影響を及ぼしていた。

素材と構造を追求する「成型部門」

この講習会の一番の特徴は、椅子に座って話を聞くだけではなく、実際の工場の見学ができることなのである。
説明員の方に案内され工場に入り、まずは成型部門へ。成型部門では、ヘルメットの外郭、いわゆる帽体を製造している。帽体はヘルメットの重量の約50%を占めており、衝撃を吸収、分散させるためには重要な部分。
アライヘルメットでは生産するほとんどの製品に「cLc構造」及びそれ以上の構造を採用している。cLc構造とは簡単に言えばサンドイッチ構造。特性の違う材料を積層させ樹脂で固め、強度を出している。その構造で重要なのは言わずもがな素材なのであるが、アライヘルメットはその素材にこだわり、自社開発も含めてさまざまな素材を採用している。
そこで実際に採用されている素材の強度を体験するために、講師の方から素材の強度試験で使用する「試験片」を手渡された。手渡された試験片は6種類。普通のFRPカーボンケブラー、スーパーファイバーを利用したFRP2種、自社開発したカーボンである。
それぞれ折らせていただいたが、私たちが一般的によくオートバイのフェンダーなどで目にする普通のFRPと比べ、アライヘルメットが採用している「スーパーファイバー」を使用したFRPは非常にしなり、硬く、折るのが大変だった。このスーパーファイバー、価格は通常のガラス繊維の6倍、強度は3倍とのことで、さらに強度を増すためにベルト状に加工された「スーパーファイバーベルト」といわれる素材も折らせていただいたが、これは一般的な成人男性程度の腕力を持つ私でも非常に折るのに難儀した。たかがFRP、されどFRP、素材の研究でここまで変わるとは非常に驚く。このスーパーファイバーベルトは強度の出しにくいシールド周辺の部分に使用されるとのことだ。これらの素材にさらに防弾チョッキなどにも使用される「ダイニーマ」と、現在最強クラスの繊維といわれる「ザイロン」も使われている。この2種類は帽体の全体に使われるわけではなく、その繊維が持つ対貫通性などを利用して頭頂部などに使用される。またチンガード部分にはさらに強度を出すために限界まで太くしたスーパーファイバー繊維を封入させるなど、さまざまな工夫が見られた。
帽体のカットは産業用ロボットによるレーザーカットを用いており、物理的に刃を当てるわけではないレーザーカットは切断面にストレスをかけずに切断できる。またそれらの帽体を製造するために使用される金型はなんと自社製であり、金型を内製しているヘルメットメーカーは国内にアライヘルメットだけ。メリットとしては設計、テスト段階においてすぐに設計に反映、微調整ができるということだ。1つのヘルメットの種類に対して、サイズに合わせ帽体を3種類用意するこだわりもこの設備によって実現されている。現在では2台の金型製作機を平行稼動させ、1日で1つの金型を作れるとのことだ。
帽体は完成した後、全数が複数回にわたって厚み、また仕上がりを検査される。この検査はとても厳しく、1gでも規定の重量から外れると不良品としてはねられ、また肉厚が薄かった部分にはスーパーファイバーを用い補修を行っていた。
驚くべきことに、ここまでの工程、ほとんどが自動化されておらず、熟練した職人の手によって行われているということだ。アライヘルメットでは製造の複雑な工程は自動化されずに、常に職人の手によって作られていたのだ。

安全性へこだわり

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試験機械。ヘルメットを衝突させる鉄のアンビルは平面、半球、エッジ型の3種類。写真は半球型。

次に、本社に併設される試験場にて、ヘルメットの性能試験の見学である。
見せていただいたものは対衝撃試験対貫通試験あご紐の強度試験シールド貫通試験。アライヘルメットではJIS規格及び製品によってはスネル規格はもちろんのこと、独自の安全基準テストも行っており、それらはどれも定められた規格より厳しいものであった。実際に見せていただいた試験では世界でもっとも厳しいといわれるFIA規定(F1など)の試験を実際に同社ヘルメットを使用して試験していただいた。結果は合格レベル。またスネル規格にも規定がない、ひとつのヘルメットに対して多部位に衝撃を与える試験を行っており、実際の事故をも想定した試験を行っている。だが、講師の方は「試験は同じ条件で数字を出すためのものであり、実際の事故の再現ではない。」と解説する。厳しいと言われるスネル試験でも、その衝突速度をkm/hに直すと27-28km/h程度であり、実際の事故では80km/h、またはそれ以上で衝突する可能性がいくらでもあるということだ。その衝撃を吸収できるヘルメットは現実的に作れない。そこで、最近良く目にするアライヘルメットの「R75 SHAPE」という設計原理がある。滑ってかわすためのR75シェイプ、そして滑らすための帽体強度。試験結果だけに満足することなくデザインにも安全性へのこだわりが強く見られる。

左 / 写真では分かり辛いが試験機頂上赤丸で囲まれているところにテストされるヘルメットがある。高さは約4m強。
右 / 貫通試験結果。強度的に弱い水抜き穴にも直接貫通試験は行われる。

衝撃を吸収しての脳へのダメージを軽減させるためには、帽体の強度、またデザインも重要ではあるが、クッションの役割を果たすインナーライナーも重要なファクターである。
アライヘルメットでは、帽体の強度にあわせて国内で唯一「多段発泡ライナー」というものを使用している。多段発泡ライナーとはインナーライナーの硬さを帽体の部位に合わせて変化させる技術であり、強度がある頭頂部周辺においては柔らかく、シールド口のせいで強度の出しにくい前頭部などは硬いインナーライナーによって頭を守るものだ。もちろん一体成型である。このレポートを読んで下さっているユーザーの中には、なぜ硬さを変える必要があるのか、柔らかいものを使用する必要があるのか、と言った疑問が起きるかもしれないが、それは実際にヘルメットが衝撃を受けた際、インナーライナーが潰れるスピードを考慮してのことなのだ。硬すぎても脳へのダメージは起きてしまうし、柔らかすぎても衝撃を吸収しきれない。この柔らかさとは、帽体の強度分布の配置に合わせてインナーライナーの硬さを変化させるということであり、この技術は日本で初めてFRP帽体に発泡スチロール製インナーライナーの組み合わせを考案したアライヘルメットならではのこだわりである。

左 / シールド貫通試験機。実際の空気銃の弾丸に模した鉄球を空気圧を使ってシールドに打ち込む。
右 / シールド貫通試験結果。赤丸で囲まれた部分にわずかなへこみのみが見て取れる。

塗装、組立工程

成型部門、検査工程の見学が終わった後、我々はバスに乗り、同県内の別工場を訪れた。
そこでは塗装を行っており、講師の方の説明では現在、主に2種類の塗装方法があるという。1つはソリッドカラーモデルやシンプルなグラフィックのヘルメットに用いられる塗装を用いての製作方法、もう1つは水転写シールを用いた方法である。現在、複雑なグラフィックのモデルが多く発売されているが、それらの多くは水転写シールを用いて製作しているとのことだ。ここでもその作業は手馴れた職人の手によって行われていた。帽体のサイズに合わせてデカールの大きさを変えるわけではないとのことなので、ここで職人の手によって微調整が行われなければならないのだ。
ちなみにここで使われる水転写ステッカーはプラモデルに使われているものに近似しているが、転写した後に熱を加えて定着させる別物である。こうすることによって、仕上げに塗られるクリアーなどに含まれる溶剤に溶かされることなく、丈夫で長持ちするのだ。

その後またバスに乗って別工場への移動になる。組立ラインの見学である。そこでは輸出用ヘルメットの組立ても行っており、現在約8割が輸出用だという。
日本国内に流通していない派手なグラフィックヘルメットに目を奪われつつも組立てラインを眺めると、そこでもまた、職人の丁寧な仕事振りを見ることができた。ジグを使ってのシールドホルダー穴切削など、一見誰にでもできそうと思ってしまうが、製品によって微調整しながら加工されていく。ここはヘルメットを利用する際、快適性、利便性に直結するところであり気を抜けないところなのだそうだ。
最終的に検品後、丁寧に梱包され出荷を待つ。全20工程ほど、制作時間は大体1月半かかる。このような段階を経て出荷され、ユーザーの手元にヘルメットが届くことになる。

製品への情熱

最後に、アライヘルメットの取り扱い方法などの研修を受ける。シールドやインナーパッドの脱着など、利便性にこだわっていることが随所に見て取れる。私はメガネユーザーではないので知らなかったのだが、驚いたことにアライヘルメット社製品はほとんどがメガネに対応していた。さらに、個人差やメガネの種類にあわせて微調整できるようになっている。最近、メガネ対応をうたうヘルメット多くなってきたように感じられるが、アライヘルメットはメガネを装着できて当たり前なのである。
アライヘルメットには社内ツーリングポイント制度なるものがあり、月に社員がツーリングした距離をポイント化するシステムがある。トップの社員は月2000kmを越え、社長自身も1000kmを越えるという。社員がユーザーでもあり、「自分たちが使うものには手を抜きたくない」という姿勢でものつくりに取り組んでいる。全米顧客満足度アンケート13年間連続1位をとり続けるその製品らは、社員のたゆまぬ安全と快適性への努力によって作られていたのであった。

アライヘルメットでは6月に新たなフラッグシップモデルであるRX-7Xを発売する。一見、過去のRR5らと同じに見えるかもしれないが、安全性と空力性能確保のためにシールド位置が引き下げられたり、それに伴いバイザーの立体的な動きを可能にする機構が新開発されたりと、更なる安全性性能の追求がなされている。ぜひ、発売されたらこのレポートを見ていただいたWebike!ユーザーの皆様にも実際に手にとってそのものつくりにかける情熱を感じてほしい!

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